4月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3346
ナイス数:295

ウィステリアと三人の女たちウィステリアと三人の女たち感想
4作品入ったこの川上作品、好きです。表題作が一番心に残りました。ちょっと村上春樹のワールドを思い出しました。平凡な主婦が自分の家の前が解体されるのを見ているところから始まるのですが、どんどん不思議な方向に話が転がっていくのです、この転がり具合が文章内容ともにお見事。冒頭の『彼女と彼女の記憶について』も、同窓会に出た女優の忘れていた親友の話がなんとも強烈な形でよみがえってくるところが読んでいてぞくっとしました。
読了日:04月23日 著者:川上 未映子
口笛の上手な白雪姫口笛の上手な白雪姫感想
届く人に届きますように。
読了日:04月23日 著者:小川 洋子
絶景本棚絶景本棚感想
人様の本棚を見るのは本当に楽しいことです。この本、その欲を満たしてくれています、しかも掲載当時はよくわからなかった書名がわかるようにしてくれているので、どの人の本棚が好みかなあ・・・とか楽しくパラパラ見ていました。新井素子さんの本棚(図書館みたい)にトンボソのおひめさまがあったのは嬉しいし(私も大好きでした)、川出正樹さんのミステリ系本棚も心浮き立つし、祖父江慎さんの八犬伝、坊ちゃんのバージョン違いなど、見るところ見るところ楽しいものが多かったです。
読了日:04月23日 著者:
乗客ナンバー23の消失乗客ナンバー23の消失感想
この人の既訳作品の中では一番好きかも。豪華客船の中というのが密室状態で魅力的だし、何よりもここに乗り込む男性の妻子がかつて同じ船で不明という出だしが何とも心躍らされます、彼が誰に呼び出されたかという興味とともに。また、もう一つの物語も語られていて密室の中の女性はいったいなぜどこに閉じ込められているのか、そもそも誰なのかという謎も加わり、そこに客船そのものの謎も・・・最後驚きのつるべ打ちでした。ただ・・・全くの私の感想、ですがややこのつるべ打ちの部分が軽い感じが。スピーディーな展開が好みかどうかが分かれ目。
読了日:04月23日 著者:セバスチャン フィツェック
銀河鉄道の父銀河鉄道の父感想
(宮沢賢治の評伝っぽい小説?)と思いながら読み始めたのですが、読んでみると読ませる小説で非常に面白く読みました。賢治にもし興味がなくても、この父親像というのに引き込まれます。自分は質屋で裕福な暮らしを作り出している父、彼が見る賢治像というのは父親の目、なので甘いところも沢山あるのですが(過保護です)、冷静なのです、あくまで。賢治の突拍子もない商売を始めようとしている時にも適切なアドバイスを。また幼少時病気の時の父の献身ぶりにも泣けました。大切に思っていた賢治、彼は時代を越えて愛された存在になったのです。
読了日:04月23日 著者:門井 慶喜
樽とタタン樽とタタン感想
ぱっと消えてぴっと入るが良かったかなあ。ほのぼのとした昭和の喫茶店の話。ノスタルジックでセピア色の話なのですが、ほのぼのと思いきや意外に鋭い文章もそこここに挟み込まれていました。町内会の草野球チームは、こういう男の人、昭和にいたいた!とふくっと笑ってました。
読了日:04月23日 著者:中島 京子
新美南吉童話集 (岩波文庫)新美南吉童話集 (岩波文庫)感想
懐かしいお話と、知らないお話もたくさん入っていました。棟方志功の版画入りなのでそういうところでもじっくり絵を見ながら楽しめました。時代が時代なので、戦争と言って日露戦争が普通に出てくるという話が多く見られました。ごん狐はラストがとても良い、語りつくしていないところが美しいなあと思いました。手袋を買いには同じ狐の話ですが、この中で姿の見えない人間の心の美しさが垣間見え、また母親と子狐の深い会話が胸にしみます。牛をつないだ椿の木も泣けました、人のためにいう無垢な気持ちに触れた感じで。心に寄り添ってくれる童話。
読了日:04月23日 著者:新美 南吉
雪の階 (単行本)雪の階 (単行本)感想
面白い!最初からしばらくは文章のリズムと世界観になじめなかったのですが、途中から一気呵成に。ミステリで恋愛小説でスパイ小説で幻想部分もまた。読んでいる間の楽しさと言ったら!昭和10年の春のドイツから来たピアニストの演奏会から始まり、伯爵令嬢惟佐子の友人が失踪し心中事件に発展し・・・。惟佐子の知り合いの千代子、記者の蔵原、惟佐子の両親、実兄(最後驚いた!)俗物の笹宮伯爵、つむじの結婚相手、など多彩な人物登場。現実の千代子が楽しい造型で(よく食べる!)可愛らしく、惟佐子は不思議な持ち味のあちら側の人間・・・
読了日:04月12日 著者:奥泉 光
シリアの秘密図書館 (瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々)シリアの秘密図書館 (瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々)感想
今現在も続いているというか、進行形であるシリア情勢。この本は、シリアのダマスカスの近くにあるダラヤという町の記録です。現地には行けないのでとぎれとぎれのネットでやり取りして若者たちの行動を記録するというノンフィクションでした。弾圧された彼らの生の生活、表面に最初は出てこないのに途中で署名入りのメールをくれた女性たちの悲痛な叫び、当時のオランド大統領に宛てた手紙の数々、若者達の希望。図書館は瓦礫の中から引きずり出した本で成っているのですが、図書館の話のみならず町の行く末がひしひしとこちらに伝わってきました。
読了日:04月12日 著者:デルフィーヌ・ミヌーイ
殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)感想
面白く読みました。「自分は殺人をかつて何度もした」と独り思っているキム老人。娘のウニと静かな生活をしていますがある日自分がアルツハイマーになり、記憶が抜け落ちていくことに気づくのです。なんとか自分をこの世界に引き留めたいキム。内省部分が非常に読ませます。同時に、近所でまた起こり始めた殺人事件の犯人がウニの恋人として現れ、気を揉み、、、、という話と思いきや!!!途中でええっ。内省的な思弁的なキム老人の考えを読んでいて、ある部分に来て、盤石な地面が揺らぐ感じがしました。一体何が本当で何が起こったのか・・・
読了日:04月03日 著者:キム ヨンハ
パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
ドラマ化に合わせて再読。マープルものではありますが、この話のメインは探偵役になるルーシーの機敏さ、聡明さ、闊達さにあると思いました。『列車同士がすれ違う時に片方の列車で女性を絞め殺している男の姿が目撃される、別の列車に乗っている老婦人から』という魅力的な出だしで始まります。そして、このミステリ、犯人が誰かということもですが、殺された被害者女性が誰か最後まで誰だかわからない、というところが面白いと思いました。そして最後のルーシーの決断!さてどちらだったのでしょう・・・私はあちらであってほしいと思いました。
読了日:04月03日 著者:アガサ クリスティー

読書メーター
3月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:3059
ナイス数:241

ヌヌ 完璧なベビーシッター (集英社文庫 ス 12-1)ヌヌ 完璧なベビーシッター (集英社文庫 ス 12-1)感想
大変面白く読みました。この本を面白いというのは憚れますが。ヌヌというのはフランスでのベビーシッター兼家政婦さんの事。冒頭からあるヌヌが殺害した幼児の話が出てくるのでこれを念頭に読むことになります。どこが分岐点だったのかというのをずうっと考えていました。完璧な仕事をしていたヌヌ、そもそも仕事に復帰したい妻のミリアムがいて、扱いにくい子供のミラがいて、と、あらゆる事が一つの惨劇に向かっている気がしたのです。貧しく何も持っていないヌヌと富裕である雇い主の蜜月からその崩壊までが見事に描かれていると思いました。
読了日:03月28日 著者:レイラ・スリマニ
デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)感想
良かったです、ろう者について全く私が知らないことが多かったし、それ以上に自分がどういう立場で生きていくのかという問題を突き付けられた気がしました。冒頭からしばらくは、荒井の鬱屈がなんだかよくわからず、ただただ彼の苛立ちに同調してこちらもいらいらしていました。が、途中から彼の生い立ちがわかるにつれ、(ああ・・・そうだったのか・・・)と目から霧が晴れるような思いになりました。場面場面が印象深いです(特にろう者の会話を見ていた親子の会話場面)そしてミステリ的にも後半で一つの大きな驚きがあり、なるほど!と。
読了日:03月28日 著者:丸山 正樹
名作なんか、こわくない名作なんか、こわくない感想
ちゃちゃっと2・3ページで名作を語ってくれているのですが、なかなか読んでいて面白くて!いわゆる古典なので敷居が高いところを一気に縮めてくれるような本についての本でした。読んでいる本はもちろんもし読んでいなくても興味が持てるような書き方に好感を持ちました。米英、フランス文学、日本の女流文学と多岐にわたっています。特にダロウェイ夫人とキャロルについての話は読ませました。海外文学で登場人物があきらかに「やりすぎる」ところが欧米の古典小説の好きなところだと宣言している柚木さんの気持ちがとてもわかりました。
読了日:03月28日 著者:柚木 麻子
迷蝶の島 (河出文庫)迷蝶の島 (河出文庫)感想
海でヨットからの遭難、と言ってどう考えても太陽がいっぱいとかを思いますが、最初の名前取違いの出来事からして読ませます。殺す殺さないの攻防があり・・・ただ・・・最後の棒一本のトリックが・・・。泡坂作品大好きなのですが、私はこれ、普通かなあ、ごめんなさい。
読了日:03月28日 著者:泡坂 妻夫
ジェーン・スティールの告白 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)ジェーン・スティールの告白 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
ジェーン・エアへのオマージュがたくさん入っていて(しかも主人公が同じジェーン!)、章ごとの最初には引用まであるくらいなので、ジェーン・エア好きにはたまらなく魅力的な本でした。ミステリというよりもジェーン・エアをまさになぞらえたような小説。施設に入りそこで親友ができて更にはそこから飛び出て昔の自分の住んでいたお屋敷に・・・とこのあたりまではジェーン・エアを想起させるのですが、そこからお屋敷のご主人の造型が異なってきました。活劇場面もあり、謎の人達からの襲来もあり、恋愛・友情物語としても楽しい読書でした。
読了日:03月28日 著者:リンジー フェイ
私の頭が正常であったなら (幽BOOKS)私の頭が正常であったなら (幽BOOKS)感想
8編の短編集。ホラー部分もありますが哀、の感情をかきたてられました。個人的にこの中で好きなのは、ぞわぞわ感が肌で感じられる『布団の中の宇宙』と、夫婦のある懊悩が途中でぱっくり口を開いている『世界で一番、みじかい小説』(タイトルがまたその懊悩と関係している)でした。また全くの偶然ですが、今日という日にこの中の『トランシーバー』の感想をアップするという・・・泣けます、他の本にも収録されているので既読でしたが改めて読んでも泣けました。幼い子供が言いそうな言葉というのがまた迫ってきました、ラスト4行に驚きました。
読了日:03月11日 著者:山白 朝子
善いミリー、悪いアニー (ハヤカワ・ミステリ文庫)善いミリー、悪いアニー (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
読むのが辛かったです、最初から最後まで。殺人鬼の母親に育てられ彼女自身も虐待を受けている少女が、ミリーと名前を変え里親に引き取られて行きます。彼女の心も崩壊していると言ってもよく、あらゆるところに『あなた』という名前の母親の姿、声が立ちのぼってきます。里親のところでさて安心と思いきや、今度はこの家の実子の女の子に学校で壮絶ないじめを受けます。一方で母親の裁判、一方で学校のいじめとミリーは生き抜いていくのですが・・・ラストに至る裁判である事実が判明して驚愕、そしてラスト・・・こういうラストなのか・・・むお。
読了日:03月09日 著者:アリ ランド
半分世界 (創元日本SF叢書)半分世界 (創元日本SF叢書)感想
変な小説!でも面白い!最初の吉田さんがどんどこ増えていく話もアイディアとしては考えつく人が多いだろうけれど。終着のところがすごい、凄まじいと思いました。バス停夜想曲、あるいはロッタリー999もとても気に入りましたが、コルタサルの南部高速道路を思いあれのもうちょっとスケール大きくなった感じだなあと感じました。半分になって中が見えちゃう家に住む半分世界も実に奇天烈な話で、映画のトゥルーマンショーを喚起させられました。SFというジャンルなのでしょうが、私には奇想小説部分も非常に感じました。次作楽しみにして。
読了日:03月09日 著者:石川 宗生
地下鉄道地下鉄道感想
最初の方から途中までが私には非常に読みにくく、しかも話は辛い話であり、脱落か、と思ったものでした。ところが、最初の脱出が過ぎていく頃からのめり込むように物語世界に入っていきました。逃亡奴隷の話であり、それを支援してくれる人達の物語でもあります。地下鉄道は暗号であったけれど、実際にある地下の鉄道としたアイディアも素晴らしい。支援者に動かされている地下鉄道の力強さと言ったら!最初の農場からの脱出から、何度も繰り返し追ってくる追手の怖さそして残虐さ。アメリカという国の根本を抉っている小説でもあると思いました。
読了日:03月09日 著者:コルソン ホワイトヘッド,Colson Whitehead

読書メーター
2月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:7276
ナイス数:355

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)そしてミランダを殺す (創元推理文庫)感想
面白い!最初の出だしが、旅先で妻を殺したい気持ちを知らない女性に話す、で、解説にもあるようにハイスミスの見知らぬ乗客を喚起させます。が、全くここからは流れは違っていて、男性女性4人の語りでミステリが紡がれていきました。不倫した妻を殺したい夫に加担しようという謎のリリーという女性の章は過去から語られて行きその部分も非常に読ませます。ある重要部分はミステリ好きなら想像がつく範囲だと思いますが、私は第一部終わりで(ええっ!)と驚愕しました。ここでこの展開?と。ミランダとリリー両者の造型が優れていて魅力的でした。
読了日:02月28日 著者:ピーター・スワンソン
魔女魔女感想
樋口作品はどれもなのですが、この会話に乗れるかどうかが大きなキーになると思います。私は大好きなので、最初から最後まで楽しみました。かつて付き合っていた千秋という女性が猟奇的な死に至り、千秋の周辺を過去も含めて広也という男性が探っていく・・・というミステリです。元彼女の意外な別の面に戸惑う広也の姿が印象的でした。小説の雰囲気が読んでいて心地よく、初恋の青春ミステリとして魅了されました。またラストまで読み終わって、ある二人の出会いの場面をもう一度読み返すと、ああ・・なるほどなあ・・・と納得しました。
読了日:02月28日 著者:樋口 有介
ぶたぶたラジオ (光文社文庫)ぶたぶたラジオ (光文社文庫)感想
たまにぶたぶたエキスがほしくなってぶたぶたさんシリーズに走ります。今回もそういう気持ちで読み始めました。ぬいぐるみがしゃべるという奇想天外な話。私が好きなのは、毎回ぬいぐるみがしゃべる?まさか?えっ!本当にしゃべる!!?あれは口?鼻?と全く知らない人が様々に驚く場面です。しかも他の人たちはそれを平然と受け入れている様子もほのぼのとしてふくっと笑えます。今回はラジオにお悩み相談で出る本屋さんのぶたぶたさん。前作の本屋さんを読んでない自分が惜しかったです・・・そちらを先に読むべきでしたがこれも楽しめました。
読了日:02月28日 著者:矢崎 存美
4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール (幻冬舎文庫)4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール (幻冬舎文庫)感想
楽しいエッセイでした。いい女指南本とあるので(今でも雑誌GINGER掲載中らしい)、いい女になるためのノウハウだったらどうしよう、と思いつつ手に取りましたが、全くそのようなことはなく、彼女の作品の中では熱血ポンちゃんシリーズの味わいに似ていました。軽妙に書いていますが、実は奥が深く時に笑いながら時に考えさせられながら、彼女の嗜好と思考両方をトレースしていくことができました。いつまでも憧れのお姉さん、山田詠美。小説もエッセイも大好きで、彼女は作家になるべくしてなった作家さんだなあと改めて思いました。
読了日:02月28日 著者:山田 詠美
ロバート・キャパ写真集 (岩波文庫)ロバート・キャパ写真集 (岩波文庫)感想
精選の236点の写真集。戦いの中の光景、が中心なので、スペイン内戦、ノルマンディー上陸作戦、パリ解放、インドシナと写真は続きます。写真だからこそ訴えるものが伝わってきました。戦乱の中の小さな子供達、難民、まだ先に何が待っているかわからない兵士たち、塹壕の中の兵士、と見ていて心の中のどこかを押されます。今でも世界中で戦争、難民問題があるという事を改めて突き付けられた思いがしました。後半に、ピカソ、ヘミングウェイ、恋人だったバーグマンの写真も自然体でありました。1954年の日本は隔世の感。
読了日:02月27日 著者:
肺都(アイアマンガー三部作3) (アイアマンガー三部作 3)肺都(アイアマンガー三部作3) (アイアマンガー三部作 3)感想
第三部まで思い切り楽しめました!この本、絵も非常に重要である意味不気味な絵を見ながら(これは何?誰?)とそれも楽しみながら読むと楽しかったです。この巻では失ったルーシーを想い自暴自棄になって思いもかけない力を発揮するクロッドの姿がそれはそれは痛ましいのです。『物』についてもあらゆる人が物にどんどんなっていくので最初はこれになるのかと単純に思っていたけれど、徐々に怖くなってきました。世界を暗闇にするという発想も素晴らしく、そして後半なんとも元気なルーシーが再登場で心が浮き立ちました。ルーシー&クロッド万歳!
読了日:02月26日 著者:エドワード・ケアリー
嘘の木嘘の木感想
届く人に届きますように。
読了日:02月26日 著者:フランシス・ハーディング
デカメロンデカメロン感想
久々にメモを取りながらの読書でした。註も含めて非常に面白く、敷居が高いと思っていたのですが全くそんなこともなく、話全体を楽しみました。10日間ペストを逃れたフィレンツェの男女10人が話をする、つまり短編が100話入っているわけです(千夜一夜のような入れ子ではなく独立した短篇)。滑稽で好色な話も多くある時には大爆笑し、ある時には(これは今でいうセクハラ?)と思ったりしました。聖職者へのくすぐり(これが多い)、王様と妃、一般庶民の夫婦、と主人公も多種多様でした。あと話の間の皆の小さな感想の姿も楽しかったです。
読了日:02月26日 著者:ボッカッチョ
嘘 Love Lies嘘 Love Lies感想
冒頭の方で非常に辛い性描写があり途中にも辛い場面はあるものの、一気に読ませる作品でした。男女4人の中学生時代の描きわけがあり課題を一緒に考える様子もピュアな学生らしく、特に皆で海に行く美しい場面は印象的で作品全体を覆っています。生まれも育ちも違った4人の中で刀根秀俊の姿が際立って印象的。ネグレクトと暴力に苛まされている少年がある暗黒の分岐点の出来事からどのように生き抜いていったのか、そこも読ませました。成長した彼らのラストシーンも忘れ難いです。近藤が何者だったかが驚きでした。
読了日:02月20日 著者:村山 由佳
東京 しるしのある風景東京 しるしのある風景感想
まさに!今年からこれをやろうと思っている私にはうってつけの本でした。興味のない人には何?なんでしょうが。風景印を23区取りに行くという本です。風景印とは、郵便局での特殊な消印で頼まないと押してもらえない消印の事なのですが、各地域特色があって収集の喜びに満ちています。途中の行く先々の郵便局の感じ、その周辺へのてくてくのんびりお散歩の楽しさも秘められていて、おおいに楽しんだ本でした。全国の風景印の話も見たいなあ。そしてこれはポケモンGOとかと親和性が高いと思っていたらまさにそれも書かれていました。
読了日:02月10日 著者:松田 青子
皇帝と拳銃と皇帝と拳銃と感想
刑事コロンボを意識した倒叙ミステリ。とても良くできているのが、恋人たちの汀。殺された叔父のある性癖とラストが鮮やかに結びついているし、恋人達のそれぞれの心情にも思いを馳せました。表題作は、皇帝(大学教授)のあることをするのに用いた物がなるほど!運命の銀輪は運命だなあ!と。ラストは異色作。刑事のキャラクター二人(イケメンと死神そっくりの警部)も対照的で面白く、このシリーズ続けて欲しいです。内容はこのように面白いのですが、『うっそりと』があまりに乱用されているのは何か意図があったのかと首をひねっています。
読了日:02月09日 著者:倉知 淳
ハティの最期の舞台 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ハティの最期の舞台 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
私もかつてハティのような気持ちの時の学生時代があったなあとまず思いました。自意識が強く自分がちょっと人と違っていて高みを目指したいという気持ち、背伸びしたいという気持ち。このミステリ、ハティが演劇をする女子高校生でありいかに背伸びをしてもまだ幼いというのが見え隠れするところが重要と感じました。ハティが殺されるのは冒頭の方で出てくるのですが、なぜ彼女が殺されるまでに相手の気持ちを駆り立てたのか。両親、保安官、教師、友人達の視点も入れながら紐解かれて行きます。それぞれの『場』のハティの姿に魅せられました。
読了日:02月09日 著者:ミンディ・メヒア
十角館の殺人 限定愛蔵版十角館の殺人 限定愛蔵版感想
限定愛蔵版のこの別冊子(冊子というか別本)で作家界の今を時めく作家さんたちがこの本に対しての思いを語っていますが・・・こんなに多くの人に影響を与えた本だったんだと改めて胸が熱くなりました。一種のエポックメイキングだったんですね。伊坂幸太郎の文章と皆川博子の文章に特にぐっときました。話は、ある一行で(わかってはいても)ええっとやはり驚きラストの一行の余韻のすごさに打ちのめされて。十角館という魅力的な建物も改めて堪能させてもらいました。やってくる大学生の名前の魅力的なこともミステリ好きならにまり(そして・・・
読了日:02月09日 著者:綾辻 行人
寝る前に読む 一句、二句。 - クスリと笑える、17音の物語 -寝る前に読む 一句、二句。 - クスリと笑える、17音の物語 -感想
ほぼ知らない人の家族の話というのはつまらないと相場が決まっていますが、これは意外にもその部分面白かったのです。プレバトを見ているので夏井先生は知っていてその妹さんは全く知らない。でも有名一句をめぐって二人の対談が家族の話まで及ぶにつれ、なるほどなあとぐいぐいのめり込むように読みました。俳句の解釈も面白く、たまに二人が違っていたり、家族の話が出たり、幼い日々のことを話したり、ある意味波乱万丈の二人の生き方におおいに魅せられました。俳句も非常に興味の持てる内容でした。夏井先生のエッセイも楽しかったです。
読了日:02月09日 著者:夏井 いつき,ローゼン千津
北の空と雲と北の空と雲と感想
ある意味偉大なるマンネリだと思いました。いつもシーナはシーナであり、年月がたっても食べ物、人との出会い、わいわい仲間と旅に行く、写真を撮る、のスタンスが変わってないというのは彼自身がぶれていないということなのでしょう。みのりのない旅という意味でもまだこれが続いていて、煮干しラーメンのほかはさして目的もなく・・・そこが楽しめる心で読むといいかもしれません。一点、どこからどこまでが一つの旅なのか、というのがやや文章だけからはわかりにくいので、最初の方の東北地方の図にくっきり出してほしいなあとそこは思いました。
読了日:02月09日 著者:椎名 誠
表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬感想
巧いよ巧い。ラスト泣きそうになりました、こういう事だったのか!ちょっとした一人旅を味わいたくキューバに行った旅行と思っていて、その面も確かにあるのですが・・・それだけではありませんでした。自意識が非常に高く周りからの目を気にして人見知りと自称している若林。彼が一人で全くの異国の地キューバを見たこと感じたことを綴っています。キューバ案内人とのやり取りの笑えること!一人で海岸でいい気持でいたらそこでぶつかった出来事。そして何よりもラスト、なぜ彼がキューバを選択したのかがわかった時にどきっとしました。
読了日:02月09日 著者:若林 正恭
ノックの音が (新潮文庫)ノックの音が (新潮文庫)感想
懐かしいなあ・・・と思って数十年ぶり(!)に再読。今の目で見ても全く古びていません。最初に私が読んだ星新一のショートショートがこれでした。まだショートショートという言葉も根付いていなかった記憶が・・・。ノックの音がした、に始まる全ての話のストーリー展開が面白く夢中になれました、昔も今も。特に精神分析医のところに来て動物の名前を口走る『暑い日の客』のラストの見事さ、呪術にからめとられる『人形』の怖さ、にやっと口を歪めてラスト笑いたくなる『計略と結果』、ホラーミステリの様相の『金のピン』と逸品揃いです。
読了日:02月09日 著者:星 新一
消えたはずの、 (ハヤカワ文庫 NV)消えたはずの、 (ハヤカワ文庫 NV)感想
13歳の娘が寝ている間に家に忍び込んだ男に誘拐されたというショッキングな出来事で始まり、その娘が8年後に突然帰宅したという更にショッキングな出来事が続きます。母親はおおいに喜んで受け入れるのですが、途中からどうにも違和感を感じ始め(この娘は本当に自分の娘なんだろうか?)という疑問に辿り着くのです、だったらなぜこの女性は偽って自分のところに来たのかまでも考え始め、疑問の渦に流されて行きます。最後まで読むと途中意味のわからなかった名前の数々の意味がわかりそこでぐっときました。ただ、妹の心情がもう一歩。
読了日:02月07日 著者:エイミー ジェントリー
この世の春 下この世の春 下感想
多重人格(しかもお殿様!)というのをこの時代に入れたこと、というのが画期的だったと思いました。また数々の策略がここでなされていて、なぜ一つの村が消滅されたかなどの真相はかなり陰惨でした。悪意が次々と連なっていくさまに呆然としながら読み進めました。ただ・・・私にはちょっと長いように思えました。そしてお殿様と多紀がささやかでも幸せをつかむだろうという予感には満ちていますが、一方でその陰で涙をのんだ人もいると思うと非常に複雑な気持ちが残りました。
読了日:02月07日 著者:宮部 みゆき
この世の春 上この世の春 上感想
時代小説全く読まない私が読めたのでハードルは非常に低く、そして相変わらず巧く書いているなあというのが印象でした。最初、時代小説独特の言葉遣いとか言い回しとかに戸惑いつつも、すぐにこの世界になじめたのも作者の技、だと思います。話はSF的なところと活劇とミステリとの融合のように見えました。多紀ちゃんが健気な上に可愛くて、ファンです。あともっと大ファンなのは、元家老の石野織部!素敵な方!(苗字と名前が同列でややここがあれですが)多紀とお殿様の周りが生き生きと描写されていてそこが素敵。
読了日:02月07日 著者:宮部 みゆき

読書メーター
1月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:745
ナイス数:145

偏愛読書トライアングル偏愛読書トライアングル感想
特に海外本で読んでいる本がかぶっているので、連載から読んでいました(というか今も連載中)。一冊になったので改めて読んでみましたが。感想が違うものもあるし、同じものもあるし。全体にもっと尖ったところがあっても良い気がしました、正直なところ。偏愛ではあるけれど、テーマごとに分かれているのでそこはテーマくくりということで。あと・・・すごくすごくお気持ちはわかるのですが、エッセイ集ではなく書評集なので、いきなりペットロスを語られてもと私はそこに戸惑いを覚えました。
読了日:01月18日 著者:瀧井 朝世
米澤穂信と古典部米澤穂信と古典部感想
楽しい!古典部15年もたつのかあ・・・と感慨深かったです。古典部のミニ短編も読めて大満足(まさかあの作品をこういう風に扱うとは!面白い)。作家さんとの対談もいくつか入っていて、特に恩田陸さんとの対談で、どの海外本にインスパイアされていたかという話が面白かったです。架空の折木奉太郎の本棚、千反田えるの本棚なども(この本、たしかにたしかに)とにんまりしていました。
読了日:01月18日 著者:米澤 穂信
図書館島 (海外文学セレクション)図書館島 (海外文学セレクション)感想
冒頭からしばらく流麗な文章と緻密な(過ぎる?)描写力に圧倒され読み始めました。タイトルから図書館や本が前面に出てくると勝手に思ったのでそこは違いました。思い切り惹きつけられるところがある一方で、あまりに新しい場所名、人物名、事柄が多くここを頭に入れるのにとても手間取りました。暴君とでもいえる父から離れて新しい世界に飛び込んでいく青年ジェヴィックが船である女性に会ったことから始まる世界、後半は二つの勢力がぶつかり合います。文字と声、二つのことを考えさせられました。(この訳者さんの訳そのものは大好きです)
読了日:01月18日 著者:ソフィア・サマター

読書メーター
12月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4422
ナイス数:224

TOKYO海月通信TOKYO海月通信感想
今回出るのがちょっと早かった?(というような気が)ぎりぎりで買いますが、今回は余裕で買って読めました。これを読まないと一年が終わった気がしないので。一年の中で、小池人気から凋落まであっという間というのがよくわかったなあ。映画の趣味はいつも全く違うと思っていたのですが今年は比較的シンクロしていて・(ベイビードライバーとかとか・・・)嬉しかったです。ラ・ラ・ランドの試写会のスマホ注意の話も天晴れと思いました、注意した女性に。中野さんのイラストページも大好きでそこはかとなく似てるのが笑えます、毎月の俳句も一興。
読了日:12月30日 著者:中野 翠
ソラリス (ハヤカワ文庫SF)ソラリス (ハヤカワ文庫SF)感想
以前の訳で読んでいたのですがどこまでわかっていたのか・・・そして今回も全部把握しているか?と聞かれたらそうではないとは思うのです。でもです、把握しきれていなくても非常に感動しました。最後まで謎は私の中でたくさん残っています、ソラリスの海が見せたものは人間の中のあるものなのですが、それは友好だったのか反発だったのか、無作為なのか。そもそもコンタクトの概念があるのか。また、ケルヴィンの恋愛話も勿論読ませますが、今回改めて読むとソラリスの海の造形が鮮烈でこちらに迫ってくるようで心に残りました。ラスト一行も秀逸。
読了日:12月30日 著者:スタニスワフ・レム
蝶のいた庭 (創元推理文庫)蝶のいた庭 (創元推理文庫)感想
堪能しました。ぎゃあ!読みたくない、でも先が気になる、止められない一冊でした。若い女性の事情聴取から始まり、最初の内はこの女性が一体誰なのか名前も年齢もわからず、ばかりか、被害者なのか加害者なのかも不明です。女性の語りがはぐらかしが多くそこが面白いです。滝も川もある『ガーデン』という場所で『庭師』が何を行っていたかが徐々に紐解かれていくところがおぞましくまた幻想的でした。内容的にジョン・ファウルズのコレクターをどうしても思いますが、この作品の方の庭師の方が愛などは全く求めないので、より怖いと思いました。
読了日:12月30日 著者:ドット・ハチソン
きっとあの人は眠っているんだよ: 穂村弘の読書日記きっとあの人は眠っているんだよ: 穂村弘の読書日記感想
穂村弘の読書日記って、特別な感じがします。彼の独特の視点、独特の言い回しによって(しかもわかりやすい)、自分が読了した本については(こういう見方があったのか!自分も考えていた?もしかして?)と思わせてくれる一文があるし、また知らない本では(ああ・・・読んでみたい!)と思わせる一文が必ずありました。知らない本、読んでいない有名な本をさくっと普通に読んだよ今、と語っているところにも好感を持ったし、古本屋さんで高い本に買うか買わざるか逡巡する姿にも微笑みました。ほむほむ万歳!
読了日:12月28日 著者:穂村弘
狩人の悪夢狩人の悪夢感想
このシリーズの中では好きな方でした。ホラー作家とミステリ作家の対談から始まるのですが、二人とも作家なので、そのスタンスの違い、売れている売れていないの違い、作家としての矜持、とそのあたりも非常に面白く読みました。また有栖川有栖と火村との会話もいつも通りに楽しんでいましたが、火村の夢は・・・一体?このミステリ、夢と弓矢が重要なアイテムとなってきます。犯人がなぜこういう行動をとったのか、というのを追い詰めていく姿は読ませました。
読了日:12月28日 著者:有栖川 有栖
東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
15歳の黒人少年イーストが、組織のボス(叔父)の指令を受け、三人の少年たちと一緒に長い長い旅に出るのです、それもある重要な証人を殺す旅に。ミステリであるけれどロードノヴェルでもありました。足がつくので、車の移動手段なのですが、ここで4人が軋轢を生み、葛藤し、それぞれの個性の主張をしてぶつかりあう青春物でもあります。特にイーストの弟の一種壊れたタイが暴力的であり、手がつけられない人間なのです。最後の驚きとともに一気に読みはしたのですが・・・ともかくもこの小説に必要なのは地図、だと思いました。
読了日:12月28日 著者:ビル ビバリー
粘土の犬 - 仁木悦子傑作短篇集 (中公文庫)粘土の犬 - 仁木悦子傑作短篇集 (中公文庫)感想
仁木兄妹物はぼちぼち既読なのですが、一冊に仁木悦子がまとまるということが嬉しいです。短編集ですが、「おたね」に衝撃を受けました、犯人が誰ということはすぐにわかりますがそれよりも犯人が取った行動にある種の『選択』がある、その描き方が巧いなあと思いました。「罪なきもの~」はシリーズ化してほしかった、特に転がり込んでくる男のキャラが最高でした。「弾丸~」もあれ?という謎から引っ張ってくる楽しさがあります、映像と実際が連動するなんて!と。表題作は目の見えない子を軸に据えた殺人事件の謎解きが光ります。
読了日:12月28日 著者:仁木 悦子
怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック感想
大盛況(混みすぎ!)の展覧会の前に熟読した本でした。今までの怖い絵シリーズも楽しめましたが、ピンポイントで展覧会出品の絵を語ってくれているので読み込みました。そのあと実際の展覧会へGO!(夜だったので待ち時間がほぼなかったのが嬉しかった、でも中は大混雑)このスペシャルブックは、最後に宮部みゆきとの対談(宮部みゆきもこのシリーズの大ファンだそうです)も良かったです。中野さんの絵の見方というのは、背景を読み解いてくれるので大好きです、ぼんやりと眺めるのも一興、全てを知って見るのもまた一興。
読了日:12月28日 著者:中野 京子
13・6713・67感想
香港ミステリというので非常に敷居が高かったのですが。最初の話から意外性の連続で驚きまくりました。最初の話にこのミステリの良さが集約されているかも。現在から過去に至る遡りの方式で描かれているので、主人公達の現在の姿を知りながら過去を徐々に知っていくという面白さがあり、(ここが分水嶺だったんだなあ・・・)とか(ここでもし別の道を歩んでいたら・・・)とか(推理部分も面白いのですが)人間的なところで多々思うことがありました。同時に香港の歴史も遡っているのでそこも非常に読みごたえがありました。そしてラストが!!
読了日:12月23日 著者:陳 浩基
エル ELLE (ハヤカワ文庫NV)エル ELLE (ハヤカワ文庫NV)感想
映画は見損ねたのですが。驚きました、この話、レイプから始まるという話というのは知っていたので、勝手に『そこから立ち直っていく女性の話』だと思っていました。ところが、このレイプされた女性の過去がすさまじく、レイプそのものも異常な状態なのに、あまりに過去が異常でそれが薄れるような、ぞっとする人生だったのです。更に!後半女性が取った行動が思いもよらない行動で、更にその行動をとったことによって、思いもよらない展開が待ち受けている。すさまじい話です。全員が狂気の中、唯一女性の元夫のみが普通の人、に見えました。
読了日:12月23日 著者:フィリップ ジャン,Philippe Djian
雪と毒杯 (創元推理文庫)雪と毒杯 (創元推理文庫)感想
仰々しくないけれど良いミステリを読んだなあというのが印象。雪山に閉じ込められてしまう人達、しかも遺産相続が目の前にある状況の人達なのです。クローズドサークルものでもあるのですが、大雪の中、この村の中だけは行き来できるクローズド具合というのもまたオツです。最後まで読むと最初の死にゆく人の場面をもう一度読み直したくなるし、言葉の伏線もきちんとしています。犯人はこの人だというのが何度も飛びかいますが、真犯人の動機がとてもわかったのと、事件が全て終わってからの真実の開き具合が好きでした。にしても、『彼』可哀想!
読了日:12月23日 著者:エリス・ピーターズ
ダーク・マター (ハヤカワ文庫 NV ク 22-4)ダーク・マター (ハヤカワ文庫 NV ク 22-4)感想
妻と一人息子との幸せなな家庭生活を送っているが学問的にはもうちょい上に行きたかったかも、の物理学の教授が、ある夜突然殴られ目覚めると誰も自分を認識してくれない世界が・・・。もうこのあたりで、どういう展開か、というのは読める気がしたし、その方向に確かに行くのですが。一種のバカSFっぽいところもあります。途中で大いに笑いましたし。が!!!話はここからで後半、私には思いもよらない動きがありました。SF展開でもあるので、好みは分かれるかも。私は最後の顛末のところでとてもとても感動しましたが!
読了日:12月23日 著者:ブレイク・クラウチ

読書メーター
11月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:3066
ナイス数:238

黒い睡蓮 (集英社文庫)黒い睡蓮 (集英社文庫)感想
巧みな技のミステリ。モネの睡蓮で有名な村ジヴェルニーで起こった殺人事件を軸に物語は進んでいきます。好色な眼科医、美貌の小学校教師、イケメン警部、可愛い絵の才能がある少女と彼女を取り巻く友人たち、少女の才能を認めてくれるアメリカン人絵描き等々、人物像も鮮やかです。モネの話もたくさん出てくるので一種の教養小説の趣もありますが、そんなこと全てが吹き飛ぶくらいの破壊力・・・
読了日:11月23日 著者:ミシェル ビュッシ
門 (集英社文庫)門 (集英社文庫)感想
ちょっと必要があって久々に読み返してみました。そして大好きな小説だということに改めて気づきました。一種のミステリでもあります、途中までなぜ東京の崖下(この設定がまた素晴らしい)にひっそりとこの夫婦は息を詰めるように生きているのか、という謎が渦巻いていて、14章でぱくっとわかるのです、全てが。日常の小さなさざなみに身をゆだねながら、自己を見つめる宗助。また崖上の大家さんの華やかな生活との対比も見事です。もしかしたらあったかもしれない人生。でも私は、この隠者のような宗助夫婦の暮らしぶりが非常に今はわかります。
読了日:11月23日 著者:夏目 漱石
ファインダーズ・キーパーズ 下ファインダーズ・キーパーズ 下感想
怖い~強盗モリスと学生のピートの点がどうやって結びついていくのか、というところが、じわじわじわじわ近づいていって怖かったです。二人が共に死んだ作家ロススティーンの熱烈ファンであるということも面白いところです。あと、モリスがそれとは知らずに超重要なものを踏みつけにしたり動かしたり、そのあたりもはらはらしました。やや偶然が多いかなあという印象、あと悪党を追う側の三人組の特性がそれぞれもっと際立ったら面白かったのにとも思いました。で、あの人は、あの人は・・・ああいうことができるようになったのかな?ここも怖い。
読了日:11月12日 著者:スティーヴン・キング
ファインダーズ・キーパーズ 上ファインダーズ・キーパーズ 上感想
ミスター・メルセデスの続編ということでわくわくしながら読みました。ミステリでもありますがスプラッタ的なホラーの要素もあります(下巻)。あと文学論のやり取りもあるのでそのあたりも文学好きだったら楽しめるところ。作者の好きな作家とかも垣間見えます。この巻では強盗モリスのある作家の作品にのめり込む様子の異様さや(でもあるある!)、前巻の自動車事故で障害を負った父を持つピートの家庭の話の中で、家族思いのピートのしたこと、などが描かれています。にしてもピートがけなげでけなげで!しかも頭がいいし!後半にあの三人組が!
読了日:11月12日 著者:スティーヴン・キング
アナログアナログ感想
すみません、下ネタ全開の友達との会話が全く笑えませんでした。あとラスト、映画のめぐり逢い?ラストに至る唐突感が、なんだか・・・
読了日:11月12日 著者:ビートたけし
花嫁のさけび (河出文庫 あ 28-1)花嫁のさけび (河出文庫 あ 28-1)感想
初々しい花嫁と人気映画俳優のロマンスから幕を開け豪華なお屋敷での暮らしが始まる。恩田陸のネタバレ解説にもあるように、某小説(または映画)を見ているかどうかでこのミステリの読み方が違ってくると思います。ある種のバイアスがかかるから、です。そこが非常に巧みなところ。読み終わった後、(あ、真相が私にはわかっていた!)と一瞬思うのですが、それはわかっていたのではなく、違和感を色々なところで感じていただけであって、語りに翻弄されわかっていた気になっていただけでした。時代的にやや古いところもありますが、読ませます。
読了日:11月12日 著者:泡坂 妻夫
屍人荘の殺人屍人荘の殺人感想
読み終わりました・・・
読了日:11月12日 著者:今村 昌弘
ナチの子どもたち:第三帝国指導者の父のもとに生まれてナチの子どもたち:第三帝国指導者の父のもとに生まれて感想
副題からわかるように、名前を言えばあの人!と思うナチの重鎮の子どもたちの物語。いわばその後、なのです。私の勝手な思いで、(きっと自分がナチの娘息子だったことはひた隠しに隠し、名前すらも変えて生きているのだろう、ひっそりと)とぼんやり思っていました。が、実際は、名前を買えずに生きている人の多いこと!その名前のためにたとえ迫害されても拒絶されても生きていく子供たち・・・裕福な暮らしから一転犯罪者の子供たちになる時にその受け止め方が人それぞれ大きく異なるのだなあと思いました。衝撃だった本。
読了日:11月12日 著者:タニア クラスニアンスキ
月明かりの男 (創元推理文庫)月明かりの男 (創元推理文庫)感想
相変わらず掴み抜群であり、大学内に入った警視正が殺人計画の紙を拾うあたりから、奇妙な実験をしているマッドサイエンティストまで、読ませてくれます。ただどうしても古き良き時代のテイストであり、使われる器具なども昔~という感じがするし、月明かりの中で見た全く違った犯人像の真相というのも、頷くというよりほお、ぐらいで。のんびり楽しむミステリだと思いました。それよりなにより(謎ではないのですが)日本の出版が刊行順ではないので、あの人が!んまあ!こういう!という同作者別作品を読んでいたら絶対に驚くことがありました。
読了日:11月12日 著者:ヘレン・マクロイ

読書メーター
10月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:3270
ナイス数:256

Ank: a mirroring apeAnk: a mirroring ape感想
前作も非常に楽しんだので今回も期待していました。そして今回もまた面白かったです。突然京都の町で普通の人間同士が殺戮を始める、これはパンデミックか?霊長類の話から壮大な人類の歴史、DNAの話などこのあたりが好き嫌いの分かれ目だと思います。なぜ殺戮が始まったかという謎も興味はありますが、どちらかというと私はその間に入る人間の歴史の薀蓄などの方に惹かれました。「あるもの」がこの話の鍵になります。今回は文章の中の体言止めがやや多いなあと前半部分はそこに引っかかったのといくつか腑に落ちないところもあったかなあ。
読了日:10月29日 著者:佐藤 究
ホワイトラビットホワイトラビット感想
途中まで(あ・・・ちょっと今回の伊坂幸太郎合わないかも・・それなりの面白さは保っているものの・・・)と思っていました。が!ある時点で驚き狂喜乱舞。後半の怒涛の展開にただただ驚愕の連続でした。面白い!とても!!今まで私の見ていた景色は何だったのかと改めて冒頭からもう一度読むと、見事に最後に全てが回収されているのがわかります。星座やレ・ミゼラブルとかの小ネタも面白いし、今回は作者視点(神視点)も入っているし、あの「彼」も、あの方々も出てくるし、折々にくすっと笑えるし、サービス精神満載。見事なエンタメです。
読了日:10月29日 著者:伊坂 幸太郎
未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)感想
単行本の時に何で読まなかった自分のバカ!と思ってましたが。わかったんです、お仕事小説、会社小説と思って敬遠していたということが。今回読んでみて、その側面は大いにあるけれど、壮大な青春小説でもあり恋愛小説でもあり犯罪小説でもある、と思いました。面白かった!まず文章が好きです、いつまででも読んでいたくなるような文章でした。シェイクスピアのマクベスを随所に絡ませているところもお見事で、バンコーの使い方、魔女の予言、王の使命と行く末と両者を重ね合わせて一気に読みました。そして初恋の冬香は?・・と思っていたら!
読了日:10月26日 著者:早瀬 耕
連城三紀彦 レジェンド2 傑作ミステリー集 (講談社文庫)連城三紀彦 レジェンド2 傑作ミステリー集 (講談社文庫)感想
表紙の作家さんたちの鼎談までついているだけでもどきどきするのに、更に彼らがセレクトした連城三紀彦作品でありその作品ごとについている一文もある、というゴージャスな一冊。それぞれの作家さんがどういう作品を選ぶのかなあという驚きと楽しさもまたあります。私は冒頭の伊坂幸太郎セレクトのぼくを見つけてで誘拐物の逆転を面白く読みました。(この後伊坂最新作ホワイトラビットを読むとさらに感慨深いかも)。度肝抜かれたのが関西弁で語られる白蘭、ある種の宮部作品を思わせる他人たち、一種の完成形の夜の自画像、など堪能しました。
読了日:10月26日 著者:連城 三紀彦
金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)感想
タイムリープ物。女子高生の菜月がタイムリープできる(でも5回限りで最後の5回目で決定)体質であるという設定で、クラスの中のある人間が死ぬのを何度もタイムリープで阻止しようとするお話でした。誰が犯人なのかというのも興味ありましたが、それとは別に学園生活のあれこれ、友達との摩擦などのエピソードの方が生き生きしていてそこは面白く読みました。ただ・・・タイムリープが自分の意志ではなくいつ起こるかわからないところ、ラストに至る箇所の展開、タイムリープした後の他の時間軸はどこにいったのか、とか色々疑問は残りましたが。
読了日:10月26日 著者:彩坂 美月
日の名残り (ハヤカワepi文庫)日の名残り (ハヤカワepi文庫)感想
ノーベル賞おめでとうで再読。特にラストの海岸場面、忘れ難くその場にいるかのような気持ちになりました。ドラマダウントン・アビーを見た後だと、この感じが更に良くわかるようになった気がします。古き良き時代のイギリスのお屋敷で執事として采配を振るっていたスティーブンスの身の程をわきまえた、今の目で見るとへりくだりすぎている姿が印象的です。でもこれが彼にとっては喜びであり、ダーリントン卿という尊敬できる主人に仕えるというのが彼の矜持であったのだと思いました。そして気づかなかった愛の行方。静謐で素晴らしい話です。
読了日:10月26日 著者:カズオ イシグロ
怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)感想
東京で展覧会開催中なので再読。このシリーズの人気は、一つの絵からヨーロッパ王族の歴史(血族の連鎖等)、ヨーロッパの歴史そのもの、当時の風俗・生活、果てはギリシア神話まで、その背景やひいては他の本や映画などを引き合いに出してくれるところがまことに楽しいからだと思います。単に背景のみではなく話が広がっていくのです。ということでこの本にセレクトされた絵のどれも見入ってその話の広がりを感じました。しかし表紙のしかしレディジェーン・グレイの処刑が表紙になっているけれど、インパクトのあることと言ったら!斬首って大変。
読了日:10月26日 著者:中野 京子
小川洋子の陶酔短篇箱 (河出文庫)小川洋子の陶酔短篇箱 (河出文庫)感想
楽しいっ。小川洋子がセレクトした短篇がずらっと並んでいるだけでも豪華なのに、それぞれの作品に対しての小川洋子のエッセイとも短篇ともつかぬ一文がプラスされているところまでずずーいと楽しめました。他の本で既読の作品でもこうして新しく読んでみるとまた違った切り口で読むことができました。私は、中井英夫の牧神の春を動物園で必ず思い出すし、梶井基次郎の愛撫の猫話も日和聡子の行方も忘れられないのですが。今回小池真理子の流山寺がめちゃくちゃ怖かったです!木山捷平の逢引きのそこはかとないエロス、葛西善蔵の遊動円木もお見事。
読了日:10月26日 著者:小川 洋子
デンジャラスデンジャラス感想
大変面白く読みました。細雪の雪子のモデルになった谷崎の妻松子の妹の重子の視点から語られていきます。ぼんやりと知識としてあった細君譲渡事件、姉妹への拘泥、老人になってからの嫁への偏愛ぶり、膨大な書簡などが重子の語りで鮮やかに描き出されこちらに伝わってきました。谷崎王国とでもいえる彼の『輪』の中に文字通り取り込まれた人の多いこと多いこと!虚実入り混じった小説が、皮の中に違う中身があることもある、と言い放つ谷崎とか、重子の嫁千萬子への反感とか、最後の最後での谷崎からの言葉の驚きとか。谷崎作品を再読したくなり。
読了日:10月05日 著者:桐野 夏生

読書メーター
9月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2606
ナイス数:190

蘭の館 (セブン・シスターズ)〈下〉 (創元推理文庫)蘭の館 (セブン・シスターズ)〈下〉 (創元推理文庫)感想
過去のリオ・デジャネイロ部分は、一人の女性の数奇な恋愛の話であり(あのキリスト像の出来上がる話は面白い)、現在部分は長女マイアの過去への探求話であるけれどこれまた子持ちの作家との恋愛話も混ざっています。過去の部分、ちょっと設定がありふれているとは思いました、私の目から見ると。婚約者がいる、ヨーロッパ旅行に行く、そこで真に愛する人に出会う、帰国してからその愛する人が追いかけてくる、意地悪な姑がいる、人妻なのに密通する、なんだか旦那さんが可哀想です。読ませるが。が。まだ途中なので、これからに期待したいところ。
読了日:09月30日 著者:ルシンダ・ライリー
蘭の館 (セブン・シスターズ)〈上〉 (創元推理文庫)蘭の館 (セブン・シスターズ)〈上〉 (創元推理文庫)感想
湖の館で育てられた6人の娘は気質もそれぞれ違い、血が繋がっていなくて、全員が養女だった・・・優しかった養父が死ぬことで、改めて自分はいったい誰だったのか、なぜここに連れてこられたのかという最大の謎が物語全体を覆っています。残された遺言書と座標による謎解きで、長女マイアは自分の出生地であろう、リオ・デジャネイロに飛び、そこで蘭の館なる場所でその一族の物語を知るのです。読ませます、特に現在の部分が。マイアの闊達さが光る現在部分でした。(下巻に続く)
読了日:09月30日 著者:ルシンダ・ライリー
ねじの回転 (新潮文庫)ねじの回転 (新潮文庫)感想
新訳なので何度目かですが読んでみました。読みやすかったです。また相変わらずこの小説に巻き込まれます。今回、あるお屋敷に家庭教師に行って、美しい兄妹と出会いそこで幽霊を見る女性、わかっていても衝撃のラストの話という物語そのものもですが、最初の出だしに注目しました。枠物語ではありますが、誰がどういう語りをしているのか、というところに行きつくまでの前段に結構ページが割かれていますした。ダグラス、『私』、家庭教師の女性がそれぞれ鮮やかに描写されていました。そして14章の教会場面が一つの分岐点になったと感じました。
読了日:09月24日 著者:ヘンリー ジェイムズ
往復書簡 初恋と不倫往復書簡 初恋と不倫感想
カルテットの(他にもあるけど)坂元裕二作品。書簡体で綴られている二編です。私は、もう息を詰めるように読み終えました、非常に面白かったです。どちらもミステリアスな部分の開き方が一級品だと思いました。最初の不滅の初恋~の方は、小学生のいじめの話から始まるのですが、大逆転劇が後半の大人部分で待っていて、この男子が手紙をもらった時にどういう気持ちだったかが開いていきます。後半のカラシニコフ不倫海峡もまた、疑惑、勘違い、思い込みの面白さが溢れ出ています。トイレ掃除のおばさんの言葉、豆生田の狂言回しの面白さも絶品。
読了日:09月23日 著者:坂元 裕二
Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)感想
短編が5編入っていました。この中でやはり表題作のY駅~は起承転結が素晴らしく、また謎の提示の仕方が冒頭から何とも魅力的でした。特にパーキングエリアの休憩所の灯が消えて、そこにいる人達全員が同じ方向をじいっと見つめていた謎、というのは内情がわかるとああ!と膝を打つ面白さでした。九人病は鄙びた温泉で偶然同じ部屋になった人からの語り、という土着のホラーのような話でこれまた気味が悪く皮膚感覚で嫌さがわかり、好感が持てました。猫矢来、主人公がいい感じで学校内部の話も読ませるので、シリーズで読んでみたいかも。
読了日:09月10日 著者:青木 知己
湖畔荘〈下〉湖畔荘〈下〉感想
二転三転する真相、しかもミステリ部分だけではなく深い人物造形に魅了されました。『同じ出来事を見ても違う人、違う見方、だと全く違った真実がそこにある』という何度も出てくるテーマにも驚愕させられました。偶然と必然についても考えさせられます。また母と子供の絆ということについても思いを馳せています、セイディの現在の事件もセイディの私生活も含めて。ラスト、私はこのラストで非常に満足しました。全てはこの輝くようなお祭りの日に始まったのだなあ・・・と2章を読むとますます感慨深いです。(一点、登場人物表は欲しかったかも)
読了日:09月07日 著者:ケイト・モートン
湖畔荘〈上〉湖畔荘〈上〉感想
傑作。70年前の湖畔荘で起こった迷宮入りの赤ちゃん失踪事件が語られていきます。謎が謎を呼び、時制も現在と過去を行ったり来たりしながら、多視点で語られていきます。同じような母子の話が、謎を追うセイディ女性刑事の私生活と彼女が扱ってる事件と70年前の事件で重層的に語られて行きました。何しろ読ませる、ページをめくる手が止まりません。そして上巻のラストで、ええっという驚きの声が。アリスも驚きましたが、私も驚きました。最後まで読んで1章を読むとなるほど、と思い、2章はこの話の総てを物語っていることに気づきます。
読了日:09月07日 著者:ケイト・モートン
わたしの本当の子どもたち (創元SF文庫)わたしの本当の子どもたち (創元SF文庫)感想
大好きです。ジョー・ウォルトンにはずれなし、と改めて思いました。読み応えがあり、冒頭から惹きつけられ、混沌としている目次を見て(なんだろう?)と思い、そして大団円へ。ラスト数ページの畳みかけるような言葉の数々がまた素晴らしく胸に刺さりまだ考え続けています。いわゆる歴史改変(その側面もありますが)SFではなく、いわゆるタイムスリップSFでもなく、一見普通小説のようなのですが、実に味わい深い一冊だと思いました。文学好きへの喜ぶ話も沢山入っています。主人公のパトリシアの人生に思いを馳せながら読み耽りました。
読了日:09月04日 著者:ジョー・ウォルトン

読書メーター
8月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1712
ナイス数:207

風ヶ丘五十円玉祭りの謎 (創元推理文庫)風ヶ丘五十円玉祭りの謎 (創元推理文庫)感想
ここからいきなり読んでしまうという暴挙・・・でもとても面白かったです。日常の謎をばしばし解いてしまう、ちょっと癖のある屈折した男子高校生裏染天馬の姿も好印象、他の高校生たちも(特に卓球部女子二人)生き生きと活写されていました。表題作は真相に(せこい・・・)と思いつつ、なぜ50円玉を屋台のお釣りに設定したのか、そして誰だったのか、というのを楽しみました。冒頭の丼の話もものすごく納得、男子高校生の気持ちがわかります。密室からの脱出という天使たちの残暑見舞いも非常に学校という場所を巧く使った真相だと思いました。
読了日:08月31日 著者:青崎 有吾
少女は夜を綴らない少女は夜を綴らない感想
理子が、悠人に頼られることによって居場所があると思う気持ち、そこはとても読ませました。
読了日:08月31日 著者:逸木 裕
Y (ハルキ文庫)Y (ハルキ文庫)感想
話が非常に入り組んでいますが、その分とても楽しませてもらいました。もしあの時ああだったら、の話を見事な一編の物語に織り上げています。SFとミステリと究極の恋愛小説の混合体。冒頭の電車場面を最後になって読み返すと、感慨深いものがありました。全く記憶のない男から親友を名乗る電話があった部分から始まるストーリーもまた魅力的で、一体どこが本当なのか、この人は今どこにいるのか、という謎に満ち満ちていて、それがするりと解ける部分が感動的に面白かったです。また自分の身を挺して恋人を守るという恋愛部分にもぐっときました。
読了日:08月31日 著者:佐藤 正午
花のようなひと (岩波現代文庫)花のようなひと (岩波現代文庫)感想
色付きの挿絵と佐藤正午の文章を楽しみました。短編が続いた後、最後に中編が。どちらも短いのであっという間に読めますが、滋味深いです。日常のさりげないことから花を絡めての短編は、何かの予兆に満ち満ちているのです。ちょっとした人の心の揺らめきが光ります。どれも長編の書き出しになりそうで、(このあとこの二人はどうなるのだろう?)とか(このあとこの人はどういう行動をするだろう?)と思いを巡らしました。語り口も、手紙、メール、普通の文章、独白、と多様でした。中編の幼なじみは秘密めいていて美しく切なくて心に残りました。
読了日:08月27日 著者:佐藤 正午
晩夏の墜落 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)晩夏の墜落 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
好きな本でした。プライベートジェットに複数の人がいて墜落、そしてその一人のみが助かって子供を海の中で救うヒーローとなる、という話なのですが。ジェットに乗っていた富豪たちが一癖二癖ある人たちなので、陰謀説、テロ説、と噂が飛び交い・・・。この本、『なぜそれが起こったか、誰か事故を起こした人がいたのか』だけに焦点を当てると真相はそれほどでもと私は思います。ただ、その過程でジェットに乗り込んでいく人たちの人生がどうだったのか、のところが読ませます。ばらばらの人生が一点に集約していく面白さ、があると思いました。
読了日:08月27日 著者:ノア・ホーリー
大雪 (大型絵本 (2))大雪 (大型絵本 (2))感想
多分、ですが、同作者のウルスリのすずをおおいに気に入った私に、両親が買ってくれた本だったと思います、これまた小さい頃の愛読本。今度のウルスリ君はお兄さんで、妹愛に満ちていて、妹を助けるのですが。大雪の場面とカラフルなそり行進場面との対比が素晴らしくて。素朴な感じの絵なんですが、今でもひきつけられます。
読了日:08月27日 著者:ゼリーナ・ヘンツ
ウルスリのすず (大型絵本 (15))ウルスリのすず (大型絵本 (15))感想
小さい頃の愛読本。懐かしくて懐かしくて!すず、が日本のすずと違う形でどういう音色がするんだろうなあ・・・と想像したのも遠い思い出。パレードの先頭を歩くためにちょっとでも大きなすずを持ちたいウルスリ君の気持ち、そして今となると一晩いなかった息子を案じる両親の姿、にも心打たれます。パレードの晴れやかな顔と言ったら!!
読了日:08月27日 著者:ゼリーナ・ヘンツ

読書メーター
7月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:6310
ナイス数:347

AX アックスAX アックス感想
た・・・楽しい!!殺し屋シリーズで、本文中にもくすぐりはちりばめられていて過去作品を読んでいる人はそこも楽しめ、もし読んでいなくてもここから全くオッケー!伊坂幸太郎ワールドが広がっていて、ある一つの出来事が次の何かに繋がっていたり、会話の妙、徹底的な伏線回収、そして今回は兜という殺し屋と、奥さんと、とてもいい息子の克巳君の家族の物語でもありました、ラストあることでちょっと泣けます。超一流の殺し屋が恐妻家であり奥さんにびくびくしている、の設定がおおいに笑えました。蟷螂の斧、古山高麗雄、これがキーワードです。
読了日:07月31日 著者:伊坂 幸太郎
怒り 下 (小学館文庫)怒り 下 (小学館文庫)感想
上巻すごく面白かったのですが、ここにきてやや失速・・・と私は感じました。シャツキの娘が誘拐されるあたりから、捜査がシャツキ中心になってきて(何しろ秘密なのですから)そこも広がりを感じませんでした。上巻でなんだなんだ?と思っていた「夫がおかしい普通の家庭の女性の訴え」も氷解するとそれほどのインパクトもなく。あと・・・ヴィクトリア本人の内面とファルクの背景(特にこちら)がよくわかりませんでした。更に惜しいのは、これが3巻なので、シャツキに馴染みがなく彼の心情が今一つ把握しかねるというところ。面白いんですが!
読了日:07月31日 著者:ジグムント ミウォシェフスキ
怒り 上 (小学館文庫)怒り 上 (小学館文庫)感想
ポーランドミステリ。作者本人もルメートルが好きなようで、作中にもルメートルを読んでいる部分が出てきます。冒頭から、一体何が起こってるのかが全く分からず、「ポーランドの地方都市オルシュティンの防空壕で見つかった白骨の男が10日前には生きていて、なんでじゃあこんな短期間に白骨になったのはどうしてか」という謎を解いていくことがようやく途中でわかってきます。検察官シャツキの独特の佇まい、見習い検察官の エドモンド・ファルクの論理的思考、と癖のある人が何人も出てきて、おまけにフランケンシュタイン博士(!)まで。

読了日:07月31日 著者:ジグムント ミウォシェフスキ
冬雷冬雷感想
因習にとらわれた町の物語・・・読ませるのです、重苦しい気持ちに終始つかまりながら。
読了日:07月31日 著者:遠田 潤子
ジャンプ (光文社文庫)ジャンプ (光文社文庫)感想
祝直木賞受賞なので、過去作品を再読。ジャンプは、「リンゴをコンビニに買いに行ったガールフレンドがそのまま失踪した」という失踪物語です。なぜ失踪したのか。彼女は自分で失踪したのかそれとも連れ去られたのか。最初読んだ時には、(この男!!出張なんか行かずにすぐ探せよ!)と怒りまくってましたが。今、わかるのです、この人は典型的なサラリーマンだったんだなと。状況もわかってない中美業務を中止してそんなことは出来なかったんだなあと。途中で主人公のあ!という面が出てきて、最後深い驚きが。苦い最後ですが、考えさせられます。
読了日:07月31日 著者:佐藤 正午
彼女たちはみな、若くして死んだ (創元推理文庫)彼女たちはみな、若くして死んだ (創元推理文庫)感想
ウォーの「失踪当時の服装は」のきっかけになった本というので楽しみに読みました。全て英米で起こった女性への殺人事件の実話であり、これが物語ではなく実話である、というところに打ちのめされました。被害者も加害者も ある人間は真実を隠そうともせず、ある人間は巧妙に隠そうとして それを暴く刑事たちの真摯な姿があります。ここを非常に淡々と描いています、エモーショナルな書き方の対極を行くような描き方でした。冒頭のボルジアの花嫁からしして衝撃、なぜ無垢な少女が殺されなければならなかったのか、真相はあまりに苦かったです。
読了日:07月24日 著者:チャールズ・ボズウェル
星の王子さま (岩波文庫)星の王子さま (岩波文庫)感想
やっぱりこれこれ!子供の時にしみわたっている内藤濯翻訳がしっくりきます。星の王子様をぼっちゃん、と呼びかける素朴さ、「できやしないよ」とか「してごらんよ」という言葉のやさしさを楽しみました。大切に翻訳した気持ちが伝わります。大人になって読むと現在社会の象徴的な人、言葉がたくさん出てきますが、それも大人の目で楽しめます。また最後の内藤初穂さんのエッセイも秀逸で、美智子皇后とのやり取り、翻訳が内藤先生に決まった経緯など、知らないことが多かったので非常に有意義でした。あと、印象的な挿絵、全てカラーなのですね!
読了日:07月24日 著者:サン=テグジュペリ
われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)感想
1980年レーガン大統領誕生の年のモンタナ州でソーシャルワーカーをしているピートの物語。ピートが一生懸命子供たちを虐待する親、ネグレクトする親、狂信者の親から守ろうとしているのに、凄まじい横槍が入り(主に親から)、ある時は命まで狙われる姿が痛々しかったです。またピート自身の家庭にも問題があり愛する娘レイチェルに対する思い、妻への不信感から女性全般への不信感につながるピートの心のありようもまた可哀想すぎました。途中入る転落していく娘レイチェルと第三者とのやり取りもまたアクセントになって読ませませす。
読了日:07月17日 著者:スミス・ヘンダースン
ピンポン (エクス・リブリス)ピンポン (エクス・リブリス)感想
面白く読みました。カテゴリー分けができない小説で、最初壮絶ないじめにあっている二人の釘とモアイという少年がピンポンで立ち直る話と思ったら違っていて。もう過剰にいろいろなものがごたごたっと入っていて、いじめっ子のチス、双子がいる卓球洋品店のセクラテン、バスの運転手、お金でマッサージをしてくれるホームレスの老人たち、乾電池を舐めて死んでしまう太った人、そしてモアイが語る超絶に面白いジョン・メーソンの小説の話、とどれをとってもエピソードにこと欠きません。ラストのいっちゃう感じがすごい。ピンポンピンポン!

読了日:07月17日 著者:パク・ミンギュ
海岸の女たち (創元推理文庫)海岸の女たち (創元推理文庫)感想
「失踪した夫を捜索する妻の話」ですが、社会派ミステリと言えると思う作品でした。冒頭、海岸で二人の女性が靴をモチーフとし、ある出来事が描写されて行きます、これが後半非常に重要になるので最後再読しました、この部分。ニューヨーク、パリ、ヨーロッパと妻アリーが夫の足跡を辿っていって、彼が見たものを自分も把握しようとするバイタリティ、小さな手掛かりから何とか引き出そうとする行動にもに感嘆しました。途中で夫婦のあることがわかるのですがそこで私は驚きまくりました。ええっと。しかしこれが大きな物語の鍵にもなっていました。
読了日:07月16日 著者:トーヴェ・アルステルダール
パンドラの少女〈下〉 (創元推理文庫)パンドラの少女〈下〉 (創元推理文庫)感想
それぞれの人の正義はあり、一見残虐な行いをしているようなコールドウェルにさえ、(わかるよ・・・)と言いたくなりました。少女メラニーの独房生活から解き放たれ外を見た反応の数々が新鮮で詩的で美しく、そこも読ませました。またメラニーのミス・ジャスティーノへの無垢な思いと愛情、それに伴う自分の中にある黒い欲望への抑制、も、けなげだなあと思いました。ラスト、こういう結末!こういう結末しかないかも、と改めて感じました。気持ち悪い場面も多々ありますが(この方面私は苦手なんです本来は)、ともかくも読ませるエンタメでした。
読了日:07月16日 著者:M・R・ケアリー
パンドラの少女〈上〉 (創元推理文庫)パンドラの少女〈上〉 (創元推理文庫)感想
出だしが最高潮に面白いです。少女が独房で首と両腕を固定されている、車椅子で。何人もの同じような少年少女がいて、彼らは教室に集められ教育を受けている、親も何もいないようだ、この設定で、なんで?なんで?誰?この世界は?と疑問が頭に渦巻きます。ほどなくこの世界がどういう世界かという開示があり、(ああ!!!)と納得するのです、でも話はそこからで、この軍事施設からの脱出劇があり、ここから荒廃した世界への第一歩が始まるのです。キャラクターが非常にどの人もたっていて、引き込まれました。軍曹への評価が一番変わりました。
読了日:07月16日 著者:M・R・ケアリー
ミツハの一族 (創元推理文庫)ミツハの一族 (創元推理文庫)感想
一章の終わりでええっと驚き、そのあと、(もしかしてこれってあれ?あれ?あれ?)とずうっと心で呟きながら読んでいました。(あれは、解説でも伏字で触れられているので、そうでしたやっぱり)。大正時代の北海道、未練がこのようにあると鬼になって生活圏の水を濁してしまう人の、未練が何かを探るという話。探る人が水守と鳥目役。両方ともいわゆる目の障害があるのですが、この描写が美しく思わず読みふけりました。ラストの章、いやあ・・・驚きよりも、あたたた・・・
読了日:07月10日 著者:乾 ルカ
プリズン・ガール (ハーパーBOOKS)プリズン・ガール (ハーパーBOOKS)感想
『実の父親に監禁され半死半生の目にあっている少女がそこから脱出する話』と勝手に私は思っていましたが、全く違います。まず監禁の話、ではなく、どちらかというとロードムービー的な話。一緒に彼女と旅する羽目になるデッカーが魅力的、普通過ぎて魅力的という稀有な存在の青年でした。ベティは彼のおかげで成長できたんじゃないかな。腑に落ちないところは数か所あるのですが、さくさくっと読めました。
読了日:07月10日 著者:LS ホーカー
風の歌を聴け (講談社文庫)風の歌を聴け (講談社文庫)感想
何度か読み返すのですが、折々に。これが出た時の私の衝撃を思い出すのです、翻訳小説と思ったくらいだったから。それだけ画期的でした、この文章と内容は。これからスタートしたのだなあ・・・と感慨深く今は読み返します。
読了日:07月10日 著者:村上 春樹
ささやかな頼み (ハヤカワ・ミステリ文庫)ささやかな頼み (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
多分、だけど、作者はハイスミス大ファンらしく(何度もハイスミス作品の話が本文でも出てくるし、解説にもあった)、そういう心理サスペンスを目指していたのでしょうが・・・うむ。ママ友の話、と思っていたらそうではなく(そうなんだけどそうではない)、どちらかというと、本当のその人の姿とは、みたいな話。シングルマザーのステファニーの隠れた過去の開き方、大親友になったとステファニーが思ったママ友エミリーへの憧れ、とかこのあたり非常にわかります。二転三転があと一歩かなあ。最後の一ひねりがもうちょっとあったらよかったかも。
読了日:07月10日 著者:ダーシー・ベル
あとは野となれ大和撫子あとは野となれ大和撫子感想
架空の国の物語ですが、世界情勢のいろいろな事実が盛り込まれているので、エンタメとしてはめっぽう面白いです。地図もじっくり見ました。しかも女性ばかりの後宮(といっても今や性産業ではなく、頭脳開発の場になっているところ)で、女性たちがわさわさ頑張っちゃうと言うところも読ませました。が。正直に言うと、女性たちの語りのあまりの軽さに、ちょっとひいちゃったかなあ。アンバランスな感じがしたのです、話し言葉とこの内容とが。
読了日:07月10日 著者:宮内 悠介
映画にまつわるXについて2映画にまつわるXについて2感想
大好きな監督さんのエッセイ集。映画永い言い訳を見ていると、ますます楽しめると思います。もっくん・・・思ってたのと違う人というミーハーな気持ちも出てきて全体に堪能しました。子役の男の子の大ファンだったので裏でこのようなことが・・・。映画って一人だけじゃないというのはわかっていたけど、こんなに多くの人の手を通しているのだなあ・・・。どこまでを妥協点にするか、っていう判断をするのも監督なので大変だなあと思いました。
読了日:07月10日 著者:西川 美和

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