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2020.01.08 靴ひも


評価 4.9

読んでいてとても辛くなった、体のあちこちがいたくなる気持ちだった、なんでだろう?
ここに出てくるのは破綻しかけている普通の一家の話なのだ、でも読んでいるうちに自分の心の中の何かがかきたてられる、それは読むという作業で、心の闇のようなもの、見たくないもので封印したものを引きずり出されるからだと思った。
こういうことある、形は違うけれどある、と確かに思えるところがあるのだ、そしてぞくっと怖い。

・・・・・・・・・・・・・
3つのパートに分かれていて、それぞれ語る人も違うし語り口も違う。
最初の部分は衝撃的な手紙で始まり、そして終わる。
それは、夫の不倫をひたすら責めていくという手紙だった。
それは、年下の女性に血道をあげ家を出て家族を捨てようとしている夫の姿が見えてくる。
子供たちはまだ幼く、この事態に怯えてさえいる兄と妹だ。
この手紙で、妻がどんなに追い詰められているのか、そしてもしこの時点で夫が戻ってきたら自分は受け入れる準備があるのかということがわかってくる。
妻側には愛情があるのだ、憎悪もあるけれど。
絶対に若い女性と別れないとしている夫がいて、この結婚は破綻だなあとうっすらとわかる。

ひどい男!!でもこれは妻側の手紙だからなあ・・・・と思って次の章に進む。

<以下ネタバレ含む>



ここには夫側の語りで始まっている。
しかしなんと、40年がたっていてこの結婚が継続しているということに驚くのだ。
いったいなぜ?
あの破綻からどうやって?
1章の手紙の最後の方で、妻が自殺未遂舌ということも描かれいて、そこにも夫は戻っていないという鬼畜のような姿が描かれている。いったいこの二人なぜよりを戻したのだろう?
そして40年後の老齢の二人が旅行に行ったさきから帰ってみれば家じゅうが荒らされている。
そこには夫が隠していた昔の彼女の裸体の写真(これも取ってあるということですでにどうしようもない夫)もある、ぱらっと落ちてきた1章の手紙を深夜読みふけった夫は、自分の過去を振り返っている。

子供たちは既に独立しているが両方とも順調な人生とは言えない。
この夫婦のもとでどうやって過ごしたのだろう、子供たちは。
一つの家族の中で、愛憎があり、調和と破綻があり、許しと拒みがあり、それらの感情が4人を取り巻いている。

2章の夫の過去への振り返りで、どうやってこの二人がここまでの道を歩んできたのかというのがよくわかる。
タイトルの靴ひもは、父親が息子に教えてあげた奇妙な結び方のところで出てくる、この奇妙な結び方が親子のきずなとなっていくというところがなんとも哀れでそしていとおしい。
この部分非常に印象的だ。

3章は今度は子供側から。
災厄のような瞬間から、ずうっとこの両親の亀裂の中で過ごしてきた子供時代を経て二人は大人になっている。
そして、彼らのいない間にこの場所を破壊したのは彼らだった。
しかも父親の隠していた写真を見つけていたのだった、愛人の裸体の写真を。


評価 5

二作品入っている。
特に、中編の表題作が私はとても面白かった、奇妙な話だ。
(もう一作の短編は、ラピード・レチェ。海外で駅伝指導の話。
こちらも真贋の話が含まれていてなかなか面白い。)

結婚の約束だけしてほとんどあったことのない妻。

戦争後復員してきた画家、平泉貫一の姿がまるで別人だったことから調査を記者が依頼されるのだった。
それは、美術系の編集者の榎田という男によって依頼されたものだった。
貫一の両親は存命で、彼の変貌を知りながら帰国したことに狂喜してはばからない。
貫一の妻と言えば、写真でしか見たことがないような夫であり、彼女の判別は難しい。
そんな中、貫一が偽物だったとすればなぜそれをしたのか。
また本物だったとしたらなぜそんなに変貌したのか。


どうしても、横溝のすけきよを思い出す。
戦争から帰ってきて顔が変形している・・・・
ただ、この小説の場合は、仮面をかぶるわけでもなく堂々と違った顔で過ごしているということなのだ。
依頼され周辺を捜索していくうちに、偽というのは一体何かという根源的な問いかけにもぶつかっていく。
しかも、絵を描いているというので贋作にもつながるし、果ては偽のサインにもつながっていくし、書類偽造にもつながっていくし、更に決定的なのは、変装ということにもつながっていくのだ。

偽物と本物との境界線上の曖昧さ。
黒白つけられないグレー部分。
そういうのをこの小説、見事に描き出しているのだ、考えれば考えるほどわからなくなる真贋の不思議というようなものを。
貫一が偽物だったかどうかということよりもその部分が非常に面白く読めた。


評価 5

新装版が出たのでとても久しぶりに読んでみた。
若書き、なのだがその良さが一気に出ている本だと思う。
後半のほう、心の内面の話になりちょっとわかりにくい感じも漂っているけれど、そこすら愛せる。
なんといっても、出だしが素晴らしい。

冬のある一日、大雪になりそうな気配の空の下受験生の生徒達8人が学校に集まってくる。
ところがそこには生徒会に関係する彼らしかいない、一体今日は休校なのだろうか。
職員室に行くのだがそこにも誰もいない。
しかし誰かが来た気配があり、暖房がついている。
そして一人が帰宅しようと外に出ようとすると、外には出られない。
雪の降りしきる中、数人の男女はこの校舎の中に閉じ込められたのだ・・・


前半で、この世界は何なんだ?と高校生がみんな右往左往していく姿が読ませる。
しかも、不思議なことはたくさんあって、職員室の写真を見たひとりが、そこに一人足りないとか、あとから見ようとするとその写真が消えるとか、かなり後半だが3階建ての建物なのに4・5階がありしかもいけないとか。
でもなんといっても、怖さを増すのは、
『去年の文化祭で誰かが屋上から飛び降り自殺をした。それなのに誰もその人の名前を思い出せない』
という奇妙な事象があることだ。

ここに集まった高校生たちはお互いをよく知っていて男女でも仲が良い。
それぞれの持ち味を生かしてこの状況がどういう状況なのか推理していくこの過程もまた楽しい。
過去の文化祭で起きた出来事、それにまつわり過去に起きたクラスの事件なども実に生き生きと描かれている。

皆が慕う榊先生がここにいないというのも最初から出ていて、この肝心な先生がなんでいないんだ、とぼんやり思っている、読者もまた。
そしてここに集まった生徒たちの生い立ちも伝わるように描かれている、一人一人の心の動きとか家庭内の悩みとかとともに。

ある種、ホラーの部分もあるし、目をそむけたくなるところもある。
それでも読ませるのは、作者の書きたいという情熱のようなものがこちらにどんどん伝わってくるからだと思った。
あと、あるトリックがあるのだが、これはこの小説を起点として、別の小説にも使われているが、ここは再び読んでもああ、なるほどねえと納得できるものだった。
2019年の読書メーター
読んだ本の数:107
読んだページ数:33955
ナイス数:2880

四つの凶器 (創元推理文庫)四つの凶器 (創元推理文庫)感想
バンコラン最終の話。カーお得意の怪奇趣味もなく、バンコランがもっともっと悪魔的だと思っていたらどちらかというと今は引退して零落の日々を送っている人設定・・・ミステリの中で偶然があまりに多いと思いました、非常に練り上げられた緻密なプロットではあるのですが。賭博場のところもとても読ませました。私が一番謎だったのは、トリックとかそういうことではなく、ラルフの最後いきなりローズが好きと告白しているところ。え?そういうことだった?釈然としないまま・・・
読了日:12月27日 著者:ジョン・ディクスン・カー
55 (ハヤカワ・ミステリ文庫)55 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
私のうっすらと思っていたミステリの感じではなかったものの、ページをめくる手は確かに止まりません。最初から心惹きつけれます、一人の男が「殺人鬼に監禁され、おまえが55番になると言われた」と警察に飛び込んできたので保護した直後、別の男性が全く同じ証言をして相手を犯人だと警察で言う・・・。過去の描写も時折入り、かつての幼馴染との軋轢(ここがちょっと辛い)があるチャンドラー巡査部長の右往左往っぷりと静かな町が一転して喧騒の町になるというところは読ませます。ラストは、確かに誰かと語りたい。やや、盛り込みすぎか・・・
読了日:12月27日 著者:ジェイムズ・デラーギー
ファースト クラッシュファースト クラッシュ感想
見知らぬ少年を父がいきなり家の子にしようと連れてくる、という設定で嵐が丘を思いました。ファーストクラッシュは初恋のことで、三姉妹がそれぞれ連れてこられた男の子に何かしらの感情を抱くのが、いかにも山田詠美らしく巧みに描かれていました。父の愛人の連れ子、という複雑な家庭環境ゆえ、男の子の力が折々に発する言葉が心に残りました。母親は当然面白くないわけでその感情むき出しの出来事の数々、そして後半での母親の姿と力のやり取りなども印象深いです。ただ、私は少しだけ自分の期待とは違ったかなあ・・・
読了日:12月27日 著者:山田 詠美
だから、何。だから、何。感想
今年出るのが少し早かった?という気がしていますが・・・これを読むと一年間が終わった気がします。中野翠の視点でこの一年間の世俗のもろもろを語ってくれるエッセイ集。映画の話もまた楽しく、何がこの年にあったのか最初の方は私も忘れているのが多かったので、ああ・・・そうだった、と思い出したり、こういう映画があった!と思ったりしました。また今年一年の事件、事故、災害にも触れられていてそこもまた当時思った感情がよみがえりました。途中途中に挟まれる作者の俳句やイラストも楽しみにしています。
読了日:12月27日 著者:中野 翠
不穏な眠り (文春文庫)不穏な眠り (文春文庫)感想
葉村晶シリーズ相変わらず楽しかった!仕事はできるのに思い切り不幸な出来事が襲ってくる葉村。最初は実に小さな依頼(人を無事に家に帰してほしい、幽霊ビルの警備をしてほしい等々)と思っているのに、引き受けた瞬間からどんどん広がっていく事件のさまが読んでいてわくわくしました。表題作が私はとても怖いと思いました、他人が人の家に居座るという怖さとあの奥さんがどうしてああなったかという経緯が恐ろしすぎます。また古書店の盗まれた本の話はまつわるあれこれの話にもおおいに心惹かれました。ラストの富田店長のミステリ紹介もグー。
読了日:12月21日 著者:若竹 七海
赤い髪の女赤い髪の女感想
非常に面白かったです。物語性に富み豊饒な小説独特の余韻に浸らせてくれました。東西の父殺し息子殺しの神話に導かれるように進むジェムの姿が忘れられません。青春物語、成長物語の側面がある一方で、一種ミステリ的な部分も多く、あの後親方はどうなったのか、初恋の赤い髪の女は一体どうしたのか、興味は尽きませんでした。第一部が終わったところで驚愕(これでいいの?ジェム!)、第二部の最後でまた驚愕(そんなっ!)、第三部はそもそも語りの人で驚愕、ラスト数行でまた驚き、と嬉しい驚愕がたくさん待っていました。
読了日:12月21日 著者:オルハン パムク
文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫)文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫)感想
楽しみました!おおいに!!遊び心の溢れる一冊で、真面目な文学好きには怒られそうだけど、おおいに既存有名作品を解体してくれます。読まなくても粗筋が書いてあるので楽しむことができます。特にこころ、の考察には大爆笑してました、まさかこの人を出すとは。走れメロスに至っては本当にこうじゃなかったのか・・・と思うほどでした。銀河鉄道の夜、藪の中もあります。バーで女性バーテンダーと文学教授ともう一人の客との間で交わされる文学談義、笑いながらもためになります。古い時事ネタギャグ風俗ネタそのあたりも私は好きなんです。
読了日:12月18日 著者:鯨 統一郎
medium 霊媒探偵城塚翡翠medium 霊媒探偵城塚翡翠感想
大変面白く読みました。何を書いてもネタバレになるので内容については書けませんが、胡散臭い(タイトルと表紙から)と思った自分を許してほしいです。ある部分はこの人なんじゃないかとわかります、普通のミステリの読み手なら。でもその先のある部分は、、、ともかくもネットとかで感想を拾わず、前知識ゼロで読むことをお勧めします。多少途中、あーあと思っても最終章まで行くことをお勧めします。
読了日:12月18日 著者:相沢 沙呼
歩道橋シネマ歩道橋シネマ感想
16編の短編集でした。長いのやら短いのやらちょっと長さがバラバラでそのあたりは難点だと思いました。が。いくつかスピンオフのある中、麦の海に沈む果実のスピンオフがありそれは非常に読ませたし、この人の過去!こうだったの!という読む喜びがありました。ホラー色・SF色の強い作品もまたあり、ラストの作者自身のそれぞれの作品への言及も楽しんで読みました。
読了日:12月18日 著者:恩田陸
約束された移動約束された移動感想
小川洋子ワールド前回の短編集でした。どれも移動ということをモチーフに描かれています。表題作の約束された移動が一番好きでした。ホテルの特別室の客室係とそこに定期的に来ては本を書棚から一冊失敬する某ハリウッド俳優との静かな交錯が描かれています。この作品集、どの作品の中でも一般的に見れば、ストーカー?ちょっと頭のおかしい人?ずれた人?なのですが、そこが小川洋子マジックでその人たちが生き生きと魅力的に見えてくるのです。ファンタジー色の強い作品もありました。
読了日:12月18日 著者:小川洋子
小さいコトが気になります (単行本)小さいコトが気になります (単行本)感想
いつも通りのミリさんの楽しいエッセイ集(漫画もあります)。強烈に自分の人生に必要なもの!がある一方で、ここに書かれているようにたいして必要ではないんだけどついつい見てしまうという作業・・・人の家の植木鉢、とか、映画のエンドロールとか、歩いていてたまたまカーテンが開いていて中がちらっと見えてしまってそこに住む自分を想像するとか、がわかりすぎました。ミリさんのエッセイって、そうそうあるある!共感できる!という人にヒットするんだと思いました、あるあるネタみたいに。
読了日:12月18日 著者:益田 ミリ
漂う子 (文春文庫)漂う子 (文春文庫)感想
辛い、ほんと読んでいくのが辛い話でした。でもこういうこと生きていく中で知らなくては。そして私の知らない言葉たくさんありました、棄児、居所不明児童、神待ち・・・。大人の都合で生活を破壊されてしまっている子供たちがこんなにいるなんて。そして、援助交際が必要悪になっている世の中って何だろう、と改めて考えさせられました。デフ・ヴォイスシリーズは1は読んでいるので(そしてとても良かった)そこも続けて読んでみたいと思いました。私の本はサイン本で、『かつて子供だったすべての人へ』というメッセージが読後改めて沁みました。
読了日:11月30日 著者:丸山 正樹
パリのアパルトマン (集英社文庫)パリのアパルトマン (集英社文庫)感想
最初から最後まで面白い物語。ブルックリンの少女の作者のミステリですがエンタメに近い感覚だと思います、なんせ読みやすいし話の展開に魅せられます。二人の男女がダブルブッキングされた素敵なアパルトマンで出会うというところから始まります。まず元画家のいた家の描写が美しく折々にある絵の話も読ませます。天才画家のなくなった絵三枚を探している内に、彼の数奇な運命に導かれるようにしてある真相探しに巻き込まれていく二人…男女二人のそれぞれの人生への葛藤もあいまり、後半へ。予想の斜め上行くラストでした、心地よい驚きがそこに!
読了日:11月30日 著者:ギヨーム・ミュッソ
小説 シライサン (角川文庫)小説 シライサン (角川文庫)感想
王道のホラー作品。リングをどうしても思い出しますが、それよりは怖くないというのが私の印象。こちらの世界とあちらの世界の境界線の物語でもあります。
読了日:11月30日 著者:乙 一
目覚めの森の美女 森と水の14の物語目覚めの森の美女 森と水の14の物語感想
古今東西のおとぎ話をダークな味付けに・・・最初のシンデレラの最後に驚きました。他のでも結構驚いていて、そうかこういう観点で見ればこうなるのかと新たな思いもよぎり、ジェンダー論とかもちょっと思いました。文章も美しく幻想的な場面も描かれていました。ただ、あと一歩激しさ、もっともっとダークな面、狂った面、めくるめく展開があった方が私は好みだったかも、ここは好みの問題だと思います。
読了日:11月30日 著者:ディアドラ・サリヴァン
このあたりの人たち (文春文庫)このあたりの人たち (文春文庫)感想
ほわんとした短編集と思いきや、不穏な雰囲気の日常、に満ちているSFっぽい短編集。意味わからないけど面白い、みたいな。ついつい読み進めていってしまう気持ちになります。たくさんの人が出てきますが、かなえちゃんに注目して読むと、また面白いです、お姉ちゃんまで出てきて!
読了日:11月30日 著者:川上 弘美
ボーダー 二つの世界 (ハヤカワ文庫NV)ボーダー 二つの世界 (ハヤカワ文庫NV)感想
ボーダーとマイケンが私の好みでした。
読了日:11月30日 著者:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
ネプチューンの影 (創元推理文庫)ネプチューンの影 (創元推理文庫)感想
面白かったです!アダムスベルグの直観力もさることながら、今度の犯人が既に死亡しているところから始まっているのも秀逸でした。ネプチューンの三叉槍のような跡が死体についているという目印が、過去の犯人へと導いていきます。今回はカナダに行ってそこで思わぬトラブルもありアダムスベルグ自身が困った羽目に陥る(この脱出劇が最高)という山あり谷ありのわくわくする展開でした。老女のハッカーも素敵すぎる!!
読了日:11月30日 著者:フレッド・ヴァルガス
線は、僕を描く線は、僕を描く感想
届く人に届きますように。
読了日:11月30日 著者:砥上 裕將
雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)感想
届く人に届きますように。
読了日:11月30日 著者:陸 秋槎
チャイルド・ファインダー 雪の少女 (創元推理文庫)チャイルド・ファインダー 雪の少女 (創元推理文庫)感想
これだけ悲惨な状況の話なのに、ラストすがすがしい気持ちになったのは久々でした。ある雪山で一瞬の隙に5歳の女子がいなくなる、警察の捜査も空しく発見できず捜査終了、でも両親が諦めきれずチャイルドファインダーという専門の女性ナオミに頼む・・・。読んでいて酷いことがあるのです、途中途中。それでもけなげさと希望が入り混じっている雪の少女の造形が素晴らしく、プラス探す側のナオミもまた抱えきれない過去を背負っていてそこもまた読ませます。情景描写も美しいです。まだ謎の開きが途中なので、ぜひぜひ次巻を希望!待ってます!!
読了日:11月27日 著者:レネ・デンフェルド
世界のはての少年世界のはての少年感想
一気読み。まず孤島で少年たちがサバイバルする、という設定でわくわくしました、実際には大人も少数いますが。どうやって生き延びるかということもさることながら、最後まで『なぜ迎えの船は来なかったのか』というミステリでもありました。そしてその答えは実に意外なもので、しかも解説を読んでさらに私は驚きました。リーダーの男の子が、皆から特技を見出だし役割を持たせてなんとか生き延びる術を持っていくというところ(ここの場面秀逸)、幼い恋の気持ち(この結末にも驚いた)、横暴な者への反感、と読みどころはたくさんありました。
読了日:11月27日 著者:ジェラルディン・マコックラン
ファミリーランドファミリーランド感想
誰だっけ?この人?と作者名を見てまず思い、ぼぎわんの人だ!と直後分かりました。ホラーと思いきや、一篇を除いては、ライトホラーの近未来SFでそれなりに面白く読みました。お義母さんに支配されたお嫁さんの行く末(後半にもこの家族の話出てきます)とかの話も面白かったのですが、介護の話がホラーそのもので怖かったです・・・いわゆるいい話なのになんともグロテスクで。どの話もありそう、というところが恐怖を誘うのかも。
読了日:11月23日 著者:澤村 伊智
影裏 (文春文庫)影裏 (文春文庫)感想
3篇入っています。表題作は岩手に出向になった男が唯一心を許した日浅という男とともに渓流釣りをする・・・そして日浅が突然姿を消す・・・後半であのことが大きなファクターになるというのを知らなかったので、こうくるのかという驚きはありました。自然描写が非常に美しく久々に自然描写のある小説を読んだ、という印象。そして日浅を訪ねて行った実家での父の見た日浅という人間というのにもまた驚きました。暗い小説、というよりは、ほの暗い小説。嫌いではありません。
読了日:11月23日 著者:沼田 真佑
ぱくりぱくられしぱくりぱくられし感想
いいなあこのお二人のたたずまいと会話。脚本家としてずうっと注目していて、彼らの(ご夫婦です、二人の合わさった木皿泉さん)状況も十分わかっていた上で読むと、じわじわと沁みてくるものがあります。読んだ本をよく覚えているなあという感心もあり、会話の一つ一つの言葉がそのままドラマに使えそうでした。
読了日:11月23日 著者:木皿 泉
いけないいけない感想
それぞれのラストの一ページが肝、で、図で、それなりに(失礼)面白く読めましたが・・・が。腑に落ちない感が強烈にありました、ごめんなさい。
読了日:11月23日 著者:道尾 秀介
エレベーターエレベーター感想
本として形がとても面白い本だと思いました。エレベーターが止まるごとにその階のボタンの絵が出てきます。愛する兄を射殺された弟が犯人があいつだと決めつけ、兄の拳銃をもって外に復讐のために出ようとする、エレベーターに乗る、というところから始まります。非常にシンプルな言葉の羅列が弟の口から発せられ、彼の猛烈な怒りが体中からあふれ出すのがわかります。そして各階でエレベーターに乗ってくる人と言ったら!!!各階でええっええっと思いながらも喪失感に満ち満ちた弟の心情と飽きさせないストーリーとメッセージが。
読了日:10月30日 著者:ジェイソン・レナルズ
わらの女 【新版】 (創元推理文庫)わらの女 【新版】 (創元推理文庫)感想
新訳だったので数十年ぶりに再読。今の目、からすると、これはあれを使えば・・・とか、これはないんじゃない?とか、また解説にもある指摘も前々から言われていて。でもです、それらすべてを併せ考えても傑作。戦争で何もかも失い婚期も逃し一生はいつくばって生きていかなければならない瀬戸際の未婚女性ヒルデガルト。結婚募集の魅力的な新聞記事を目にして気難しい年上の大富豪に好かれるために、協力者の執事とともに彼女は挑んでいくのです(ここも好きな場面)。ラストへのなだれ込みが素晴らしく、結末を知っていても、!!の驚愕の連続。
読了日:10月30日 著者:カトリーヌ・アルレー
九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア)九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア)感想
タイトルからばりばり時間を飛び越える青春SF!と思って読み始めたのですが、そういう側面もある、話でした。設定に乗れれば乗れる話。掴みのところは強烈に心惹かれます、こちらは会社員になって数年たってるのにまだ高校生の姿のままの彼女がいたという驚き。そして周りは誰もそれを意外に思っていないという連打の驚きが。ラスト、驚き(らしい)本人のなぜ、が今一つ・・・どうせなら、80代の爺様にしちゃえばよかったのにまで思いました(9度目にならない・・・)主人公の高校生時代があまりにイタく私には理解できず・・・ごめんなさい。
読了日:10月30日 著者:浅倉 秋成
メインテーマは殺人 (創元推理文庫)メインテーマは殺人 (創元推理文庫)感想
期待にたがわず面白かった!ホロヴィッツ作者そのものが作家として小説内に登場し、彼がひょんなことから元刑事ホーソーンの話を書く羽目に。誰もがいけすかないと思うホーソーン(でも推理力抜群)がホームズなら、ホロヴィッツはワトスン。葬儀社に来た富裕な老婦人が自分の葬儀を手配したその日に殺された、一体犯人は誰?という謎を追求していく二人のコンビが辿り着いた先に驚きました、そして最初からもう一度熟読、ああ・・・すべて提示されている・・・ミステリの楽しみもありながら、海外ドラマ好き映画好きも喜ばせるネタ大入りでした。
読了日:10月21日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ
生まれながらの犠牲者 (創元推理文庫)生まれながらの犠牲者 (創元推理文庫)感想
トリック重視!とか、どんでん返しとか、派手!っとか、そういうミステリを期待している人には不向きだと思います。実に地味に捜査は進むのですから。そして私はこのミステリ、大好きです、あちこちに右往左往しながら推理をして、しかも時代が時代なので捜査方法がレトロであり、ある意味のんびりと進んでいきます。が、最初からのある一点の誰しも感じる違和感があり、もしかしたら?と思い、でも動機が全く見えてこないままラストに突入。一人の聡明な13歳の美少女がなぜ初めてのパーティーの後で殺されたのか。犯人の慟哭が忘れられません。
読了日:10月21日 著者:ヒラリー・ウォー
ひみつのしつもん (単行本)ひみつのしつもん (単行本)感想
これで笑える人とはお友達になれそう・・・。でも笑いって人それぞれポイントが違うので、この本で笑えない人というのがいるというのもまったくおかしなことじゃないと思います。私は、というと、最初から最後までくすくすしていました。独特の岸本ワールドが見事に広がっていて、それはちょっとした出来事からの奇想へのいざないであり、ちょっと歪んだモノの見方の面白さであり、それはあるあるというネタもそれだけではなく違った方向にぐわんと曲がる面白さ。そういうのに溢れています。あと、面白さの上にちょっぴり怖さのふりかけも!
読了日:10月18日 著者:岸本 佐知子
この名作がわからないこの名作がわからない
読了日:10月18日 著者:小谷野 敦,小池 昌代
祝祭と予感祝祭と予感感想
蜜蜂と遠雷の本(かなり前)→映画→この本という順番でいきました。蜜蜂と遠雷のスピンオフ作品、短編集です。この話、ピアノコンテストの話で芸術方面の話ですが、一方でライバルでありある種の才能を持った人たちの仲間の物語でもあるので、その仲間がピアノ以外のことをどれだけ知っているか知らないのかというのがこれでわかります。審査員同士の昔の話とか春と修羅のいきさつとか、興味は尽きません。またラストの一篇は、ああ・・・ここから始まったんだ・・・すべてがというところで胸が熱くなりました。
読了日:10月18日 著者:恩田 陸
翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK感想
BOOKMARKの冊子を集めているのですが、もう入手困難で困難で!特に初期の冊子は集めきれなかったので、こうして冊子が一冊の本にまとまってうれしい限り。この本、訳者の人が書いているというのがミソ。訳されているので愛情もあるし内容もそれはそれは把握しているし、さらに、熱、があるのです、これは面白いよ!と人に伝えようとする熱が。まだまだ読んでない本がたくさんあるので、これを道標にまた読んでいきたい!そんな気持ちにさせてくれました。
読了日:10月18日 著者:金原 瑞人,三辺 律子
ミステリー作家の休日 (光文社文庫)ミステリー作家の休日 (光文社文庫)感想
昭和感溢れる一冊。謎、ということだけで見れば、早々にわかってしまう謎なのですが、そこもご愛敬で、昭和のミステリといった趣の本を私は楽しめました。当時の東京の様子、また海外といえどもレトロなパリの様子、など当時の風俗の活写としても読みました。表題作、は9マイルは遠すぎるだなあと思っていたらやっぱり話の中にも出てきました。
読了日:10月18日 著者:小泉 喜美子
【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女感想
良かった。この作者のいつも通り変な小説(褒めてます)。むらさきのスカートの女をひたすら観察する黄色いカーディガンの女。最初読んでいると身なり構わないむらさきの方が異常な人?と思えますが、途中からぐんぐん黄色の方が病んでる?と思えるところが大変面白かったです。執着が非常に激しく、彼女の方に行くので店のガラスの中に突っ込んでいく、公園のベンチの場所取りで人を押しのける、シャンプーセットを家のドアにかけておく・・・ひぃ!まともになったむらさきからラストへの道筋もまた読んでいて面白かったです。ラストの数行の驚き!
読了日:09月11日 著者:今村夏子
サイコセラピスト (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)サイコセラピスト (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
自分自身も心を病んだ事のあるサイコセラピストセオが使命感に燃え、6年間口を閉ざしている殺人犯アリシアという女性を回復させようと診ていく、という話です。セオの一人称の語りが多いのですが、プラスアリシアの日記もあるという事がサスペンスを盛り上げます。ラストに至るあるページで私は驚愕しました、予想をはるかに超えていたので。セオと美しい妻との愛、アリシアと人間性豊かな夫との愛のはぐくみ方、そして愛するが故の懊悩、と二組の夫婦のやり取りが素敵なだけに、こういう事だったのか!という驚きが。時制が意外に鍵でした。
読了日:09月11日 著者:アレックス マイクリーディーズ
あなたを見てます大好きです (ハヤカワ・ミステリ文庫)あなたを見てます大好きです (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
原題はLOOKER。近所の有名女優は三人の可愛い子供、素敵な夫、充実した仕事と家と全てを握っている、かたや『わたし』は長い不妊治療の末・・・。いわゆるストーカーの話ですが、一人称で書かれているので一種独特な彼女の視点もあり、事実のみではなく心の妄想も入り込んできます。教員でもあるのでそこでの出来事、友達とのやり取り、そして白眉は、二度にわたるご近所パーティーです。特に二回目のパーティーが読ませます。ただ、ラストは想像の範囲を越えず、もっとぶっ飛んでも良かったかも。家の中の奇妙な部屋が忘れられません。
読了日:09月08日 著者:ローラ シムズ
わが母なるロージー (文春文庫)わが母なるロージー (文春文庫)感想
中編番外編。今までのルメートル作品を読んでいる人にはちょっぴり物足りなく、でもでもカミーユ警部、そして私のお気に入りのルイが出てくるので、それだけでも嬉しい作品。これで終わりらしいです・・・。パリの爆破事件から犯人が名乗り出て、まだ爆発物があるので収監されている母親と自分を解放するのとお金要求をする、というところから始まります。相変わらず読ませますが、いかんせん短い・・・スピンオフがもっとあったらいいのに。(初版限定付録で一枚紙が入っていて、それぞれの作品でどこで驚けというページが記載されています、貴重)
読了日:09月07日 著者:ピエール ルメートル
休日はコーヒーショップで謎解きを (創元推理文庫)休日はコーヒーショップで謎解きを (創元推理文庫)感想
前の本も楽しく読みましたが、今回はシャンクス物ではなく、独立した短編集でした。それぞれに作者のあとがきがあると言うのが何とも魅力的。最後の中編赤い封筒は、ビート詩人の探偵とアイダホから出てきた探偵助手のような男性との組み合わせの妙が面白く、よくわからない詩と共に楽しく読み終わりました。一番好きだったのは、実在していた孤児列車をベースにしたばらばらになった三兄弟のそれぞれの家庭から現在に至る話の列車の通り道、当時の人種差別問題を子供時代の自分を思い出している家族の物語消防士を撃つ、共犯のラストのにんまり感。
読了日:09月07日 著者:ロバート・ロプレスティ
ころべばいいのにころべばいいのに感想
深い深い話。心痛めた大人にこそ読んで欲しいと思った絵本。可愛い絵が続きます、そこにすら心癒されますが・・・嫌なことがあった、人にされた時にその相手に対して、(ころべばいいのに)ぐらいは誰しも思う事だと思います。この本、その先を描いています、嫌なことがあった時にどうすればいいのか、逃げ場をどうやって作るのか、どういう楽しい事が有効か。そして更に。それだけだったら単なる指南書であるけれど、『どうやってもどうしようもない時ってあるよね、準備も大事』というのがわかってくれているのです、そこが大人の絵本たる所以。
読了日:09月07日 著者:ヨシタケシンスケ
まだすべてを忘れたわけではない (講談社文庫)まだすべてを忘れたわけではない (講談社文庫)感想
レイプされた少女の記憶消去(トラウマにさせないために)という特異な設定の小説でした。レイプの話で辛い部分が読んでいて多くありました。記憶消去、そしてそれを取り戻すための治療と目まぐるしく状況は変わります。語り手が最初誰だかわからないのですが比較的早い段階で想像がつきます。そしてこの語り手の特権階級的な物言いにむかっとし、後半に至って倫理面での逸脱とおおいに読み手の心かき乱されますが、これも作者の狙いなのでしょう。普通の人々の秘密が暴かれていって・・・というところは読ませるのですが・・・
読了日:09月07日 著者:ウェンディ・ウォーカー
罪の轍罪の轍感想
素晴らしかったです。実際の吉展ちゃん誘拐事件をベースにその時代が描かれています。昭和38年って昔だけど異常に昔ではないのに、ここに描かれている日本は現代の日本から見ると異世界のようです。ネットがないのは当たり前ですが、電話すらまだひけてない家が多い、飛行機が電車の10倍の値段がする、旅に時間がかかる、そしてオリンピックの前年で沸き立っている日本・・・刑事達の事件に対する熱い執念と悲惨な家庭環境で育ち孤独だった青年との攻防が読ませます。登場人物全員が目の前に見えてきます。是非シリーズ化してほしいです。
読了日:08月29日 著者:奥田 英朗
クジラアタマの王様クジラアタマの王様感想
おおいに楽しみました。絵が最初から組み込まれています。最初はわからなくて、何?何?と思っていましたが、途中からあああーそういうこと!!とわかりもう一度最初の絵から見直しました。加えてタイトルも何?と思っていたら、最後の方でなるほど!!情報がないまま読むのが面白いと思います。サラリーマンの岸、議員の池野内、芸能人のヒジリがそれぞれいい味を出しています。物語は単純な骨格ですが、さすが伊坂幸太郎、一種のファンタジーっぽいところでも輝きを放っています。あちらとこちらを行ったり来たりする感じが私は好きでした。
読了日:08月29日 著者:伊坂 幸太郎
ケイトが恐れるすべて (創元推理文庫)ケイトが恐れるすべて (創元推理文庫)感想
とてもとてもとても良かった!そしてミランダを殺すも良かったけど、これまた素晴らしいミステリでした。まず何と言っても、主人公のケイトがずうっと神経不安症のような状態で、何かに怯えていて自分の事すら信じられない状況で超ネガティブ思考でというところにミステリの『揺らぎ』を感じました。過去のトラウマから再起すべく又従兄のコービンとイギリスからアメリカに部屋を交換して来たのに、来た早々隣の女性が殺されていた。途中コービンの学生時代が描かれ、ええっと驚き、それを乗り越え更に驚きが大きくなり、とラストまで一直線でした。
読了日:08月26日 著者:ピーター・スワンソン
じゃじゃ馬にさせといてじゃじゃ馬にさせといて感想
彼女のエッセイの文章が好きで、いつも大喜びで読んでいます。いい意味でオタクなのです、一つのことを語らせたら止まらない、そしてたとえこちらがその映画とか本を知らなくても楽しい&読んでみたい見てみたいという気持ちにさせてくれる書きっぷりが素敵。好きな俳優とかもかぶっているところは、そうそうそうそう!と握手したい気持ちでした(キリアン・マーフィーですね)。一方でフェミニズム運動、現在のアメリカ事情なども入っていて、どこもかしこも魅力的でした。
読了日:08月26日 著者:松田 青子
掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集感想
今年読んだ海外小説のベストに絶対に入る本。素晴らしかったです。この本が出た経緯と彼女の実際の経歴いうのもまたドラマチックでそこからして小説のよう。短編が連なっていますが、全体に一編一編が自分のことを語っているようでもあり、人称、男女を変えてまた違う話が来たり繋がったり離れたりと何しろ読ませます。さあ土曜日だの刑務所の中の出来事のラストの驚き、表題作が一見実体験を語っているようでこれまたラスト数行の力強さ、妹の死に行く病の話を語りながらもかつての夫をも入れ込み語るソーロングの面白さ、と興奮状態で読みました。
読了日:08月26日 著者:ルシア・ベルリン
サイコパスの手帖サイコパスの手帖感想
この二人の話面白い!!特に平山さんの問題投げかけのような部分にこうじゃないかと春日先生が答える場面が面白いと思いました。特にハンニバル、ファーゴ、シャイニングと、読み解きが二人の対談(春日武彦と平山夢明)で始まると、こういう見方があったのか!とか(特に平山さんと同じようにシャイニングのお父さんの造型に驚きましたた)目からうろこでした。また動物の多頭飼いもかねてから不思議でしたが、こういうことだったのか!と(真偽はわかりませんが)。平山さんの周りに奇妙な出来事が多いのは、引き付けてるのかなあ・・・

読了日:08月26日 著者:春日 武彦,平山 夢明
女たちのテロル女たちのテロル感想
ぼくはイエローで・・・の作者の別作品を読んでみたいと思い手に取りました。これは三人の女性の物語がコンパクトにそして少々目まぐるしく語られて行きます。大逆事件の金子文子、アイルランドの独立運動のマーガレット・スキダニー、女性参政権を主張するエミリー・デイヴィッドソン、と勇ましい女性が出てきます。それぞれの章は短く、最後の一行が次の一行に繋がっていく・・・という大変面白い作りです、そして読みやすい。金子文子が特に私は気になりました、この時代にこれって!すごいバイタリティーに打ちのめされました。
読了日:08月26日 著者:ブレイディ みかこ
回復する人間 (エクス・リブリス)回復する人間 (エクス・リブリス)感想
大好きな短編集。死、喪失、痛み、過去への後悔から人間がどこに行くのか、そこからどういう心象風景が展開するのか。そのあたりがとても読ませました。好きなのは、姉との確執のあった妹の心の軌跡を追う、呼びかけのあなたが印象的な表題作、不思議な恋愛関係のエウロパ、あらゆる時に思い浮かべるる心に持っている街フンザ、そして私が一番好きなのは、交通事故で手を傷めてしまい立ち直れない女性の過去から現在までを描く火とかげでした。読んでいるとどの作品も自然に心の中にすっと入り、あたかも追体験しているような心持ちになりました。
読了日:07月31日 著者:ハン・ガン
カリ・モーラ (新潮文庫)カリ・モーラ (新潮文庫)感想
読んでいない方がまだ多いと思い、ネタバレ仕様にします。読ませるのです、カリ・モーラ。壮絶な彼女の生い立ち、そしてハリスらしい残虐な臓器売買の男の造型とか(その途中にさらっと出てくる食人鬼とか)も興味深いし。ただ・・・私は、カリ・モーラがあと一歩魅力的な人物だったら、と思いました。惜しいのです、彼女の背景は書かれているのだから。アントニオとの交流があと少し描かれていたら、とか、ラストに至るところで残りページ数がわずかなのにこれ?と思ったら案の定ぱーんと終わってしまうとか。犯罪小説としては読ませるのですが。
読了日:07月31日 著者:トマス ハリス
三体三体感想
正直わかるかどうかすごく不安でした、本格SFと聞いて。そして実際わからない部分もたくさんありました、言葉とかSF用語で。でもでも、それを補って余りある面白さもまたありました。最初まさか文化大革命から始まるとは・・・そして一転して、ゲームの世界が絢爛豪華に繰り広げられ、そこが非常に私は楽しくわくわくしながら読みました、でもこのゲームって何だろう?とずうっと思いつつも。最後の方で、仰天、ええっこういうこと???ストーリーが進んでいくたびに謎がありどきどき感が半端なかったです。次巻が待たれます。
読了日:07月31日 著者:劉 慈欣
続 横道世之介続 横道世之介感想
前作が悶絶するくらいに良くしかもあれ(←ネタバレ)なので、どうやって続なのかとそこも興味津々でした。杞憂。もう最高に良かったし最高の青春小説でした。ちなみにここから読んでも全く大丈夫だと思います、途中で驚愕するとは思いますが。大学を出たものの数十社の会社選考に落ちパチンコでぱっとしない日々を送っている世之介。周りが証券会社に入った親友コモロン、床屋のオヤジ、浜ちゃん、そして奇妙な出会いの桜子さんとその息子、隼人、と多彩であり世之介の善良さに皆が引き寄せられていくのです。近未来も描かれていてそこもまた涙!
読了日:07月18日 著者:吉田 修一
しあわせしりとりしあわせしりとり感想
日曜の午後にゆったりお茶を飲みながら、のんびーり読んで楽しむ感じのエッセイ、絵も途中ついてます。そうだなあ~と思ったり、ここは私と感じ方が違うなあ~と思ったり、くすっと笑ったり(食べ物の脱水に笑った)。でも決して明るい話だけではなく、(嫌なことがあったときに、甘いものとお酒って一緒に頼んでいいんだ!)と目からうろこでした(そこ?)
読了日:07月18日 著者:益田ミリ
夢見る帝国図書館夢見る帝国図書館感想
喜和子さん!作家になる前の主人公が風変わりな老女喜和子さんに上野の図書館の前で偶然出会い親交を深めていくというところから物語部分は始まります。間に図書館の話が挟まれていて、どちらも(物語部分も図書館部分も)とても面白かったです。喜和子さんの佇まいがいいし、彼女の人生の謎も途中で開いていきます。ラスト涙。図書館の歴史の方も固い話と思いきや、最初に日本に図書館を導入した福沢諭吉の話、永井荷風のお父さん(!)の話、情熱を図書館に注ぎ込んでいるのにいつも戦争でお金を持って行かれる歴代の図書館長の話と読ませます。
読了日:07月18日 著者:中島 京子
沈黙の少女 (海外文庫)沈黙の少女 (海外文庫)感想
同作者の謝罪代行社と同じように人称が変わっていき、わたし、きみ、彼ら、の三つの視点の人称で語られていくミステリ。わたし、の部分が、緻密に計算され用意された復讐であり演技であり、このあたりがはらはらしながら読んでいました。きみとわたしの繋がりは、ほどなくわかり(ああ・・・こういうことか)と。ここまでは普通のサイコ的なミステリなのですが、最後まで読むと、読み直してもまだ謎は残りました。ラストもまたええっの展開。とても面白く読んだのですが。巻末、ネタバレ警告の後でいいので、徹底解説をしていただきたかったです。
読了日:07月18日 著者:ゾラン・ドヴェンカー
彼女たちの場合は彼女たちの場合は感想
従姉妹同士のアメリカノープラン旅行。ロードムービーを見ているようで楽しめました。逸佳が17歳、礼那が14歳と未成年でしかも女の子二人なので親目線だと非常に不安で危険だと思います、現実問題としては(事実危険な目に何度か合っているし)。途中までは親のクレジットカード払いでホテルなど泊まっていましたが、途中から止められてここからの方が話が面白いと思いました。行く先々で多くの人と出会い、二人が協力してアメリカの土地土地を巡っていく・・・犬を連れたお婆さんとの出会いが後半とても重要になってきます。
読了日:06月30日 著者:江國 香織
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルーぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー感想
とても良かった!!イギリス在住の母と息子のやり取りがなんとも心に響きます。元底辺中学校に入学した『ぼく』が出会ったのは、多様な人種、貧富の差歴然のクラスだった・・・『ぼく』自身も英語で話すものの外見から差別に合うことも。格差社会がくっきりと浮かび上がってきます。ピュアな『ぼく』の物の見方、様々な友達との交流が鮮やかに描かれ(特にダニエルとティム!)、それに対する母ちゃんの一言一言が胸に刺さります。一方で真面目な話だけではなく、クリスマスに自虐ラップをする問題児とか、学校のクラブ活動などの話も楽しみました。
読了日:06月30日 著者:ブレイディ みかこ
国語教師国語教師感想
前半の方であまりの男女の感覚のずれ(男女のテンションの違いと男女の視点の違い)に、うわーと一旦本を置き・・・そこから復帰してまた読み直してみたら!読ませました、最後まで。かつて同居していた男女が16年ぶりに国語教師と作家という立場で再会する。4つの部分があり、特にこの中で国語教師の創作の若い男性の監禁物語が非常に不気味で気味悪い物でした、しかも物語が進むにつれてある部分がそこにリンクしていくというマジックが。巧みです、話の持って行き方が。齟齬だらけの二人の話がまとまっていく快感が。ラストぐっときました。
読了日:06月29日 著者:ユーディト・W・タシュラー
無実はさいなむ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)無実はさいなむ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
NHKBS放映で今やっているので再読。このミステリ、昔から言いたいことが沢山あり・・・ツッコミどころ満載なのです。が。が!設定がまず非常に面白く(お屋敷に生れも育ちも違う養子が5人!!って!)子供たちの個性がそれぞれ違って、しかも『善意』で引き取った当主の奥さんが・・・という回想部分も読ませます。加えて、既に死亡した犯人が当時主張したことが本当だったとわざわざ言いに来るキャルガリなる男がいて、長女の車椅子の旦那様、と多彩な群像劇。だからツッコミどころはあるけれど、愛すべき作品でもあります、私にとっては。
読了日:06月29日 著者:アガサ クリスティー
検察側の証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)検察側の証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
NHKBSが連続のドラマで今放映しているので、また読んでみました。もう欠点ないでしょう、というくらいの出来の戯曲。二転三転がこれほど鮮やかでクリアーなものってなかなか出会えないと再確認。全てがわかっていても面白いという古典中の古典。
読了日:06月29日 著者:アガサ・クリスティー
いくつになっても トシヨリ生活の愉しみいくつになっても トシヨリ生活の愉しみ感想
年末以外に中野翠さんの本が読めると得した気分、ラッキー!副タイトルにトシヨリ生活の愉しみとありますが、年老いても(というか老いている感じがしない!)いつもの作者であって、映画の話とかファッションの話とか読んでいて楽しかったです。おすすめ老人映画も八月の鯨、ストレイト・ストーリー、手紙は覚えている、小津映画と多彩でありこのあたりも読んでいてわくわくしました。ユニクロと無印の服に関する感想が私と同じで、そうなのです、日々とても助かるんですが、が。あと手作り手芸の話、大好きなのでそこも嬉しく読みました。
読了日:06月29日 著者:中野 翠
夫の骨 (祥伝社文庫)夫の骨 (祥伝社文庫)感想
面白かったです。9編入っていて全て家族の揺らぎ曖昧さ不安感を描いている小説。全てが予想を裏切られます、確実に。最初の方はありがちな普通の家庭の話から始まり、そこからなんと!!という数回にわたる驚きの展開が見事です。俗にいうイヤミスの範疇とは思いますが、中には明るいラストの絵馬の赦しなどもラスト一文がきいてます。鼠の家も暗い話ですがラストに光明が。表題作のラスト2ページの驚きで茫然とし(全て予想は違いました)、かけがえのないあなたのラストでDNAキットの意味がああっとわかりました、そういうことだったのかと。
読了日:06月22日 著者:矢樹純
冥界からの電話冥界からの電話感想
愛子先生の小説もエッセイも大好きで(なので、ここに出てくる北海道の怪異の話も知ってます)だからこそ、残念。死後の世界があるかないか、霊がいるかいないかの前に、死んだ少女の電話番号とか、少女の住所とか実在したのかとか、事故の事実確認とか、少女の兄はいったい何者なのかとか。もうそのあたりをとことん追及していただきたかったです。高林先生に対してもすみません、好感は持てません、なんであんなに胸の事を少女に何度も聞く?ここだけでかなり私にはなんだかなあの人間でした。ただあったことをありのままに書いたのでしょうが。
読了日:06月19日 著者:佐藤 愛子
三つ編み三つ編み感想
声高にジェンダー論とかフェミニズムとか叫ばれている小説は苦手なので、どうかなあと恐る恐る・・・ああっすごくいい小説!!インド、イタリア、カナダと違う場所で違う環境で生きていく三人の女性の物語です。三人の中でインドのスミタの話がやっぱり強烈で、現代?これは?と何度も何度も読み返しました、それほどひどい。そもそもどの話も話そのものが面白く、スミタの脱出劇、ジュリアの恋物語から会社の事へ、サラの焦りと全てに映像が浮かびます。また男性VS女性という構図ではないのも好感度大。ミステリのように最後三人の結びつきが!
読了日:06月18日 著者:レティシア コロンバニ
生物学探偵セオ・クレイ: 森の捕食者 (ハヤカワ・ミステリ文庫)生物学探偵セオ・クレイ: 森の捕食者 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
ううむ・・・変人探偵というか、もうこれは、人間関係を構築できる人ではないというレベルの変人(でも恋はしてる!なぜ!)のセオ・クレイ。生物情報工学の部分が好きな人にはたまらないと思いました。しかし独自調査すればするほど自分の首を絞めるということになってくるのが・・・後半、かなり冒険活劇チックかなあ。
読了日:06月16日 著者:アンドリュー メイン
ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3ゆるキャラの恐怖 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活3感想
大好きなシリーズ、クワコー!待ってました!大学の先生なのに、クワコーと生徒に言われるくらいに馬鹿にされ、そしてせこくてお金を常に使わないようにしていて本当に貧乏で、でもなんだか憎めなくて。今回はゆるキャラまでになってしまったクワコー。一緒にいる女子学生のネット語満載の浮ついた会話も笑いました(ホームレス学生も懐かしい!)。後半の話は、教育勅語が出てきてこれまたおバカな男子学生が色々指摘するのですが(それもひどい言葉で)ここ、納得できたのです、彼が言う事がいちいち。にしてもセミ!きのこ!要注意!
読了日:06月15日 著者:奥泉 光
たのしい暮しの断片たのしい暮しの断片感想
鋭い切り口の金井美恵子さんのエッセイというより、のんびりと暮らしの事、昔の事を語っている本でとても好感が持てました。本と映画に当然ながら詳しいので、長靴一つとってもそこから、映画のヘッドライト、ハックルべりフィンの冒険、そしてバードウォッチングまでの流れる文章を楽しみました。また鏡花随筆集など本への言及もありそこもまた読みどころ。幼い日々の出来事を綴っている竹とんぼとか雪だるまの話が澁澤龍彦の狐のだんぶくろ(こちらは男の子の幼い日々)などを彷彿とさせました。
読了日:06月15日 著者:金井 美恵子
赤い衝動 (集英社文庫)赤い衝動 (集英社文庫)感想
読みましたが・・・
読了日:06月15日 著者:サンドラ・ブラウン
十日間の不思議 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-1)十日間の不思議 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-1)感想
これまた再読。ライツヴィルもの三作目なのですがとりあえずこれを。これも大好きな話です。最初記憶喪失の男性の話から始まるので、一種サスペンスっぽい風情もありますが、そこからエラリイがまたしてもライツヴィルの町に!年の離れた夫のいる女性の境遇、そこにいる息子の境遇、息子と対立している叔父、そしてすべてを取り仕切っている人格者の父親と、9日目まですこすこ読んでいて、エラリイが謎を解き明かしてやれやれと思い、10日目になると!この衝撃、結構私は大きかったです。犯人がわかってから全部読み直すと巧妙な人物描写が!
読了日:06月15日 著者:エラリイ・クイーン
災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
数年前に旧訳で再読して今回は新訳で再読。驚きました!解説にもあるようにハーマイオニーの名前変更!まずここに、えっと驚きました。非常に読みやすくなり、ライツヴィルもの大好きなので、この濃密な街の雰囲気とか改めて読んでも懐かしかったです。町の名家と言われている一つの家族の物語ですが、若きエラリイ・クイーンの行動が若いなあと思わせるところが多々あってそこも読ませます。婚約者が失踪したという衝撃の過去の出来事から始まり、途中の話の核となる手紙、姉妹それぞれの思い、エラリイの立ち位置と、ラストまで一気に読ませます。
読了日:06月15日 著者:エラリイ・クイーン
小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集感想
桜庭一樹の15年の書評が集結。特に海外文学に見るところがあり、わくわくしました。クレーン男、死せる少女たちの家、ある秘密、燃えるスカートの少女、セールスマンの死、ゴドーを待ちながら、オーランドー、ゴドーを待ちながら・・・と魅力的な本と言ったら!独特の彼女の語り口で本が語られていき、あらすじを知るというよりは本の輪郭を知るといった感じのところも気に入りました。再読も含め、たくさん本を読みたくさせてくれる書評。ラストのラストの現代の作家たち(道尾秀介、冲方丁、綿矢りさ、辻村深月)との対談も読ませます。
読了日:05月28日 著者:桜庭 一樹
ニューヨークの魔法のかかり方 (文春文庫)ニューヨークの魔法のかかり方 (文春文庫)感想
大好きなシリーズになりました。(逆から行ってます、二冊目。)ニューヨークのさりげない日常を作者の目線で切り取っていて、人と出会っていく楽しさを語ってくれていてそこが好感が持てます。明るい事ばかりではなく、この巻ではバスに乗っていてとんでもないところで降りる羽目になった顛末が書かれていて、その怖さと心細さが胸にしみました、わかる!すごくわかる!誰かとコミュニケーションをとる事、そして彼らの人生と一時でも交わる事の大切さのようなものを教えてもらった気がします。虹の風船の話も素敵、写真と共に堪能しました。
読了日:05月28日 著者:岡田 光世
ミステリー・カット版 カラマーゾフの兄弟ミステリー・カット版 カラマーゾフの兄弟感想
本家のカラマーゾフの兄弟は読みました。ミステリー部分に焦点を当てた本作、よく出来ていると思います。まず何より読みやすいし(登場人物の名前で挫折する人が多いのでそこがわかりやすい、ミステリー以外の余計なことが極力少ない)最後までさくっと読めると思います。アリョーシャの善良さ、彼の二人の兄の性格と行動、そして何より強烈な父親の姿、絡み合う女性たち・・・そして殺人事件と犯人探し、裁判と小気味よく進んでいきます。読まないより読んだ方がずうっといいので、これで道しるべをつけてもらい、本家に行くと素晴らしいかなあ!
読了日:05月28日 著者:ドストエフスキー
むかしむかしあるところに、死体がありました。むかしむかしあるところに、死体がありました。感想
この可愛らしい表紙と昔話、というところで侮られそうですが、どうしてどうして。きちんとした本格ミステリだと思いました。それも多彩な種類で、倒叙あり、密室殺人あり、ダイイングメッセージあり・・・。誰でも知っている昔話という枠をもとにその状況を生かして上手にミステリに絡めています。鬼ヶ島はそして誰もいなくなったを思うものの、ちょっと名前が混乱しました、鬼・だから。私が一番好きだったのは、鶴の倒叙がえし、思いもよらない展開で、最初から読んで最後まで行くと、ああっと必ずまた最初から読んで・・・また・・・
読了日:05月28日 著者:青柳 碧人
ニューヨークの魔法は終わらない (文春文庫)ニューヨークの魔法は終わらない (文春文庫)感想
面白い!今までのシリーズを読んでこなかった自分を罵倒したいです。ニューヨーク在住者のエッセイであり、これがシリーズラストで、どこから読んでも大丈夫らしいのでここから思い切って読んでみました。結果全部読みたい!読み倒したい!という気持ちになりました。フラットな目でニューヨークで出会った人たちと気さくに話し、心を通わせる作者。見ている眼がいいし、スタンスが非常に好感が持てます。留学時代の話に笑ったと思ったら、杉原千畝が出てくる章では泣けたり感情を揺さぶられました。そしてどんな人にも人生があるという事を再認識。
読了日:05月14日 著者:岡田 光世
偶然仕掛け人偶然仕掛け人感想
へんてこな話!!と思いつつとても楽しく読み終わりました。SFファンタジーの要素は多いのですがそれだけではない小説。この世の中に起こることは偶然仕掛け人という指令を受けた人たちがいてその人たちが『あたかも偶然のように出来事を起こし、人と人が出会ったりある事象の元になったりしている』という設定がまず面白いと思いました。偶然仕掛け人の三人ガイ・エミリー・エリックの話(前職の話も含め)もまた読ませ、特にエミリーの恋心がいじらしく・・・と思っていたら後半よもやの展開が!非常に私は好きなラストで点火者ってこういう事!
読了日:05月12日 著者:ヨアブ・ブルーム
異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫)感想
昔読んだ時は、母親の死んだ日に無軌道な生活を変わりなくしている、というところにしか目が行きませんでした。今読むと、最初の母の葬儀部分から非常に多くの人が出ていて印象深く一つ一つが映像に残ります。彼が決してコミュニケーション不全の男性でもなく、異性とも付き合い友達もそれなりにいて普通に暮らしているということでした。また後半裁判場面になりますが、そこでの一言も非常に文学で有名な一言で、改めて文字の力を感じました。でもそれよりなにより!!ラストの解説の最後の文章で驚きまくり、ええっ!!思わず読み直しました。
読了日:05月11日 著者:カミュ
座席ナンバー7Aの恐怖座席ナンバー7Aの恐怖感想
一気に読みましたが。
読了日:05月11日 著者:セバスチャン フィツェック
トリック (新潮クレスト・ブックス)トリック (新潮クレスト・ブックス)感想
素晴らしい本。とても良かったです。過去と現在の二人の少年の話もまた交錯していく物語。読みやすく、ホロコーストも出てくる話なのにそこここに知的ユーモアが溢れていて、これがデビュー長編というのが信じられません。マジシャンがメインになっているので、目くらまし・奇跡という魅力的なアイテムが溢れています。現代の夢見がちなマックスがけなげで何と言っても可愛らしく、彼の探し出した老マジシャンがとんでもないことをやってのけたあとに・・・ちょっとした良質の推理小説の趣もあります。ある一点で、え!ラストシーンも感動的でした。
読了日:05月07日 著者:エマヌエル ベルクマン
トラウマ文学館 (ちくま文庫)トラウマ文学館 (ちくま文庫)感想
漫画、有名作品の一部、作品そのものまでバラエティ豊かな一冊で楽しめました。特に最初の漫画は読んだのを忘れていましたが、読んだわと思い出し、今でも私は出かける前にガス栓を非常に気にする人間です。ディックのなりかわりは既読ですが何度読んでもああっとラスト思います、話のもっていき方が非常に巧い。これまた既読ですが走る取的は、ただお相撲さんに追いかけられる話、なのにこれだけ怖いとは一体?と苦笑しながら読んでいました。不条理なところが怖いのかなあ。田舎の善人もとても気に入りました、ラストのどん底感も含めて。
読了日:04月25日 著者:直野 祥子,原 民喜,李 清俊,フィリック・K・ディック,筒井 康隆,大江 健三郎,深沢 七郎,フラナリー・オコナー,ドストエフスキー,白土 三平,夏目 漱石,ソルジェニーツィン
シーソーモンスター (単行本)シーソーモンスター (単行本)感想
合わなかったかなあ。申し訳ないけれど。会話は相変わらず抜群に巧いし、軽妙に進む文章もお見事としか言いようがありません。けれど、最初の方の話シーソーモンスターは、一見姑対嫁の話と思いきや・・・スパイゲームのような展開で途中まで読ませるのに、途中でわかるのが早いのと想像の範囲でややトーンダウン。でも私が合わないと思ったのは後半のスピンモンスター。舞台が2050年という近未来の話の日本が舞台で、次々に新しいシステムとか物が披露され・・・記憶の改竄の所だけは非常に面白く読みました、ごめんなさい。
読了日:04月25日 著者:伊坂 幸太郎
心霊電流 下心霊電流 下感想
日常から一転、牧師の妻子が不慮の交通事故で亡くなったというのがあり、そこから年代が飛び、幼かったジェイミーが大きくなっています。牧師の語る神論も非常にわかり、後半にジェイミーをあれだけ可愛がってくれた姉が悲惨な死を遂げたという話の中でも、ジェイミーの兄がやはり同じような神論を言うのです。神とは何か。本当に見てくれているのか。だったらなぜあのような素晴らしい人間を殺したのか。後半牧師がやっていることがペテンなのかそれとも超越した次元の何なのか。このあたりで強烈な展開がありました。扉の向こうのマザー・・・・
読了日:04月25日 著者:スティーヴン キング
心霊電流 上心霊電流 上感想
ホラーと言っても血が何とかとか首が飛ぶとかそういうホラーではなく、全く別の次元の異形のものに対するホラーととらえました、最後まで読んで。上巻はある家族の物語とも言っていいでしょう。語り手のジェイミー・モートンが一人の牧師ジェイコブ師と知り合いになり、彼の電気への強い執着を見る・・・これが全ての始まりになります。ジェイミーの家のお姉さんが優しく弟たちを見てくれる様子、両親が子供達を必死に育てている感じが伝わってきて、ここを読むだけでも価値がありました。幼いジェイミーがいた良き家族のありように心が洗われます。
読了日:04月25日 著者:スティーヴン キング
空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)感想
読みながら、性善説というのを思いました。生まれつき悪人はいないのか、ということも。環境が劣悪の子供達がほとんどであり、何らかの罪を犯しここに入所し、少年刑務所という特異な場所で言葉による導きがあり皆が詩を作る・・・少年達のの素朴なストレートな詩とそれに対する温かい仲間からの励ましの言葉にぐっときました。ここにもあるように心で共鳴しているのですね。特にお母さんへの一つ一つの言葉が宝物のようでした。言葉でこんなことができるんだなあ・・・ただ、外に出てから厳しい世界が待っていると思うとそこもまた胸が詰まります。
読了日:04月25日 著者:
沼の王の娘 (ハーパーBOOKS)沼の王の娘 (ハーパーBOOKS)感想
センセーショナルな題材。少女を拉致監禁して子供まで産ませた犯人がいる、ある時に発見され見つかった、犯人は捕まった・・・拉致監禁された少女の側の物語ではなく、生まれた子供側で彼女が育って母となり、刑務所にいるはずの父親の犯人が脱走、から始まります。娘、なので拉致監禁された母とはまた違う視点で、奇妙な父への愛も一緒に暮らす内にあるのです。過去と現在が交錯し、どういう育ち方をしたのか、母の気持ちは幼い頃はわからないがどうだったのか。同系列で、さよならシリアルキラーを思い出し、また映画のルームも思い出しました。
読了日:04月25日 著者:カレン ディオンヌ
ジニのパズル (講談社文庫)ジニのパズル (講談社文庫)感想
とても面白くそして私の琴線に触れた一冊でした。また知らないこともとても多かったと私は思いました。青春の懊悩、反逆したい気持ち、苛立ち、居場所探し、などの個人的な中学生ジニの心も描かれていますが、その根底には国家があることが普通の青春物とは一味も二味も違っているのだと思います。在日ということで、日本語がわからないまま朝鮮学校に行きそこでも疎外感を味わい、そしてテポドンが発射される・・・テンポよく進んでいく話であり学校の話がメインなのでとても読みやすいのですが、多くの深いものを孕んでいる一冊と感じました。
読了日:03月28日 著者:崔 実
私のイサベル (ハヤカワ・ミステリ)私のイサベル (ハヤカワ・ミステリ)感想
カウンセラーをしているステラの目の前に、赤ちゃんの時に誘拐された我が子(と母親は信じている)イサベルが大学生になってやってきた、ところから物語は始まります。面白いのは、読んでいてこちらの心も(本当?)(ストーカー?)とアップダウンがあり話に翻弄されるところです。ステラに対しての感情が目まぐるしく錯綜するのです。イサベルの最初の方で言った言葉「彼女が憎い」というのは何かという謎も加わります。優しい現夫、イサベルの母、イサベルの恋人も出てきて、後半であ!と。ただ私にはいくつか疑問がまだ残っていて・・・
読了日:03月27日 著者:エリーサベト・ノウレベック
悪意悪意感想
映画化されるというので納得、映像がどれも浮かびます。最初のトムが非常に面白かったです、死んだはずの息子トムからの電話がかかってくるというスリリングな出だしからラストの明るいのにどん底というねじれた顛末まで一気に読みました。小品ですがラストのごくごく短い一編も気に入りました。レインは奇妙な依頼を残し死んだ作家と妻を失った翻訳家との顛末。親愛なるアグネスへは書簡体が中心で某作品を彷彿とし二人の女性のかかわり方を年代を追って描いています。抒情的なサマリアのタンポポ、最後抒情では終わらないものが待ち受けて・・・
読了日:03月24日 著者:ホーカン・ネッセル
林忠彦 昭和を駆け抜ける林忠彦 昭和を駆け抜ける感想
かの有名な太宰治の一枚を撮った写真家林忠彦。作家系の写真はよく見ていました。人物写真も沢山あり、川端の眼光の鋭さ、三島由紀夫の(撮りづらかったと言っている)一枚、吉行淳之介のイケメンっぷりが光る一枚と多彩です。また表紙にもなっている戦前戦後の日本を撮った写真を非常に感慨深く見ました。銀座の街にバラック?屋台?そしてその遠景に服部時計店!(和光)が!遠くに今もある書店教文館が!!あったもの、なかったものを比べていくと複雑な思いが錯綜します。戦災孤児たち、生き延びてなんとか大人になっているといいなあ。
読了日:03月24日 著者:
府中三億円事件を計画・実行したのは私です。府中三億円事件を計画・実行したのは私です。感想
タイトルも含めセンセーショナルな売り文句、この作者白田が本当に三億円事件の犯人だと言っているわけだから。彼が年齢を経て息子さんの手を借りて告白しているという形をとっているので『素人さんが書いたもの』というバイアスがかかります。当時の学生運動、セクト間の争い、米軍基地との関わり、が描かれ、何より大学になじめない白田が目的もなく生きていくのに罪悪感を感じていた事が引き金になっているというのが恋愛模様と友情と絡めて巧みに描かれています。あっという間に読めます。ラスト一番知りたかった事はなかったけどそれは続編か?
読了日:03月24日 著者:白田
拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)感想
ポリーー!もう最高に可愛いし賢いし!出所した父親が刑務所のドンの逆鱗に触れ、出所後に彼の家族全員皆殺し命令を出され、元妻はもうすでに殺された、まだ殺されていない残った娘との逃避行をする・・・というミステリ。視点がくるくる変わってもさすがにこの作者ドラマ作りをしているだけあって勘所おさえていてわかりやすかったです。最初の内ぎくしゃくしていた父娘が徐々に打ち解けていって娘のポリーが体を鍛えて行って立派な(?)犯罪者の道に行こうとしているという暗黒の成長ミステリ、と思いきや、ラスト泣けました。ポリーと熊に拍手!
読了日:03月16日 著者:ジョーダン・ハーパー
ブルーバード、ブルーバード (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)ブルーバード、ブルーバード (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
現代のアメリカの分断を象徴するようなミステリ。主人公はテキサスレンジャーの黒人のダレンではあるのですが、一方でテキサスの小さな田舎町という場所そのものもまた主人公であると感じました。白人と黒人の殺人があった別々に、という事件で犯人探しから始まるのですが、そこには人々の過去の物語、町の物語、人種が絡み合う人間模様、があるのです。一つ一つのエピソードが非常に緻密に描きこまれていました。過去が現在に重なりある人の話が別の人の話に重なり・・・。人それぞれの好みだとは思いますが、やや盛り込みすぎかなあと思いました。
読了日:03月16日 著者:アッティカ ロック,Attica Locke
ロウソクのために一シリングを (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)ロウソクのために一シリングを (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
解説宮部みゆき。そして名作『時の娘』のグランド警部が生き生きと(しかしのんびりと)今回は動いています。古き良き時代のミステリだと思いました。映画女優のクリスティーン・クレイの別荘に居候させてもらっていた気の弱い若者ティンダルが彼女の溺死体を発見して犯人に疑われるところから始まりますが、容疑者は他にも映画関係者から夫までひきもきりません。エリカちゃんが重要なコート探しに大活躍で、とても可愛らしくそこがかえました。犯人が最後誰でもいいと思ったのはいけないかしらね・・・全体にのほほんゆったり。
読了日:03月16日 著者:ジョセフィン テイ
あるかしら書店あるかしら書店感想
子供向けと侮っていてごめんなさいっ!!すっごく良かったです、絵だけじゃなくて言葉も面白いし、奇想天外な本に関するあれこれがもう絶品でした。思い付きではない設定が綿密でよく考えられていました。この中で、お墓の中に本を入れておくっていうアイディアいいなあ・・・と真面目に思いました。そこから残った人が故人の本を取り出し、また新しい本を入れていくって想像しただけでもほっこりします。(ただし、本の趣味が合う人にしてほしい・・・)
読了日:03月15日 著者:ヨシタケ シンスケ
浅田家浅田家感想
読んだのにさっぱり忘れていた私ってなんだろう???しかもコスプレというのさえ忘れていて・・・新鮮だったってなんだろう?という疑問がふつふつと。これはこれなんだろうなあ。この世界なんだろうなあ。
読了日:03月15日 著者:浅田政志
クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)感想
最初の方のドタバタ(親戚の人が会社に押しかけてくるって!噂話の蔓延している職場って!)であちこちに動き回る部分が、まさに同作者の航路と思いました、内容的には違いますが。脳手術まで緩く読んでいましたがそこから一気呵成に。これは一見テレパシー能力に関するSF設定でその面も非常に読ませますが、主人公ブリディが真の愛を発見する物語でもあります。人の思考がなだれ込んでくる時に脳内に鉄壁を様々な方法で作るのも面白い!!また、メイヴ(姪)の賢く可愛いことと言ったら!後半の意外な展開の連続が高度なミステリのようでした。
読了日:03月15日 著者:コニー・ウィリス
ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)感想
前知識ゼロで読むことをお勧めします。良いです。小学六年生ハルのかなり大人びた思考と彼のロケットに対する情熱、ロケットづくりの話、一方で学級での彼が無視されているという立ち位置、そこに転校生のハーフの女の子鳴沢イリスがやってくる、といういわばボーイミーツガールの話でもあるのです。最初からずうっと各所に違和感を感じてハル君にも共感ができるようなできないような気持ちでした。ミステリ部分は途中のハルの5年生の時の学級内の出来事?ところがあるページで、は!!!氷解!!ハル君、将来宇宙に携わる仕事に就けるといいね!!
読了日:02月19日 著者:八重野 統摩
死ぬまでに一度は訪ねたい東京の文学館死ぬまでに一度は訪ねたい東京の文学館感想
写真と文章とそしてグッズまで紹介されているコンパクトな一冊。読んでいて本好きとしては楽しい一冊でした。個人的なことを言えば、多くは行ったことがあるので、ああ・・ここにこんなグッズがあったのに見落としていた?とか、この喫茶店入らなかったけど良さそうとか、そんなことに目がいっていました。ただ、トップの漱石のは、まだ行っていないのでぜひぜひ近々行ってみたいです。表紙にもなっている東洋文庫ミュージアムは行くと圧巻です、ただただ圧倒されます、ここにある通り。本棚を見るだけでも価値がある文学館だと改めて思いました。
読了日:02月19日 著者:増山 かおり
償いの雪が降る (創元推理文庫)償いの雪が降る (創元推理文庫)感想
私の今年の一冊に入る本でした。主人公大学生のジョーが非常に好感が持てる青年で、彼が余命いくばくもない元殺人暴行犯のカールと介護施設で出会う所から始まります。ジョーは大学の課題のために当初会うのですが、過去の殺人が本当にカールがしたものなのか、と疑問を持ちます。カールがなぜ易々と殺人の罪を認め長期間過酷な刑務所に入っていたのか。カールの壮絶な過去、そしてジョーの非常に厳しい家庭環境、ジョーの隣人のライラの過去と、それぞれの心に抱えているものが明らかになる時に感動しました。真犯人の開き方も!そして雪!効果的!
読了日:02月19日 著者:アレン・エスケンス
しびれる短歌 (ちくまプリマー新書)しびれる短歌 (ちくまプリマー新書)感想
このお値段でこの内容量。お得だと思いました(すみませんお値段の話で)。穂村さんと東さんの掛け合いが素晴らしく、比較的新しい短歌を色々な切り取り方をして、語ってくれています。非常にわかりやすくしかもユーモアと愛に満ちていて、どの歌も魅力的でした。固有名詞をこういう風に使っていいんだなあというのも嬉しい発見。着眼点がお二人ともとてもいいのです。そしてわかりやすい。またこのお二人のこういう短歌についての本を読みたいものです。(そんな中104ページの東さんの歌の誤植が非常に残念)
読了日:01月31日 著者:東 直子,穂村 弘
誰かが嘘をついている (創元推理文庫)誰かが嘘をついている (創元推理文庫)感想
高校の5人の生徒が理科室に居残りを命じられ、一人の生徒サイモンが水を飲んで死亡。密室の中の犯人は一体誰かという青春ミステリ。死んだサイモンが人の秘密を暴露するアプリを運営していることでそれほど好かれておらず、SNSの闇もまた描かれています。残りの4人のキャラクターの描きわけがお見事。4人それぞれの語りで外からはこう見えているけれど実は自分の悩みはこうなんだというのがわかり、この事件によって成長していくのもまた見えてきます。特にネイトが魅力的。ラスト犯人がやや・・。でも犯人捜しのミステリじゃないと思えば!
読了日:01月31日 著者:カレン・M・マクマナス
千年図書館 (講談社ノベルス)千年図書館 (講談社ノベルス)感想
良かったです。特に好きなのが、表題作と見返り谷から呼ぶ声でした。5編入っていますが、そのうち3篇はある程度の知識が必要かも。もしわからなかったらネットとかで最後に調べるといいと思います。そこでああっ!と思っても決して遅くないですから。表題作はラスト1ページが肝ではありますが(驚いた!)その前の段階で、ある言葉を口にしているので、なるほどなあ・・・とラストとの繋がりを思いました。見返り谷~は、虐待とかいじめとかが入っていて陰鬱になりそうな話なのに、ラスト2ページの美しいイメージといったら!
読了日:01月31日 著者:北山 猛邦
第160回直木賞受賞 宝島第160回直木賞受賞 宝島感想
熱量の半端ない物語。非常に引き付けられて読み進めました。冒頭で魅力的な沖縄の英雄で義賊のオンちゃんが嘉手納基地内で行方不明になり、ここが一種の謎になり物語をけん引してくれます。オンちゃんの恋人、弟、親友が三者三様の形でオンちゃんを探すのですが・・・いったいどこに消えたのか、生死はどうなのか。加えて沖縄の戦後の状況が実際の事件と合わせて力強く語られていって、ここも読んでいて胸熱くなりました。青年だった三人が大人になってどうなっていくのかも読みどころ。そしてオンちゃんの着地点は実に意外なところでした。お見事。
読了日:01月31日 著者:真藤 順丈
熱帯熱帯感想
大好きこういう話!作中で千夜一夜物語に言及していることからもわかるように入れ子の物語。最初の方で行き詰ってる『森見登美彦』が出てきてそこからの話の展開の仕方が非常にお見事でした。入れ子、そして派生、円環、逸脱・・・誰も最後まで読み通したことのない幻の本熱帯にまつわる物語、途中の章から無人島編になるので、ややここからファンタジーがかります、でも私はこのファンタジーだったら全くオッケー。最後までぐいぐい読ませてもらいました。ラストもっともっとはじけて開いても良かったかも。私の本にはサインと共に達磨のハンコが!
読了日:01月30日 著者:森見 登美彦
東大教授がおしえる やばい日本史東大教授がおしえる やばい日本史感想
こういう切り取り方があってもいいかなあ。とても面白いし。こんなに一筋縄で、全ての物事をやばいとかすごい、とかは言えないとは思うものの、でもでも楽しんで読める、という観点は貴重なのです。どこからでも入って行ける単純な話の作りが興味深かったです。日本の歴史とか敷居が高いなあと思ってる人はここから入って徐々に深めればいいのかも、と思いました。
読了日:01月30日 著者:

読書メーター
12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3254
ナイス数:342

四つの凶器 (創元推理文庫)四つの凶器 (創元推理文庫)感想
バンコラン最終の話。カーお得意の怪奇趣味もなく、バンコランがもっともっと悪魔的だと思っていたらどちらかというと今は引退して零落の日々を送っている人設定・・・ミステリの中で偶然があまりに多いと思いました、非常に練り上げられた緻密なプロットではあるのですが。賭博場のところもとても読ませました。私が一番謎だったのは、トリックとかそういうことではなく、ラルフの最後いきなりローズが好きと告白しているところ。え?そういうことだった?釈然としないまま・・・
読了日:12月27日 著者:ジョン・ディクスン・カー
55 (ハヤカワ・ミステリ文庫)55 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
私のうっすらと思っていたミステリの感じではなかったものの、ページをめくる手は確かに止まりません。最初から心惹きつけれます、一人の男が「殺人鬼に監禁され、おまえが55番になると言われた」と警察に飛び込んできたので保護した直後、別の男性が全く同じ証言をして相手を犯人だと警察で言う・・・。過去の描写も時折入り、かつての幼馴染との軋轢(ここがちょっと辛い)があるチャンドラー巡査部長の右往左往っぷりと静かな町が一転して喧騒の町になるというところは読ませます。ラストは、確かに誰かと語りたい。やや、盛り込みすぎか・・・
読了日:12月27日 著者:ジェイムズ・デラーギー
ファースト クラッシュファースト クラッシュ感想
見知らぬ少年を父がいきなり家の子にしようと連れてくる、という設定で嵐が丘を思いました。ファーストクラッシュは初恋のことで、三姉妹がそれぞれ連れてこられた男の子に何かしらの感情を抱くのが、いかにも山田詠美らしく巧みに描かれていました。父の愛人の連れ子、という複雑な家庭環境ゆえ、男の子の力が折々に発する言葉が心に残りました。母親は当然面白くないわけでその感情むき出しの出来事の数々、そして後半での母親の姿と力のやり取りなども印象深いです。ただ、私は少しだけ自分の期待とは違ったかなあ・・・
読了日:12月27日 著者:山田 詠美
だから、何。だから、何。感想
今年出るのが少し早かった?という気がしていますが・・・これを読むと一年間が終わった気がします。中野翠の視点でこの一年間の世俗のもろもろを語ってくれるエッセイ集。映画の話もまた楽しく、何がこの年にあったのか最初の方は私も忘れているのが多かったので、ああ・・・そうだった、と思い出したり、こういう映画があった!と思ったりしました。また今年一年の事件、事故、災害にも触れられていてそこもまた当時思った感情がよみがえりました。途中途中に挟まれる作者の俳句やイラストも楽しみにしています。
読了日:12月27日 著者:中野 翠
不穏な眠り (文春文庫)不穏な眠り (文春文庫)感想
葉村晶シリーズ相変わらず楽しかった!仕事はできるのに思い切り不幸な出来事が襲ってくる葉村。最初は実に小さな依頼(人を無事に家に帰してほしい、幽霊ビルの警備をしてほしい等々)と思っているのに、引き受けた瞬間からどんどん広がっていく事件のさまが読んでいてわくわくしました。表題作が私はとても怖いと思いました、他人が人の家に居座るという怖さとあの奥さんがどうしてああなったかという経緯が恐ろしすぎます。また古書店の盗まれた本の話はまつわるあれこれの話にもおおいに心惹かれました。ラストの富田店長のミステリ紹介もグー。
読了日:12月21日 著者:若竹 七海
赤い髪の女赤い髪の女感想
非常に面白かったです。物語性に富み豊饒な小説独特の余韻に浸らせてくれました。東西の父殺し息子殺しの神話に導かれるように進むジェムの姿が忘れられません。青春物語、成長物語の側面がある一方で、一種ミステリ的な部分も多く、あの後親方はどうなったのか、初恋の赤い髪の女は一体どうしたのか、興味は尽きませんでした。第一部が終わったところで驚愕(これでいいの?ジェム!)、第二部の最後でまた驚愕(そんなっ!)、第三部はそもそも語りの人で驚愕、ラスト数行でまた驚き、と嬉しい驚愕がたくさん待っていました。
読了日:12月21日 著者:オルハン パムク
文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫)文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫)感想
楽しみました!おおいに!!遊び心の溢れる一冊で、真面目な文学好きには怒られそうだけど、おおいに既存有名作品を解体してくれます。読まなくても粗筋が書いてあるので楽しむことができます。特にこころ、の考察には大爆笑してました、まさかこの人を出すとは。走れメロスに至っては本当にこうじゃなかったのか・・・と思うほどでした。銀河鉄道の夜、藪の中もあります。バーで女性バーテンダーと文学教授ともう一人の客との間で交わされる文学談義、笑いながらもためになります。古い時事ネタギャグ風俗ネタそのあたりも私は好きなんです。
読了日:12月18日 著者:鯨 統一郎
medium 霊媒探偵城塚翡翠medium 霊媒探偵城塚翡翠感想
大変面白く読みました。何を書いてもネタバレになるので内容については書けませんが、胡散臭い(タイトルと表紙から)と思った自分を許してほしいです。ある部分はこの人なんじゃないかとわかります、普通のミステリの読み手なら。でもその先のある部分は、、、ともかくもネットとかで感想を拾わず、前知識ゼロで読むことをお勧めします。多少途中、あーあと思っても最終章まで行くことをお勧めします。
読了日:12月18日 著者:相沢 沙呼
歩道橋シネマ歩道橋シネマ感想
16編の短編集でした。長いのやら短いのやらちょっと長さがバラバラでそのあたりは難点だと思いました。が。いくつかスピンオフのある中、麦の海に沈む果実のスピンオフがありそれは非常に読ませたし、この人の過去!こうだったの!という読む喜びがありました。ホラー色・SF色の強い作品もまたあり、ラストの作者自身のそれぞれの作品への言及も楽しんで読みました。
読了日:12月18日 著者:恩田陸
約束された移動約束された移動感想
小川洋子ワールド前回の短編集でした。どれも移動ということをモチーフに描かれています。表題作の約束された移動が一番好きでした。ホテルの特別室の客室係とそこに定期的に来ては本を書棚から一冊失敬する某ハリウッド俳優との静かな交錯が描かれています。この作品集、どの作品の中でも一般的に見れば、ストーカー?ちょっと頭のおかしい人?ずれた人?なのですが、そこが小川洋子マジックでその人たちが生き生きと魅力的に見えてくるのです。ファンタジー色の強い作品もありました。
読了日:12月18日 著者:小川洋子
小さいコトが気になります (単行本)小さいコトが気になります (単行本)感想
いつも通りのミリさんの楽しいエッセイ集(漫画もあります)。強烈に自分の人生に必要なもの!がある一方で、ここに書かれているようにたいして必要ではないんだけどついつい見てしまうという作業・・・人の家の植木鉢、とか、映画のエンドロールとか、歩いていてたまたまカーテンが開いていて中がちらっと見えてしまってそこに住む自分を想像するとか、がわかりすぎました。ミリさんのエッセイって、そうそうあるある!共感できる!という人にヒットするんだと思いました、あるあるネタみたいに。
読了日:12月18日 著者:益田 ミリ

読書メーター
2019.12.27 赤い髪の女


評価 5(とびぬけ)

最高に良かった。
物語作りの巧みさに魅せられる。
話は一人の少年の育ちゆく姿もあるのだが、それを父と子という視点から見ているという面白さがあった。

ハンサムで薬局の店主をしていた父がある日失踪。
それは政治的なことに巻き込まれたのだろうか?
真相がわからないままに、少年ジェムは母にも勧められ、大学に行くための金を稼ぐためにオンギョレンという場所で井戸掘りの親方に弟子入りする。
親方はジェムに父親のように接してくれるのだった。
そんな折、ジェムは移動劇団の一人の赤毛の一人の女性に出会う。
ジェムの初恋、そして衝撃的な親方との別れ・・・


井戸掘りのマフムト親方とジェムはたくさんの話をする。
我が息子同様にかわいがってくれる親方、父親を求めてやまないジェム、この二人のタグで井戸掘りを進めていく。
二人の間のたくさんの話の中に、
ロスタムの話があり(父が息子を殺す話)
そしてまたオイディプス王の話(息子が父を殺し母を娶り、自分が盲目になる話)も途中で出てくる。
この物語は、東西の対照的な二つの物語を内包しながら突き進んでいく。
しかし現実には、一向に井戸掘りがはかどらず、水は出ないで困惑している親方もいて、雇い主がとうとう諦めてくれというまでの悲惨な状況だ。
最終的にジェムと親方の二人で過酷な井戸掘りを続けていくのだ。

ジェムの初恋の相手、年上の赤い髪の女との出会いから別れまでもここは青春物語としても読める。
けれど、この出会い、実はこの話の根幹になっていて、あとから次々と真実が明らかになっていく。
そこに重低音のように先に記した、二つの物語(オイディプス王とロスタム)が顔を見せまた隠れていく、この様の描写が見事だと思った。
また、ジェム本人の成長物語でもあると言えよう。
彼の一生を振り返り、こうだったのだ、ここが分岐点だったのだ、あの物語たちが彼を操っていたのか彼がその物語たちに拘泥するあまりに人生を乗っ取られたのか、そのあたりも読ませる牽引力になっている。

またある意味、ミステリ小説のような小説でもある。
・ジェムはその後どうしたのか
・その後あのことはどうなったのか
・そもそも赤い髪の女はどう思っていたのか
・この物語は『私』の語り手だけれど、ジェムが書いているのか。将来作家になりたいという若い日の希望を叶えたのか。

あるところで、はっと驚く。
ジェムの行動がこれでいいのか!というところでどきどきする、ジェムと一緒に。
ジェムはそのことを長い間苦しみそして考え抜いていた。
そして・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

以下ネタバレ

・ある夏の暑い日、故意ではないものの、親方を井戸の中でけがをさせてしまう、上から物を落として。
何も音が聞こえてこないのに驚いたジェムはなんとそのまま放置して逃げ出してしまう、頭の中で親方が死んだということを十分認識しながらも。
(親方が死んだかどうかこの時点から長い間分からないミステリ&息子が父親殺し)

・この後、ジェムは地質調査技師、そして建設会社の経営者として妻とともに成功の階段を駆け上っていく。
妻との間に子供がいないことを除けば順風満帆な人生に見える。
しかし一瞬たりとも親方を放置したことは忘れていないで人にも話せていない。

・赤い髪の女と交渉を持ったのは一度だけだった。
しかしその時に赤い髪の女は妊娠していた、そして息子を産む。

・最終章、全てが明らかになる。
赤い髪の女は、ジェムのお父さんと関係を持った女だった。
つまり親子で赤い髪の女に惹かれていた。

親方はあの日、急に出て行ったジェムの姿をたまたま見た赤い髪の女によって救出されていた(生きていた)
その後彼は井戸を掘りあてた。
赤い髪の女の息子(つまりジェムの息子)は親方と仲良くなる(疑似父子)
そして親方にあの日、ジェムに置き去りにされた真相を知る。
(親方のその後がわかったミステリ&親方が心の中で息子のジェムを殺した息子殺し)

・最終的に昔のその井戸で、息子に落とされジェムは死亡。
(息子が父親殺し)
その前に用心してジェムは拳銃を携えていた
(息子殺しの気配)
そして逮捕されているものの正当防衛としてジェムの遺産が息子に行く方向になる。

・最終章は赤い髪の女の語り。
そしてこの話全体が、彼女とジェムの息子が書いたものというのが最後にわかる。
(誰が書いたかというミステリ)
2019.12.27 四つの凶器


評価 4.5

初めて読んだ、この作品。
カーのお得意の怪奇趣味もなく、鳴りを潜めたといった感じの話だなあと思って読んでいたら、バンコラン物最後の長編らしい。
バンコランその人も、終わりの雰囲気が漂っていて、かかし?と間違えられるくらいの零落ぶりで汚らしい感じに留まってる。
話は割合込み入っていると思う。
最初だけものすごく読むのが簡単そうな出だしになっている。
謎の中心はタイトル通り4つの凶器なのだ。

ラルフ・ダグラスはこのたびマグダという娘と結婚することになり、過去関係のあった高級娼婦ローズとの関係を清算したかった。
青年弁護士リチャードを伴って、パリ近郊の別宅に行く。
そこでは娼婦ローズは既にベッドの上で亡くなっていた。
死体発見現場からは、
カミソリ、ピストル、睡眠薬、短剣
の4つが見つかった。
果たしてこれが意味するものは何か。
犯人は一体・・・


ここに呼ばれたというオルタンスというローズの元女中の証言が最初驚きの証言となって飛び出す。
何しろ、その場で会ったラルフが確かに昨日来ていたというのだ。
もうここで、ラルフが犯人、と思いたいのだが、彼には盤石のアリバイがあった。
更に、オルタンスはカミソリを研いでいた男というのも見かけている。
あったはずのワインのボトルがないということにも気づいている。
オルタンスは最初の方ですごく重要な役割を果たしているわけだ。

このミステリ偶然に頼りすぎてないか?
読んでいてあちこちでそう思った。
もしちょっとずれていたら。
これが一回ぐらいだったらまだしも後半で何度も出てくるので、こんなに偶然があるのだったらなんでもできる!と思ったものだ。
また話がごちゃごちゃっとしているので、バンコランの異様さとか残酷さとかそこに目が行かなくなるのが惜しい、描写そのものも少ない気がする。
もうちょっと全体に話がすっきりしていたら、彼の感じがもっとわかるのに。
しかしローズの現在の恋人ロートレックが入り浸る賭博場の雰囲気はすごく面白く読んだ。

人はたくさん出てきて混沌としている、
弁護士のリチャード、富裕な青年ラルフ、ラルフの兄ブライスが外交官で職業がが話に大きく影響、ラルフの婚約者マグダ、マグダの母親、ラルフの過去の愛人ローズ、ローズの今の愛人ロートレック(閣僚の秘書、この職業も大きく影響する)、ローズの元女中オルタンス、ローズの現在の女中アネット、パリ警視庁デュラン警部、バンコラン予審判事・・・

あと、なんといっても腑に落ちなかったのはトリックとかそういうことではなく、以下ネタバレに続く。

以下ネタバレ

・最後、なんといっても腑に落ちなかったのはトリックとかそういうことではなく、ラルフが本当に愛していたのが、マグダではなく娼婦のローズってどういうこと?
どこかにそれは描かれていたか?

・女中のオルタンスが目が悪い、しかも眼鏡を落とされて壊されているというのが早々に出てくる、
なので彼女が目撃したものがすべてきわめて怪しいというのが最初の方でわかる。

・この別荘に入れ替わり立ち代わり多くの人がやってきた、数分刻みで(偶然過ぎる)
特にマグダは自分が殺したと思うくらいだったが意識がない時間があった。
それはローズの部屋にエーテルが漂っておりそれで20分間ぐらい倒れていたのだ(偶然すぎる)
この間に犯人が工作。

・賭博場でみんなが暗がりの中夢中になっている最中に席を外してもわからないという苦い事実がある。
2019.12.27 55


評価 4.8


ええっええっ。
このラスト?
帯に書いてあったように誰かと話したくなるが・・・まさかこの展開になるとは!!
ラストそのものもだが、それよりそこにいってしまう話の展開に驚いた。
この話、どちらかが嘘をついている、ということで、両方の証言があり片方の嘘がめくれていくミステリだと思っていた。
そのあたりはおおいに違っていて、いやそういう部分もあるのだが・・・

普段は事件も少ないのんびりとしたオーストラリアの小さな警察署。
そこにいきなり土埃と血にまみれた男ゲイブリエルが飛び込んでくる。
いわく、自分は殺人鬼によって山小屋に監禁されたと言うのだ、殺人鬼の名前ヒースと姿形まで語ったのだ。
命からがら逃げてきた彼を巡査部長のチャンドラーは、とりあえず近くのホテルまで送ったのだった、そこで過ごしてもらうために。
ところがしばらくして、先程殺人鬼と言われていたのとそっくりな男がやってくる、自分は殺人鬼によって監禁されたと言う。
さてどちらの男が本当のことを言っているのだろうか。
お前が55番になるというのは、54人を殺した殺人鬼なのだろうか?


出だしからしばらくは非常に面白いし、心をわしづかみにされる。
犯人がどちらかわからない状況で、巡査部長が右往左往しているからだ。
しかもチャンドラー巡査部長は、うまくいっていないミッチ・アンドリュー警部補とタグを組まなければならないことになる。
二人は幼馴染だったが、ミッチの出世欲とともに、彼らの関係性は壊れていったのだ。
チャンドラーが何かをしようとすると必ずミッチが横やりを入れてくる。
チャンドラーのやりにくいことと言ったらこの上ない。
しかも、最初の段階であとからもう一人が出てくるとはだれも思わないので、チャンドラーは出頭してきた男をホテルにまで連れて行ってしまう、そして挙句の果てそこから逃げられるのだ、これで叱責されるがそれも当たり前の状況だ、チャンドラーにとっては不幸が重なったとはいえ。
そして何より重要なのは、『ホテルに連れていくときの二人の会話』が後々非常に重要な会話になってくる。

二人を逮捕して、どちらが嘘をついているのだという流れの中に、もう一つの話が時折入ってくる。
それは、ミッチとチャンドラーの過去の話であり、彼らが初期に捜索したある行方不明の一人の青年の捜索にかかわり結局見つけられなかった話だった・・・過酷な暑い土地での捜索の厳しさがわかる描写が続く・・・

静かな町が一転し、逃走が再び起こり町は恐怖に包まれる・・・

このミステリ、ちょっと惜しい。
すごく面白い出だし、魅力的などちらが犯人かわからない状況、というのがある一方で、犯人のラストに至る動機という強烈なものもある。加えて、ミッチとチャンドラーの一人の女性に対する愛憎劇もある。過去の話もある、
そして更に、特に日本人にはわかりにくいあることが出てくる。
ちょっと盛り込みすぎといった感じがする。
このあたりがどうなのだろうか。
またミッチとチャンドラーの二人の男性のやり取りがあまりになんだか大人げない。
どっちもどっちという気がしてくるのだ、読んでいて。
もうここらへんでいいんじゃないか、と思ったところに、ミッチの意外な事実が出てきて、チャンドラー同様、私もがっくりとした、ここなのか。このあたり非常に暗いしよどんでる。


<以下ネタバレ>

・55人目の殺人ではなく、それは聖書の関係の話。
6人の殺人鬼ではあるものの。

・ミッチとチャンドラーの過去の行方不明者の捜索が一つの鍵となっていた。
間に入っている話は非常に重要だったのだ。
ここで行方不明の青年を最後まで探していた弟が成長した姿が、この犯人だった。
かなりその時のことを恨みに思っていた。
兄が行方不明になり打ち切られた後、両親が(おそらく自殺)事故死。
そのあと狂信的な養父母に育てられ、折檻されながら育ったのだった。

・創世記の名前の順番が数字だったのだ。
最初の殺した人はアダムだった。
55番目はHeth(ヘス)で、捕まえたのがHeath(ヒース)だった。
(この宗教的なところが、日本人にはややわかりにくい)

・最初、警察署にきて、ホテルに行く途中で、ゲイブリエルはチャンドラーの家庭状況をよもやま話からキャッチした。
そしてチャンドラーの子供を今度は誘拐している、誘拐されて一週間後、その小屋を発見し行く途中で話は終わりだ。
どうなったのだろう。
(ゲイブリエルが犯人だったわけが、彼は子供をどこに閉じ込めているか告白する前に、チャンドラーの目の前でミッチによって殺された。なので、場所がわからず難航する。かつての行方不明事件と同じだ)

・ミッチとチャンドラーの関係性は壊れている。
そしてチャンドラーの別れた妻はある事件で知り合った女だが、彼女との間に子供がいる、そして子供はチャンドラーが引き取っている。
ところが、途中で別れたその妻と、ミッチが付き合っていることがわかる。
なぜ?いくらでも女性はいるのに、よりによってなぜそこにいく?ミッチ?
子供を引き取る気持ちすらあるミッチにチャンドラーは敵意をひたすら燃やすのだ(このあたりも暗い


評価 4.8



ファーストクラッシュ(First Crush)、つまり初恋の物語。

三姉妹がいてそこに突然異分子の男の子が引き取られる、という漫画のような設定だ。
山田詠美のそこから真骨頂が繰り広げられていく。
この話面白いのは、三姉妹の現在をも描かれていることだ。
小さい時のお嬢様っぷりから、今は零落してしまった女性になった姿も描かれいるので、あの時代がなんてきらめいていたんだろう!というその思いにもとらわれる。
若い時の彼女たちは三者三様のスタイルで力に近づいていく。
長女は、通学の際に彼にあれこれ命じて女王様気取りだ。
次女は、一番彼の理解者でもあるけれど、意地悪はやまず、そしてその結果として徐々に引き寄せられていく。
三女は、幼いので犬友達として全面的に彼を許し受け入れる人間なのだが、後半大きくなった時にこじれていく気持ちがある。

第1部は次女の視点、第2部は長女の視点、第3部は三女視点になっている。
この中で三女だけが振り返ってという形式になっているのは、力が来た時にあまりに三女が小さかったので、彼女の感情をそこでは描けなかったのだろう。

麗子、咲也、薫子の三姉妹は比較的裕福な家に住んでいる、両親とともに。
そこに父親がある日一人の男の子、新堂力を連れてくる。
実は彼は、父の愛人の子供であった。
父と愛人の子供ではなく愛人の連れ子なので血は繋がっていない力。
不憫で、ちょっと影のある心優しい力に三姉妹が惹かれていく・・・・・・


『父親が旅先から見知らぬ同年代のちょっと汚い男の子をいきなり連れてくる。
そして父親のいる家には女の子(この場合は女の子たち)がいる。
そこには主従関係が生まれたり恋愛感情が伴ってくる』
というのはまさに嵐が丘ではないか。
三姉妹なので一人欠けた若草物語とも読めるけれど、母親が攻撃的なので若草物語の雰囲気はないなあと私は思った。
どちらかというと、災いを持ってくる男ヒースクリフの方が力に似合ってるのではないか(あんなに激烈な性格ではなく、もっとのほほんとしているけれど)


力が愛人と父の子供ではないものの、父の愛人ということで母親が当然むっとしているのがわかる。
三姉妹の母が、彼女の温室(植物園)のところで、じいっと力を観察しさりげなく意地悪していく姿がなんとも怖い。
そして力がそれに対して抵抗するでもなく唯々諾々と彼女の指示に従っているというのを、三姉妹が三者三様で見ているというところもまた読ませたのだ。
一番下の妹はまだ幼かったのでそれはまた別の感情なのだろう。

力が自分はこの家でどういう立場でどういう風に見られているかというのを認識しているところが面白い。
彼の言葉の端々にそれは出ているし、彼がどのような気持ちで母親の死という現実に向かったのかというところも記憶に残る。

ただ・・・巧いとは思うのだが・・・
ものすごく琴線に触れたかというとそこまででもない作品ではあった、私にとっては。
2019.12.27 だから、何。


評価  4.8

年末の恒例行事と言ってもいい、中野翠のこのシリーズを読むのは。
一年間、こういうことがあったなあと思うのが常で、今回もそうだった。
このお友達の別荘に行く行事とか、妹さんと仲の良い雰囲気とか、他人なのに毎回書かれていることでもあるので、そこに立ち会っているような気持になる。

映画の嗜好が、おととしぐらいから徐々に私と合ってきて、どうしたんだろう?と思っていたら(自分も相手に対しても)、今回も比較的合っていて、(この映画もお好きなんだ・・・)という意外なところもあった。
若い時のとがっていた時の映画の見方がお互いにとれてきた?ということなのか?と勝手に思ってる。
ニューヨーク公共図書館エクスリブスはヒットした話など興味は尽きない。

しかし色々あった一年、
平成から令和に
ジャニーさんの死去
ショーケンの死去(すっかり忘れていた!まだご存命だった私の中では)
いだてんの放映、
と数え上げていくときりがない。
そして忘れていることをぽっと思い出させてくれる文章なのだ。
観察といった感じが一番正しいと思う、中野翠の世間観察というのが。
昔の話も出てくるけれど、決して懐古趣味になっていないところも好きなところだ。