評価 5

じわじわと両方の側から迫ってくるような美しく忘れ難い物語だった。
ミステリの趣もあり、前半で語られている、孤児院で兄妹が偶然聞いているラジオの場面がとても印象深いのだが、この謎が後半するっと解けていく。
盲目の少女と一人の孤児の男の子の話ではあるものの、この二人は一瞬しか邂逅しない。
その一瞬の邂逅で、二人は何かを分かち合うのだった。

物と人の出る場面との調和もバランスが良く取れている作品だ。
物は、炎の海と呼ばれるダイヤモンド、重要なことを知らせてくれるラジオ、家のミニチュアセット、そして忘れてはならないのがジュール・ヴェルヌの『海底二万里』の本だ。この本が何度も登場してこの物語の根底を支えている。
触るダイヤモンド、触るミニチュアセット、音で聞くラジオと本、と五感があらゆるところに感じられる。

章の冒頭ごとについている1934年から1944年の間の年号と日付を丹念に見ていると、今がどういう時期なのかということがわかってくる。
最初は、盲目の少女がなぜか一人で家に残されているという状況(おじさんはどこに行ったんだ!と思った。お父さんはどこに行ったんだ!と思った。盲目の少女を一人置いて)が語られて、避難しろというビラがまかれていて手には取るのだが盲目なのでそれを読むことができない状況というのが淡々と語られている。

パリの戦時下で育った盲目の少女マリー=ロールは、パリの博物館に勤める父に愛されて育っている。
父は彼女のために近所の道路と家の街のミニチュア模型を作り(これがあとになって仇となる)それを触らせて近所を教え込み、外に実際に連れ出すということをしている。
また博物館には伝説のダイヤモンドがある。
みるみる戦火は激しくなり、二人はサンマロにいる大叔父の元に身を寄せる。
一方で、孤児院で妹とともに育ったドイツに住むヴェルナーは手先が器用でラジオを組み立てることから始まり数学も独学して才能を秘めている。
彼が作ったラジオで、不思議な無線通信を聞く兄と妹・・・
彼はナチスドイツの技術兵に抜擢されてそこで過ごす日々になるのだった、妹とは離れた場所で。
そこで出会った親友が鳥の大好きなフレデリックだった・・・


ほぼ交互に二人の様子が語られている。
断片のような言葉の羅列もあって、一つ一つがとても短い。
だからそれに従ってどんどんどんどん読んでいける。
長い物語だが、読み始めたら意外にすぐに読み終えるのだった、深い感動とともに。

マリー=ロールが大叔父の家にいる様子は最初の方ではとても美しく気高く微笑ましい。
前の戦争がもとで外に出られなくなった大叔父と、家政を切り盛りしているマネック夫人の様子も手に取るようにわかり、ここには戦時下と言えども愛があり、本があり、その本で繋がっていって、読み聞かせがあり、本の世界がこの悲惨な状況をある意味救ってくれている。
それぞれの人間のマリーへの心遣い、それに対してしっかり答えていくマリーの幼いながらも人間的に成長していく様子などが如実に語られている。
しかし一転、マリーのために模型を作ろうと近所を測量していた父が捕まってから暗転していく。
必要ない電波を遮断するためにラジオの撤去が始まるが大叔父の秘密のラジオは渡さないのだ。

一方で孤児のヴェルナーはよくわからないまま、それが栄光への道と信じてナチスドイツの技術兵となっていく。
兵隊なので、そこは肉体的にも訓練されていくのだが、落ちていく生徒というのがいて、それを兎を追いかける狐のように集団で追いかける種目(ゲーム?のようになっているが)が怖い。
捕まらないで逃げおおせようとする兎役。
誰が一番弱いと思うかという上官の問いに対する答え。
ヴェルナーはある時期までは信頼しきっていた組織だが、親友のフレデリックが標的になり始める少し前から、おかしいのではないか、とやや思い始める。
が、彼はいかんせん子供なのでこのすべてを止めることができない。
このあたりのジレンマがこちらに伝わってきて、ヴェルナーの妹への手紙で、検閲で黒い部分がありすぎ本当のところは何と書いてあったのか、とそこにもぐっときた。
ヴェルナーが自分が来てしまった場所がもしかしたら違うのではないか、という逡巡が芽生えてきてしかしそれに対して何もできないという場面が大変読ませる。
フレデリックの実家に行って、母親が当時のナチスドイツ熱烈支持者で裕福な暮らしをしていてパーティーに明け暮れ、おとなしくそもそも兵士に向いていない息子の様子を全く見てあげない場面も印象に残り、これがあるからこそこの後の悲劇もまた際立っていた。

マリーとヴェルナーという二人の子供がどのように心が動いていくか。
いつもいつもある種の取捨選択がありそれをどのように決断していくのか(子供なのに。しかも少女は盲目なのに)
どのように自分の心の中で全てをこなしていくのか。
その結果、二人とも年齢より大人になっていく成長具合をこの小説で読み取ることができた。

後半、マリーの父に預けられた炎の海と呼ばれる伝説のダイヤモンドを求めて、ドイツの下士官がやってくる。
彼の名前はフォン・ルンペルで、彼がとうとうマリーのいる家にまでやってくるところは息をもつかせぬ緊迫感に満ちていた。
そしてここでも大叔父の隠されていたラジオが役に立つ。

最後、登場人物の中で生き残った人たちのその後、が描かれている。
この部分も非常に思いのこもったその後、であった。
あれだけヴェルナーが心を砕いていた妹ユッタの戦時中のその後、もまた悲しみに満ちたものだったが、最後に光を見出してくれたような気がしたのだった。

(表紙はロバート・キャパ)
2017.04.16 月の満ち欠け


『瑠璃も玻璃も照らせば光る』

評価 5

大変面白かった。
途中で読む手が止まらなかった、一体何なのか、どうなるのだろうか、これは一体誰なのか、と。
ミステリだけれど、広義のSFっぽさもある作品だ。
時系列が並んでいないので、あとから、こうだったのか!!!という新たな視点が飛び出してくるのもとても読ませる。
あとから前のところを再読してみると、これはこういうことを言っていたんだ!という伏線らしきものも見えてくる。
どうだろう、この作品、予備知識がゼロの方が更に楽しめるのではないか。
私もほぼゼロだったのでおおいにおおいに楽しめたのだった。
佐藤正午の前作の鳩の撃退法もめちゃくちゃ面白かったが、この月の満ち欠けも私は大好きな作品になった。
このところの佐藤正午、本当に目が離せない!

冒頭では全く状況がわからない。
母子連れがいて、彼女達と話している小山内という中年の男がいる。
彼らは東京ステーションホテルの喫茶店で語り合っている。
母子の娘が「るり」という名前で、奇妙なことをたくさん口走っているのだ。
初めて会うらしい小山内という男に、どら焼きが好きだったよね、とか、コーヒーはブラックで、とか、彼の嗜好を指摘していく。
それに小山内は半信半疑という面持ちで立ち向かっている・・・・

この冒頭がまた秀逸であって、なんだなんだ?と読み手を引き付ける。
一体この三人の関係性は何なのだ?

そこから小山内堅(つよし)のここまでの人生が語られていく。
彼は同郷青森県八出身の梢という女性と大学で「偶然」会って彼女が同じ高校の後輩だということを知る→(このあたり南部藩というサークルの中の班を作って活動した描写とかがあとになって、ああ!と思う箇所)
梢と平凡な結婚をして女の子が生まれた、その名前を瑠璃と名付けた。
瑠璃が7歳の時に発熱して、それ以降彼女の様子が変わっていく・・・・


ここまでで、あ、あの種類の話・・・とおおよその見当はつく。
見当はつくし、それは当たってはいるのだけれど、ここから非常に複雑な経路を物語はたどることになる。
複層的に話が語られて行き、しかも多視点になっていくので、ある人から見た真実とある人から見た真実が異なっていくのだ。

正木瑠璃と三角哲彦(アキヒコ)の青春部分もとても良いと思った。
この当時の風俗が活写されているし(まずビデオ屋自体が懐かしいし、映画館がまだシネコンではないので勝手な席に座るところとか、ゴダール、トリュフォーを語る文学青年とか、懐かしすぎる)、惹かれあっている二人が更に更に惹かれあいお互いに慈しみあう様子が手に取るように伝わってきた。

特にラスト二章の畳みかけがすごかった。
12章のラストの方で、自分の今の状況を自問自答して東京駅で崩れ落ちる堅の姿が忘れ難い。
自問し続けてし続けて、ある一つの答えにたどり着くのだ。
ここは、読み手側のわたしにとっても思ってもみなかった事実だったのでとても驚いた。
最終章13章では、ある時間帯のある人間の行動を出している。
ここは光のある章だ、きらきらとした光に溢れているクライマックスの章だ。
最後の言葉で私はぐっと来た。

人を見分けるのに、名前もだけれど(この場合おなかの中で声を聴いたということになっている)、ある種の癖のようなものが見分ける点になってるのもわかるなあ・・・と思った。
ぺろっと舌を出す癖。
これがキーにもなっている。

ある話を信じてくれる人、くれない人が錯綜している。
普通の感覚だと信じてもらえない状況というのは痛いほどわかる。
その中で瑠璃の言うことを信じた人たちがいるのだ。

・最初の小山内瑠璃の母親、梢。
・正木瑠璃の夫。
・緑坂るりの母親緑坂ゆい。
・当の見つけられる本人の三角アキヒコ。
そして最後に納得したのが
小山内堅だった。


<以下ネタバレではないけれど内容にかなり触れるので一切のことを遮断したい人はあとで読んだ方がいいと思います。
多分ここは書かなければこの話を語れないと思うので。>


この話、転生の物語だ。
誰かが誰かに生まれ変わる、これを君は信じられるかというたぐいの話だ。
何度も生まれ変わっている一人の女性正木瑠璃が、元々は人妻であってそこで愛のない生活を夫としていて、たまたま高田馬場で貸ビデオ屋(まだビデオの時代だった)で、一人の青年、三角哲彦(あきひこ)と愛し合うということに始まっている。
心打たれるのは、道半ばで死んでしまった瑠璃が転生して、またアキヒコと会おうとするところだ、愛の物語であるのだ。

しかしタイムリープではないので、誰かの子供として生まれるしかないという設定になっている。
その間にどんどんどんどん相手側が年を取ってしまうのが悲しい。
子供と大人どころか、下手をしたらお爺さんと子供の出会いということになってしまう。
最初に正木瑠璃が生まれなおしたのは、小山内堅の子供として、だった。
何度も家出を繰り返し、当時のアキヒコ(こちらは年を順当にとっている)に会おうとするが小学生なので補導されたり止められたりする。
これを生まれ変わりと信じたのが、彼女の母親梢のみだった、父の堅は一切信じようとしないばかりか、梢の精神状態まで疑ったのだった。
そして高校生になったら行ってもいいという許可をもらった母子は、三角が当時いた場所に行こうとするところで自動車事故であえなく死んでしまう。

・1.正木瑠璃(電車で轢死)→2.転生して小山内瑠璃(自動車事故で母親とともに死亡)

一方で、最初に死んだ正木瑠璃の夫竜之介は妻が亡くなったことで衝撃を受け、仕事も失い全てに自暴自棄になっているがそのうちに小さな工務店に雇われ、そこで人生を立て直そうとする。
工務店の孫が希美(のぞみ)、希美は異常に竜之介になつくのだが、ある時を境目に彼を疎ましくする、という経緯をたどっている。
しかも彼女はもともとは瑠璃という名前を付けられるはずだったが(これも胎内にいる時に母親が聞いた言葉)、事故が起こった時だったので、祖父と父の反対にあってやめたという過去がある(これが第三の瑠璃)。
彼女はある時を境に、ここにいるのがかつての冷たい夫だということに気づくのだった。
そして彼に自分がかつての妻瑠璃だということを信じさせ、彼とともにアキヒコのところに行こうとするのだが・・・
飛び出しで、希美は死んでしまう。
そして一般的な目で見られた竜之介は、少女の誘拐という罪にさらされてしまう。
(竜之介が工事で行った小学校で既に小山内瑠璃に会っているというエピソードも秀逸、その時に年齢にそぐわない黛じゅんの歌を歌っていた。また竜之介が元々は有能な男で非常に記憶力に優れているという点も重要で、だからこそ、小山内瑠璃が自動車事故で死んだという時に反応できる)

・1.正木瑠璃(電車で轢死)→2.転生して小山内瑠璃(自動車事故で母親とともに死亡)→3.転生して小沼希美(瑠璃の名前が付けられなかったのは、2の事故が当時あったから)

そして冒頭の東京駅ステーションホテルの場面に移る。
小山内はかつての自分の娘瑠璃が描いた三角の肖像画を持ってきている。
ここにいるのは、
女優の緑坂ゆいとその娘「るり」だ。
るりは4番目の瑠璃であり、彼女も記憶を取り戻していた。
だからこそ、2番目の時に父親だった小山内の嗜好を知っていた。
更に、驚くべきことを彼女が言う。
転生は自分だけではないと。
今、小山内堅が結婚しようとしている子連れの女性がいるが、その子供がかつての妻と同じような呼び方で彼を読んでいるということを小山内は自覚する、そして諸々を考え合わせ、義理の娘がかつての梢だったということに気づき、東京駅で崩れ落ちる。
(緑坂ゆいは、かつての娘瑠璃のの同級生で親友である。るいの口から、娘瑠璃が『母親梢が語ったこと』として教えてもらったのは、彼女が小山内を高校の時から後輩として愛していて、追って東京に来たのだ、ということだった。小山内堅は初めてここで知る。)

・1.正木瑠璃(電車で轢死)→2.転生して小山内瑠璃(自動車事故で母親とともに死亡)→3.転生して小沼希美(瑠璃の名前が付けられなかったのは、2の事故が当時あったから。彼女も事故で死亡。) →4.転生して緑坂るり

最後の緑坂るりが最終章で、三角とようやく出会うというところにようやく、という気持ちで涙が出た。
2017.04.14 コンビニ人間


評価 5

とても面白かった。

この本を読んで、現代の若者の持っている時代の閉塞感、と感じる人もいるだろうし、人と自分が違っている違和感、に共感する人もいるだろうし、なんとか普通であろうともがいている人間に対する作品と思う人もいるだろう。
読み方がいろいろできる、ということにおいても、たくさんの人が読むのがわかるという作品だった。
その場をコンビニという現代人がほぼ行ったことのある場にする、という場所設定もまた秀逸だと思ったのだ。
無機質と思えるコンビニ。
でもそこはまた不特定多数の人が集まるある種の「場」であり、そこで物が売られている「店」でもあり、そこはかとない店員との淡い淡い交流もある「特定の空間」である。

読んだ後、同居する男性の白羽さんのべったりとした気持ち悪さがずうっと心に残った。
普通であろうとし続けるために「私」がしたこと、それは・・・・

世間の人々が全員わかりやすい解説を自分に課しているとしたら。
こういう行動をしたとしたら。
未婚の女性がポツリといるよりも、あの人は同棲している、だから結婚していないのだ、だからコンビニ店員でもあり得る、というのが確かにものすごくわかりやすくなる。
しかもこの白羽さんは、途中で問題を起こしている元コンビニ店員なのに、皆口を極めて悪く言っていたはずなのに、こと動静に至ってはなんだか微笑ましいという感じで迫ってくる姿が逆に怖かった。

「私」が人と合わせようという努力、これは普通の人でも日常にしている、誰でも素のままでは人と付き合えないから。
でも、やはり常識の範囲で考える人が多数派であり、人と合わせようとしながらも合わせられない人を偏見の目で見るというのは確かにあリ得ることだなあと思った。
こちら側とあちら側。
その境目って見えるようで見えない。
2017.04.14 処刑の丘


評価 4.4

このミステリ、時代背景というか、フィンランドの内戦というか、そこがとても重要なのにそこが全く知識がなかったので、何度も最初の方を確認しながら読み進めた。
最初の方に、日本人のための註として、こういう内戦があってロシアとドイツがこういう乗り込み方をしてきて、赤と白に分かれていて、この村はどちらになっていて、というような簡単な背景を書いてくれないものだろうか。
いきなりロシアボリシェビキの支援を受けた赤衛隊・ブルジョワジー中心のドイツの後ろ盾の白衛隊と言われて、わかる日本人ってどのくらいいるのだろう。

1920年代初めの内戦がまだ終わったばかりの南部の都市ラハティ。
このサウナにマッサージ係として勤めているヒルダという女性には娘をかつて白衛隊に殺されたという悲惨な過去があった。
サウナでは分け隔てなく疲れた体でやってくる人たちを慰撫するのだった。
ヒルダにはまた、内戦で心に傷を負いかつてしていた靴づくりの職ができないまでになって酒浸りになっている夫がまたいた。
そして、仲間の思想に染まっていく息子もまた・・・・


処刑の丘とは黒い岩に覆われた丘で、死体が次々に見つかるという状況が出てくるのだが、なんせ警察はほぼ機能していない。
どれも密輸業者とか酔っぱらいの単純な死として扱おうとしているのだ。
上司に阻まれながらも巡査のケッキがこの死の真相に近づこうとする。
その捜査の中で、娼婦のロシアから流れてきたヴェーラと知り合い彼女を愛するようになっていくのだ(なのでここもまた上司に目を付けられる原因ともなる)

この状況下で、虐げられながらも、ケッキの公正であろうとする姿は読みべきところがあった、女には弱いけれども。
また解説にもあるけれど、サウナが一つの『場』になっていて、そこで皆が本音を語ったりくつろいだりしている様子も非常によくわかったのだった。


評価 
4.9

読むのが本当に辛かった・・・泣けて泣けて仕方がなかった・・・
いわゆる実はこういう不思議な話があったんですよ、ということだけではなくて、あくまで、不思議な話がある前後の家族の形とその間の不思議な出来事と残された人たちの生きようとする力のような話だった。

311のあの震災で大切な家族を亡くした東北の方たち。
その方たちのその後、のことであり、当時のことであり、それらが生々しい証言で語られていく、普通のノンフィクションとは違うのがこれが「死者からのしるし」を語っていることだ。
だからここをフィクションととらえる人も当然いるだろう、科学では割り切れないことなのだから。
またなんだ夢なんだ・・・と思う人もまたいるだろう、夢と思ってしまえばそれまでだから。
たとえ夢でなくても、偶然なんだ・・・と思う人もまたいるだろう、偶然で片づければ終わってしまうことだから。
けれど。
この遺族にとってはこれは紛れもない事実であり、そこではノンフィクションであり、また丹念に聞いていった作者にとっても事実として語りを聞いていったノンフィクションであることには間違いがない。

この中で、もちろん人の死の重さはどれも変わらないものの、逆縁のすさまじさに茫然となった。
子供が先に死ぬということ。
かわいい盛りの子供を失うという無力感。
あの大川小学校の子供が二人登場しているのにも胸が詰まった。
また小さな子供も登場している、遺影を見ると本当に可愛らしい・・・
この子たちがどういう思いで大好きなお母さんの元を離れざるを得なかったか、という圧倒的な事実の前には、「しるし」の部分がフィクションであろうがノンフィクションであろうが変わりはない。
人は絶望からどうやって立ち直っていくのだろう、絶望の淵にいた人たちが、「しるし」を見ることによってどんなに救われているのだろう。
これがとても心に刺さった一冊だった。

津波による被害で亡くなった方たちは、あまりに理不尽な死であり、遺族にとっても怒りの持っていきようがない死である。
そして遺族は、夢の彼らのお告げ、部屋の中のプラレールがスイッチが入る姿、亡くなる前に来てくれた、床の音がした、というのを近くの人と同時に経験している、それをある時は泣きながらある時は淡々と語ってくれるのだ。
常に死者が一緒にいてくれると思うことで生きていく糧にする気持ちは痛いほどわかった。
あの時ああしていたら、こうしていたら、と悔恨の尽きない中、夢の中で笑顔を見せてくれる亡くなった家族に会えてどんなにか嬉しかっただろう。

「死者からのしるし」は恩寵なのだ、残された人への。
2017.04.05 堆塵館



評価 4.9


ご・・・ご無体な・・・
殺生な・・・・
ここで終わりか!
次を早く!!!(もうすぐ出るらしい)

久々のエドワード・ケアリーだったけれど、とても面白かった。
独特な奇妙な挿絵がまたいい。
振り仮名がふってあるので、子供向けでもあるだろうか。
これを子供の時に読んだら、楽しいだろうなあと羨ましくなった。

読みながら、何かを思い出す・・・と思ったら
テレビドラマのダウントン・アビーとハリーポッターだった。
ダウントンアビーの場合、召使たち(執事なども入る)と上流階級の人たち、なのだが、くっきり上下階に分かれている。
(ちなみに表表紙と裏表紙にその家の断面図?が載っていて、これまたじっくり見ると面白い!)
堆塵館でも、
上の階と下の階(というか地下)はくっきり分かれていて、下の階の人たちは上の階の人たちが寝静まった後いろいろなことをこなさなければならない。

ただ違うのは、これが巨大なゴミ屋敷であり、外側もゴミであるということだ。
屋敷の上の階にいるのは、アイアマンガーという純血の一族なのだ(ここがハリーポッターを想起させる、純血というのがとても重視される魔法世界ではここがマルフォイとかそのあたり)。
下の階にいるのは、そうではない人達で、両親のどちらかがアイアマンガーで、その二世三世の子供たち、が召使になっている。(ハリーポッターだったらここが

まず上の階のアイアマンガーの人たちは、生まれた時に『何かの物』をもらう習慣がある。
これは、把手だったり、暖炉だったり、お風呂の栓だったり、人それぞれだ。
自分の命と同じようにその『物』を大切にしなければならない決まりがある。
この『物』が叫んでいる声が聞こえる一人のアイアマンガーがいる、それが体の弱いクロッドという少年だ。
物は何を叫んでいるかというと、自分の名前(これも後半で意味が分かってくる、なぜ名前を叫んでいるかという意味が)

またもう一人の主人公は、普通の世界からここに召使としてやってきたルーシー・ペナント。
なんせ元気がいい、そして彼女の視点で不思議に思う質問は、読者が思う質問なのだ。
ルーシーは普通の人間の視点というのを代弁している女の子なのだ。

このクロッドとルーシーの出会いから、クロッドの親友の思いがけない出来事や、ルーシーの窮地など何しろ話はあちこちに行き、楽しませてくれる。

・・・・
後半、なぜ、物が名前を持っていたのか。
なぜ物が名前以外を語り始めたのか。
その謎が解けていくところもまた読ませる、あああ!そういうことだったのか!と。
クロッドが物のの名前を聞けるということはとても意味があったことだった。
また、堆塵館がどうやって出来上がっていったかという語りもまた読ませる部分だった。
外に投げ出された(つまりごみの上に投げ出された)ルーシーの描写もまた迫力がある。

次巻が待たれる。

・・・・
以下内容のことではないのだけれど。
(最後の解説で
クロッドやロザマッドの意味(確かにカタカナじゃわからない・・・)
名前のずれでハリエットがホリエットとか(確かにカタカナじゃわからない)
とあるので、これを一覧にしてほしい。
あと、登場人物表がぜひ欲しいと思った。これはつけてないのに何か意図があるのだろうか?
英語と日本語で登場人物表をつけて、そこに名前とともに、クロッドの英語の意味、ロザマッドのマッドの意味をつけてくれたらこんなにありがたいことはない。)


評価 4.9

私が解釈していたイヤミスとこれは違うように思ったのがまず最初だった(帯に元祖イヤミスとある)
嫌な話というよりも、人間が生きていく上での裏側の真実の話、といった印象だ。
だからいやーな気持ちには私はならなかった、こういう苦いことも人生にあるだろうと思って読んでいた。

・・・・・・・・・・・・・
ともかくも読ませる、導入部分から途中からラストまで、面白い昔話をお爺さんから聞いている子供、のような気持ちにさせてくれる。

どんでん返し的なものもある。
『的』」と書いたのは、どんでんにはなっていなくて、すれからしの読者だったら途中で(もしかして・・・)と気づくつくりになっているからだ。たとえば、切り裂きジャックがやってくる、なんかまさにそうだ。
最初の方から多分こうだろう・・・という予感がしていて、その予感を裏切ることのない結末だ。
冒頭の痛み、の作品もそうだ。
それにもかかわらず読んでしまう、読ませてしまうというのは、やはり巧いからだ、語り口が。
思わずずるずると、切り裂きジャックの話に引き込まれてしまう。
痛みの話も、病院にいる人間の半生が先生ごめんなさいという語り口とともに強烈にこちらに迫ってくる。

幻想の趣のある、影とのあいびきは、歌舞伎という日本特有の文化を語りながらも、アラビアンナイトのような不思議な世界観を作り上げている。
日本文化の歌舞伎に入れあげるナディン氏!
ちなみに、この作品、今の目で読むと差別があるとは思うものの、昭和の時代こうだったなあというのがよくわかる作品でもある。
(差別に関しては最後に断り書きがあります、この作品のみ、に対してなのかどうかはわからないけれど)

兄は復讐する、も妹の無念を晴らそうとする兄の話なのだが、これがただの小説にならないのは、
『兄の妹への執着』
が強烈だからだ。この強烈さにまず目を奪われる。
これが恋人ならわかる、また夫婦ならまだわかる、でも妹。
背徳的なにおいが遠くで醸し出されていながらも、一体妹がこうなったのは誰のせいかというのを突き止めようとした兄。
これまたラストが予想できるのだが、それでも必死の兄の様子が手に取るようにわかっていく。

妬み、も大変面白かった。
幼い頃からずうっと舞踊家を見つめてきた一人の女性がいる。
彼女が行きついた先の天才舞踊家という地位。
そしてそれを見つめてきたいわば影役の女性の鮮やかな台頭。
この二つが強烈に脳裏に焼き付く。

一番好きだったのが、かたみ、だった。
何不自由ないと見える裕福な人妻がホテルで命を絶った。
これはなぜか。
幻想的に見えて、これはラスト、あああっと唸る作品だった。
なんとも皮肉な結末だ。
かつて自分が愛していた男が出征してそのあとやむなく生きるために、年上の男性と愛のない結婚をした女性。
ひたすら虚しさを噛みしめていた女性。
彼女のもとに、軍服姿の昔の男性が戻ってきて歓喜の情を交わす・・・
幽霊譚、または幻想譚、または女性の妄想、と思わせておいて、最後の最後でベトナム戦争のことがクローズアップされてくる。ここまでの描写で、ホテルの中に多くの日本から出兵するアメリカ兵がいた、という事実も描かれている。
つまり、女性のもとに訪れたのは、アメリカ兵であってかつての恋人の幻影ではなかったというのが最後の女性の爪に入っていた金髪でわかる(その前に膣の精液でもわかるのだが、実際に交渉があったということは)
2017.04.02 漫画ベスト



久々にどはまりした漫画。

これってそもそも内容を語ってもいいのでしょうか。
これがどういう漫画かというのを知らないほうがずうっと楽しい。
でも知らないと、なんだかわからないで読めないかもしれない。

可愛い絵です。
こちゃこちゃっとした絵です。
ふわふわっと書いてあって、最初はほのぼのとした孤児院(でもなんだか幸せそう・・・)で優しいお母さん代わりの人に見守られながらすくすく元気に子供たちと暮らしている少年少女が描かれています。
ほわほわ可愛い系癒し系かなあと思って手に取った人が一番ひっくり返るほど驚くと思います。

ある映画も思うし、ある小説も思います。
それもネタバレになるし(双方ともに)・・・・
話の骨格がとてもよくできているのです。
ああ・・こうなのだろうなあ・・・と思うような方向にはいかないし、人も全く想像と違った動きをするし。
身体能力の高いエマ(女)とダントツの頭脳を持つノーマン(男)と知恵者でいつも本を読んでいるレイ(男)、この子たち三人が主人公で、三人が三人とも天才児でもあるのです。

騙す騙され、部分も面白いし、根本の話も面白いし、やろうとしていることも破天荒で面白い。
何拍子も揃った漫画だと思いました。

サスペンスというかホラーに近いところもありますが、何しろこの絵なので救われる部分もあります。
2の後半で予想を裏切るまたしても驚きがあったので(ここ驚いた驚いた!!)、これからどう展開するかものすごく楽しみです。
4月4日が待ち遠しい!!(3の出る日)

・・・・・・・・・・・・・・・・・


ぼちぼち読んでるので、まだ2までしか追いついていないのですが、続刊出ています。

これは、天才的な小説の才能を持っている女子高生、がいて
彼女の所属する文芸部があって、という高校生活部分と、
出版不況と闘いながらもなんとか一世一代の作家を見出したいと思っている編集者側部分と
二つが並行して描かれいています。

1より2の方が話が動いていて面白いです(1は導入なので説明が・・・)
何しろ、暴れん坊の一見おとなしそうな女子高生が、最初からヤンキーの指を折るという暴挙に出るとか、すごいのです。
このはちゃめちゃ具合と、内省を必要とする小説とがからんで面白い漫画になっています。

これからの展開が楽しみです。
2017.04.02 3月ベスト本


売れるから、騒がれるから、という理由が要因だと思うけれども、村上春樹っていうとすごく微妙な反応の人が多くて残念です、熱狂的なファンがいる一方で。
今までの作品の既視感はあるものの、十分読ませました。
読ませる力相変わらずあると思います。
ただ・・・この話の続きも読みたい気もします、続編ということではなく。
311のあたりの話がもう一歩あるような気がするから。

・・・・

これは、完璧な家と完璧な素敵な夫と完璧な何でもこなせる妻の話、なのですが。

一見よくある話のパターンのように見えます。
でも、これが巧いのは、予兆が見える恐怖を描いているところだと思いました。
実際に何かがあったといえばあったのだけれど、暴力とか血とかへの予兆。
予兆の怖さが物語を牽引してくれます。
とても面白く読みました、支配被支配というのも考えつつ。

・・・・・

最初から拷問場面で始まる辛い話であるのに、途中で爽やかな気持ちになる青春小説でもありました。

途中でのいろいろな場面が最後にもう一度読みたくなりました。
タイトルととともに嚙み締めました。

3月の読書メーター読んだ本の数:15読んだページ数:5106ナイス数:358少年Nのいない世界 01 (講談社タイガ)少年Nのいない世界 01 (講談社タイガ)感想好きです、これ。ライトSFって感じかなあ。小学生の子供たちが異世界に行ってしまうという設定で楳図かずおの漂流教室を思い出しました。が。これは一人もしくは二人がばらばらの『別の星』に行ってしまうという設定になっているのでさらに過酷です。誰も頼る人がいない場所、言葉も通じない場所で懸命に生きていった結果、5年の月日が流れて・・・一人の少女(彼女の意図も気になる!)が皆を訪ねて安否確認をし始めるのです。まだ出てこない子もいるので次巻が楽しみ!これと対になる少年Nの長い長い旅の方もぜひ読んでみたいです!読了日:03月29日 著者:石川 宏千花
完璧な家 (ハーパーBOOKS)完璧な家 (ハーパーBOOKS)感想完璧で素敵な弁護士の夫は、グレースという女性の、障害のある妹まで引き取り、明るく一緒に暮らそうよと言ってくれます。皆の前で妹とダンスを踊ってくれます。妹の好きな色の黄色で新しい部屋を作ってくれたりします。なんて素晴らしい人・・・、と思いきや!ありがちなのですが内容としては。ここには惨殺死体もなく血もほぼなく暴力もほとんどないのに、予兆だけでこれだけぞくぞくさせるとは。支配される恐怖、誰も自分を信じてくれない絶望感と閉塞感、脅迫の数々、上手ですそのあたりの描き方が。黄色と赤、そこがとても大きなポイントです。読了日:03月29日 著者:B・A・パリス
ゼロ・アワーゼロ・アワー感想猫、タンゴ、暗殺者、ブエノスアイレス。巧いんだけど。ど。読了日:03月29日 著者:中山可穂
失われた地図失われた地図感想特殊能力を持つ人たちがグンカと闘う、という世界がいきなり語られ始めるので、最初は戸惑いますが、そのうちに引き込まれました。日本各地に残る軍部跡地での記憶の残滓の語られ方が良かったと思います。ただ・・ちょっとストーリー的に弱いかなあと思いました。そして最後まで読んで、まだ途中と思いたいです。非常に読ませる部分がある反面、これではあまりに中途半端に終わっているから。読了日:03月29日 著者:恩田 陸
コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)感想冒頭のところで過酷なナチの捕虜への処遇があり、悲惨な状況の女性が非常に哀れで心傷みました。その後彼女はイギリスのスパイとしてナチの捕虜になっていたことが判明し、手記で情報を書くように強制されます。凄惨な場面も折々に入ってくるのにこの手記だけど、青春物語の素敵なことと言ったら!出自の違うマディとクイーニーの友情、祖国と飛行機への愛と続き、特に印象的な場面は、飛行機から見た色の違った太陽の場面でした。第二章、全く違った観点があるので、第一章をなめるように読み返しました。最後は泣けました、私は好きですこの小説。読了日:03月22日 著者:エリザベス・ウェイン
ぼくが死んだ日 (創元推理文庫)ぼくが死んだ日 (創元推理文庫)感想楽しいです!一人の少年があるきっかけでゴーストたちの物語を聞くという羽目に陥ります。典型的なゴーストストーリーなのですが、中に、アッシャー夫人とか火事とか棺とかでポーを連想させ、またもろに猿の手の使い道が出てきて、先人の作品への強いリスペクトが感じられました。鏡の話もハリーポッターや白雪姫などあらゆるものに出てきますよね。一人一人の若くして死んだゴーストのストーリーが面白いので強く引き込まれました。墓碑に生年と没年あって、解説にもあるようにそこから歴史も話の中に織り込まれていてなかなか凝った作品なのです。読了日:03月22日 著者:キャンデス・フレミング
【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (『このミス』大賞シリーズ)【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (『このミス』大賞シリーズ)感想基本は、なぜ保険を掛けた末期癌の人が完全に治るのか、という謎につきます。癌治療のみならず現代医療の問題点、パンの食中毒の話、鬱的な傾向の人の文学作品の高度なことへの言及と話題が多岐にわたる部分が面白かったです。会話で重要な部分が進んでいくので、ここがやや平板でたまに誰が誰やら混乱しました。地の文章だったらなあと。あと・・・謎があいても、一般人の私としては医療への不信と(物語とはいえ)気味悪さが先に立ってというのが正直なところ。決してつまらなくはなかったのですが。最後の一行・・・ううむ・・・読了日:03月22日 著者:岩木 一麻
神様の裏の顔 (角川文庫)神様の裏の顔 (角川文庫)感想このタイトルから当然、誰かの裏の顔の話、と思って読者は読むわけです。聖人君子のような誰からも愛される教師が死んだ、という話が冒頭あり皆が絶賛していて、(怪しい・・・)と読者はここで既に思うわけです。そのあとやっぱり!の展開がありそこで終わりと思っていたら、え!の展開があり、更に、裏の顔はこういう意味だったのか!という・・・・。面白いのですが、全部わかってしまうとそうなのか、となんだか物足りなさが残りました。一読で終わっちゃうかなあ。そこここにユーモア場面があります。読了日:03月17日 著者:藤崎 翔
僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)感想カフカという一文字と、この作者なので読んでみました。カフカ部分は非常に楽しく、もしカフカ作品を読んでいなくても読んでいてもどちらでもこの考察とかおしゃべりは読ませると思いました。ただ、惜しむらくは、主人公と女子学生のキャラクターがあと一歩・・・。特に女子学生の方、なぜ彼女がカフカをそれほど愛するようになったのか、という最初の部分を知りたいと思いました。ちょっと盛り込みすぎなのかなあ・・・彼女の謎、日常の謎、そして大きな事件の謎と。でもでも、198ページの謎は倒れるほど驚きました!!次作希望いたします。読了日:03月17日 著者:森 晶麿
青鉛筆の女 (創元推理文庫)青鉛筆の女 (創元推理文庫)感想青鉛筆の女!(彼我の違いを再認識)話は3つの分野にくっきり分かれています、パルプフィクションと編集者からの手紙と改訂版と称する小説の3つに。編集者からの手紙で、どんどん書き替えさせられるフィクション。3つの中で改訂版の自分がいわゆるタイムスリップ&自分の存在自体が危うい世界に行くという部分が非常に面白く読ませました。それとパルプフィクション部分が重なり合い最後の方で思わぬ展開がありました。史実を知らないと面白くないと思うので、ウィキペディアを横に日付と用語を読むと更になるほど!と思う部分があると思います。読了日:03月15日 著者:ゴードン・マカルパイン
地中の記憶 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)地中の記憶 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想うねるように話が進む緻密なミステリ。過去の視点は『わたし』であり、現在はアニーの視点の三人称でした。15歳の年に井戸の中を覗き込むとそこに将来の伴侶が見える、という言い伝えを信じて屈折した少女アニーが覗き込みに行くというところから物語は開幕します。冒頭から途中まで過去に何が起こっていたのか、起こっているのか、この人は真実を知っているのかいないのか、小出しに出てくるので概観がわかりにくかったのですが途中から一気呵成。過去のジュナのキャラクターが強烈で両方の時代の姉妹のありようが重なってそこも読ませました。読了日:03月15日 著者:ローリー ロイ,Lori Roy
深い穴に落ちてしまった深い穴に落ちてしまった感想自分の頭が深い穴に落ちてしまった、のかと思いました。素数?暗喩?寓話?これの解答編、のような本がほしいです、いかにそれぞれで読むとはいえ。読了日:03月15日 著者:イバン・レピラ
最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常感想藝大の中が音楽系と美術系がまったく違っているというのになるほどなあ・・・と思いました。音楽系の話では、ちょっと前に読んだ小説恩田陸の蜜蜂と遠雷を強く思い出しました。やっぱりコンテストとの戦いなのですね、あと先生とは師匠と弟子の関係。これが美術になると、自分よりもその作品だし、一過性のものでもないし、全く違う藝術なんだと改めて思いました。面白く読んだのですが・・・・続編を出してほしいです、掘り下げるために。藝大の数名の人たちだけではなく、先生とか両親とか(出ていましたが間接的が多い)へのインタビューとか。読了日:03月10日 著者:二宮 敦人
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編感想騎士団長が出てくるところは言葉遣いにユーモラスさを感じました。一方で禍々しい鈴の音が鳴っていた土の中、これが最後になってまたきいてきます、ここは村上春樹の某小説の井戸の底に行く感じでした。免色さんの娘への思いの形がギャツビーの行動と同じだなあというのも強く思いました。父と子のモチーフが形を変えて現れています。夢での交わり、一人称、おしゃれな料理、音楽、文学への造詣とそこも楽しめました。一方で私には謎が残っています、免色さんの心の奥の闇とは何か。なぜ彼は最初の段階で穴を強烈に掘ったのかなど。エピローグは?読了日:03月10日 著者:村上 春樹
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編感想楽しめました。今までの村上春樹を読んでいるとそこに使われていることがたくさん出てきますが、私は焼き直し、ではないと思います。一人称で書かれていて、今回は主人公は画家で、肖像画で糊口をしのいでいたのですが、妻との別居を機にある画家の別荘に住むことになるのです。最初にプロローグがあり、そこに顔なしが出てくるので、これはいったい?と思っているとラストまで読むとこの話だったのか!と膝を打ちました。広義のミステリでもあり、肖像画依頼してくる免色さんは一体何の意図が?とか、鈴の音は?とか引っ張っていってくれました。読了日:03月10日 著者:村上 春樹
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