評価 4.5

のんびり進む夏目漱石の話だ。
もっともっと専門的なのもあるのだろうが、これはこれで微笑ましく、入門の一歩として楽しめたのだった。
先日来、ドラマで漱石をやったのでなにかこういうものを読んでみたいなあ・・・と思って手にしたのだが・・・。

漱石がものすごく身近になるし、会話とかがもう本当にあったかのようだ。
見合い相手としてきた金之助に一目ぼれした鏡子。
苦労するが大成するといわれた占い師の言葉を信じて結婚する鏡子。

小説家であって神経を病んでいる漱石がいかに扱いが大変だったかというのがよくわかる。
一般的には悪妻ということでとおっている妻は実は夫を懸命に支えていたのだということがひしひしと感じられた。
2016.03.07 謎の毒親


評価 4.5

ああ・・・巧い。
実話ということでとても驚いたが。
この相談形式というのが巧いし、答えの感じも理にかなっている。
誰にでもある、小さい頃の家庭の不思議な出来事・・・と思いきや、この家庭は常軌を逸している。
そう思いつつ次のページをめくらせてしまう力のようなものがあった。

親子の話だが、虐待なら虐待で、ああ・・・なんて悲惨な、と思うだろう。
また、理由がわかっているのなら、だからか・・・・悲劇だ、と思うだろう。
子供を徹底的に管理したいと言う親ならそれはそれでわかるだろう。

この話の相談の場合、親がこうしたああしたということが一切何もわからないところが思い切り怖い。
理由が全く見当たらないのだ、この相談を見ている限りでは。
子供の被害妄想?と思ってしまうほど、わからない。
安全であるべきはずの家庭でこのようなことがあるとは・・・・。
これに一番近いのは、学校のクラスのいじめではないか、これまた意味なく始まっていることが多いようだ。
ホラー小説を読んでいるようだ。

相談者のヒカル。
今はもう介護も終え、親から離れているのだが、それにしても小さい頃から親が不思議な存在だった。
外側はきれいな家なのに、なぜか家中に虫がいるという異様な家。
友達も選別され意味なく罵倒される。
容姿をずうっと馬鹿にされている。
病気だ病気だと言い聞かされている。
体育と数学が優れた子になれと言われる。
運動会で一等賞をとっても話を聞いてもらえない。
頭が臭いと言われている。
外食に行ってトイレに行っているのに、その間に両親がいなくなってしまう(あとから娘が一人で駅に向かったと二人ともが勘違いしていたのがわかるが、怒られる)
女の子らしい格好をするのを否定される。
これらは一体何だったのか。
両親は仲が悪かったのだが、ヒカルへの態度は一緒だった。
なぜなのか、大人になったヒカルは考える・・・そしてかつて知っていた本屋さんに相談することになる・・・


親との軋轢と言う言葉では許されないだろう。
この相談の答えで一瞬納得したような気もするけれど、次の瞬間やっぱりこれじゃないだろう・・・おかしいんだこの親が・・・とはっとするのだ。

特に衝撃的だったのは、布団の中に入ってきて思春期の胸を触ると言う行為だった。
これは何だろう?とそれは思うだろう。
確認か、自分の娘という。
ともかくも全体に、なぜ?というのがわからない。

あとこの本にもあったけれど、一人っ子というのがとても大きい。
これが兄弟さえいれば、その当時ですら話し合えるしお互いに見ることが出来る。
大きくなってから二人で確かめ合うことも出来る。
でもまともなのが一人でおかしいのが親とはいえ二人で、多勢に無勢だ。
「奇妙な出来事にあった時にたった一人でもそれを信じてくれた人がいる」という重要性がわかったように思う。


評価 4.8

フジモトマサルの絵と共に楽しんだ。
日記なんだけど、このシュールさがたまらない。
どれもくすり、と笑える文章だった。

たまに出てくる天使って誰だろう?
天使が意外に突っ込みするのでそこにもおおいに笑わせてもらった。
2015.09.15 夏の裁断


評価 3.5

申し訳ない、さっぱりわからなかった、作家の主人公千紘の心情も周りの男達の心情も。
冒頭とてもショッキングなパーティーの場面から始まる、フォークで・・・

更に私がわからないのは、千紘の過去の出来事だ、これは一体・・・彼女の妄想なのか、だったら彼女は精神的な病気なのか。
ひりひりするような千紘の柴崎に対する思いのようなものは遠くでつかみかけたような気もした。
けれど、このエキセントリックな女性が、若い10代ならともかくも・・・・

裁断というのは、自炊の本を作るということだった。
全く筋とは関係ないが、福永武彦のあの本をばらばらにして自炊すると言うのは出来ないことだろうなあ・・・と思ったのだった。
2015.06.27 虹の歯ブラシ


評価 4.7

前作の○○○○○○○○殺人事件の上木らいちが主人公だ!
前のも下ネタだったが(そして言いたくないが強烈に面白かった)、今回もうそれに輪をかけてすごいことになっている、エロ場面で。
ああ・・これ書いちゃっていいもんだろうか、と思うほどすごい。
ところが、意外にそれぞれの短編が(連作になっている)きちんと推理になっている。
愛すべきバカミスであり、愛すべきエロミスであり、愛すべきもしかして本格・・・

援助交際をしている美女高校生らいち。
彼女は全く貞操と言うものを守ることに抵抗がない。
日替わりで、援助交際をしていて、それぞれの人の色の歯ブラシを持っているくらいだ。


特に新興宗教の館に女性が次々に取り込まれ教祖様に取り込まれてしまった(この話、「普通に」読んでいくと現実に普通にありそうな話なのでそこがまた騙される)と思われる、青は海とマニュキアの色が驚天動地のひっくり返り方だ。
まさか!まさかまさか!
ああ・・下品だがまさか!と言う驚きが・・・

そしてラストの章の話の驚き方と言ったら(その前の章の意味がよくわからないと思っていたらこういうことに・・・)。
えええーこうだったのか?
いやこうだったのか?
侮れないラストが何度も展開する面白さがある、この際エロはどうでも良くなって、らいちは何者かという興味一点に集約される・・・・

以下ネタバレ
・教祖がイカって・・・奇妙に納得させられるが。
しかもそれを食べるって・・・

・他にも色盲、バイ・グラを飲むと色覚異常が出る、放置プレイなので人がいる気配がしない部屋とか、もうそれはそれは、多彩なのだ。

・ラストのらいちが、男、老婆、宇宙人、そしてライチが複数イルと言う仮説までたどり着く過程のQEDがとても面白い。


評価 4.4

わかりにくい小説だったが、私は嫌いではない。
次のこの人の小説を読んでみたいと思ったのだった。
ただ全体にはあと一歩か、あと一歩!

わかりにくいのは、この話、「夢」の話が半分以上になっているからだ。
人の夢の話って面白くない、普通は。
そのあたりで、どこからどこまでが夢でどこからどこまでが本当で、というのが極めて曖昧なこの作品、好き嫌いわかれるだろうなあと思う。
私はこの夢の部分、嫌いではなかった、すれすれのきわどいところで「つまらない夢の話」を聞かされている感は免れている。
ただ後半ちょっと失速する、ダイチ部分でちょっと飽きるのだ、夢の世界にも現実世界にも(このいらっとする事務所の後輩の男は必要なんだろうか?)。
だからなんなんだ、と言う気持ちにもなる。

最初の部分は、ハルという女子中学生がいて彼女の話で、お父さんがちょっと家で嫌な存在になっている、年の離れたお姉さん二人がいる(ひとりは家を出て結婚して子供もいる、ひとりは大学生で家で同居している)。
お母さんはおじいちゃんのお葬式のあとのことで実家に行っている、というシチュエーションだ。
ハルは、ある男子生徒に告白されているがよくわからないと言う気持ちだ。
一方でハルは、過去いじめられていてそのトラウマがあり、今でも大きなグループにはいるがその中の一人を除いては心を許すことが出来ない。いつもおどおどとしている。

一方のダイチ部分は、同棲している女性に子供が出来た。
それを素直に喜べないのは、かつて中学生の時に、きれいな女の子伊吹がいじめの対象になっていてその最後の別れの時に会ったというのがトラウマになっていることがぼんやりと心にあるからだ。

この話、不思議の国のアリスをモチーフにしているので(と思う)うさぎが出てくる。
言葉としてクイーンも出てくるし、男女の双子のぞみとひかりも出てくるし、また顔にあざのある男性もたびたび狂言回しのように登場する。
地下のバー、いとこのシュウちゃん、伊吹の存在、観覧車、横浜の色々な場所、が小説を彩ってくれている。

私はこの話、以下のように考えた。
作者の意図したことと全くずれていたら申し訳ない。

以下ネタバレ
・シュウちゃんはなんらかの事情で亡くなっている(多分外国で客死)。
ハルのお母さんが実家から戻って来られないというのはその暗示(お父さんも途中までは言っているし)
何度もハルの前に出てくるのは、ハルが再び中学校の人間関係につまずきそうになっていて、それを助けるためにこの世界に引き込んで彼女に伝えたいことを言っているのではないか。

・一方で、ダイチの方の中学生時代のいじめられていた同級生伊吹(女性)も死んでいる。これはいじめからの自殺。
だから、シュウちゃんと伊吹は死の世界にいる。
伊吹は、いつまでも自分の死の責任から逃れられないダイチにやはり伝えたいことがあったのと、次に生まれてくる命があるので(ダイチの子供)そこに向かって踏み出して欲しいと言う意図があったのではないか。

・この作品、最初からおじいちゃんの死、ということで死が前面に出ている。
死のにおいが濃厚な作品だ。
一見そう見えないのだが、死の国に(そこにのぞみがいてひかりがいて、うさぎがいて)ハルもダイチも旅しているように見えた。

・ダイチの夢の中を(死の世界ともリンクしている)、ハルが横切り
ハルの夢の中(死の世界ともリンクしている)ダイチが横切っている。

・ハルの部分で、同級生からの言葉がどちらなのか(本当なのか現実なのか)そのあたりがとてもわかりにくい。
これはそういう風にわざと描いたのかそれともそうではないのか。
ここのあたりが、好悪分かれるところだと思う。


評価 4.1

細かく書かれていると思う、女子の内面とか女子同志の距離のあり方とか、家族のあり方とか、ブロガーのあり方とか。
学生の時に始まって、主婦になる人、キャリアウーマンで独身の人、両方をこなしている人、立場が違ってくればそれぞれ見えてくるものも違うだろう。
いや、その前に学生時代にうまく友達関係が築けなかった人というところにもスポットが当たっていると思う。
いわゆる女子のエリートと思われる志村栄利子(しむらえりこ)はいささか戯画化されているけれど、自分を押し通す自己主張の強い女というのはありえるのだろうと思う。
ありえるけれど、話として面白いのは、この人が、普通の何気ない主婦ブロガーの力の抜けたブログに目をつけたところから話は転がり始めるところかなあと思った。

だらしない気の抜けた生活をしているのを一種の売りにしている主婦ブロガーおひょう。
彼女は自分の生活に満足しているが、そこに栄利子という商社のエリート女性の侵入者が入ってくることで乱されていく。
ストーカーともいえる栄利子の行動がエスカレートしていく・・・・


ホラー漫画のように見えた、全てが。
そして、私にはこの話、どこをどう読めばいいのかさっぱりわからなかった、申し訳ない。
特に後半、栄利子の関係した社内の男と結婚する真織の本性の登場に至っては・・・・もう漫画しか浮かばなかったのだ。
後味が悪い小説、というのはどちらかというと好きなのだが、この後味の悪さって、私の求めている後味の悪さとはおおいに違うものだと確信したのだった。

(主婦ブロガーの翔子の側がまだしも心には残った。
彼女の旦那との距離感とかのほほんとしている最初の様子とか、自分が今度はストーカーになってしまったことに無意識であったこととか)



評価 4.9

とても面白い。
タイトルからして、軽くぱっと夏目漱石を振り返っちゃおう!という話だ。
中身も、語り口がとても優しい。
14歳の世渡り術というシリーズなので、ソフトで中学生に向けてと言うスタンスなのだろう。
でも大人が読んでも十分楽しめた。

どころか、漱石をもう一度読んでみたいとさえ思った。
三四郎の脇役に注目とか、短編の面白さとか(このあたり実に面白そうだ)、それからのイメージの豊富さとか、なるほど!と膝を打つような目うろこのところが色々な場所にあった一冊だった。
2015.04.30 永い言い訳


評価 5(飛びぬけ)

たまにこういう小説ってある、自分の心にすとんと落ち、そのあと漣をたててくれるような小説が。

ちょっとうまくいってない感じの夫婦がいる。
その妻側が、女友達とバス旅行に出かけ、そこで奇禍にあい、死亡してしまう。
残された夫は・・・・


単純に書くと、残された夫が知らなかった妻の側面を見ていく、と言う物語だ。
そして読みようによっては、妻と同時に亡くなった女友達の家庭(小さな女の子がいる家庭)と触れ合う夫が癒されていく、とも読んでいくことが出来るだろう。

けれど、物語はそんな単純な話ではない。
打ちのめされているはずなのに涙が出ない夫の、(あれ?)という気持ち。
妻だった女性の下着を見て、(あれ?こんなだっけ?)と思う様子(このブラジャーを見る場面秀逸)。
自分が知らない妻が友達の家で語っていた色々な話。
細部を描くことによって全体像が徐々に見えてくるのだ、この描き方が素晴らしい。

・・・・・・
「そこそこ人気のあるコメンテーターなどもする小説家がいる。
関係性に綻びのある小説家の奥さんが、女性の友人とバス旅行で事故に合い死んでしまう」
と言うところから始まるのだ。
なんせ、奥さんが出てきた、旦那との学生時代のあれこれがあった末に結婚した、でも現状はこうで・・・と読んでいるまもなく、当の本人がぽいっと姿を消してしまうのだ、それも永久に。

じゃあ、小説家の旦那は衝撃を受けたのか。
それはうけているが、なんだか微妙な感じもしている。
それはそうだろう、だって、実は妻とうまくいっていない、自分も浮気をしている状態で妻がいきなり死んでしまったのだから。
これが悔恨、に行くのなら安直な小説だ。
悔恨には行っていない、小説家は実に実に複雑な気持ちで自分の心を見つめ、そして他の事故死した人達のストレートな悲しみのありようを茫然と眺めているのだ。

そして物語は、死んだ妻と一緒に行った女性の友人一家と、小説家との関わりが描かれていく。
これもまた子供がそちら側(友人一家側)はいるので、安直な小説だったら、「小説家がその家の子供に癒され、自分を取り戻していく」という感動路線になるだろう。(そしてそう読む人もいるだろう)
この部分も確かにあるのだ。
あるのだけれど、優れているのは、子供と言えども一筋縄でいかないところが実に鮮やかに描かれているのだ。
だから取り戻していくのは、小説家でもあるけれど、この子供一家でもあって、相互作用が働いている。
居場所を子供達の家に求める小説家は自分自身でも戸惑っているに違いない。
戸惑いつつも、子供にのめりこんで行って、自分の一家でもないのに自分の一家のように感じていくというところも、繊細に描かれている。
ここらがとてもとても巧いのだ。

視点が頻繁に変わる。
子供の視点もあり、これが小学校六年生の子供の視点もあってここもなかなかに侮れない。
彼は中学受験しようとしていて、幼い4歳の妹もまた抱えている。
父はトラック運転手で、いわゆる知的職業にはついていない。
後半でとんでもないことを起こすのもまた父だし、成長期の子供からの批判というのも父子ということでありえる事なのだ。
このあたりもとてもとても設定が素晴らしい。

そして小説家の心の動きがこちらに確実に届いていた。
妻の死、という重い事実からの戸惑いが、小説家を蝕んでいる様子が手に取るようにわかる。

途中笑ってしまうところも多々あった。
子供達に戸惑う(なんせ子供に接していないのでぎこちない)小説家の姿に笑えたのだった。
後半で子供達とようやく心を通わせたと思ったら、別の侵入者が入ってきてそれこそ子供のように自分は必要ないんだ・・・とすねる小説家の姿にも笑ったのだった。
でもでも、ラスト、実は泣けるのだ、ほろっと。
これは安い感動の涙、ではなく、小説家と同化してしまった自分がいたからだった。
自分が何をしていたのか、過去も現在も一体何をどう生きてきたのか。


・・・・
言葉も素晴らしい。
抜き出したい言葉がたくさんあった(だから買えば良かったと思ったのだった)
大体冒頭から引き込まれる。
「大学の時につきあった彼女は、絶頂に達する直前に成ると、もうやめて、と決って言った。ぼくを鼓舞する意味の「もうやめて」ではない。ほんとにやめて、じぶんから身体を放してしまうのだった。」
このあと風船割りの話から、火事の話に行くのだが、全部読んだ後でここを読むとまた違った感慨が訪れる。
ノア・P・シングルトンの告白 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ノア・P・シングルトンの告白 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2015/02/05)
エリザベス・L. シルヴァー

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評価 4.5

何しろ登場人物が少ないし、動と言う部分が基本の部分ではほとんどない。
そして回想場面は動であり、あとは弁護士と、刑務所に囚われているノアとのやり取りが中心だ。
そしてノアの殺した女性の母親の手紙がある。
この手紙はある人間にあてられた手紙なのだが・・・
基本ノアの語りで話が進められているがそこが陰鬱だ。
彼女の視点の裁判の場面なども皮肉たっぷりに陪審員制度というものが見つめられている、ある種冷徹な目で。

ノアがなぜその女性を殺すに至ったか。
その前に本当にノアが殺したのか、と言う疑問も出てくる、なぜならノアは絶対に自分がやってない、とは言っていないのだから。ここでの死刑囚としての生活を静かに送っているのだから。

話が進むにつれ、ノアの過去が明らかになっていく。
栄光に包まれた高校生活と大学進学。
そして強烈な男女間のトラブルがある→妊娠して二度と妊娠できない体になる。
ではそのことが殺人の引き金になったのだろうか。
また父子間のトラブルが引き金になったのだろうか。
嫉妬、占有欲、やっかみ、そのような気持ちが引き金になったのだろうか。
常にこの中でノアが誰にも言わず、途中で父に打ち明けた事のひとつはとても重要なファクターの一つだろう。
それが、ノア・シングルトンではなく、ノア・「P」・シングルトンのPの意味だ。

幼少時のノアの姿から、シングルマザーの母の育て方、母のあり方、そして青春時代のノアに起きた男女間のやり取り、など過去に回想していくところで、段々とつまびらかになっていく。
そして本当は殺したセアラに何が起こったのか、というのがラスト手前でわかるようになっている。

ノア・P・シングルトンは、35歳でペンシルヴェニア女子刑務所に10年服役している死刑囚だ。
かつては優秀な人間であったのだが、なぜそこにいるのか。
それは一人の女性を殺したと言う罪によるものだった。
そして処刑の日が半年後に迫ったときに、恩赦申請を検討中と一人の女性弁護士がやってきた、一人の若き美しい男性弁護士を連れて。
女性弁護士はノアが殺した女性の母親だったのだ・・・


なぜノアが殺しに至ったか。
若い男性弁護士に心を開くようになっていく。
女性弁護士が殺した女性の母親、という微妙な立ち居地にいる。

大変興味深くは読んだ、ノアの心理状態もだがノアの殺したとされているセアラの母親の心理状態、そして更にノアの父親の心理状態もまた。
でもラスト、なんだかすっきりしない。
驚きの展開、というのがこれだけ話を引っ張ってきて少ないように思えたのだった。
こちらが想像し得る範囲での展開だったような気がした。

以下ネタバレ
過去の出来事
・ノアは、幼い時にノアが階段から落ちたのが母親の不注意または故意からではなく、強盗によるものだという「偽装工作を」見ていた。
そしてその時に知り合った救急隊員と母親は結婚して、そのあとも母親は離婚結婚を繰り返すのだった。
最初の偽装工作の刷り込み。

・ノアが小さい時に、友人のペルセフォニー・リガの家でペルセフォニーが銃をいじっていて、それをノアに渡そうとしたときに指が引っかかって暴発してペルセフォニーは死んでしまう。
この時、強盗が来たと「偽装工作」する。
そしてそれはまんまと引っかかって、ペルセフォニーの両親も信じて、警察も信じて、誰もノアを疑わなかった。
疑われる前に彼女は母親の車で帰宅していたのだった。
ノア・P・シングルトンのPはペルセフォニーのPだった。

・ノアの本当の父親が現れる。
元アル中で、元服役を何度も繰り返し、そして今ようやくバーを営んでいるが、ちょっとしたことですぐに人を袋叩きにする性癖は直らない。
そして父親との関係を築きなおしているところで、父親にはノアより若い女性の恋人がいることがわかる、それがセアラ。
セアラの母親の弁護士は、これに大反対している。

・セアラは父親の子供を妊娠する。
堕胎の薬をセアラの母親からノアは渡されて、飲ませるように言われるが拒絶。
そしてセアラの母親は今度は当の父親に飲ませるように仕向ける。
そしてセアラはそれを飲み出血する。
セアラは最後までノアが自分に薬を渡したと思い込んでいる、思おうとしている。

・そのセアラの家に行ったノアは、セアラが、告白ごっこをしていたノアの父からペルセフォニーのことを知っているという衝撃的な告白を受ける。
なので、自分も堕胎の薬を与えたのは、ノアの父親(つまりセアラの相手)であり、その陰には母親がいたということを告げる。
心臓の弱いセアラが倒れたのを撃つノア。
そして「偽装工作」をするのだ、またしても、襲われたように(しかしこの偽装は破綻)