2012.03.31
アイアン・ハウス
![]() | アイアン・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (2012/01/25) ジョン ハート 商品詳細を見る |
評価 5
大変読み甲斐があり、そして分厚いのに一気に読めるくらいの面白さもある作品だった。
ジョン・ハートって最初のところからもう心を鷲掴みにするなあという小説なのだ。
一人一人の心も描かれているし、特殊な環境下で身を寄せ合っていた兄弟愛(特に兄から弟への愛)にぐっときた。
孤児が収監されていたアイアン・ハウス。
そこは強い者が弱い者を虐げる悪魔の巣窟でもあった。
兄のマイケルは強い者だったが弟のジュリアンは弱い者でターゲットになるのだ。
常にマイケルが庇っていたジュリアン・・・・
この二人のある事件が起こったときに、偶然二人を助けるべく養子先の女性がやってきている。
ここが読者からすれば、
(ああ・・もうちょっと早く来てくれればこの事件がなかったのに!そうしたらマイケルも同時に引き取ってもらえたのに!)
と地団太踏みたい気持ちにさせられた。
二人の兄弟がどのくらい極悪な環境にいたのか。
マイケルが脱走してからどのような経緯を経て、殺し屋になったのか。
その後引き取られた弟のジュリアンはどうなったのか。
全てが徐々につまびらかになってくるのと絡み合うように、彼らの過去(知られざる過去)も含めて目の前に現れてくるところも読みどころだ。
また、その当時のいじめっ子(いじめっ子以上のものだが)がその後どうなったか、また収監していた管理側がどうなったのかというのもきめ細かく描かれていた。
また途中で湖から次々に死体が上がってくる。
これが誰の死体なのか。
また誰が殺したのか。
という次なる謎も出てくる。
1が始まる前に「追われる少年」というのが太字で出てくる。
ナイフを持っていてなにやら事件があったらしい。
そして後ろから追ってくる犬達、怒号、真っ暗闇の寒い夜の中で子供が自分を傷つけながらも走り続ける・・・
ここでまず何が起こったんだろう?と思わせる。
そしてラストまで読み終わってここを再度読んでみるととても印象深い冒頭だと改めて思った。
1に入ると、マイケルという殺し屋が自分の組織から抜け出すためにボスに許可をとるのだが、ボスの手下が了承しないという話に入っていく・・・・
マイケルは、最初、エレナという自分の子供を宿した女性と、ジュリアンと言う弟と両方を守らなければならないので大変だ。
エレナは状況把握がゼロだったのでますます大変で、突然自分の勤め先のレストランが爆破されたとか、突然車での逃走劇とか、捕まって暴力を振るわれたもののそこからの方がまだ安心していられるくらいだ。
このエレナ状況をマイケルが知らない、というところがなければ、マイケルはジュリアンの方の調査に専念できなかっただろう。
マイケルは、守るべきジュリアンもエレナも二人とも逃走している、という状態なのだ。
心を病んだと言われているジュリアン。
それを見守る上院議員夫人になっている引き取り手の(母の)アビゲイル。
アビゲイルを見守っているジェサップというボディーガード。
俗物であるアビゲイルの夫のランドール。
どの人物も血肉が通っていて、映画にでもなりそうなシーンがたくさんあった。
最後、意外な展開が待ち受けている。
サリーナ・スローターとは誰だったのか。
ジュリアンが精神状態が異常に悪くなり(自傷行為に走った)逃走してしまったのはなぜだったのか。
これらが全て完結したあともまた素敵なラストが待っていた。
以下ネタバレ
・サリーナとは、貧しかった極悪の生活を送っていたアビゲイルが妄想で描いた人間。
そしてアビゲイルは人格分裂していて、サリーナの時に殺人を犯す。
かつてのいじめっこを次々に殺して湖に沈めたのは、サリーナの時のアビゲイル。
それを全て知っていたのはジェサップ。
・アビゲイルは自分の母に命じられて自分の弟を水に沈めて殺した。
そして自分の家から逃走した。
そのあと生まれたマイケルとジュリアンはだから自分の実の弟達(おそらくこの二人は母親が水に沈めた。
だから、自分が裕福になった時に、二人を引き取りにいったのだった。
自分はもう妊娠しないように不妊手術までして。
・一見、この小説は、
マイケルとジュリアンの兄弟愛、のみ、の話のように見えるけれど。
真実がわかると、
アビゲイル(姉)、マイケル(兄)、ジュリアン(弟)という三人の兄弟愛の話だったと思う。
自分達の家族は崩壊しているけれど、何とか繋ぎとめようとするアビゲイルがいて、マイケルがいる。
2012.03.30
歪笑小説
![]() | 歪笑小説 (集英社文庫) (2012/01/20) 東野 圭吾 商品詳細を見る |
評価 4.9
読まれているのだが、さほど期待して読みはじめなかったせいか、実に面白かった。
出版業界の内側、がコミカルに描かれているのだ。
作家がどのようにして生き残るか
編集者がどのようにして売れっ子作家に取り入るのか
美人編集者への作家からの思い、
テレビ化、映画化への道、
編集者はゴルフが必須とか(作家との交流のため)、また新人作家もゴルフが必須とか(先輩作家との交流のため)嫌な意見も取り入れなくてはいけないとか、内幕が鮮やかに書かれていると思った。
後半、作家の名前のもじりはほぼわかったのだが、編集者もきっとこうなのだろう。
それがわからないのでちょっと残念な気がした。
特にこの中で
小学生の出版社訪問で、雑誌の意義を聞いた部分は私も疑問に思っていたので、これも胸がすく思いだった。
小学生、よくぞ聞いてくれた、と。
またヒット作症候群というのも新人作家がある作品に囚われてしまう、というのがとてもわかる。
本格ミステリの特集で誰を選ぶかと言うところも読ませるし
新しい賞の樹立というのもこういう風になっているんだ、というのがデフォルメされて描かれている。
この本、意外なおまけがあって
最後のところに大きなお遊びがある、ここもまたちらちらと見ると楽しい。
2012.03.30
セッション
![]() | セッション ―綾辻行人対談集― (集英社文庫) (1999/11/19) 綾辻 行人 商品詳細を見る |
評価 4.8
古い対談集(ほぼ1995年あたり)なのだがそれは考えた上でとても面白かった。
スタンスと言うのは変わってないからだ、それぞれの作家の。
しかもこの時点で、まだ宮部みゆきは理由を書いていない。
この時点で綾辻行人はAnotherを書いていない。
こうしてみると、作家と言うのは恐ろしいものだと思った、無から有を生み出すのだから。
この時点ではまだ彼らの頭の片隅にもしかしてあるかもしれない、と思ったくらいのものが形として世に出るわけだから、という感慨に浸ったのだった。
内容で面白かったのは、ホラーであれミステリであれ、誰がどういう作品を好んで読んでいたかという部分も実に面白かった。
推理小説というものの見方とか読み方もこの本で色々な方向から楽しめる。
宮部みゆきが岡嶋二人フリー管と言うのも頷けるし、
北村薫の占星術〜に対しての言及も非常に含蓄がある。
山口雅也がアーティストドミノ倒し理論なるものを開陳するのもまた面白い(これを考えてみると、確かに作家で最初、漫画家を目指していたと言う人は実に多い)
ラストの西原の漫画で大爆笑した。
また、それを優しくフォローする国樹さんの漫画もまた。
2012.03.30
共喰い
![]() | 共喰い (2012/01/27) 田中 慎弥 商品詳細を見る |
評価 4.4
自分として好みの範囲の話ではないなあと思った。
それでもとても上手い小説、ではあるというのも同時に思った。
表題作ももう一作も日本の土着の話、をベースにした話だ。
血、というのをどちらも感じさせられた。
しかし表題作は闇を、もう一作の第三紀層の魚は光を感じると言うところが大いに違うだろう。
共喰いは、自分の母と父が別れた原因が父の性行為中の暴力によるものだ、と主人公の男の子が知っているところから始まる。
父の体たらくを見て、自分もいつかそうなるのではないかという恐怖が常にある。
彼女と性行為をしていて、彼女にいつか暴力を強要するのではないかと言う恐怖がまとわりついてはなれないのだ。
そして、継母と実母が近くにいて実母は魚をさばいて売っていて、継母は父とともに暮らしている。
ひょんなことから、恋人と行き違いになり恋人に起こった事件から話はぐるっと展開していく。
正直気持ちの良い話ではないのだが、妙に身にひきつけられてしまう怖さがある。
第三紀層の魚は介護の曽祖父と孫の男の子のツリの話が微妙に連なっている。
リアルなオシメかえ作業がありながら、そこにチヌという魚がつれたかつれなかったかという話が織り交ぜられているのが興味深い。
2012.03.29
居心地の悪い部屋
![]() | 居心地の悪い部屋 (2012/03/27) 岸本 佐知子 商品詳細を見る |
評価 5(飛びぬけ)
大変面白いし、ぞっとしたし、異形の世界を堪能できた一冊だった。
どの短篇も面白いけれど、きっとこれって、好みが厳然としてあるだろう。
どれが面白かった?一番?と人と語りたくなるようなそんな一冊だった。
グロっぽい場面がある作品もある。
それでもそのグロを受け入れてしまう度量を読み手に与えてしまうほどの作品の完成度の高さがあるのだ。
夕闇の広場にぽつんと残されたような心細さ、じわじわと下から這い上がってくるような怖さ、この世界が別の世界にくるっと反転するような奇妙な感覚、そういうものに満ち満ちている作品集だった。
まず最初の作品ヘベはジャリを殺すで度肝を抜かれる。
ここにはなぜ、という言葉はない。
なぜ、がなく、まぶたを縫い付けられてしまうのだ。
拷問でもなく遊びでもなく虐待でもなく。
そして更に奇妙なことに、これを片方がいない間に・・・・というラストの方のシーンがある。
まぶたをさすりながら読んだものだった。
チャメトラは、梅図漫画のようでおぞましいながら、実に読ませる。
しかもファンタジーのようにも感じてしまうところが不思議だ。
一種の暗い美しさがあるからだ。
死に行く人の頭から、列車が流れ、思い出の人が流れ出すと言う情景が目に浮かぶ。
あざ、はこのアンソロジーの中での白眉の作品だった。
最初の寄宿舎生活でのある少女の出会いと(そしてその一瞬の会話)唐突な別れ、から、後半の恐ろしい展開が息をもつかせず読ませる。
何が?どこで?なぜ?という問いを一切拒絶しているような筆致が心を打ちのめす。
そして奇妙にこの世界は心に焼きつくのだ、一枚の絵として。
来訪者は、いかにもバドニッツらしい作品だ。
ほぼ、母と娘の会話で成り立っている。
しかしその不穏なことと言ったらどうだろう。
母は父とドライブしていて娘の家に来ようとしている(らしい)
しかし話をしていて、なかなか来ないばかりか、待っている娘もそこでドライブしているのが自分の両親か銅貨と言うのが揺らいでくる。
しかも、途中で闖入者が車に現れたと言う話になっていく。
どう眠った?は、建築で眠りをあらわしていてそれはそれは楽しい。
次はどういう建築物が現れるかというのが楽しみになるほどに。
分身は、グロテスクなのにユーモアに溢れた作品だ。
足からもう一人の人間が出来上がる・・・・
それがかつての自分だったら、と思うとなんだかいとおしかった。
やあ!やってるかい!は、ジョギング中に元気よく語りかけるマッチョな男の末路が印象深い。
ささやき、は、大好きな作品だ。
自分がいびきをかいているかどうかを確かめるために、録音テープを仕掛けたら、別のものが入っていたという作品だ。
ラストの驚きが忘れられない。
・・・・・・・・・・・・・・
ヘベはジャリを殺す(ブライアン・エヴンソン)/チャメトラ(ルイス・アルベルト・ウレア)/あざ(アンナ・カヴァン)/来訪者(ジュディ・バドニッツ)/どう眠った?(ポール・グレノン)/父、まばたきもせず(ブライアン・エヴンソン)/分身(リッキー・デュコーネイ)/潜水夫(ルイス・ロビンソン)/やあ!やってるかい!(ジョイス・キャロル・オーツ)/ささやき(レイ・ヴクサヴィッチ)/ケーキ(ステイシー・レヴィーン)/喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ(ケン・カルファス)
2012.03.29
眺望絶佳
![]() | 眺望絶佳 (2012/02/01) 中島 京子 商品詳細を見る |
評価 4
東京タワーとスカイツリーの往復書簡(!)の間に小さな物語が秘められているというファンタジックな物語だった。
そのファンタジック具合が、私にはとても微妙な感じだった。
いい話、といえばいい話なのだが・・・・
以下自分用覚書
・アフリカハゲコウの唄(ブログのコメントからある事件が・・・ううむ・・・)
・倉庫の男(書き方によってはもっとふくらむ面白い話、だと思った。かつての男を回想する女とかつての男が倉庫で寛ぐ男というのが印象深い。そしてラストもにんまり)
・よろず化けます(たぬきの兄弟の話が気に入れば面白い話、なのだろうが・・・ううむ・・・)
・亀のギデアと土偶のふとっちょくん(大震災の話なので否定は出来ないけれど、亀?亀?・・・ううむ・・・)
・今日はなんだか特別な日(方向音痴の上京したばかりの人間がある知らないところに迷い込む・・・それは危ないんじゃないか?・・・ファンタジーなのか?・・・ううむううむ・・・)
・金粉(薔薇屋敷という名のゴミ屋敷に住む老姉妹・・・ううむ・・・)
・おさななじみ(フェイスブック?48歳?・・・・ううん・・・)
・キッズのための英会話教室(子供を得る代わりに音楽教室・・・うううむ・・・)
2012.03.29
PK
![]() | PK (2012/03/08) 伊坂 幸太郎 商品詳細を見る |
評価 5
未来三部作ということだが、最初の表題作PKからとても読ませる。
ただ、疾走感には溢れていないしどちらかと言うとゆっくり噛み締めるように読む小説だと思った。
そして全体が実に緩く繋がっている。
これがこうしてこうなった、という時系列の脈絡がないということも去ることながら、文字面を追っていくだけでは思わず忘れてしまうような小さなことが次に繋がっていたりしている。
一種の推理小説を読み解く面白さがあった。
バタフライ理論のように、ある時にある人が小さな決断をすることによって、大きな事が変わっていく・・・・
この連鎖具合が面白い。
PKは最初の方に「お父さん」と子供達がいて、お父さんの友達の次郎君がいる。
次郎君がゲームのやりすぎで目を悪くしたとか歯ブラシを首の外に出したとか、ホラ話をして(と思える)お父さんが、子供達に躾をしている。
これも話の最後に繋がっていく。
(この子供達の一人が、後に大臣になりその大臣になる前に一人の落下してきた子供を救う。
「お父さん」は作家であり、その子供が大臣になるということだ、)
またこの話の中で印象的な話が、ある男がマンションの上から落ちてきた幼児を救う、という話がある。
(そしてサッカーの小津がこれを目撃している)
そして「勇気は伝染する」という言葉が出てくる。
PKは何かを押すことによって別のものが倒れると言うところがフィッシュストーリーに構造的に似ていると思った。
超人、は、予知能力者の話だ。
本田という男が、ある家に訪問販売に来る。
その時の話で、実は自分に異常なことが起こっている、という話になる。
彼に、メールが来てそれを見ると自分だけに未来の殺人事件を予知して、その殺人者を殺して回っていると。
そしてこの超人本田、こそが、PKで上から落ちて救われた子供だったのだ。
本田は大臣に呼ばれると同時に、大臣が未来の殺人者であることを携帯で知らされ、殺すかどうかを煩悶する。
ところが、途中で別のことが起こる・・・・
この話、ラストの視点が予想を裏切っていてそこもまたとても面白い。
密使は、タイムトラベル物といっていいだろう。
ある人間が握手することによってその人の時間を6秒間だけ盗む、という設定の話だ。
この盗めると言う能力がどう使えるかあれこれ考える男の姿と、もう既にある機関に入れられた有る男の姿が交互に描かれていくのだ。
過去の何かを何かすることによって、未来を変えてみたい・・・・・
ゴキブリ(!)が重要な役割を担ってくれている。
2012.03.29
クリムゾンの迷宮
![]() | クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫) (1999/04) 貴志 祐介 商品詳細を見る |
評価 4.9
最初から実に私の好みの設定で始まってわくわくさせてくれる。
曰く、起きたら(どうやら飲んでいたらしい、前の晩に)全く知らない場所にいると。
曰く、その場所がなんだかとてつもない見たことのない異様な光景だと。
曰く、自分が何者かはわかっているのだが、近くに携帯用ゲーム機がありそこにメッセージが映し出されていると。
つまりは、「どこだかわからない場所に知らない間に投げ出される」というシチュエーションだ。
ここに来た意味がまずわからないと言うところがどきどきさせ読ませる。
いきなりゲームに参入させられるところも、そしてせざるを得ないというところも読ませる。
分岐点があり、どちらの選択肢を撮るかというのはまた、ゲームのようでありまた人間洞察でもあり、読ませる。
わからない状況下でそこを手探りで探していくのが数人いるというところで、映画のCUBEをも喚起させる。
でも同じ状況で全員がもがいているCUBEと決定的に違うのは、クリムゾンは「別々の道」を組んだ人と数人で旅していく(闘っていく)というところだ。
最終的に誰かが誰かを殺さなければ自分が生き残れない、という凄惨なゲームになることは予想できていても、それでも途中まで一緒の女性、藍と共に闘っていく藤木(男)の姿が印象に残った。
またここでは騙しあいも当然行われている。
ゲームブックも十分意識されながら、斬新でとても読ませる作品となったのだ。
ラストは賛否両論のように思った。
私はこれはこういう風に終わらせるか、または・・・としか思えなかったので賛なのだが。
以下ネタバレ
・もしラストをこういう終わり方にしなければ、全員死亡というラストエンディングしか考えられなかった気もするのだが・・・どうなのだろう。
・藤木たちが最初に選んだ「情報」のルートが実に有効である、というのがあとでわかってくる。
情報に書いてあることをあとで出てくること(どれが髑髏マークかとか)と照らし合わせてみると、このあたりよく出来ている。虫が蛋白源に有効だとか、一見良さそうなものに髑髏マークとか。
・この作品、惜しいと思うのは
ラストまでここが海外の某国立公園のが出てくるところだ。これは伏せていてもいいような気がした。
それがわかった時点で全体の理不尽さが減少するからだ。
ここは火星?ここはどこ?という恐怖が一つ消えてしまうのが実に惜しい。
2012.03.26
ぼくと、ぼくらの夏
![]() | ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫) (2007/05) 樋口 有介 商品詳細を見る |
評価 5
なんていい話なんだろう!
なんてすがすがしい青春ミステリなんだろう!
一人称で語られる小説だが、全くそれが飽きない。
高校二年生の「ぼく」は刑事の息子であり、同級生が殺されると言う事件があり、そこからやくざの娘「麻子」と友達になっていく・・・
二人の高校生の瑞々しいことと言ったらどうだろう。
会話の一つ一つに無駄がなく、ちょっと背伸びをしている「ぼく」にも好感が持てるし、すねたり怒ったりする「麻子」の一挙手一投足からも目が離せない。
二人が相談して相談して、次から次へと真実を暴こうとしていくのだが、その過程が好ましい。
怒った麻子が、扉の向こうにいつまでも佇む場面、
二人でいる時に爆発したように麻子が泣く場面、
人が来ない同級生のお葬式でなんともいえない気持ちになる場面、
全て忘れがたい。
また、刑事のお父さんもいい味を出している。
何も家事が出来ないで、どちらかと言うとお父さんより心が大人の(大人になろうとしている)「ぼく」に夕食をあれこれ準備させたり、ほのかに学校の先生に恋心を抱いたり、くすっと笑える場面が多い。
しかもこのお父さんの意外な過去が途中で明らかになる鮮やかさと言ったら!
解説にもあるけれど、かつての赤頭巾ちゃん気をつけての、薫君と由美ちゃんを思い出しながら大変幸せな気持ちで読み終わった。
2012.03.26
冬の灯台が語るとき
![]() | 冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (2012/02/09) ヨハン テオリン 商品詳細を見る |
評価 4.6
ゴシックホラーっぽい出だしだ。
あるいわくありげの屋敷に住み始めるヨアキム一家がいる。
そこは、エーランド島というところにあり、双子の灯台が見える場所であった。
この屋敷のいわくは、あちこちに語られる、
いわく、難破船で最後まで人が捕まっていた板が屋敷の板になったという話がまず語られる。
絶望の中でつかんだ板。
それが使われた屋敷・・・
ここで奥さんが死んだ。
これでこの家族が崩壊したのも同然だ。
しかも無人の部屋でずうっと聞こえ続ける囁き声
子供が呼びかける幽霊
何者かが常にいるような納屋・・・・・・
死者が戻ってくるクリスマスに照準はあわせられていく。
・・・
ぞくっとするような屋敷の変さというのに私も巻き込まれていった。
途中まで何度も出てくるエテルというのは誰なのかというのがまた話を引っ張っていく。
最初エテルというのはヨアキム(主人)の元恋人かと思っていたら違った。
そしてこの推理小説、奥さんのカトリンの死の真相の話かと思っていたら、ぐうっと途中で過去に戻っていく。
過去といっても極度に昔の過去(カトリンの母の母)、と現在との対比もあるし、
ヨアキム一家の小さな過去もまたある。
そこでエテルがどのくらい一家に関係あるのか、何者なのか、どういう末路を辿ったのか、というのが如実に明らかになっていくのだ。
ここらあたりが非常に面白い。
また、一方で、恋人と別れる寸前の女性刑事、岬で泥棒を働こうとするチンピラたちも相俟って、話は終章に向かっていく。
以下ネタバレ
・エテルはどうしようもない麻薬中毒で、ヨアキムの姉だった。
最初、ヨアキムは、エテルを妻のカトリンが殺したと誤解する。
エテルを殺したのは(いつもエテルが閑静な住宅街でえ叫んでいてうるさかったので)ヨアキムの友人ミカエルだった。
それを知ったカトリンがミカエルと接触してやはり殺される。
・エテルの娘がヨアキム夫婦に引き取られる。
それがリヴィアで、一家の秘密でもあった。・納屋に秘密の部屋があった。










