2008.04.30 薪の結婚
薪の結婚 (創元推理文庫 F キ 1-12)

『結局のところ、わたしたち一人一人に、語るべき唯一の物語がある。ところがその物語を生きてきたと言うのに、おおかたの人間は語る勇気がなく、どう語ったらよいかもわからないのだ。』

評価 5

うわっと怖かった。
特に第二部の後半が怖く、(怖さって言うのは血とか殴り殺すとか骨を折るとかそういうのよりも、私にはこういう怖さがきくなあ・・)と思って震えていた。
・死んだと思っていた男がなにごともなかったように顔を出す
・自分がこうしなかったらこうだったという人の人生(しかもそちらの方がいい人生)が、テレビに映画に映し出される恐怖
・部屋に『温かい』骨が出てくる絶望感
・他の人には見えないのに、そこに自分の、しかもまだ生まれてない子供が出てくる怖さ
・この子供が実は・・・という真相
・何かと何かがつながっていて、それによって次のことが起こる、という因果応報めいた話の数々
非現実が現実に滲み出てくる。
死者と生者が渾然としている。
この怖さって例えようも無い。

そしてまた全ての後半の話の核になっているのが腹話術師だった。
なぜこの人が出てくるかというのは、最初のうちは単純にフランシス・ハッチ(老婆)と知り合ったから、と思っていたのだが、ラストの方でこれまた驚愕の事実がわかってくる。この人と主人公ミランダもつながっていたのだった・・・
ページをめくるたびに、印象的な言葉、警句、洒落た会話が次々と出てくるのにもうまいなあ・・と、打ちのめされた。

最初から第一部の終わりまでがまず一つの話なのだが(二部にも関係しているのだけれど)、その第一部の終わりで、私は本を取り落としそうになるくらいに驚いた。
え!と思うくらいの驚きだった。
たった一行でこれだけ驚かせる技って何だろう。
もしかして読み間違い?と思って(一行だからそんなはずはないのに)うろうろあたりを読み返してみたりしたが、それに違いなかった。
ここからどうするんだろう?という興味が尽きなかった。

第一部では、大人になって高校の時の同窓会に行きましょう、という女性の話でスタートする。
高校の時に親友だったゾウイは、輝きまくって憧れまくられていたのに、今は子連れでしかも悪い男に捕まるという運命だ。
語り手のミランダは珍しい図書を扱う商売をしていてそれなりに暮らしてはいるのだが、やはり男に恵まれず、高校の時に付き合ったジェームズがどうしているかそればかりが気になっている。
同窓会では高校の時のスターだった男の子が頭が狂っていたり、色々を見たあとにジェームズの行く末を教えてもらう。
この第一部の同窓会から話が進んでいき、その初恋の男ジェームズに感じが似ているヒューと言う男にミランダは熱烈な恋をする・・・・・・・


思い出に値することがおきたらそのたびに木片を拾う。
人生が終わったらそれを火にくべる。
それこそが薪の結婚。