名探偵クマグスの冒険名探偵クマグスの冒険
(2008/09)
東郷 隆

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評価 4.8

力作だと思った。
好み分かれるだろうが、私はこれ好きだ。
でも推理小説として好きか、と聞かれると微妙なところであって、推理の部分は、それほど驚きがない。
どちらかというと、奇人であり怪人である南方熊楠の生き方とか、彼の方言とか罵倒とか、溢れるほどの知識とか、そういうのを紐解いて読んでいくのが楽しかった。
時、あたかもヴィクトリア時代のイギリスなので、当然のようにコナンドイルの連載中のの小説という話も何回か出てくる。
そう、これはシャーロックホームズの冒険へのオマージュの物語でもあるのだ。

体が汚く食欲が異常にあり、和歌山弁でののしり暴れ鯨飲する。しかしひとたび口を開けばそこにはあふれるまでの教養がある熊楠。
どの話にもそういう彼の縦横無尽の解説があってそれはそれはどれも楽しめた。
特にラストの食人の歴史には瞠目したし、また孫文が出てくるのにも驚いた。
どこからどこまでが作り話でどこからどこまでが本当にあったことか、というのを見極めていく作業もまた楽しいのだ。