2009.01.31 少女
少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)
(2009/01/23)
湊 かなえ

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評価 4.9

最後まで読んで、最初のページの数ページを読んで、これはこういうことか!と驚いた。
そういう仕掛けがとてもうまい。
伏線があってそれらがきちんと回収されているのも評価できる。
全編を覆っている最後の部分でわかること、もうまく隠されている。
ただ、偶然、があまりに多いような気もしたが・・・
限りなく後味悪いのだが、これはこういう話なのでそこを否定するのは何だか違っているような気がする。後味の悪さすら、売りなのだと思ったりする。
いやあな感じの話、という小説なのだ。

最初、いきなり遺書から始まる。
そしてその感想もある。
感想のところに親友とある。
ということは、この遺書は親友じゃないのか・・・・
この小説、いまどきの女子高生達が主人公なので、ネットいじめも出てくるし、先生の嫌な感じも出てくるし、また負の感情で、『人の死ぬところを見てみたい』という好奇心が二人にあり、二人が別々のところで人の死を見ようとする、というまことに暗鬱な物語だ。

女子高生のうち
・敦子は老人ホームにボランティア活動(体育の授業の単位とり)
・由紀は病院ボランティアに行くのだが、宗教の活動の一環と気づき、それはやめて、ある二人の男の子の見舞いに行くことになる・・・


途中で色々と謎が出てくる。
・なぜ敦子は体育が出来ないのか
・なぜ由紀は左手の握力がないのか
・なぜ由紀はあのようなヨルの綱渡りという文章を書いたのか
・なぜヨルの綱渡りを盗作した先生は学校を辞めたのか(盗作がばれてないはずなのに)

ボランティア活動が始まると
・なぜ敦子と一緒に組む男性おっさんは、感じが悪いのか、そして要領が悪いのか
・なぜ由紀のお見舞いに行く男の子二人は地獄の話に興味を異常に持つのか

これらは段々謎が開いてくる。
家庭の事情というのが徐々に語られだすにつれ、敦子と由紀の家庭がどういう家庭なのかもわかってくる。
正直、二人のしゃべり、敦子と由紀があまりに同質のしゃべりというのが読みにくかった。
どちらがどちらであってもわからないようなしゃべり。
ただ間に挟まった言葉でこちらが敦子だなこちらが由紀だなとわかるのだが・・・これはいまどきの女子高生はこうなのだろうか。
また最初に書いたように偶然が多すぎる。
敦子と由紀の接点が、おばあちゃんなのだが、同じ町とはいえ・・・
またたかおたかおさんにしてもそうだ。こんなに回りまわって・・・
そういう偶然、を見ていくともうそこが伏線なんだか偶然なんだか混沌としてくる。
それから何よりもヨルの綱渡りの役割が私にはよく見えなかった。
これで敦子が救われたという部分がわかったようなわからないような・・・
そういうところが、あと一歩という感じがしたのだった。
あと・・・大きなトリックの一つのところ、私はここはわかってしまったのが自分で惜しいと思った。
こういうパターンの推理小説はよくあるから。
ただ、好みとしては私は、告白のけれんみよりもこちらの推理小説になろうとしている物語のほうが好きだ。ただ・・・こじんまりとしたね、という印象は否めないが。

だから全面諸手を挙げて賞賛はできないのだが、大変よく出来てはいるな、という感想だ。
ともかくラストのところと紙吹雪は驚いた、と書いておこう。

以下ネタバレ
敦子
・剣道で推薦が取れるくらいだったのに、最終戦で失敗したのをネットで陰口をたたかれ立ち直れず、ある高校に行く。
・そのショックから立ち直らず、だから過呼吸に。
・それを知っているのは由紀。

由紀
・家に痴呆老人(婆ちゃん)がいる
・両親も由紀も疲れきっている
・この婆ちゃんにたたかれたのが元で左手の握力が極度に弱くなっている
(だから重い食堂の食べ物は食べられない)
・敦子を励まそうと思って、一つの文章を書く。
それが教師によって盗作される。
・教師のパソコンをハッキングして、そこでセイラという女の子との情事を知り、それを教師にメールする。彼は退職。
このセイラは、後に転校してきて敦子と由紀の友達になる紫織という女の子の友達で、自殺している。
(ここで、最初の遺書が自殺したセイラのものかと思った、私は。ここまで由紀か、敦子かと思っていつこの二人が死ぬかと思っていたのだがここで逆転。
しかしこれも違っていた・・・・。
ここもフェイク)

・死の預言書という死についての書き込み場所を作ったのは、由紀ボーイフレンドの牧野。
そこに太一たちが、たかおたかおの殺人予告を書く。


・敦子に感じが悪かったおっさんは、痴漢の冤罪でつかまって示談。
だから女子高生に最大の防御をしていた。
この話と紫織の話とつながる(彼女の学校でこの冤罪でお金をとるのがはやっていた)
このおっさんのおかげで見ることが出来なかった雑誌の文章ヨルの綱渡りを読んで、敦子は由紀からの思いを知ることになる。
ちなみにこのおっさんは昴(由紀は太一と思っていた肉まんちゃん)のお父さん。
のちに刺されるが助かる。

・おっさんの連絡先を知りたかった由紀。
この由紀に教えてくれると言っていたのが、モデルハウスにいた三条という男。
この男が由紀にしようとした猥褻行為を全て由紀のボーイフレンドが撮っていた。
そしてのちに、由紀がお金欲しさに、この三条をゆすろうとするが失敗して警察ということになったらしい。
これがおそらく紫織の父。
そして彼女が自殺する原因となったのはこのことだ。

・病院にいる太一と昴
これを逆にして、昴の(由紀が太一と思っていた)親を呼んだ。
つまり昴は自分自身で自分の親を呼んだ。
この入れ替わりが私のわかったトリックだった。
そしてそこで昴が親を誘うという気持ちになっていたのもまたわかった。
この入れ替わりトリックってよく推理小説で使われているので、そうではないかと気づいた。
太一だから太っているという思い込みは面白い。
実際におっさん(たかおたかお)の息子は昴君(太っている方)

あとたかおたかお(おっさん)を殺すという書き込みをしたのも、この子供達だというのはわかった。
携帯を駆使しているようだし、お母さんが精神状態が悪く来ていないようだから。

・最初に人が死んだのを見た(親友が)と自慢げに話したのは紫織。
それを聞いた由紀と敦子が人が死ぬのを見たいと思ったことから始まる。
ラスト、回りまわって紫織が死ぬことになったのもここからというのが皮肉。
まさにこの小説全体が、因果応報。

・非常に驚いたのが、担任の小倉が退職してから死んだという記述がある。
これは最初の方で事故死としてしかないのだが、
実は、牧野が見た電車轢死事件。
そしてここで死ぬ前に紙吹雪がまかれたのを牧野が拾っている。
それは、ヨルの綱渡りの原稿で、これを牧野からもらって、つなぎあわせたものの一部を、由紀が敦子に見せている。

・何よりの驚きは
この最初の遺書が、
敦子でもなく
由紀でもなく
そして紫織のともだちのセイラでもなく。

紫織だったこと。
そしてその直後の独白は由紀か敦子(おそらく由紀)
更に最後の親友と書いているのはやはりどちらか(おそらく敦子)