2017.04.02 3月ベスト本


売れるから、騒がれるから、という理由が要因だと思うけれども、村上春樹っていうとすごく微妙な反応の人が多くて残念です、熱狂的なファンがいる一方で。
今までの作品の既視感はあるものの、十分読ませました。
読ませる力相変わらずあると思います。
ただ・・・この話の続きも読みたい気もします、続編ということではなく。
311のあたりの話がもう一歩あるような気がするから。

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これは、完璧な家と完璧な素敵な夫と完璧な何でもこなせる妻の話、なのですが。

一見よくある話のパターンのように見えます。
でも、これが巧いのは、予兆が見える恐怖を描いているところだと思いました。
実際に何かがあったといえばあったのだけれど、暴力とか血とかへの予兆。
予兆の怖さが物語を牽引してくれます。
とても面白く読みました、支配被支配というのも考えつつ。

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最初から拷問場面で始まる辛い話であるのに、途中で爽やかな気持ちになる青春小説でもありました。

途中でのいろいろな場面が最後にもう一度読みたくなりました。
タイトルととともに嚙み締めました。

2017.03.06 2月ベスト

まずこれ。
荒唐無稽といえば荒唐無稽なので(あり得ない~~ということが連発)そこが好悪の分かれ目かも。
あり得ないんだけど、可愛すぎるし楽しすぎる!

でも思い切り楽しいミステリであって
家庭に屈託を持った女子学生たちが、ある殺人事件に巻き込まれるというところからして楽しいし
そのあと、各自の特技を持ってことにあたる、というところもわくわくするし。
最初の、それぞれの学生の家の事情が書いてある箇所が楽しめたらもうそれでこの世界にずっぽり。
誰が好き?とか語り合っても楽しそうなお話。

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これを読んで、デュ・モーリアはどうやったって傑作なんだ、というのがよくわかりました。
どれもこれも心の奥の何物かを焙り出してくれます、それも巧妙に。

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読みやすいもの、って世間的になんだか低く見られるのは何故かなあ・・・といつも思います。
平易に書くってとても難しいことなのに。

この話、読みやすさ満載なのです。
そしてちょっとラブロマンスもあり・・・家庭内争議もあり・・・

「自分の知り合いが自分の結婚式に来るために失踪した、それはいったいどうしたのか?」
これだけの謎なのですがこれが引っ張ること引っ張ること。
読ませます。
ページターナーなのです。
最後の方で、なぜそれほど親しくない知り合いをわざわざ自分の結婚式に呼んだのかということの答えも出てきます。
ここが私は人間の心の深奥を描いているようでおおいに気に入りました。

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良かったなあ、この本。

ブロンテ姉妹の生い立ちとか育った環境は知っていたのですが、
この本、『物』から彼女たちを語ってくれるのです、あるところは『犬その他の動物から』、作品にそれらを絡めるところが絶妙でした。

語り口がお見事で、手紙の章では、手紙が引き起こした現実の事件とかそこまでが触れられていました。
犬の描写、確かに嵐が丘にあるなあと思い出しました。
もう一度全体を読んでからこの本を読んだらもっともっと楽しめるかも!
にしてもお兄さん、これだけ優秀な妹たちがいるのになんだか・・・・
お父さんは結局最後まで生き延びた人だったのですね。
2017.02.02 1月ベスト本


何度も同じこと書くけれど!
旧訳でも全くオッケーだったわけです。
けれど、新訳は新訳で非常に読みやすく、読んで再びの深い深い感動にいざなってくれました。

一体、地球外生命体はどういう姿だったのか?に始まり(ここがもうなになに???と首を突っ込みたくなります、そしてどういう姿だかわかった時に感動)、何のために来たのかという終盤に至るところが素晴らしくて。

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私の初めての西加奈子、はここからだったんですが。
正解、だと思いました。
コッコちゃんの可愛さにノックアウトされ、吃音の男の子の言葉の深さに打ちのめされ。
この物語全体に出てくる脇役に至るまで、非常によく描きこまれていると思いました。
2016.10.06 9月ベスト本
今月はまずキング作品のミスター・メルセデスがとてもとても良かったです。
ホラーではないのですが、今どきのネットを使った犯人像がお見事で(ほぼ最初から犯人が分かっているのもミソ)、後半が特に良かったです、三つ巴のそれぞれの人の特徴を使った捜査っぷりが。
エンタメの緩急を知ってるなあ~



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↑上のキング作品と同じくらい、いやもうちょっといいかも、かなりいいかも、と思うくらいに私が気に入ったのがこれ。

まず設定が、あと少しで地球が崩壊する、小惑星衝突のために、というSF設定なのですが。
この中で自殺する人が多いのは当然で、自殺したと誰もが思った殺人事件を一人の刑事が追っていく、というミステリでした。

全員が滅びるという設定がまず魅惑的すぎる!
そしてその中で周りがどうなっていくか(宗教ドラッグに走る人も多い、自殺も多い)のも非常に良く描けているし、愚直なまでに自分の使命を果たす人々が少数ながらいる、という事実に心打たれました。

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あとは・・・ささやく真実、四人の女、終わりなき道、もかなり好み、この順番で好き。
2016.08.04 7月ベスト本

これがとても私の心の琴線に触れました。
戦地で本を読む、というのがどれほど正常な精神を保つのに重要なことか、というのを改めて考えさせれらた本でした。
そして冒頭膨大な数の本が焚書されますが、後半読んでいくと、きっちりとこの借りは返しているというところにもぐっときました。
失われた本は戻らないものの。


短編集です。
どの短編も幻想に満ち満ちていて素敵!
ラストの表題のエレンディラに至っては、過酷な運命のエレンディラの物語なのに、強欲な婆ちゃんについつい吹き出しそうになるという、肝っ玉の据わった物語でした、そして締めくくりが強烈で小説として完璧、と思いました。


週末、森で、の続編っていうかスピンオフっていうか
続編でしょう(どっちなんだ!)

個人的に、
すーちゃんシリーズより
こちらの方が私は好き。
すーちゃんは、苦いところがたくさんあるでしょう?
そこも含めての良さ、であり
たまにその苦さが(刺さるーーー)と辛くなる時もあるのだけれど

現実逃避派としては、

このまったりとした
のんびりとした
森に生きる、生活をしている人にほんと癒されるわけです。
ここに都会からきて
きりきりしている大人もいるんだけど(お友達です)
彼女達ですら、ここで癒される。

その癒され方がとっても描かれているんです。
単純に
森はいいよーじゃなくて
森の中の木、森の中の湿った感じとかが伝わってくるんです。

現実に森に行っていなくても
森に行って森林浴をしたような気持ちに。

そして大好きなのは
この森に棲んでいる人が
決してはやりの「丁寧な暮らし」をしているわけでもなく
特にお料理上手とかでもなく
お土産とか既成のものとかを大喜びしていて
普通に子供を育て普通にミーハーで普通に暮らしている、でも森が助けてくれる、
その姿も等身大で好感が持てました。
あと学校の話も良いかなあ・・・・いじめがちょっとありそうな時に
鳥のフンの話・・・繋げるところがとっても良いかなあ。

わかっていらっしゃる。
これにも微笑みました。
さて・・・
今月は面白いものが多かったので
ほぼ全体に丸を付けたいくらいです。

エッセイでは



が弾むような文章で、SFの楽しさみたいのを語ってくれていたし。
しかも全部のページにCOCOさん漫画付きというプレゼントも。
更に大森望ピンク紙(入ってます)プレゼントも。
最後の註がものすごく優れもの(わからないところはすべてここでわかるようになってる)というプレゼントも。

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これとは全く別タイプエッセイだけど
そして何度も爆笑した、松田青子の




も最高に楽しかったし。
わかるわかる!という感覚が体中に充満するようなエッセイだったし。
(特に映像好き&演劇好きで本好き、の人はわかる度合いが高いと思います)


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小説では
まーーーーーーーーーーはじめて読んだ

の衝撃度合いが!が!

これって、確かに、血みどろ残虐物語っぽく語られているのが多く
血しぶ飛び散る小説苦手な私としては敬遠してきたのですが。
(ということで映像は見てません)

違う・・・これって
「同じ学校にいて同じクラスにいて、なんとなく知っていた子供達が、残虐な場所に投げ込まれたことによって、その子の本質とかその子の背景が新たにわかっていくサバイバル物語」
じゃないかと。
こてこてのエンタメです。
血しぶもあります。
ぎゃっ。
でも、子供達の友情とか信頼とかそういうのもたっぷり。
あと・・・SFなんですね、これって、と改めて。
だからとても楽しめました。

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海外ものではこれ。


久々に読んで
原作ではくっきりとゲイというのを出していると思いました。
もうトムが怪しすぎる。
怪しいっていうかそうだろうっていうか。

そして映画でもこれは最高潮にドキドキする場面ですが(私は殺人よりこの場面の方がぞくっとしました)
「トムがディッキーの服とかを着て鏡にうつっている自分を見る。
それをディッキーに思いもかけず見つけられて
動転する」

この場面!
小説でもここが非常に大きな転換点、と見ました。
ディッキーの態度がここから大きくそれていくのですよね、だってディッキーはゲイじゃないわけだから。
どちらかというと嫌悪しているわけだから。

にしてもこのある意味衝撃のラスト。
何度読んでもぞくっとします(映画とは全く違います)
今月読んだ冊数が少ないのですがどれも良かったのです。
そして特に、ということでは。

まず海外文学から。

久々にまたエリクスンにはまりまくりました。
幻視の世界と言われますが、夢の世界でもあり、悪夢でもあり、そしてとてつもないアメリカの歴史も背負っているというとんでもなく面白い本でした。
ただ、難解な部分はあると思います、メモが山のように出来ましたから読んでいる間に。
付箋も貼りまくり。
そういう難解さを凌駕するくらいに惹き付けられました。



映画化ということで読みましたが、視点が子供で、最初のうち戸惑います。
けれど、これだけの暗いテーマなのに、下巻で全く別の味わいの物語になるところがおおいに感動できました。
外を見る自分の目が変わりました。

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国内本から。

どの話もよく出来ていると思います。
そして読んだ後折々に自分の生活の場面でこの物語の色々な場面を思い出します。
ジャーナリストの矜持、そして戸惑いなども焙り出されていて、その点も読んでいてぐっときました。


少女の時間、なんて切ないタイトル。
柚木シリーズなんですが、このシリーズ、それは勿論最初から読むのがベストです。
でもね、どこから読んでもオッケーでもあると思うシリーズ。
途中が抜けていてもオッケーと言うシリーズ。だから非常に手に取りやすいんです。

なんといっても柚木草平の佇まいが素敵できゅんきゅんします、永遠に年をとらない男。
今回美女ばかりが周りにいますが、モテモテで可愛い娘までいる主人公は、ほんと、男の夢なんだろうなあ・・・
そして柚木草平キャラクターは、女の夢でもあります、はい。

12月度の良かった本の筆頭はまずこれ。

読んでない本を読んでない人達がわずかな手がかりから類推する、
こんな面白い本があったでしょうか。
でもこれ、きっと「人」による、と思うのです。
この企画を普通の人達が普通にやったとします。
あら、これ読んでないわ、私も、俺も俺も、じゃあ類推してこの本を読んでないけれど語っていこう。
多分面白くない。

この4人だから成し得た技があり、
類推の過程が、今まであまたの本とか漫画を読んでいる人だからこそ、の過程があり
突込みがあり
わからないことはわからないと言える度量があります。

作家や翻訳家なのに罪と罰を読んでないということは決して批判の対象にならないと思いました。
なぜなら
最後にこの人達、本当に読んで、普通に読んだと言い張っている人達より
はるかに深い考察を出しているのです。

罪と罰を読んでいる人にも
読んでいない人にも
また読んでいるけどおぼろげな人にも
ものすごく刺激的で面白い本だと感じました。

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海外文学からはこれを。

少年時代へのノスタルジーにも温かく包まれた物語ですが
普通の家族、普通に幸せに平凡に暮らしていた家族、村で起こった小さな事件は話題にはなるけれど他人事であった家族が、ある事件に巻き込まれる後半から一気に読ませます、前半の家族を見ているだけにそこがぐっときます。

またタイトルが秀逸で
ある部分でこのタイトルの意味がわかるのですが
その場面が鮮やかに脳裏に刻まれました、まるでその場に居合わせたように。

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いわゆるライムシリーズの中でも
この物語、とても上位作品だと思いました。
そしてここまで読んできたファンをくすぐる「前作品」との繋がりが
読んでいてわくわくさせてくれました。
ただ、前作品を読んでいなくてもこれのみでも楽しめます。

どんでん返しの途中途中のは相変らず優れているし
ラスト終わったか・・・と思った後のやられた感。
エンタメとして本当に優れている作品です。

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川上未映子作品で一番好きかも。

二人の男の子と女の子の小学生時代から、その2年後までを鮮やかに追っています。
どちらの家庭もちょっとだけ世間的な常識からははずれていて、多少は歪んではいるのですが
この二人の瑞々しい感性と言ったら!

特に、男の子の麦君、の佇まいが最高に良いです。
小さな麦君の頭をぽんぽんとしたいくらいに、麦君可愛い。
まずは海外本から。



美女との燃え上がる電撃的な恋、そこから派生する周りの人々の動き、そして殺人事件。
わかりやすい構図でありながら、とてもとても読ませるミステリでした。
真相、驚きました、私は。



こういうゴダードならまた読んでみたい!
ロマンチックな恋愛があり、過去のことが現在に及ぶ謎があり、人生の残酷さが美しさの中に潜んでいて。

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運の悪い独身女性葉村晶探偵が帰って来た!
全く前のシリーズ本を読んでなくても楽しめます。
シリーズ中、私は一番好きだなこれが。
ビブリオマニアの心もくすぐりながら、二重三重の謎がぱらぱらと最後ほどけていくところが素敵。


このシリーズに突然はまっちゃってはまちゃって!
奥田英朗がまた私の中で再燃した一冊。
家庭のちょっとした出来事、を描いているんだけど、ウェットではなくしかも落ち込んでいる時に読むと、すかっとする一冊。
次作品もお勧め。
そして三冊目、今の楽しみにしている本です。


きょんきょん、侮れず!いや侮ってないけど。
平易な言葉で素直に感想を述べているところが好感度大。
かいま見える彼女の生き方みたいなものにもどきどき。