評価 4.6

楽しい!
連載はとうとう800回を越したらしい!(祝)

なんといっても今回は真田丸に言及しているので、なるほどなるほど、と頷く場面も多い。
三谷さんが学生の時にお世話になった先生から歴史の原因と結果の話を聞いた話、とても参考になった。
先生もさぞや嬉しいだろう、自分の教え子が自分の言ったことをこれほどまでに消化してくれているのだから。

そこここに自意識はついてまとう文章だ。
だけど、それがまた三谷流。
そういえばお子さんの話もあった、しっかり親ばかしているではないか!
三谷さんも人の子、とおもった。


評価 4.2

出だしはとても面白い、ぞくぞくするほどに。
何やらわからない場所(出身地らしいが)にきて、そこで何やらわからない仕事に就く、ME創研という会社で雇われているのだ。
連れ子のいる奥さんと一緒に家族全員でそこで巻き返し仕様とするアルトという男性が必死に働く、工場の「ような」ところで。

いきなり
お身削り、P1、お尽くし、という異常な言葉、そして何よりお互いに掛け合う言葉がお疲れ様でした、ではなくお巡りさまでしたという言葉があるのが、(なんなんだ!この町は)と思わせる。
宗教じみていると感じたのだが、それでもなさそうだ。
しかも町全体で使えるお金というのが日本国のお金ではなくなっている。

・・・
できた製品については、心がこもっていないといけないと言われ、適当に作ったものは鑑定士が排除するという仕組みになっている。
鑑定士?またわからないことが出てくるけれど、この新鑑定士の出来上がっていく苦悩も新鑑定士の言葉とともに綴られている。

そして村の外に出るには許可が要り、必然的にこの村に閉じ込められたような人達・・・
でも製品を一方で外に出す仕事の人もいてこの人は外の様子も知っている。

奥さんはこの町になじめず奉仕に行く。
奉仕の内容とは・・・・

・・・・・
これ、最初は面白いのだが、後半なんだか失速する。
思いつきは優れているのだが、そのあとが続かない、ような感じがした。
落ちないのだ、すべてが曖昧模糊の中に終わってしまって。
2016.10.08 蜜蜂と遠雷


評価 5(飛びぬけ)

傑作。
ああ・・・こういう恩田陸作品を待っていた・・・
読み終わるのが惜しくて惜しくてならなかった、二段組みの分厚い小説にもかかわらず。
もっともっとこの世界に浸っていたい、そういう気持ちにさせてくれた小説だった。
読むのに長い時間かかったのは長尺であるということだけではなく、今の時代ありがたいことに検索すれば全ての曲がすぐに聞くことができる。
それを読むのと同時にやっていて、そこもまた非常に楽しかった。
これをピアノ界の風雲児、風間塵はこうやって弾いていたのか、とか。
かつての天才少女の栄伝亜夜が母の死をきっかけに弾けなくなった最後の曲はこれだったのか、とか。、
完璧な演奏技術を持っている名門ジュリアード音楽院のマサルの曲はこれだったのか、とか。
そこに恩田陸の言葉が載せられていく、という楽しみがあった。
もし曲がなくても頭の中で恩田陸の言葉で音楽が奏でられていっただろう、豊饒な言葉で音楽を描くってこういうことなのか、と感じた。
音楽の物語であると同時に見事な青春群像劇でもある作品だった。

話は、「ここを制した者は世界最高峰の国際ピアノコンクールに優勝する」というジンクスのある日本のある国際ピアノコンクール、芳ヶ江国際ピアノコンクールの話だ。
ここに世界のピアニストの卵達が集結する。
養蜂家の父とともに各地を転々としたピアノを持たない男の子風間塵16歳という天才の出現、しかも彼はピアノ界の亡くなった重鎮ユウジ・フォン=ホフマンの愛弟子だというのだ。
ナサニエルという審査員の愛弟子のマサル・C/レヴィ・アナトール19歳の優勝候補の演奏もまた圧巻だ。
更にここに復帰戦として一人の女性が加わる、彼女の名前は栄伝亜夜20歳。かつて天才少女の名前を思うがままにしたが母の死を乗り越えられずコンサートを放棄したという過去がある。
そしてまた年齢制限の最高齢29歳の高島明石29歳、妻子がいて普通の生活を送っている音大出身の男。
彼らがこのコンテストで技術と芸術性を競っていくのだ・・・


風間塵(かざまじん)、の出現が非常に印象深い。
ある審査員には激しい嫌悪を引きおこし、別の審査員は強烈に惹きつけられる。
この魅力とはいったい何だろう、そして反発とは何だろう。
審査員たちも自問自答し始めるがそこに彼の師であるユウジ・フォン=ホフマンからの一通の推薦状があるのだ。
この推薦状が実に謎めいている、いわく、彼はギフトになるのか災厄になるのか、は、皆さん、いや、われわれにかかっている、とあるのだ。
ギフト?
災厄?
これが読んでいくと徐々に風間塵の存在が何かというのが解き明かされてくる。
この過程もとても美しい。
しかも風間塵の破天荒なピアノへの対峙の仕方というのもまた胸打たれるのだ、本来こういうものだろう音楽は、というのを見せてくれるのが風間塵だ。
失意の底にいてようやく立ち直ってコンテストに出た栄伝亜夜(えいでんあや)にとっても風間塵との出会いは衝撃的だった、彼女の音楽大学のピアノをいとも簡単に弾きこなしていたのだ、しかも忍び込んで。
正規の音楽教育を受けていなかった風間塵は非常に耳が良い。
コンテストの前の調律の間にも、床のひずみまでを見破って調律師と設定していくこの姿も印象深い。

一方で栄伝亜夜の気持ちも最初トイレに入った時に人がどう見ているか自分の事を、と言うのを知ってしまった時から、後半に至るまでずうっと追って沿うことができた。
恐れ、おののき、そして躊躇い。
圧倒的な技術と天才的な音楽的才能を持ち合わせながら失意のどん底にいた彼女を救ってくれたのは、やはり音楽だったのだ。
彼女は音楽の神様に愛されていたのだった。
そして風間塵との出会い、また幼馴染のマサルとの再会で彼女もまた違うゾーンに行くことができるのだ。

また、マサルは幼馴染の亜夜を一目で見抜いたのだった、かつて日本にいた時に同じピアノ教室に通っていた女の子あーちゃんを。
長じて再会して彼女とは音楽性で細かなところまで一緒に感じることができると確信したのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この三人が一次予選、二次予選、三次予選と徐々にコマを進めていく。
他にも優秀な人たちがひしめきあうコンテスト場面は迫力がある。

この三人組とは別に高島明石という男性の存在もとても味わい深い。
この人の後半のある二つのことでぐっときて泣きそうになった→三次予選まで行けなかった彼なのだが、思いがけず二つの賞をもらえる電話場面と栄伝亜夜と抱き合って泣く場面
普通の生活をしていて普通に暮らしている彼。
年齢がいっている彼。
既に就職している彼。
市井の彼がコンテストに応募して、自分の解釈で現代音楽を演奏していく、そして彼は他の人への冷静な賛辞もいとわないのだった。
彼には生活があり彼には子供も妻もいるのだ。
けれど彼の夢に向かって進んでいくこの姿にも心揺さぶられたのだった。



評価 5

これだけの分厚い二冊、さすがに読ませる力があるキング!
しかも後半への加速度合いが素晴らしい。
前半、ちょっと乗り切れなかったので、鈍く読み進んでいったのだが、上巻の最期の方で一気に加速して・・・・
ホラーではなく、まっとうな推理小説であった。

まず、犯人が最初から分かっている。
どういう奴かというのもほぼわかっている、筋金入りの頭のおかしい奴だと。
この人の名前も何をしているかも早い段階でわかる。
普通ミステリって、この部分が隠されているのだが、キングはそこを惜しげもなくばっと出している、作品に絶対の自信があるからだろう。
人々の造型が犯人を含めてとても練られている。

追う側、は、退職した元敏腕刑事の男とこれまたわかりやすい。
そして退職して生きる希望も無くなってテレビ三昧の日々、ピストル自殺しようかぐらいに思っているだらけた元敏腕刑事が、ある挑戦状を犯人からもらうところから、俄然生き生きとし始めるのだ。

冒頭、メルセデスが求職者の群れに突っ込んでいく場面はまことにむごたらしい。
その前の小さな交流を読んでいるだけに、ますます心が痛む。
そのメルセデスを運転していた犯人からの挑戦状こそが、皮肉なことに死なせる方向ではなく(犯人は自殺させたい)生きる方向に行かせる、のだ。

追う側、犯人と交互に描かれていて、犯人の異常な生活も徐々に見えてくる。
犯人の弟の事件というのが唯一後半まで引っ張られていくが、これもわかった時に、ああ・・・こんなことが!と戦慄させられた。

・・・・
上巻のジャネル(メルセデスを犯人に盗まれ事件を起こされる。そののち世間の目に負け(と思われている)自殺するオリヴィアの妹)が登場してくるあたりからぐっと話が面白く深みを増してくる。
なぜなら、彼女とホッジスの話にもなってくるからだ。
ところが、これもまたいい意味で裏切れらるのだった。
作者はとても非情な話に移行させている。

優秀な黒人高校生ジェローム(ハーバード大学に進学希望)の姿が冒頭から好ましい。
彼のまっすぐなホッジスへの尊敬の気持ち、機械に弱いホッジスの穴を埋めるべく働くジェロームの姿が生き生きと描かれている。

そして、後半。新たな人間が現れた、味方側に。
それは精神をやや病んでいるホリー。
・ホッジス(元刑事で心を病んでいた)
・ジェローム(まっすぐな心なのだが、黒人ということを常に意識している)
・ホリー(母からの呪縛から逃れられず精神を病んでいる女性)
このでこぼこ三つ巴がそれぞれの得意分野を生かして、犯人を追い詰めていくところが圧巻だ。
特にコンサート会場の場面はどう阻止するのだろう、と思っていて息がつまる思いだった。

また犯人側の家庭事情もどろどろしていて不気味だ。
どのようにしてこの怪物が出来上がっていったのか。
母親との関係性はどうだったのか。
そして特に、母親がハンバーグを食べるシーンは驚いた。

この作品、まだ続いているようで、これが第一部ということが嬉しい。
この三人のタグ、おおいにおおいに期待する。

(上巻147ページ3行目、誤植ではないか。
「わたし自身についてえいば→わたし自身についていえば」

以下ネタバレ
・ジャネルといい仲になって、これもホッジスの精神状態をアップさせるのだが・・・
あっさりとジャネルは犯人に仕掛けられた車の爆弾によって殺されてしまう。
ホッジスがこのあと、ここから立ち直るのが早いなあとそこは思った(心の中で思っているにせよ)
だからジャネルは後半の重要人物と思ったら違って、ホリーだった、重要人物は。

・犯人プレイディの母親は
彼がジェロームの犬を殺そうとして大量に作った毒入り肉を
母親が珍しく調理してハンバーグにして自分が食べてしまって死亡する。
完全なる犯人の自爆であった。

・母とプレイディは関係を持っている。
そして、彼らは事故で半身不随となった弟を殺していた。

・プレイディは、パソコンの仕事とアイスクリーム移動販売の仕事を掛け持ちしていた。
移動販売の時に何度もジェロームと顔を合わせていた。

・最後、プレイディは病院で生き返る。
どうなのだろう、このあとこの人間、登場するのだろうか・・・(なので次巻をぜひ!)
2016.06.28 魔法の夜


評価 4.4

褒めようとすればいくらでも褒める部分は見つかる。
でもそれとは別に、この話のファンタジックな感じに今一つ乗れなかった自分がとても残念だった。
話はバラバラと出てくるけれど、ほとんどがあとでまた同じ人たちが出てくるんで、そこは繋がっている。
この人はあの人だ、とかこの人は誰だっけ?と探す作業は楽しい。


・・・・・・・
アメリカ東海岸の海辺の町。
暑い8月の夜に異変が起こる。
色々な物(マネキンとか)、人が、性別・年齢を超え月の中で動き始めるのだ・・・・

何度も出てくるのは、少年時代から関係を持ち続ける作家崩れの39歳の男と、彼の年上の女性だ。
マネキンを慕う酔漢もいて、マネキンもこれに合わせたように動き始める。
これとは別に14歳の少女がそわそわとし始める、いったい自分は何をしていいのかわからない。
仮面集団の女の子たち、仮面をつけてあだ名をつけて家にただただ入り込みある時は食事までする(そして家の人に難なく受け家れられたりする)

魔法だ。
人形も動き出すのだから。
おもちゃのちゃちゃちゃの世界だ、トイストーリーの世界だ。
月の光の中でお読みください、らしい。
2016.06.20 埋葬された夏


評価 4.6

過去と現在とが交互にやってくるミステリだ。

「ある一人の少女」がイギリスの小さな海辺の田舎町で殺人を犯し、今も治療施設に入っている。
そして20年後勅撰弁護人の依頼を受け、一人の元刑事の私立探偵ショーンが立ち上がる。
20年前とは違い、DNA鑑定などで圧倒的に進歩している科学。
再審を求めて、物語の扉は開いていく・・・


先日読んだ「ささやかで大きな嘘 」と構造的に似ている。
どちらも、「殺された人間が誰かわからない」というところだ。
ただ、違うのは、「殺した人間がとりあえずは逮捕されている、その名前は出ている、コリーンという少女だった」というのが埋葬された夏、では明確に出ていることだ。
これをひっくり返そうとしているので、実は違う犯人がいるのだろう、というのは初期の段階で予測はできるのだが・・・・いずれにしても「誰が殺されたのか」というのは最終までわからない。

まず2003年の部分は私立探偵ショーンがこつこつと歩いてこの町の過去を探っていく、色々な人に会う、という部分で成り立っている。
途中までは正直、この部分はそれほど惹きつけられない。
茫洋としてショーンがしていることに興味が薄くなっているからだ(テンポがやや遅い)
これに対して、1983年の高校時代の描写は勢いがある。
ここは最初の部分からぐっと惹きつけられた。
エドナという初老の女性が不良娘の子供サマンサ、つまり孫を引き取ることになる戸惑い、そして過去の、自分の娘アマンダの荒れ狂った所業、サマンサへの一抹の不安、などが克明に描かれている。
更に、学生生活で、転校生のサマンサが親友だったコリーン(メイクからして不良の娘、母親がどうしようもない家庭に過ごしている)とデビー(まっとうな家に育った娘)の中に見事に割って入って、二人を引き離し、コリーンを自分の支配下に置くサマンサの特異な性格と奔放な金遣いの荒い生活が語られいてく、ここがとても見事な青春物語だ。
また、デビーが崇拝していた幼馴染の男の子アレックスの心と体さえ、実に巧みな戦略で奪っていく様は読んでいてぞっとした。
デビーの恰好をまねするサマンサ。
アレックスがたむろしている場所にさりげなく近づいていくサマンサ。
悪魔的な狡猾さでじわじわと人に迫っていくサマンサ。
嘘を悪びれずつけるサマンサ。
サマンサの母のアマンダは再婚しているが(そしてサマンサからは徹底的にそのことを批判されているので一瞬サマンサが正しく可哀想な子なのかと思う。)、一番サマンサを理解していて、この子の危うさをいぶかしんでいる。
だからこそ、かつて家出した両親の家に娘を託すことになったのだというアマンダなりの理由が後半になってわかってくるのだ。

・・・・・・・・・・・
一方で私立探偵のショーンが調査を続けていくうちに、今でも酒場でたむろしている人たち、は、酒場の持ち主を含め、全員がこの事件時に殺人者として隔離されているコリーンと同じ学校に通っている人たちだというのが明らかになっていく。
かつての不良少年のスモレットは今では更生して警察官になり、警部まで昇進している。
彼と親しいのが、レナード・リベットだ、彼は引退したとはいえ、警部でスモレットの上司らしい(そしてかなり早い段階でスモレットとレナードが強烈に繋がっている何かで、というのはわかる)
(全てが分かってからスモレットの現在の場面を読み返すと108から109ページ、非常に味わい深い)
閉鎖された小さな世界で、ショーンの行くところに様々な障害があらわれてくる。
果たして犯人は他にいるのか?
施設にいたコリーンのあの反応は何だったのか?
謎は深まる・・・・

・・・・
最後、全く予想していなかったので、ここは確かに胸打たれた。
こういうことだったのか!と。

が、ちょっと全体に盛り込みすぎ、という感じがした、あまりに多くの事がありすぎて、混沌としてくるのだ、途中で。
生まれながらの悪の造型のような人間がいて、また別の悪の権化がいて、悪の権化とつるむ更に悪がいて・・・何人悪がいたのだろう。
非常に惜しいと思ったのは、ショーンの造型が、今一つ薄い感じがしたのだった。
ショーンの動きはわかるのだが、ショーンがもうちょっと内面を見せ、魅力的だったら、と何度か思ったのだった。

以下ネタバレ
・真の殺人犯はサマンサ。
そして殺されたのは、デビーのボーイフレンドのダレン。
それはそれはむごい方法で何度も刺され(サマンサが刺した)殺されたのだった。
(サマンサは精神的におかしかった幼い頃から、というのがそこここに描かれている)

・この物語の中で、サマンサは過去にしか出てこない。
だからサマンサはどこかにいってしまったのだろう、または「殺されたのがサマンサ?」と誘導されている、読者は。
けれど、実際は、殺人のあとの隠蔽工作(レナードなどの)で、彼女は逃げおおせていて、しかも目の前にいた。
スモレットの奥さんがサマンサだった(そして見事にサマンサが受け取ったエリックからの遺産をスモレットとレナードは享受した。そう思って108ページを読むと感慨深い)

・幼い頃から問題行動があまりに会ったサマンサをずうっと母のアマンダは見ている、母親として。
一方アマンダ自身は男運に恵まれず、幼いころの父からの虐待もあり、定まらない生活をしているが、ようやく一人の理解してくれる男と巡り合う。
なんとかしてサマンサを普通の少女に戻したいと思っているアマンダの姿が後半光ってくる)

・悪の権化は警部だったレナード・リベット。
彼が支配しているような街だった、彼は男性も女性も相手にする非道な男で、女衒のようなことすらしていて、脅迫も殺人も陰に隠れてやっていた。
彼と組んでいた悪は、エドナの夫(つまりサマンサの祖父)エリック・ホイルだった。
彼も特殊な性癖を持っていて、若い男の子をレナードから斡旋されていた。
金持ちだった。
また家出した娘アマンダはなぜ不良娘になったかというと、エリックホイルに性的虐待を受けていたためだった。
これを妻のエドナは黙認していた。

・また、レナードの娘が、実はコリーンだった(コリーンの母親とレナードはかつて関係したらしい)というのが後半でわかる。
つまり、レナードは自分の娘に殺人を擦り付けたことになる(が、悪の権化なのでこんなこと痛くもかゆくもないだろう)

・コリーンは売春のようなことまでしていた、母親に強制されて。
そこで知り合ったのが、ゲイで同じようなことをしていたノージ。
男なのだが女性のような恰好をしていたノージは奇妙な書物で自分を逃避されていた、悪魔崇拝のような逃避にいっていた。
そこにコリーンははまって、ノージにもらった本をいつも頼りにしていて、彼女もまた逃避していた。

・すべての真相を知っていて
真実を暴こうとしたのが勅撰弁護人であり
それは、かつてのコリーンの親友、デビーであったのだった(これが衝撃の結末。名前を変えていた)

<文章的に腑に落ちなかったところ>
18ページ
「夫が上着に片腕を通しただけで、灰皿に煙草をくすぶらせたまま出がけにした慌ただしいキスで頬がひりひりする。」
最初の、片腕を通しただけで、と最後のところが違和感。
主語ははぶかれているエドナ、というのは十分わかるのだが・・・・

132ページの最初から4行目の読み方はなんだろう?
石の前だけれど。

2016.01.18 幻の女


評価 5(飛びぬけ)

新訳ということで久々に読んでみた。
相変らず楽しめるし、冒頭の部分は後書きにも書いてあるように違和感ないし(変更がない)、全てがわかっている目で見ると、冒頭からむっとした男の主人公が「かぼちゃの帽子」の女性とデートする場所なんかをじいっと覚えようとしている自分がいる。
そこで出会った人達を覚えていようとしたりする。

ある男が奥さんと喧嘩をしてぷいと家を出て行った。
そこで出会ったお互い名前を知らずに会話を楽しみましょう、という一人の奇天烈な帽子をかぶった女性だ。
お酒を飲み、食事をして、観劇をする。
そして、家に帰宅すると、
奥さんが殺されていて、刑事達が待っているのだった。
証人であるはずのかぼちゃの帽子をかぶった女はどこにも見当たらない。
ばかりか、二人に会ったはずのバーテンダーやレストランの給仕達は全員彼が一人だったと証言するのだった・・・・



これで男が逃げたら、映画のハリソン・フォード逃亡者になる。
でも男は逃げない、というか逃げられないで裁判にかかって死刑の日が刻一刻と近づいてくる。
なんて残酷な筋立てだろう。

ただ一つの光明は、刑事の一人がもしかしておかしいかも、と気付いてくれたことだ。
そして親友が遠い地にいるのに呼び戻して彼に依頼するのだ、全権を託して。
一方で捕らえられた男には、妻の他に愛人がいる。
愛人もまたけなげに小さく動いてくれるのだがなかなかうまくいかない、いきかけると大事な証人が消滅してしまう・・・

全てがわかっている状態、で読んでみても、最後のところはぎょっとする。
ぎょっとしたあまり、ある部分を無意識に忘れていた・・・


以下ネタバレ
・よく調べてくれた親友が全ての犯人であったのだが、
(つまり不倫関係にあった)

この親友が「妻の笑い声」で殺しに至ったというところも怖い。
なぜなら、男も妻の笑い声を最後に聞いた男であり、あの笑い声が耐えられないものだと言っているので。

・一番のこの話の眼目、「かぼちゃの帽子の女を誰もが懸命に捜したが一体どこにいるのか」
は、
私が無意識のうちに忘れようとしてた怖いところ。

この食事の三週間経たないうちに精神病院に入って今もそこにいるのだった。
つまり、見つけたとしても意味をなさない人間だった。
だから親友をこういう形(刑事と女性の策略によりかぼちゃの帽子の女と思った人を殺そうとした)でなければ、捕まえられなかったのだ。



評価 4.8

「あの」谷山浩子の児童文学へのお話だ。
冒頭にご本人が書かれているように、大上段に構えて語られている、と言う本ではない。
けれど、その分谷山浩子の視点というのものが楽しめるし、この児童文学、こういう話だったなあ・・・とか、これは読んでないから読んでみたいなあ・・・と逆に思わせる本だった。
読んでいてとても好感が持てたのだ。

どうやらこれは、創作をしようと言う人たちの講座の冊子に書かれているらしい。
だからどうしても「教える」という感じになることは否めない。
それがでも、上から目線では決してなく、ちょっと私はあなた達より年上ですがこういう本もいいんじゃないんですか?と言うスタンスが見て取れる。

・・・・
それぞれの児童文学のポイントのようなものが、谷山浩子独自の掘り下げ方で掘り下げられる。
アンを読む人にエネルギーを与える、と言う切り取り、
星の王子様に描かれている幸福の秘密
賢いエルゼのわからない感じ
どれももう一度再読したくなる。
小川未明の話、知らなかったので是非読んで見たいと思ったものだった。


評価 4.9

毎回楽しみにしているエッセイだ。
どんどん三谷幸喜のプライベートの環境は変わっていく、犬も含めて家族も。
でも彼自身は変わっていなくて、相変らず仕事にのめりこんでいる。
そののめりこみ方が読んでいて楽しい。

お!と思ったのは近頃話題の山本耕史のところもそれはそれはミーハー心で面白く読んだのだった・・・そうか個性的な人なのか・・・。
スティーブン・キングのあの本を褒めているところも面白く読んだ。
役者の実名も出てきているのだが、これがただの褒め、だったら面白くないところ(よいしょ、に見える)。
そうではなく、きちんとその人を分析して、こうこうだからこの人のこういう演技が成り立っている、というところが納得できる。
批判するところも批判しているのが好ましい。
それは意地悪とか非難ではなく、批評であるからだ、彼の目から見て、の批評だが。

しかしこの本、和田誠さんの絵、もとても重要で華を添えていると思う。
これがなかったら、かなりトーンダウンするに違いない。
和田さんの絵でふくっと笑ってしまうのだ、意外に強いことが書いてある章でも。

(この中で、ポアロの話があったが・・・これのみなんだか・・・だった。
なぜならアレを見ていたから。
なんであのようなポアロにしたかなんであのような珍妙な話し方にさせたかおおいにおおいに疑問があったから。

あとラストの物真似の写真は・・・・いかがなものか。
申し訳ないが、私にはさっぱり面白くなかった・・・
自己顕示欲の強い人だとは思ったが。)


評価 4.4

出だしはとても面白い、そして読ませる。
何かを思い出すなあ・・・と思っていたら貴志祐介のクリムゾンの迷宮だった・・・(クリムゾンは戦えるし外にいけるという違いはあるけれど)

なんせ起きたら灼熱地獄のサハラ砂漠。
そこになぜいるのかわからない。
起きて、なぜそこにいるのかわからない、と言ったタイプのミステリで
病院で包帯ぐるぐる巻き
というのはよくある。
あと記憶喪失で全く違う家にいるというのもある。
でもここに来る前までの記憶があり、全て覚えているのにサハラ砂漠・・なぜ?

しかもいくばくもしないうちに、上から公衆電話が落ちてくる!
落ちてくる?
もうここでSF?と思った、ここは異星の国なのかと。

しかも公衆電話から声が!
公衆電話の扉が閉まらないようにしていたけれど、外に手を出したら、そこから切断されたように手がなくなって砂に・・・・!

・・・・・
この話、現在と過去が交互に出てくる。
ここに至るまでの「僕」の恋愛の軌跡、会社での上司とのやり取り、同僚とのやり取りなども克明に出てくる。
加えて、今の状況で公衆電話があるのでとりあえず119を押してみるとなぜか繋がり
ここはサハラ砂漠です、
というなんともシュールなギャグのようなやり取りもある。

途中までは面白いのだが、ついていけるかどうかは、この「僕」の独特の一人語りについていけるかだろう。
この部分、私はかなり苦戦した。
大学時代に出合った女性(キリ)をセックスフレンドと割り切ろうとしている姿、
彼女と徐々に親密度を増していく姿、
会社での屈折した彼のポジション、
これらが共感をなんだか呼べないで、もやっとした。

キリに好感を持っていただけに、もやっ。
もやっといえば、ラストも、もやっ。
これはこれでいいのか。