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2019.03.13 拳銃使いの娘



「どのみち普通だったことなんてないもん。
あたしは金星の子なんだから」


評価 5  

ポリー!ポリー!ポリー!!
11歳の少女ポリーがとても魅力的で一気に虜になる。
最初の内、おどおどとしていて、刑務所帰りの父親の姿自体にもなじめないポリー。
どうやら学校でも浮いていたようなポリー。
そのポリーが実に逞しく成長していく、それも悪の方向jに、というまことに読ませる話だった。
とても面白かった。

刑務所で、そこのドンの親族を殺してしまったネイト。
刑務所内から指令を出せるくらいの男の親族を。
そして、ネイトが出所するのに合わせて、彼と彼の娘と彼の元妻を殺せという指令が飛び交う。
ギャング団の密な関係で追われることになるネイトたち。
しかももう既に元妻は新しい夫とともに殺されていた。
ネイトは娘のポリーを連れて逃避行に出るのだった・・・


自分のやらかしたことによって家族が殺される(自分もだが)という危険に陥らせたという事に責任を感じているネイトの姿も鮮やかに見えてくる。
この小説、どの場面も『映像が脳内に見える小説』なんだと思った。
最初の方ではでも長年離れていたポリーにそれほど執着はない。
父親としての自覚もない。
けれど、途中からポリーの機転の利かせ方、ポリーの可愛さ、ポリーの成長具合を見ていくにつれ、徐々にネイトも変わっていくのだ。

ポリーはポリーで11歳の女の子で実に普通の生活を送っていた。
義理の父親と自分の母親が最初殺されたことすらわかってないのだ。
それを知ってそのショックから立ち直ると・・・・彼女のある部分がちょっとだけ開く。
更に、父親ネイトが現れることにより、彼女のある部分(悪の部分)が完全に開花する。
それは彼女にとって花開くというようなことでもあったのだ。

彼女の常に持っているくまちゃんぬいぐるみの存在が光る。
これが第三主人公と言ってもいいくらいに重要な役割を占めている。
時々のポリーの心、をくまで示し(熊を動かし話しているポリーがいる)、見ている大人はそれを見てちょっとほっこりしたり、こうなんだろうなあと思ったりする。
その一方で、体を鍛えたり敵に追われている時のノウハウを乳から聞いて吸収したり、ポリーもとても忙しいのだ。
彼女の賢さでぐいぐいと吸収して成長していく姿が悪の方向とは言え、そして真っ当な道ではないとはいえ、実に頼もしい。
後半で、父親を何とか助けようとしようとする気持ち、死を顧みず知っている人が殺される時に突進していく姿、も忘れ難い。

ネイトの視点、ポリーの視点、別の人の視点と入れ替わりが激しいのだがそこも何ら違和感がなく読める。
全体が深くない書き方で掘り下げてない感じもするのだが、この話にはこの書き方がとてもあっている。
軽快にとんとんと進んでいくのが読んでいて小気味いいし、ポリーとネイトの関係性の変化にも沿っている。

・・・・・・・・・・
この話、ギャングに追われているので、どう最後結末をつけるのか、と思った。
いわば果てしのない旅だから。
誰か一人を殺せば終わりというものではないから。
上手く最後まとめたと思った、しかもポリーを使って。
途中で悪徳警官が出て来たり、最初にポリーが電話をしたパク刑事が出て来たり、警察側もまた読んでいて楽しい。

ラスト、非常に味わい深い。
ポリーの一言一言が身に染みる。
死闘の挙句、片目をくりぬかれそれでもポリーを思っていたネイトの心も美しい。
そして、一見普通の生活を送っているポリーの元を訪れたパク刑事にポリーは大人のような言葉を放つのだった。
彼女は一種地獄を見たのだと思った、そしてそこから立ち上がったのだとも。

映画化されるらしいが、ペイパームーンのテイタム・オニールが現在まだ子供だったらポリーのこの役是非やって欲しいものだ、と思ったものだった。



評価 4.6

ああ・・・これが賞を3つもとった(アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞、英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞、アンソニー賞最優秀長編賞)というのがわかる。
それはこの話そのものの内容から、現代のアメリカの状況でとるべき本ということなのだろう。
勿論それ以外にも話そのものに力はある。
けれど、それよりも何よりも、今期のアカデミー賞のグリーンブックと同じような匂いをとても感じたのだった。
分断と亀裂と混沌と差別、そしてヘイトクライム。
ヘイトが満ちている国になってしまったアメリカ。
そこでこういう作品を出すということに意味があるのだろうなあと強く思った。

やや、盛り込みすぎか。
テーマ的にも書き方的にも重い一冊なので、このテーマだけでもおなか一杯になる。
主人公ダレンの出自だけでも物語に満ち満ちているのに、その上ジェニヴァーの数奇な人生もまた語られる、更には奥さんを殺されたキースの運命もまた。
このあたりが、私にはやや入れすぎかなあと感じられた。
車の中に血まみれの鹿の頭が置かれている場面は、ゴッドファーザーを想起した。

・・・・・・・・・・・・・・
話はやや複雑だ。
良い言葉で言えば重層的、読み込まないとやや飲み込みにくいところが多い、と言ってもいい。
ある事柄が起こると必ずその裏側に似たような事柄がある。
最初の内、レンジャーが何かよくわからず、保安官?と思っていると保安官は別にいた、かといってFBIでもなくいったいこれは?と思っていたら途中でわかってきたのだ、これが地位が高いものだというのがわかってくる、そして黒人がこれになるということはいかに難しくいかに名誉なことかという事も。
事件そのものは非常に単純である。

テキサス州の田舎町シェルビー郡ラークという町でで二つの死体が出た。
・一体は都会から訪れていた35歳の黒人男性
・一体は地元の20歳の白人女性
二人とも溺死というのは共通していた・・・


事件の真相を追う人物が、これまた黒人のダレン。
彼はテキサスレンジャーであったけれど、今は休職中になっている。
休職の原因が
『・ダレンの実家の農場を長年管理していたマックという実直な老人の孫娘が、貧乏白人のマルヴォイに付きまとわれていた。
身の危険を感じるほどに。
・老人マックとマルヴォイの睨み合いがあり、仲裁に入ったダレン。
・しかしその2日後、マルヴォイは近くの溝から発見される』
というものだった。
このエピソートで既に黒人対白人という図式が出来上がっている。
また、そもそもの最初の死体二つの話の中でも、
・これが逆の順番だったら腑に落ちた、つまり白人が殺され黒人が殺されたのだったら、復讐だ
という発想そのものが既に差別が身に沁みついているのがわかる。

・・・・・・・・・・・・・・
ダレンが追っていく内に、彼自身の出自もわかってくる。
彼は、リサという女性と結婚しているが、彼女はもっと彼に家にいて欲しいと熱望している、彼らの結婚生活は危ういところにあるのだ。
解説にもあるように、この結婚生活の危うさは
『最初に殺された黒人の男性がなぜこの街にやってきたか』
という所にも繋がって、また彼の美しい妻ランディ(彼女がダレンと一緒になって真相を追っていく場面もまた読ませる)とうまくいっていなかった、だからこそ黒人男性はこの街にある愛の目的でやってきた、ということにも繋がってくる。
このあたりの見せ方がとても上手だ。

・・・・
しかし何と言ってもこの話の中で印象深いのは二つの店の話だろう。
・一つはアイスハウスと言われているジェフの酒場。
ここはジュークボックスなどがある広い酒場だが恐ろしいくらいに白人至上主義の場になっている。
KKKなど目ではなく、ABTという言葉もここで出てくる。
更には、殺された女性ミシーの夫のキースもこれではないかと言われていた。
ABT、はKKKよりもっと過激であり、入団する唯一の方法は、『ニガーを殺すこと』であった。
ダレンがここに入っていく姿など、目に焼き付くほど怖い。
しかし死んだ白人女性ミシーはここで働いていたのだ。
そしてまた、黒人女性のランディ(殺された夫マイケルを探しに来た奥さん)ともここで出会う。

・もう一つはこじんまりとしたジェニーヴァ・スイーツ・スイーツ。
ここを切り盛りしているジェニーヴァという女性の人生の遍歴が一番この話の中で読ませた。
彼女の辿った数奇ともいえる運命。
それが全ての核になっている。
最初の内、ダレンがいくらジェニーヴァに話しかけても彼女とは交流ができない。
このあたりは読んでいてイライラするのだが、後半になってなぜかというのもわかってくる。
ジェニーヴァの非常に複雑な立場があったのだった。

・・・・・・・・・・・
一方で、人々の話も錯綜しているが、この中のもう一つの主人公は、テキサスの小さなこの町そのもの、なのだと思った。
ヘイトを生んでしまう町。
黒人を差別するのが普通の町。
学がありお金を持っている黒人でも黒人と言うだけで、貧乏は久慈から差別される町。
あたかも生命をもって動いているようなうねうねとした生き物のような町。
その町の中にいる強烈に自分に自負を持っている白人たち。
人間の真の姿が焙り出されてくる物語だ。
また家族間のトラブルが(これもまた白人VS黒人が絡んでいる)野火のように大きな別のトラブルに発展していくのだ。


以下ネタバレ含めての感想(自分用)

・ジェニーヴァがこの話全体のキーになる人物。

・殺された女性ミシーが黒人男性と関係したことにより、子供がどう隠しても黒人の血を持っていることがわかってくる、成長するにつれ。
ミシーの夫のキースは生粋の白人至上主義者だ。
けれど、キースはそのことを全てわかった上で、子供をどうしようもなく愛してしまう。
このあたりの人間の心のブレ、一筋縄ではいかない動きが読ませる。

・キースは自分の妻ミシーが黒人と関係したという事を根に持っていて、新たにやってきたマイケルという黒人を袋叩きにする。けれど彼は殺していない。
アイザックがとどめを刺していた。

・ウォリーはアイスハウスのオーナー。
ウォリーの父親は、かつて美しい娘ジェニーヴァに惹かれて関係を持ち、彼女のために店を作ってあげる。
それがジェニーヴァ・スイーツ・スイーツ。
しかしその後、ジェニーヴァは偶然やってきたブルースの演奏者の黒人のジョーと結婚し、子供を持つ。

・アイザックは長い間ジェニーヴァの店で床屋をしている男。

・ジェニーヴァは最初ジェフと関係を持つ。
ジョーにはウォリーという息子がいた。

ジェニーヴァにもジェフとの間に子供ができなる。
その時点で、音楽家ジョーがやってくる。
その1年後ジェフは死亡。
ジョーはその子供を可愛がってくれる、リル・ジョーとして。

つまり、ウォリーとリル・ジョーは母親違いの兄弟。



評価 4.6

なぜこれを読んだかというと、あの『時の娘』のグラント警部がここで初登場しているらしいということだからだ。
お!動いているグラント警部!!
あと、タイトルが非常に魅力的だ。

話はオーソドックスな形の古き良き時代のミステリだ。
死体、容疑者、美しい妻と仲良い夫、そして遺言・・・
最終で犯人の動機らしきものがわかるのだが、これ?これが動機?と思ったが・・・まあここも古き良き時代という事なのだろう。
(加えて言えば、動機がわかるプロセスがちょっとお粗末のような気がする、今の眼で見ると)
あと、犯人当てというより、このミステリは途中の人々の活写具合が読んでいて楽しい。
映画女優クレイの孤独、そして貧しかった過去から一気にのし上がった彼女の心境、幼い頃の劣悪な家庭環境、
そして彼女の周りを取り巻くきらびやかな映画関係者、その下克上の世界、
更に更に、クレイが快く家を共にした青年の悲劇など、そのあたりは読ませる。
グラント警部も生き生きとまではいかないが(なんだかゆったりしている印象)、少なくとも失敗はしながらも歩いてはいるのだから、こういう人なんだろうなあというのがわかる。

イギリス南部の海岸に一人の女性の溺死体が上がった。
彼女の身元はやってきた青年によってすぐにわかり、彼女は有名な映画女優クリスティーン・クレイだという事だった。
青年は、放浪の末彼女に拾われたような身分で居候していた男ティンダル。
当然彼に容疑がかかるのだが・・・ある時から彼は姿を消したのだった・・・


なんといっても溌溂としたエリカ・バーゴインという若い女性の活躍ぶりが楽しい。
彼女は警察署長の娘であり、捜査に行き詰まりしかも容疑者のティンバリーを逃したということで頭を抱えているグラント警部の一筋の光明となる。
そして黒いコート!!!
これがどこにあったのか、ティンバリーの黒いコートからは重要なボタンがとれているのか?というのを見事に探し出してくれるのだ・・・

クレイの過去をもうちょっと書いてほしかった。
弟との繋がり部分をもうちょっと深く書いてほしいという気持ちにはなったのだ。





評価 5

うわーー子供の本?とか侮っていた!!ごめんなさい!!という気持ちでいっぱいだ。
面白そうだあなあと思いつつ、もしかして絵本?とか思っていたのだが、読んでみたら文字がいっぱいあってしかもヨシタケシンスケさんの可愛い絵がたくさんあって、しかも本に関する話で、くすっとしたり、しんみりしたり、え、と驚いたり、それはそれは楽しませてもらった本だった。

ある書店に店主さんがいる。
彼の元に色々なこういうことに関する本はありますか?という質問を客が持ってくる。
それに対して店主さんは、こういう本がありますよ、と架空の本を教えてくれる。
これがまた面白いのだ。
単なる思い付きではなく、練られている本の話。
しかも本当にありそうな
書店婚、とか
本のお祭り、とか(この中で春追いに大爆笑、一冊のアイドル写真集を町中の男子中学生が奪い合うお祭りって)、本の降る村とか(雪のようで出られなくなるというところが微笑ましい)
ほのぼのとしている。

私が一番(あったら面白そうだなあ・・・実際に)と思ったのは
お墓の中の本棚、だった。
1年に1度だけパかっと開くお墓に入っているのは、大切な本たち。そしてそこから一冊とる代わりにその年の一冊を入れる、ってなんて素敵なアイディアなんだろう!!
2019.03.08 浅田家


評価 4.6

前知識ゼロだったので、一体????と最初は頭の中に?が舞っていた。
ごく普通の家族写真、と思っていたから。
途中でこの仕掛けがわかって、大笑いしていた。
いやあ・・・よくご家族が協力したなあ・・・

この中で、一番皆が合っていたのは
極道の一家の部分だと思った。
なんだか全員がはまり役、のような気がしてならない。
息子二人、お父さんも頑張っているけれど、お母さんが何と言っても味わい深い!
どこでも何らかの役割を果たしているお母さん。その存在感ったらない。不思議に何でもぴたりとはまってしまう、という人なのだ。

これをどうやって映像化するのだろう?
楽しみでもあり怖くもある。


<以下本の内容に触れます>

家族全員が色々な職業の人になったというコスプレという仕様になっている。
ある時には消防車の人(表紙の写真)
ある時にはシュプレヒコールを上げてるデモの人(ここでお父さんが日曜日撮影反対と書いてあるプラカードを出しているところに笑った。本当なんだろうきっと)、ある時には床屋と目まぐるしく変わっていく。

惜しいと思うのは、息子君の刺青が非常に目立つので、これで長袖でない限り限定されるという事だ、役柄が。
あれだけの刺青ということで、先入観は持つだろうから、見る人の側も。



2019.03.06 クロストーク



評価 5


厚い。
厚い上に二段組・・・
と思って躊躇していたのだが、読むのを。
読み始めたら、一気呵成に・・・・というわけにもいかず・・・・

なぜかと言えば、正直に言うと、4章まで私は非常に困難を極めたからだ。
そもそも、主人公のブリディの会社に押しかけてくる、彼女のアイルランドの一族らしい親戚は何?子供のことを無茶苦茶干渉しているこの母親は何?鬱陶しいことはなはだしい。(が、最後まで読んでこの部分を読み直すと実に味わい深い。)
そもそもの二つ目で、ブリディが恋人とうけようとしていて皆が反対しているEEDってなに?これが見えない。何?
そもそもの三つ目で、この会社の鵜の目鷹の目的な同僚やら先輩やら後輩は何?なんでこんなに人のことを知りたがる?ここでもEEDって何??

わからないまま話が進んでいって、もうあちこちにブリディが親戚逃れで逃げていて、地下まで逃げてそこで変人がいてその人がまたEED反対派であって(だからEEDって何!!)

主人公が右往左往している姿って何かに似てるなあと思っていて、あ、同じ作者の航路だ!と思い出した。
船内をそれはそれは右往左往する姿。
あれに重なっている、但しだいぶ状況は違うけれど。

しかし4章以降非常に面白く、これはラブストーリーなのだなというのが見えてくる。
更に、話は進んで、某有名日本SFの様相も呈してくるにしたがって、そこもとても読ませる場面だ。
最後に全ての真相が明かされるのだが、そこもまた冒頭部分の訳の分からないところと繋がっていてここもお見事だ、
何と言っても、ブリディの若い姪のメイヴが可愛らしい上に賢くて彼女が出てくると思わず微笑んでしまう。
最後の方までメイヴは関係してくるのだけれど、ひょっこり出てくるところが可愛いし、あと年よりも精神年齢が上で、周りの大人達よりずうっとしっかりしているところがかえる。
そしてメイヴの秘密もまた・・・

・・・・・・・・・・・・
4章に入ってようやくこの話が見えてくる。
3章でとうとう手術を受けるからだ、EEDとやらの。
ここんきてだいぶ状況がわかってくる。

携帯電話メーカーコムスパン勤務のブリディ。
誰からも羨ましがられる恋人トレントともっと深い愛を作るために画期的なある脳手術をすることになる。
それは二人が手術をすると
『お互いの気持ちをダイレクトに伝えることができる』
というテレパシーのようなものだった。
アイルランド系の親族にはそもそもトレントとの結婚を反対され、同僚にはEED手術を好奇の目で見られ、コムスパン一の変人CBにまで強烈に反対され、それでもブリディはこの手術を受けることにする。
そして繋がったのは・・・・


繋がった相手が忌み嫌われていたCBというのがなんともいえず皮肉だ。
トレントとはなんとしても繋がらない。
努力をしているブリディが最初は痛々しいのだが・・・
そしてここから新たな展開が広がっていく。

ブリディとトレントとCBとの三角関係に加えて、ブリディの相変わらずやかましい一族の登場(ここでメイヴが一気にクローズアップされていく)、新製品をめぐる競争、そしてトレントの真意など、読みどころ満載の話が続々と出てくる。
人の心が読めるということはいい事ばかりではない、というごくごく当たり前の事もきちんと描かれている。

以下ネタバレ含みます

CBと繋がったことに猛反発しているブリディが最初いるのだが、彼女がCBへのいつも変わらぬ助けを受けるうちに愛に変化していくというところが読ませる。
どうしようもなくなったところにさっとCBが助けに来てくれるところなど、もう騎士道の物語のようだ。
ブリディがCBと繋がるのみならず、一般の人の思考がわあっと入ってくるところは七瀬シリーズを思い出した。そして読ませるところは、CBがその防御策としてイメージで壁とか部屋を頭の中に作らせるところだ。
ここがとても面白い。

なだれこんでくる周りの人の思考を遮断する方法を教えてくれるCB。
どちらかというと変人で嫌っていたCBがなんと途中から輝いてくることか!
そして完璧と思っていた婚約者のトレントがなんて陳腐な男に見えてくることか!
このあたりの逆転劇もとても面白い。
更に、

CBが実はアイルランド人の血を持っているということがあるところでわかる。
名前から想像がつかなかったが(アイルランド系の名前の特徴というのがあるらしい)、実はそうだったという告白にブリディも読者も驚く。
告白の向こうには、CBが調べたところによると、アイルランド系の人がこのテレパシー状態を発生しやすいということがあるらしい、という話があった。

遮断するために架空の部屋、架空の隠れ家、安心した場所、を脳内に作っていくこの場面が忘れ難い。
(ハンニバルの本の中で、レクターが無数の部屋がある広大な宮殿を脳内に構築しているのも思い出す)
また歌を歌ったり、詩を暗唱したりして、人様の思考の群れを断絶するというのも面白い。
ここで意識下の二人が出会い話せるという状況も読んでいて非常に印象深い。
図書館の使い方も非常に印象的だ。

そして何と言ってもメイヴ!
彼女もまたテレパスであった。
最後の最後でわかったことは、アイルランド系の親戚全体がこの能力を持っていたのだ。
特に冒頭で一番ブリディに干渉してきた大叔母のウーナは最大にこの能力を保持していた。
2019.02.28 2019年2月漫画


あのここまで続いていた相続の話が一旦終わりました・・・
また新たな話が始まる巻・・・
今回心霊っぽいな話がかみ合っていてとてもまた面白いです。
この数字の羅列がたまりません。
そして、相変わらず色々言っている整(ととのう)君。
あー是非実写化して、高橋一生にこの役をやっていただきたい。
合うと思うんだけどなあ・・・・

・・・・・・・・・・・・・・



オスマン帝国にはまり込んでいるので、
ついにこれに手を出しました・・・
ヒュッレムがテレビドラマよりずうっと可愛くてまだあどけない・・・これは1巻だから?漫画だから?
まだ判別尽きませんが。

オスマン帝国に否応なく入れられたヒュッレム。
彼女の数奇な運命、そしてこれからのし上がっていくだろう強い精神力、がみものです。

・・・・・・・・・・・


作者を全く知らなかったけれど(ごめんなさい!!)、とりあえず15世紀ヨーロッパを駆け巡る少女達というので信じて読んでみました。
面白い!
絵も好みの方かなあ。
イタリアから、二人の少女がクレタ、クリミアに行こうとする二人の少女達。
道中の風景も非常に見せるし(15世紀)途中途中の作者の簡単な当時の歴史背景も読ませるし。
これからも続けて読みたいっ!
2月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:820
ナイス数:246

ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)感想
前知識ゼロで読むことをお勧めします。良いです。小学六年生ハルのかなり大人びた思考と彼のロケットに対する情熱、ロケットづくりの話、一方で学級での彼が無視されているという立ち位置、そこに転校生のハーフの女の子鳴沢イリスがやってくる、といういわばボーイミーツガールの話でもあるのです。最初からずうっと各所に違和感を感じてハル君にも共感ができるようなできないような気持ちでした。ミステリ部分は途中のハルの5年生の時の学級内の出来事?ところがあるページで、は!!!氷解!!ハル君、将来宇宙に携わる仕事に就けるといいね!!
読了日:02月19日 著者:八重野 統摩
死ぬまでに一度は訪ねたい東京の文学館死ぬまでに一度は訪ねたい東京の文学館感想
写真と文章とそしてグッズまで紹介されているコンパクトな一冊。読んでいて本好きとしては楽しい一冊でした。個人的なことを言えば、多くは行ったことがあるので、ああ・・ここにこんなグッズがあったのに見落としていた?とか、この喫茶店入らなかったけど良さそうとか、そんなことに目がいっていました。ただ、トップの漱石のは、まだ行っていないのでぜひぜひ近々行ってみたいです。表紙にもなっている東洋文庫ミュージアムは行くと圧巻です、ただただ圧倒されます、ここにある通り。本棚を見るだけでも価値がある文学館だと改めて思いました。
読了日:02月19日 著者:増山 かおり
償いの雪が降る (創元推理文庫)償いの雪が降る (創元推理文庫)感想
私の今年の一冊に入る本でした。主人公大学生のジョーが非常に好感が持てる青年で、彼が余命いくばくもない元殺人暴行犯のカールと介護施設で出会う所から始まります。ジョーは大学の課題のために当初会うのですが、過去の殺人が本当にカールがしたものなのか、と疑問を持ちます。カールがなぜ易々と殺人の罪を認め長期間過酷な刑務所に入っていたのか。カールの壮絶な過去、そしてジョーの非常に厳しい家庭環境、ジョーの隣人のライラの過去と、それぞれの心に抱えているものが明らかになる時に感動しました。真犯人の開き方も!そして雪!効果的!
読了日:02月19日 著者:アレン・エスケンス

読書メーター



『地球は青かった。神は見当たらなかった(ガガーリン)』

評価 4.9

読後感が非常に良く、また驚きも根底にあってまだその衝撃を受け止め切れていない。
ボーイ・ミーツ・ガールの話であり、小学校の学級の話であり、宇宙を目指す男子の話であり、かなり大人びた小学六年生の男の子の物語であり、好感は持てるのだが・・・でも、この設定を小学六年生って幼すぎないか、せめて中学2年生ぐらいなんじゃないか、と思っていた、あるページまでは。
が。
あるページで、ああっそういうことだったんだ!!だったら納得する!!すごい、と考えを改めた。
ちょいちょい違和感があって、え?と思っていたことがそのページで氷解する快感と言ったら!

将来NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハル。
風船宇宙撮影というのを目標にしていて、自分だけの力でなんとか撮影をしたいと望んでいる。
そんな彼は学級内で浮いていた、友達もほとんどいなくて気のいい三好という男子だけが何かと話しかけてくれている。
ハルの家はさびれた商店街のクリーニング屋、そこで家族経営をしている。
意地っ張りで大人びたハルは家庭内でも両親とうまくいかず、クラスでも孤立、夢は宇宙というただそれだけが生きる糧だった。
そんな彼の目の前に一人のハーフの転校生の女の子が現れる・・・


転校生の金髪の女の子、鳴沢イリス。
彼女は日本語より英語の方が得意で誰とも友達にならないというスタンスを取り続けていた。
しかし英語のできるハルとある日仲良くなり、そこから三好も加わって三人の輪ができていくのだ。

イリスが転勤の多い父親、そして外人の母親に対する屈折した思いを持っている、という事も描かれている。
そこからハルが自分の両親に対して、イリスと同じような勘違いをしているのではないかという事に行きつく過程も描かれている。
彼女の行動、クラスで普通にはじかれていく様子なども克明にわかってくる。

また、過去に何かがあり、それでクラス全体がハルを腫れもののようにしている、というのは割合初期に出ている。
これは何だったのか?と思うだろう。
そしてとうとうこのことが分かった時には、それほど大きな驚きではなく、予想範囲内の驚きであった。

しかし、イリスが行方不明になり彼女を探しに行ったハルのとったある行動が予想をはるかに超えた驚きを持っていた。
ここでこの小説、がらりと様相が変わってくる。

(・三好があと一歩描けていたらと思うのは贅沢な希望だろうか。
彼の佇まいがいいだけに、彼が家庭でどういう感じかとか彼の両親の感じとかもうちょっと知りたい感じがした。
ハルととてもかかわりのある人間になるのだから。
・またクラス内の女の子のいじめの話はこれで終わりなのか。
ここももう一歩・・・
・また親子関係の話で、ハルの方の親子関係はハルが見方を変えて繋がっているが(ここもちょっと納得はしがたい部分もほのかにあるけれど)、イリスの方はこれで終了なのか・・・)

ハル、いつか宇宙に携わる仕事ができるといいね。
ラスト思わずこう呼びかけたくなる。
続編を一瞬期待したのだが、全てネタバレになってしまったらもうできないのか。
でも中学生のハルを見守ってあげたい。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


以下ネタバレ

・商店街で話題になった事は
ハルが5年生の時にひどい虐めにあい、その相手を完膚なきまで叩きのめしてしまったことだった。
これでハルは怖い子、乱暴な子、というレッテルを貼られるばかりか、実家のクリーニング店の存亡の危機まで負う事になる。

・イリスは日本語がしゃべれないと言っていたが、実は普通にしゃべれていた。

最初からいくつかの違和感があったのは
・これほど小学6年生が細かいことを思うだろうか、こんな思考回路をするだろうか、考えていることが多いのだろうか(と思っていた)
また、かぶりをふる、というのが当初から何度も出てきている、なんでこの子は言葉に出してうんとかいいえとか言わないんだろう(と思っていた)
・いくら不愛想でも心の中でこれだけいろいろ思っているのに言葉数が少なすぎないか(と思っていた)
・鳴沢イリスとハルが初めて話した時に、いつも持っているシャープペンシルと記載されている。
ハルはシャープペンを手で回す癖とか触る癖があったのだろうか(と思っていた)
・会話文が、<      >と「    」の違いって何だろう?
・三好との会話がいつも三好が非常に多く、ほぼハルはしゃべっていない。なんでだろう?また鳴沢イリスとも同じことだった、イリスが異常にしゃべっているがハルは返答が少ない(と思っていた)
・イリスとの会話で使う英語ができるのは英語を習っていたため、としていたが、英会話がそんなに滑らかに全てできるだろうか?k帰国子女に習ったぐらいの環境で。(と思っていた、英語の文章の筆記なのでああ、と理解した。これならあり得る。)
・そもそも宇宙に興味がこれだけあるのなら、なぜ技術者の方を目指し、宇宙飛行士じゃないんだろう?(と思っていた)


・230ページで全てが明らかになる。
ハルは口がきけなかった。
先天性の発話障碍者であり、相手のいうことは聞ける、でも自分が発話することができないという障碍を持っていた。
イリスを山中で探す時にやむなく彼は大声を出すのだ、他人から聞いたら意味不明の大声を。

なので、ハルからの会話、と思っていた部分は全て筆談(ハルはそのためにシャープペンを常に持っていた)
当然、イリスとの間の英語のやり取りも筆談。
英語を教えてくれた女性とスカイプするというのも(おそらく)筆談を見せる。
家族とはホワイトボートで会話をしていた。

ハルの思考が非常に明瞭に書かれていてそれが大人っぽいと思っていたのだが、言葉を出せないのでその分思考が沈殿してい深く大人っぽくなるだろうし、またこれを言葉にはしてないで心の中の動きを書いているので勢いこういうことになるのだろう。
そして彼は宇宙飛行士には発話障害のためなれないことがわかっていた、だからエンジニアを目指していたのだ。



評価 4.8

読んで、見て、楽しい本だった。
東京中心の文学館巡りにはとても役立ちそうな一冊だ。

よくリサーチされていて魅力的な文学館を紹介してもらっている。
写真も多いのでどういう感じかというのがすぐにわかるようになっている。
行ったことがある場所が多かったのだが、トップに書かれている漱石山房記念館は行ったことがないのでぜひぜひ近いうちに行ってみたいものだと思た。

この中で表紙にもなっているけれど、東洋文庫ミュージアムは(企画によっては)何度か行っていてそのたびに圧倒される、この素晴らしい本棚に。
また森鴎外記念館は行く前に思ったよりもずうっとずうっと素晴らしい記念館だったことを思い出した。またここも行ってみたい。