4月の読書メーター
読んだ本の数:50冊
読んだページ数:13994ページ

整形前夜整形前夜
穂村さん、この頃落ちていると思っていたのよ、正直なところ。これは良かった、世界音痴の頃の再来といった感じで。既読だけど本の雑誌に出ていた本の話が特に楽しくて(鷺と雪で出てきた山村暮鳥の詩が!)、そそられるタイトルの本の話とか倉橋由美子の話とか(ファンらしい)わくわく。あと自意識強い人なのでその話も大爆笑。一番笑ったのが外国人のフレンドリーさの話。この間読んだ春日先生との対談を合わせ考えるとほんと興味が尽きない人だね・・・しかし初出がFRAU部分って共感者はいたんだろうか、媒体として。ふ。
読了日:04月30日 著者:穂村 弘
猿駅/初恋 (想像力の文学)猿駅/初恋 (想像力の文学)
可愛い子を、ばっかだなあー(褒め)と頭ぐりぐりにする。そういう気分にさせてくれた田中哲弥のこの小説。簡単にいえば奇想だけどグロ入り奇想が多くエロ入り奇想もあり、まあシュールでぶっ飛んでおりました。でも私は大好き。筒井康隆のはちゃめちゃさに更に現代ギャグパワーが入った感じ。私はね、大きな声で言えないがハイマール祭が面白いと思った(男かも・・わし・・)。あと、か、も。猿駅も猿はあけぼのもどちらも傑作ね。羊山羊のみ既読でしたがこれも好きかも。げろめさんは、食事前後はやめた方が・・・もご・・・
読了日:04月30日 著者:田中 哲弥
幸せな哀しみの話―心に残る物語 日本文学秀作選 (文春文庫)幸せな哀しみの話―心に残る物語 日本文学秀作選 (文春文庫)
詠美って見る目があるなあ・・といつも彼女が作ったアンソロジーを読むと思うのです。これもそう。センスが光ってるの。妖艶で暗い所を這うような邪悪さの中に哀しみが・・・。草間弥生(あの水玉芸術の人ね)のクリストファー男娼窟の男娼の汗にまみれた悲しさといったら!また中上健次の土俗的な物語の鳥の風景が忘れ難いし、庄野潤三のおかしさと残酷さが混じった小説も絶品。赤江瀑の狂気っぷりに魅せられ、そして河野多恵子のエロティシズムに爆撃され、遠藤周作も良かったし。八木義徳の異物もものすごい好み。
読了日:04月28日 著者:
『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション
ちょっと高いのと、あと構成がもうちょっと、と思うところはあるのですが。勿論出ていた時は全く知らないのですが、知らなくても私は楽しめました。中原淳一の絵の美しさ、松本かつぢ(特に気に入った!)の絵のポップさもさることながら、川端康成物語(中里恒子作品といわれているが)の挿絵が中原淳一で、その物語の美しい乙女なことといったら!吉屋信子の話の気恥ずかしいまでの乙女ぶりといったら!少女の友って、読者で出来上がっていた雑誌なんだというのが見えて、80歳を超えた愛読者(当時はペンネーム)が集まったお姿にぐっときました
読了日:04月27日 著者:実業之日本社
鷺と雪鷺と雪
ずうっとこのシリーズを愛読していてラストで不覚にも涙しました。なんて素敵な話なんでしょう。激動の時代の前夜といった時代に生きるお嬢様方のたおやかな暮らしぶりと、そこに横たう小さな謎解きと。そしてまた教養小説でもあるのです、芥川龍之介とか山村暮鳥とか海外の推理小説とかふんだんに出てきて本好きにはたまりません。陸軍少将と結婚するというのがこの時代のいわば女性の花道であって、音楽を聴く優しい兄がいて、見守ってくれる両親がいて。この全てがこのあとどうなるか、というのが後の時代の私達にわかっているだけに切ないのです
読了日:04月27日 著者:北村 薫
パラドックス13パラドックス13
一種の終末SF東野作品。リーダビリティーは高いし、首相官邸までは一気に読みました、終末サバイバル物大好きなので。7SEEDSとか漂流教室とかの漫画、数々の映画、白の闇、渚にて、ザ・ロードなどの本、と、終末物数多くあるので、どうしても比較しちゃうかなあ。途中の哲学っぽい究極の選択の語りがはまる人もいるんだろうけど、エンタメならそれに徹して欲しかったかも。一人一人の心の内面が見える人と見えない人と。あと引っ張っておいて、ラストがこれなのだろうか・・・でも映画化されるねきっと。
読了日:04月26日 著者:東野 圭吾
幸せ最高ありがとうマジで!幸せ最高ありがとうマジで!
笑いとともに心にぐっと刺さる戯曲。ああ・・なんて本谷さん才能に溢れているんでしょう。相変わらず登場人物は少なく、爆発的な破壊力を持った爆弾みたいな女が、店主の愛人だよ!と新聞店に乗り込んでくるのです。段々その家の人達の『皮』のようなものがはげていくところが面白いし。劇の要の言葉の隅々までも面白く、これ言っていいの?の連続で、でもそれはここで必要であって。全編パワーに満ち溢れていて。にしても戯曲は劇見てなんぼだと思うので、ああー劇が見たい!
読了日:04月25日 著者:本谷 有希子
霊降ろし霊降ろし
強烈に面白く読みました。二つ作品が入っていて、最初の方の裏庭の穴も大好き。色々家庭に問題のある主婦がミニ豚を飼うという日常のある点から彼女の全てが非日常へくるんと変換される一瞬がすごいと思いました。霊降ろしは、振りをしているうちに本物になるという女子高校生の話だけれど、ふっとした異世界をこちらに見せてくれる手腕に頭を垂れました。私、この人の文章も好きだわ。いいもの読ませていただきました。次作を楽しみに!
読了日:04月25日 著者:田山 朔美
六つの手掛り六つの手掛り
もうね、これは泡坂妻夫を完全に彷彿とさせる作品。だってだって謎解きの人が手品する人だもの。あとある作品で、泡坂作品のある作品を(ぼんやりとしか書けないけれども)強烈に思い出しました。きっと意識しているわね。ただね、ものすごくこういうのが好みの人と、私のように(なんでこれをしたんだ?こんなことで殺しちゃうの?)と心理を思っちゃう人と分かれるかも。質は高いんだけどね、私の求めているものと細かいところで食い違うというか。私は掛け軸の話が面白いと思いました、あとラストの話にもにまり。
読了日:04月25日 著者:乾 くるみ
あなたが名探偵 (創元推理文庫)あなたが名探偵 (創元推理文庫)
どの話も途中まで書いてあって、解決編がその直後に読者への挑戦が。全体に合格印。私ね、一番おもしろかったのがやっぱり泡坂さんの話。氷上の殺人・・・を使った最後のトリックがびっくりしました。法月さんのも面白い!双子トリックがいかんなく発揮され、あーなるほどーーと膝ポン。芦辺さん・・楽しんで書いたと思う・・・。妻の弁当がキーになる西澤作品はいかにも西澤さんらしいお話。こういう弁当ってあるのでしょうか。
読了日:04月25日 著者:小林泰三,霞流一,泡坂妻夫,法月綸太郎,麻耶雄嵩,芦辺拓,西澤保彦
黒蜥蜴 (学研M文庫 み 9-1)黒蜥蜴 (学研M文庫 み 9-1)
ものすごく血が騒いだ本。非常に良かったです。三島の戯曲ってやっぱり、例え江戸川乱歩原作でも通俗に落ちず、強烈なお耽美の世界を構築している、と思いました。賊の恋っていうところですでにぞくぞく(シャレではない)。人間剥製ってところでどきどき。言葉のあちこちが煌いていて、豪華なレトリックに満ち満ちていて、姦計が暗闇で蠢いていて、騙し騙されの連続で。最後の乱歩・三島・芥川(也寸志)らとの座談会も必読だし、三島と丸山(美輪さんね)との対談もすごいし。ゴージャスな一冊。
読了日:04月24日 著者:三島 由紀夫
わくらば追慕抄わくらば追慕抄
読み始めてから前作の未読に気づいたものの、そのまま読書続行・・・。昭和のこの時代のノスタルジックな雰囲気に溢れ、人や物の過去や記憶が見える姉さまの力。これを思い返しているのが全てが終わった現在で、これは過去を振り返っているところが切ないわね。ただ私はこれを楽しむのには汚れすぎいているかも(心的に)。あと、薔薇姫って出方が中途半端のように感じましたが・・・
読了日:04月24日 著者:朱川 湊人
人生問題集人生問題集
この二人だから軽く読める!と思っていたら、思いの外深かったと思います。人生そのものに、またこの世の中全般に違和感を持っている二人。その違和感を色々なテーマで語ってくれるのです。言葉にすると難しいことをこの二人が縦横無尽に口に出しばっさばっさと切り取るのが快感でした。楽しい部分もあるのだけれど、ある一つの言葉にじいっと立ち止まって考えてみたり。私にはそういう本。最後の読書についての語りが本読みとしては外せないのでここを次は広げてほしいかも(ラストの煩悩コンテンツは最高)
読了日:04月22日 著者:春日 武彦,穂村 弘
地図のない道 (新潮文庫)地図のない道 (新潮文庫)
泣くほど良かった。いやごうごうとは泣かないけど心の中でうっとするという意味で。書物から実際のヴェネツィアへ誘われ、そこで須賀さんの見たものは・・・。彼女独特の沈潜した文章で陽光溢れるイタリアのまた別の部分を語ってくれ、そしてまたそれは須賀さんの記憶への旅にもなっているのです。ユダヤ人ゲットーから橋のたもとで不可解に待ったある女性の真実にはっと思いを馳せるところとか、奇妙な名前のつく病院からイタリアの娼婦までの連想とか。読みどころが多い本でした。(しかもこの内容でお値段が安いわね、これは)
読了日:04月22日 著者:須賀 敦子
芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)
これは、芥川賞がなぜこれを入れない!ぷんぷん!という賞批判の本じゃなくて、取らなかったけれどこういう隠れたいい本がありますよーという、本を教えてくれる本。大変面白く読みました、佐伯一麦の好み前提ではあるけれど。この中で干刈あがた・山川方夫は私も同感、いい作家だったね。あと、小沼丹も優れた文章を書くので未読のこれを読みたい。でも何といってもそそられたのが、吉村昭の透明標本かな。少女架刑と同列ならば読まねば。あと森内俊雄も。知らない作品をつぶしたい!と思わせる『良い作品は良い』精神を感じました、そこここに。
読了日:04月21日 著者:佐伯 一麦
アンコ椿は熱血ポンちゃんアンコ椿は熱血ポンちゃん
ポンちゃんシリーズ最新作を楽しみましたぜっ。山田詠美の身辺日記ではあるのだけれど、作家の方々との交流とか(船戸与一交流で彼への記述に笑った!あと奥泉光が石部金吉というのにも大爆笑)編集者とのやり取りとか(石原・・)、賞の前後の出来事とか(渡す側としての)、読んでいてわくわくするし。何といっても目利きの山田さんが褒めている本って気になる気になる!川上弘美さんとご近所なのね・・の発見も。ギャグとか文壇ギャグ、文芸ギャグ、レトロギャグで、そこにも笑いが。
読了日:04月21日 著者:山田 詠美
血の季節 (1982年)血の季節 (1982年)
独房にいる死刑囚が自分の生い立ちを精神科医に語る・・・これで始まる物語ですが、構造が現在の鬼畜の犯行追い詰め物語と、過去の洋館での外人とのあれこれ物語、の二つに分かれていて読みごたえがありました。これはドラキュラ伝説をモチーフにしているのは明白ですが、ある有名作品をも髣髴とさせ、幻想風味なのです。ラスト一旦全てがまとまった後に来る衝撃といったら・・・・私、これ大好きです、何年ぶりに読み返してみても同じでした、その感想は。
読了日:04月20日 著者:小泉 喜美子
夏の水の半魚人夏の水の半魚人
小学5年生の少年の日々。読んでいるうちにあの日の風の匂いとか友達とのいざこざとか遊びとかをどうっと思い出し懐かしい時間を過ごしました。文が短文なので詩のように歌い上げられ、会話も生き生きとしていて読みやすく一気読み。魚彦と海子のかかわり、車椅子の友達とのいさかいやお誕生日会。普通の日常が描かれていながら遠くで幻想の風景も立ち上がってくる素敵な作品でした。
読了日:04月20日 著者:前田 司郎
臨床真理 (このミス大賞受賞作)臨床真理 (このミス大賞受賞作)
最初の興奮が途中からどこへやら・・・前半面白いんです、のめりこむほどに。でもね・・以下私の疑問。・なぜ臨床心理士は読者より数段遅れて真実に気づくんだろう、鈍ちん?・感情が色で見えるって絡みはこれだけ?・変態人間は変態性向なのになぜこれができる?・テーマがただでさえ後味悪いのに、真相のまた後味悪さといったら・・新人さんだからこれからに期待。にしてもこの本誤植が多いのでそこもよろしく。
読了日:04月19日 著者:柚月裕子
弁護側の証人 (集英社文庫)弁護側の証人 (集英社文庫)
祝復刊!再読しても輝きは失せてませんでした。冒頭から(そうそうそうそう!これだったよ!)と懐かしく思い出し涙。クリスティの『検察側の証人』を勿論意識した小説で、元ストリッパーの女性が富豪の家にお嫁に行きそこで殺人事件と遭遇、というお話。人称を変えて交互に現在と過去が語られ・・・これって読者のミスリーディング力を試す作品だと思いました。わかる人だけで丸くなって語り合いたい作品だと。隅から隅まで読みつくしたい本。
読了日:04月19日 著者:小泉 喜美子
私たちの退屈な日々 (双葉文庫 た 15-2)私たちの退屈な日々 (双葉文庫 た 15-2)
真黒版多島さん。少年たちのおだやかな日々と対をなしているように、こちらは『おばさんたちのはげしい日々』といったところ。平凡な日常を覆す一瞬の出来事が短い文に詰め込まれていました。一番怖くてよく出来てると思ったのは、ボケた父が掘り返している土の中に隠れているものを発掘したら・・の驚きの『記憶』。にやっと笑ったのが夫の解雇反対を上司に直訴に行く『ねじこむ』。ただ多島さんここから入るというのはどうなんだろうね、とは思ったり。これってコアな読者向けかもね。
読了日:04月18日 著者:多島 斗志之
コルセットコルセット
好きだというのがはばかられるけれど、案外好きだと思った作品。爛れた斜陽族物語。ブルジョワのある一定階層の人たちが繰り広げる性の饗宴がさまざまな形で出てきて、特に視点が変わっていくのが面白かったかな。ある話の脇はこう思っていたんだとか、被虐にされたこの人はこうだったんだとか。性的不能、倒錯、いたぶり、爛れた世界、そういうのが出てくるし独特姫野節なので嫌いな人は嫌いかも。ただ、×氏とか××氏とかは普通で良かったかも。
読了日:04月18日 著者:姫野 カオルコ
遠くの声に耳を澄ませて遠くの声に耳を澄ませて
なんて素敵な短編集なんでしょう!丁寧に描かれた、人の心の機微、屈託の思い、失恋から立ち直ろうとするけなげさ、生と死を扱う職業の人々の鬱屈、そういうのが全てぎゅっと凝縮されていて、胸打たれました。旅、が一つのテーマであるのです。ああ・・宮下さんっていいものを書くなあ・・・連作なので人が重なって見えてくるのもいいわね。あーどれがいいかなあ・・どれもいいので考え中・・転がる小石か、アンデスの風か、でも白い足袋も捨てがたいし。あー全部いいんだ・・・
読了日:04月17日 著者:宮下 奈都
ジョーンズの世界 (創元推理文庫)ジョーンズの世界 (創元推理文庫)
読ませるんだけど、ちょっと話がわれてるかなあというのが実感。人類の未来を見通せる男ジョーンズ。この男が人生を繰り返すのと、異星から「漂流者」がやってきてそれの正体と、無菌培養「避難所」で育ったある者たちの別星での適合とか。人によって切り口って違うと思うけれど未来予知ができても不可避というところに悲しさを覚えました。あと体制側への批判ってこうやって勃発するんだと。私が想像していた未来予知の男という話とは違っていたかも。
読了日:04月16日 著者:フィリップ・K. ディック,白石 朗
料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)
時を置いて何度か読み返すほど好きな作品。面白いのは、最初料理人がやってきて全員を幸せにして、というところから始まるのに、あるところで奇妙なねじれが起こるところかなあ。黒いほら話っぽいんだけど、あまりに書き方がうまいので巻き込まれます、いつもいつも。どこで反転が始まるか、どこで完全反転が完遂するかそれを見るのも楽しみであって。純文学のバベットの晩餐会とかと比較したら面白いかもね。ところでこの作者って本当に誰なんだろう?
読了日:04月15日 著者:ハリー・クレッシング
天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語
ある一人の天才建築家が不思議な家を作りそこに住まう人が家に取り込まれていく・・・明治大正の時代背景も細かに書き込まれていて時系列ばらばらにした話の作り、幻想の建物の雰囲気もうっとりするくらいに面白く。だけど、天使モチーフとか犠牲とか使命とかはどうなんだろうね。もう思い切り幻想にして一切の理屈なしの突き抜けにしちゃえば良かったのに。『マーティン・ドレスラーの夢』ぐらいにぶっ飛んだ幻想建築話が日本でも生まれたらいいな、と期待。次も読むよ、でも!
読了日:04月14日 著者:中村 弦
ユルスナールの靴 (河出文庫)ユルスナールの靴 (河出文庫)
再読なんですが、ユルスナールゼロでこれを読んだ過去の時と読んだ後の今とでは全く読みが違うという本でした。この本、読みやすいかというと読みやすくはないと思うのです。なぜなら、ユルスナールのことを書いていると思うと、須賀さんの過去の記憶の断片が転がり、そしてユルスナールの作品人物も活躍しという、ただのエッセイではないから。でもそこを紐解いていく快感があり、最後この書き方に魅了されていきます。いつしかユルスナールと須賀さんの人生が渾沌としてくるのです、重なり合って。知的好奇心をかきたてられる一冊。
読了日:04月14日 著者:須賀 敦子
地図にない町 - ディック幻想短篇集 ハヤカワ文庫 NV 122地図にない町 - ディック幻想短篇集 ハヤカワ文庫 NV 122
これとても良かった、というか私の好みでした。よく表紙を見たら幻想短編集なのですね。だからか。どれも幻想風味に溢れていてそれにプラスSF&怪奇要素がある作品もあり。特に表題作は、駅でのんびり回数券を買おうとしてその駅名がないところから始まり、あるはずの町がないというところまでの怒涛の展開の傑作短編だと思いました。あと平凡な家族の朝風景が一変する面白さのある『薄明の朝食』も大好き。非SF者でも楽しめるわね、これは。字の大きさだけ何とかして欲しい、小さすぎ・・
読了日:04月14日 著者:フィリップ K.ディック
スノーフレークスノーフレーク
これはね・・・否定はできないね。だって青春ミステリでこれから始まる大学生活の前にきちんとけじめをつけたい女の子、の話だから。最後の高校生活の日々が眩しいし、友情とか恋愛とかもあるし、そこは好き。だけどミステリになるともたつく感じが漂うんですが。タイトルの意味もわかったんだけど納得できたようなできないような。最後の謎解きも・・・。あと最終の意外な展開も・・・。読後感がすっきりしなかったの、ある人が背負ったものが大き過ぎて。
読了日:04月13日 著者:大崎 梢
昨日のように遠い日―少女少年小説選昨日のように遠い日―少女少年小説選
色々な味わいのある短編集。それぞれが、お!と思うくらいに短いのですがなかなかに読ませます。ただ、好みはこの中でもあるかなあ。トムとジェリーを確実に思い出す、でもやっぱりミルハウザーはミルハウザーなのでした!の『猫と鼠』が好き。あと寄宿舎少女の同性に対する想い溢れるレベッカ・ブラウンの『パン』も読ませるし。あとユアグローの『大洋』は窓の外光景が素晴らしかったかなあ。そうそう、『ホルボーン亭』の少年時代の不思議なレストランの味わいも好き。あるね、こういうことってと。
読了日:04月13日 著者:
ばかものばかもの
最初のエロ場面で駄目か・・と思いつつ、そして駄目男小説も苦手なので駄目か・・と更に思いつつ読み進め・・・。ところが途中から加速するように良くなってきました。そして冒頭の意味もまた後半できいてきて。ただのアル中駄目男物語として読むとそれだけなんだけど、愛せるんです胸に受け止めたくなるのです、ここに出てくる普通のどちらかといえば愚かな人を。暗中模索で光の見えてくるその見え方が美しくそして何より愛があると思いました。これって形の変わった『海の仙人』だと思いました。
読了日:04月13日 著者:絲山 秋子
あの紫は―わらべ唄幻想あの紫は―わらべ唄幻想
わらべ唄をモチーフにした短編集。わらべ唄なので少年少女の物語が多いのですが、ここにも、薔薇、男女の双子、井戸、切り取られた体、土蔵、悪夢、異形の愛、死、などが詰め込まれていて、好みでした、とっても。特に良かったのは表題作あの紫は。飛行機で偶然隣り合わせた男女の二人。この二人が見た夢について語るのですが、水から出た手のイメージが忘れられません。そしてラスト驚きの結末に・・・。どの作品もオチ、というものはないに等しく茫洋とした中に読者は取り残されるのです。幻の彼方と悪夢の世界にたゆたい人向き。
読了日:04月12日 著者:皆川 博子
死都ブリュージュ (岩波文庫)死都ブリュージュ (岩波文庫)
垂れこめた低い空に覆われたブリュージュという灰色の街。ああ・・この物語大好きだわ。ヨーロッパの一つの都市の沈鬱具合と、妻を亡くした青年の絶望が重なり、そしていつしか青年の心が街に溶け合っていくのです。亡き妻にそっくりな女性を見つけた幽かな希望がどのようになっていくかも読み応え十分で。間に挟まっている挿絵も素敵。かきたてられるような不安感が、ほの暗い夢のようなブリュージュという街のそこここで流れ出していくのです・・・復刊希望。
読了日:04月12日 著者:G. ローデンバック
本の雑誌 311号本の雑誌 311号
長年の愛読者です。とてもいい雑誌なのに今存亡の危機なのであえて雑誌だけど入れてみました。コアなんです、ここに集う人達は。本のマニアックなところを求めている人達。でもね、熱気はありますむんむんと。今回は70人作家のこれからの予定が一挙掲載で熟読。辻村深月さんが出る!川上弘美が出そう!大好きな竹内真の最新作が学園ミステリって涙ぶるぶるっ。その他にも書評も楽しいし、ミニ情報てんこ盛り。扶桑社文庫のミステリもチェックしなくちゃ!
読了日:04月12日 著者:本の雑誌編集部
十の罪業 BLACK十の罪業 BLACK
そしてBlackの方へ・・。ディーヴァーは謎と意外性もだけどそれより統計学のユーモラスな使い方が良かったわね。キングは911事件を元にした一種のホラーだけど物悲しさが付きまとってこの味わいが出たのだと。アン・ペリー作品の頑な父ちゃんに最高にいらつかされました、同時に母ちゃんの素晴らしさに瞠目。なんだけど、私が一番いいと思ったのはジョイス・キャロル・オーツの誘拐監禁残酷事件物。心理描写が巧みでとても面白く読みました。ただ・・しつこいけどお値段が高いよこれ!
読了日:04月11日 著者:
黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)
巽新訳というのでまた読んでみました。これはゴシック編らしくそういう作品が集結。『黒猫』はラストのばっくり、もだけど、途中の猫との心理的格闘が怖いわね。何といっても『アッシャー家の崩壊』が白眉だと(私の好みでは)。ここから始まった作品群というのが解説にあるのでなるほどなるほどとそこも興味津津。あとね、『ウィリアム・ウィルソン』は最初読んだ時の衝撃がまだ残ってました、これは何だろうとわかっていても最後の衝撃があるし。次は推理編なのかな?楽しみ!ポー生誕200年万歳!
読了日:04月10日 著者:エドガー・アラン ポー
童話集 春 (小学館文庫―新撰クラシックス)童話集 春 (小学館文庫―新撰クラシックス)
某書店で面出ししていて、思わず表紙に惚れて買って読みました。ああ・・ノスタルジアに満ちたいい童話集・・・贅沢にも挿絵がそれぞれに入っているのでそこも楽しめて、『かつていた昔の子供達』の純な心に触れぐっときました。『先生の顔』の授業中先生の顔のいたずら描きをした少女の切羽詰まった気持ちに涙。。『大きな蝙蝠傘』を持つ凛とした少女のすがすがしさも際立っているし。全編お母さんが重要人物で溢れているわね。表紙の絵もだけど、紙質のざらつきも好ましく。
読了日:04月10日 著者:竹久 夢二
目白雑録 3目白雑録 3
なんて意地悪でシニカルな金井さんの目が光っている本でしょう。のっけから某作家をやっつけまくっていて大爆笑。賞に対する一言、出版社に対してのあれこれにもぐふっとし。こうして笑えて納得できるのは、単なる悪口でも単なる罵倒でもなく彼女なりの美学がありそして膨大な知識に裏打ちされている覚悟の発言だから。いいなあ金井さんの見る目って。サッカーを断じてサッカーといわずフットボールで通すところも素敵(大ファンというのが意外でもあり)。トラーがいなくなり目を患われているのに尚意気軒昂(と見えた)。いつまでもお元気で!
読了日:04月09日 著者:金井 美恵子
作家と遊ぼう! ミステリーカレッジ メモリアルブック    カドカワ文芸ムック64 (KADOKAWA文芸MOOK 64)作家と遊ぼう! ミステリーカレッジ メモリアルブック カドカワ文芸ムック64 (KADOKAWA文芸MOOK 64)
行った人が本当にうらやましい!!!!ということでこれを熟読。でも行ったとしても全部は参加できないのね、ということに気づきました。恩田さんと石田さんの対談とか(ドミノはマグノリアか!)楽しそう!あと乱歩賞作家の人たちの語り合いとか(高野さんの風水信仰にちょっと微笑み)もとても楽しそう!ところで、ミステリ検定、敗北。かなりの敗北・・ぽくぽくぽく・・修行しなおしてきます・・ぽくぽくぽく・・
読了日:04月08日 著者:
本屋大賞2009本屋大賞2009
雑誌だけどちらりと入れてみたり。大賞の方は…おめでとう湊さん。それで、私が読みたかったのはこの文庫を復刊せよ!のところ。ここが面白かったかな。ああ・・これが絶版なんだとか改めて驚いたり、これは読みたい!と思ったりの色々。発掘本はちょい普通。語り方で読みたい!と思わせる人と、パスかなあ・・と思わせる人とそれはさまざまでした。それが文章の技の違い・・・なんだね・・・。これの外国文学バージョンが私はひたすら欲しいなあ。外国推理とかじゃなくて、普通の(っていうのも変だけど)外国文学バージョン。
読了日:04月08日 著者:
密室入門!(ナレッジエンタ読本14)密室入門!(ナレッジエンタ読本14)
とても面白かったです。ミステリ作家の有栖川さんと一級建築士の安井さんの話が、片方は作家視点片方は建築視点で進んで行って。エレベーター秘密部分は私も知りませんでした。あと三つの棺(カー)への言及も良いし(そうそう必読だよね・・)、何より図が多いのでそれで小一時間楽しめました。天井がなくても深ければ密室になるとか目ウロコも!戦前の日本の家屋とか界壁という言葉とか知らないこともたっぷり。虚構の世界の密室殺人を論理的に語るというのもまた一興で。これ安いわね、内容から見て。
読了日:04月08日 著者:有栖川有栖(ミステリ作家)×安井俊夫(一級建築士)
英雄の書 下英雄の書 下
ま。
読了日:04月08日 著者:宮部 みゆき
英雄の書 上英雄の書 上
ま。
読了日:04月08日 著者:宮部 みゆき
幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV)幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV)
これで3巻終了・・淋しい・・・。良いアンソロジーでした。タイトルが幻想と怪奇ですが、奇想っぽいのもやや含まれているかと。この中ではあのマシスンの未来予想できる妻を持つ恐ろしい表題作が光っていて。あとブラッドベリのおぞまし版おくりびとの『死人使い』もよいし、シリア・フレムリン短編も夢小説から広がる感じが怖いし。あとF・ブラウンの最初の音楽小説作品も最後のオチが素敵。
読了日:04月07日 著者:
墜ちてゆく男墜ちてゆく男
衝撃的作品でした。911の事件のその日に、奇跡的に助かった男キースが元妻の元をよろよろの姿で訪れる、というところから始まる物語にからめとられてしまいました。話はいわば断片で出来上がっていてそれぞれの人の(テロの人もいる)中の911を浮かび上がらせてくれていて。それに上から落ちる技を見せている男があちこちに散りばめられ。どのエピソードも印象的で人物造形も力強い。そして圧倒的な読後感がありました。最終章の被害者加害者の混じり合いの意識の動きもすごい。子供の遊びにすら気が抜けない一冊でした。
読了日:04月06日 著者:ドン デリーロ
遊覧日記 (ちくま文庫)遊覧日記 (ちくま文庫)
お母さんの百合子さんの文章と、お嬢さんの花さんの写真のコラボが絶妙な不思議な味わいを醸し出していました。遊覧といっても、遠くは京都ぐらいしかなく、あとは花屋敷とか浅草とか隅田川とか、実に東京周辺、のことなのです。特殊な眼力で周囲を見回しそれを独特の言葉でつづっていく百合子さん。その見る目の新鮮さにはっと居住まいを正されたり。お嬢さんとのそぞろ歩きも好ましく、いいないいなと微笑ましく読ませてもらいました。はっとした書きぬきたい言葉がたくさんりました。惜しいね、このペア作品がもっともっとあったら良かったのに。
読了日:04月05日 著者:武田 百合子,武田 花
ドリーム・マシン (創元SF文庫)ドリーム・マシン (創元SF文庫)
プリースト大ファンなので贔屓目ですが。最初の方何が何だかわからずいらっとします。だけど途中で人が目の前で突然消えるあたりから、ああ・・・プリースト!そしてこの恐るべき計画の全貌が。無意識で想像上の未来社会に行く複数の人たち。読んでいるうちにどちら側が虚か実か混沌としてきます。ここに恋愛話を入れ込んで、ラストまで突っ走る技に脱帽。最後の最後まで揺らいでいます、ゆらゆらと。逆転世界の方がSF的完成度は高い気がするけれどこれはこれで私、大好きよ。
読了日:04月05日 著者:クリストファー・プリースト,中村 保男
怖い絵怖い絵
諸事情のため怖い絵2から戻っての読書でしたが、これも良かったです。時代背景、神話、聖書それぞれのつながりなども記されていて、最初絵を見た時と後から見た時と印象が変わるのが面白いかな。怖さの質って内包されている方が怖いよね・・・。ベーコンの絵が好き。中野さん独自の解釈と主観もまた私は楽しめました。(ゴヤとボッティチェリは実物は更に迫力があるよ・・)
読了日:04月05日 著者:中野京子
幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる (ハヤカワSF)幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる (ハヤカワSF)
とても良いアンソロジーだと思います。幻想と怪奇だからそういうものが多いんですが、人間の恐怖の根源を揺さぶってくれるような話が多いかな。最初のところの仁賀さんの解説もまた読み応えあり。「なんでも箱」の箱を持ち続ける少女の不思議な味わい、「ハリー」の実在しない子供への話しかけの恐怖、絵画譚の「裁きの庭」どれもいいね。だけど怖さでいえばハイスミスの「かたつむり」に尽きるわ、私は。一生かたつむり触りません・・(貴志さんの解説も楽しい。あと、字も大きくて嬉しい)
読了日:04月04日 著者:
川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 24-2)川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 24-2)
ある男の帰郷から謎が徐々に提示され解けまた新たな謎が提示され解け、読者は物語の中に投げ込まれて。重低音のように背後に鳴り響くのは故郷での親子の確執、不変の友情、切ない恋、兄弟愛、家族愛なのです。男同士の友情が二つ重なり合っていたり、過去の恋と現在の恋が透けて見えていたり。心の何かを喪失した男が何物かを取り戻す哀愁漂う物語。細部も良いね(桟橋の下で母と見上げる太陽とか玄関ポーチで過去を思い出すところとか)。
読了日:04月02日 著者:ジョン・ハート

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