2008.02.29 曲った蝶番
曲った蝶番 (創元推理文庫 118)曲った蝶番 (創元推理文庫 118)
(1966/04)
ディクスン・カー

商品詳細を見る


『ぼくは、ジョン・ファーンリなのです』

・・・・・・・・・・・
評価 5

大好きだ、これ。
抱きしめたいくらいに好きだ。
ラストのやや脱力の(と私には思えた)犯人像でも些かもがっかりしない。
大元は言われれば、ああそうなのか!!とも思うが、ここはとってつけたような感じがしなくもない。
それでもそこまでのストーリーの運び具合の素晴らしいことと言ったらどうだろうか。
恐るべきストーリーテリングの技が集結している。

まずこの話は『入れ替わりの話』だ。
それもタイタニック号で混乱の沈没の際、子供同士がその身分を入れ替わる、という実にドラマチックな設定になっている。
長じてこの一人は富豪になり(財産をつぐ)、もう一人は何をしているか現在はわからないのだが(あとでわかる)とりあえずはサーカス団の一員になったらしい、ということになる。
この富豪に対して、「お前は本当は違うんだ。贋者なんだ。」と言うのを一方のパトリック・ゴアが言いに来るのだ。
ここがどきどきの見せ場だ。
なぜか堂々と言い募る財産主張者に対して、当主のジョン・ファーレリは弱腰だ。
どうしようもなかった幼少時代。
ほとんど両親にも兄にも見捨てられていた時代に一人だけ理解者がいた・・その人が家庭教師のケニット・マーリ。
マーリが推理小説好き、神秘好きということで、かつての指紋ブックがあった。
それを合わせれば一目瞭然にどちらが本当の継承者かわかる・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・自動人形の怪(だから途中の章の冒頭にホフマンからの文章の引用があることに注意)
・悪魔崇拝の儀式の怪
これらが怪奇趣味の様相を帯びながら、舞台全体を盛り上げていく。
またタイトルが非常に印象深いのだが、これも重要な一つのポイントだと言うことが最後にわかる。

現当主がなぜ言い募られてきた時に反論が押さえられていたのか。
ここは読んでいてすぐになぜかなあと思った。
そしてそれは謎解きされるまでわからなかった。
これもまた、犯人当ての推理小説というよりも、そこに至るまでの経過の楽しさと面白さが破天荒だ。
フェル博士が活躍して、最後の最後である手紙が披露される・・・・

以下ネタバレ

・自分が犯人ですといってきたパトリック・ゴアは、足がなかった。
ここが書かれていることだけから判断できない気がする。
だが、非常に驚愕したのは事実だ。
・曲った蝶番は、タイタニックで最後にパトリックゴアが足を切断される時に、現当主が見たもの。
・そもそも現当主は記憶喪失であるというのを認識していた。
だから誰かが自分のことを暴いてくれるもよし、自分が何者かわかるもよし、という態度だったのだ。
・現当主の奥さんは薬に依存していたが、その秘密と引き換えにオットが記憶喪失であると言う秘密を黙っていた。