6月の読書メーター
読んだ本の数:37冊
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▼読んだ本
フィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命 (中公新書 (118))フィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命 (中公新書 (118))
名著、だと思いました。中公新書この一冊で多くの人がこれを挙げているのがとてもよくわかりました。いつもの高階先生の語り口で、素人にも非常にわかりやすくルネサンス美術を語り解き明かしてくれます。それはフィレンツェの歴史から掘り起こされ、ドナテルロやマサッチオの巨匠の輩出された15世紀フィレンツェ美術黄金時代から、折角多くの芸術家がいながらその黄金の座をローマに譲った世紀末まで丹念に追ってくれています。美術って言っても建築もとても多くリンクしていたのだね・・・図版も多くフィレンツェ美術を考えさせられた本でした。
読了日:06月30日 著者:高階 秀爾
天使と悪魔 (下) (角川文庫)天使と悪魔 (下) (角川文庫)
最後まで緊張感の糸が途切れずに息をもつかせず読みました。途中の場所探しの思考経路が面白いわね、教皇探しの時の。知識総動員で探すラングドン教授にどきどきしました。ヤヌス正体はミステリ読みなら何となくわかるんだろうけど、最後の最後でまたひっくり返しがあってそれは思いもよらなかったので腰抜かしました。あと秘密結社熱が私の中でまた再燃。さて、遅ればせながら、映画を見に行きますっ!
読了日:06月30日 著者:ダン・ブラウン
天使と悪魔 (中) (角川文庫)天使と悪魔 (中) (角川文庫)
教皇候補複数が誘拐され殺される予告という衝撃的な事件を追うのと同時に、ヴァチカン内部に仕掛けられたいわば爆弾を見つける作業、というのと、イルミナティーとのかかわりを見るというのと。謎が錯綜しているのです。だから読ませるし、また殺人がどこで行われるかというのが詩に含まれているというのも面白いし。さて下巻へ。どんどん進め!
読了日:06月30日 著者:ダン・ブラウン
天使と悪魔 (上) (角川文庫)天使と悪魔 (上) (角川文庫)
ダ・ヴィンチコードよりこちらの方がサスペンス度というのは強いように思いました。あと宗教関係は基本的なことだけでも頭に叩き込んでおくと楽しみ方が倍増するかもね。宗教と科学のはざまというのが大きなテーマになっていて、そこに殺人事件が!ラングドン教授自身があまりよくわからないうちにヴァチカンにとりこまれる上巻。さて中巻はいかに!!
読了日:06月30日 著者:ダン・ブラウン
きょうもメロンパンきょうもメロンパン
メロンパン好きとしてははずせない一冊・・・メロンパンと言っても奥が深いの。断面写真があって表面が出ていて、どれも食べたくなること必須。ただ、前半はほとんど東京店だから悶えるかもね、手に入れられない人は。後半はお取り寄せとか全国展開のチェーン店とかだけど。かりかりでぼこぼこしていて波打っている表面で、中身なしで、ふわふわの中身、かりふわ。これが私の求めるメロンパン。しかしメロンパンと書くと、最後にナをつけたくなるのはなぜでしょう。メロンパンナちゃーーん
読了日:06月22日 著者:ヒヨコ舎
贖罪 (ミステリ・フロンティア)贖罪 (ミステリ・フロンティア)
うん、ぐいぐいと読ませると思うよ。「告白」のように別々の人の語りで成り立っているある田舎町で起きた凄惨な事件。この話の面白さは、犯人目撃者の子供達4人のトラウマを抱えた「その後」もなんだけど、「同じ事件現場にいながら実は家族背景・性格・事件の後の行動が全て違っていた」と言う事でした。これが後で尾を引くと言うところが読ませるなと。また犯人が誰かという事プラス犯人が「知らなかった事」に総毛立ちました。ただラストの償いの章が短いかなあ、犯人の動機が私には不完全燃焼だったのだよね・・・
読了日:06月21日 著者:湊 かなえ
六月の夜と昼のあわいに六月の夜と昼のあわいに
新鋭画家の絵、フランス文学者の詩とか短歌、と両方から喚起される物語。ダブル喚起なのでその手法がちょっと難しいなあとは思いました。ファンタジーありSFチックありミステリーありと色々な味のキャンディーをなめたようなそんな気持ちでした。エッセンス、であくまであるので、ここからまた長編が生まれるといいな。日常の裂け目に落ちた人達の話のY字路の事件が圧倒的に好き(ユージニアを思った)。夜を遡るもグレメという不思議な言葉が何かという不思議な予感が。詩とか短歌は物語を読んでからもう一度読むと味わい深いかな。
読了日:06月21日 著者:恩田 陸,杉本 秀太郎
メガロマニア―あるいは「覆された宝石」への旅メガロマニア―あるいは「覆された宝石」への旅
飛行機嫌い・高所恐怖症・ビール好きの恩田陸さんが中南米に行く旅・・・紀行文みたいのを期待すると違うかも。そこでのあれこれとか書かれているけれど、これは小説の根本とか発火点を探す旅なので、どういうものに恩田さんが目を留めるかとかどこから喚起される物語や映画とか、そういうところが読みどころだと思いました。間に小説の断片があるのでこれがつながったら面白いだろうなあ。ただ、写真と文章がぴたっと合ってないのと、地図がラストだったのでそこがなあ・・・だから紀行文じゃないんだけど!でもね・・・
読了日:06月20日 著者:恩田 陸
フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)
メキシコの代表的な作家の作品集。最初の伝説の銅像のチャックモールがともかく不気味で引き込まれて。一番良かったのは「純な魂」。これって恋文と思われる「あなた」への手紙であるのに、途中のある一点で驚愕の事実がわかり、そして更に相手がどういう人生を歩むかもこの手紙に書き込まれていく手法が読んでいてどきどきしました。ラストの相手の父からの繰言も怖かったし。また「アウラ」はどこかで読んだ読んだ読んだ・・と既読感があったと思ったら、解説を見て、雨月物語だったり。これまたゴシックの雰囲気たっぷり二人称小説。
読了日:06月19日 著者:カルロス フエンテス
ポケットの中のレワニワ(下)ポケットの中のレワニワ(下)
面白かった!書いていることは現代社会の暗部のような、実に現実そのものなのに、全体がミステリでありSFであり、そして私が一番思ったのは壮大な寓話だということでした。一方で現実が進んでいて複雑な背景のティアンが消えたり、それを追いかける貧しい男がいたり、ネットジャンキーがいたり。でももう一方ではレワニワがいるのです。レワニワ世界がぐわっと広がっているのです。伊井さんって片足が強烈な現実、片足が夢と幻想の世界という位置にぐらぐらに立っているのを描くのが卓越していると思いました。
読了日:06月19日 著者:伊井 直行
ポケットの中のレワニワ(上)ポケットの中のレワニワ(上)
伊井さん本を読むたびに(売れないだろうなあ・・)と思います(失礼。でも褒め言葉)。ある種の人々にしか愛されない小説だと。これもそういう小説。読み手によって万華鏡のように受け止めが違うと思うのです、この人の小説って。最初、レワニワって何?と思いつつ、しかもポケットの中って何?と思っていると、それが実に意外な姿現れてきます。下巻にわくわくしつつ続く。
読了日:06月19日 著者:伊井 直行
ドイツ幻想小説傑作集 (白水Uブックス (72))ドイツ幻想小説傑作集 (白水Uブックス (72))
これはね、あーあというものと(すまないすまない・・・)、おおおお!感激!というものと、二手に分かれた短編小説群。こてこてのSFからただの怪談から(求めていた幻想は少ないような気が)このあたりはわかりやすいのですが、前衛となると、は?と突っ込みどころ満載。面白かったのはSFの第四次元の会話、自動うさぎが町中を飛び回る話(オチも面白い)、神話っぽい北極星と牝虎はラストおぞましさが良いし、写真も超短編ながら奥行きがあり、とそのあたり。寸描された~は、口の周りの繊維っていうのが気味悪くて良かったかなあ。
読了日:06月18日 著者:種村 季弘
世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周
私は大変楽しく読みました。一見漫談のようであるけれど、一冊の本を二人の視点でとことん語り尽くす・・・いいなあ楽しそうで、とその話し合いに混ぜてもらった気持ちでした。ここに出てくる本を読んでいた方が面白く読めるかも。読んだ人向けなんだと。特に良かったのが、予告された殺人の記録の人物表(こんなに人が出てくる!)とその語り、デュラスの愛人についての視点。変身も扉がそんなにあったっけ?と読み直したくなり、地下室の手記への突っ込みに笑いつつ、阿Q正伝とセルバンテスの対比に舌を巻き。
読了日:06月17日 著者:奥泉 光,いとう せいこう
外套・鼻 (岩波文庫)外套・鼻 (岩波文庫)
再読。必要があって再読したのですが、いきなり取れちゃった「鼻」は細部まで強烈に覚えているのに対して「外套」は、骨格は覚えているものの細部が飛んでいたと言う・・・・小役人のアカーキの頭の上から紙吹雪投げつけられる場面とかゴミを頭上から降りかけられる場面とかさっぱり忘れていて。ゴーゴリは、時代早かったんだね、と改めて思いました。鼻なんか今だったら奇妙な味の小説とかにくくられるだろうし、外套はこの顛末のてんやわんやが最初の場面から外套がどうなるかという不穏な予感に満ちているところがいかにもいかにも!
読了日:06月16日 著者:ゴーゴリ
てのひらたけてのひらたけ
ちょっと不思議な未来や過去の姿を通して家族のあり方をめぐるファンタジックな短編集、私はとても好きでした。「てのひらたけ」は女性との不思議な邂逅もさることながらラストの多幸感も愛せました。泣いたのは「タンポポの花のように」。なぜ56歳の女性は遊園地で黄色い子供の帽子をかぶって笑いながら死んでいたのか。細部が心憎いのです。妻子を捨てた男が戻ってきた末に見たものとラストに涙した「あの坂道をのぼれば」、亡くなった父が出てくる話「走馬灯」。気持ち的にこういう小説にフィットする時だったのかもね、私が。
読了日:06月16日 著者:高田 侑
「王様のブランチ」のブックガイド200 (小学館101新書 33)「王様のブランチ」のブックガイド200 (小学館101新書 33)
初心者の人には指標になるかも。私はこの番組のこの部分を見ているので、どうだろうなあと思って読んでみました。内容はその時にコメントした言葉がそのまま載っていて(付け加えも前後にあるけれど)正直な私の感想は「聞いているのと文字になるのとは違う」ということでした。聞いていた時にはなるほどなあ・・とか思ったのに、読んでみるとそれほどの感激はなく。一度聞いているせいかわからないけれど。あと、人の薦めた本を薦めるっていう二重構造が私は腑に落ちなかったな。自分で見つけていると思っていたから。関根勤が強力な読み手とは!
読了日:06月15日 著者:松田 哲夫
ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)ローマ人の物語10 (新潮文庫)ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)ローマ人の物語10 (新潮文庫)
賽は投げられた。ずんずん進むカエサル。長きに渡ったガリア戦が終わってやれやれとと思ったらば、やっぱり頭上にいる元老院があれこれあれこれ・・・。お気の毒でならない。これだけ働いて戦って分捕ったのに、ローマに帰ると頭でっかち揃いが文句つけてきて。ポンペイウスが意外に停滞しているのが(気質とかこの人の状態とか色々説明されているけれど)大きいと思ったわ。これがカエサルを一人目立たせる要因にもなったから。クリオを抱き込んだのは大きかったね。戦闘能力と人心(兵士)の確保ができたカエサルはルビコンを渡る!
読了日:06月15日 著者:塩野 七生
ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9 (新潮文庫)ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9 (新潮文庫)
この巻、大変面白かったです。とうとうカエサルが動き始め、頂点までいかに登りつめて行くかの描写がそれはそれは圧巻でした。三頭政治が出来上がり、頭上には相変わらず元老院がぶんぶんしていてうるさい中、ガリア戦役に。このガリア戦闘部分が特に読みどころがありました。体格的にガリア人に劣っているローマ人が建築技術の粋を集めて橋を作るとか、戦闘用具を作るとか知恵勝負でもありました。それぞれの人の野心と虚栄心の話も極上(154ページに図が)。
読了日:06月15日 著者:塩野 七生
夜更けのエントロピー (奇想コレクション)夜更けのエントロピー (奇想コレクション)
ホラー系の奇想なので好みがわかれるかも。ダン・シモンズの「カーリーの歌」のある部分のテイストと似ているなと思いました。吸血鬼、ゾンビ、ベトナム戦争、と取り込んでいるものは多岐に渡っていますがラストへのなだれ込みが素晴らしいの、どれも。表題作は私は大好き、過去の思考と現在の思考が交互に現れ乱れ飛ぶさまが。最後のクラス写真はゾンビ教育(!)の女性教諭の話の纏め上げ方が絶品だし、神出鬼没で現れるケリー・ダールの不条理な話の展開にも魅了され。底知れないどん底感漂う「バンコクに死す」も好きだな。
読了日:06月13日 著者:ダン・シモンズ
猫 (創元推理文庫 (139‐4))猫 (創元推理文庫 (139‐4))
冒頭から、同じ家にいながら紙切れを投げ合って意思を伝える老夫婦の暗い話。でもね、そこまでどうしてそうなったか、という葛藤を私は面白く読みました。気位の高い奥さん、労働者階級の旦那さん、お互い再婚で前の相手のことも思っていたり、壮絶といえば壮絶な話なのに、なぜかくすっと笑える自分がいました。だってこういう状況って何だかわかるもの。解説の後の語り合いもメグレ面白くない大胆発言のこの人たちは誰なんだろうと思いつつ楽しみました。物語の中で、夫が「猫」と紙を投げつけると妻からは返答が「オウム」と返ってきます・・・・
読了日:06月12日 著者:ジョルジュ・シムノン
十二夜 (岩波文庫)十二夜 (岩波文庫)
しつこくこちらの訳の十二夜を。こちらの方が小田島訳より硬いけどこれはこれでいい味わい。ただ、劇で本当にやるとすると手紙部分が余りに辛いと思いました(候文)。解説が岩波なので抜群に優れていて、マルヴォーリオ叩きが、(そうだ、ピューリタン(マルヴォーリオ設定)の劇軽視を風刺していたんだっけ)と思い出しました。だからこれだけからかわれていたんだ!二重性(双子の男女、女性の男装)に幻惑されながらも楽しく読み終えました。
読了日:06月12日 著者:シェイクスピア,SHAKESPEARE
十二夜  シェイクスピア全集 〔22〕 白水Uブックス十二夜 シェイクスピア全集 〔22〕 白水Uブックス
再読(というか限りない再読)。必要があって再び読んでみました。小田島さんファンなので、この訳で。男女の双子がいて生き別れになっていて、それで女性が男装をしてそれが元で恋のスクランブルが起こる・・・なんて面白い話なんだろうと今でも思います。自分が男の姿をしちゃってるがゆえに、仕えている公爵が好きでも告白できないもどかしさがあって。公爵は公爵で別の女性が好きで。その別の女性は男装の侍従に憧れて、という永遠に埋まらない三角関係勃発。この話、主体の話も面白いのですが、侍従たちの意地悪合戦も見所がありました。
読了日:06月11日 著者:ウィリアム・シェイクスピア
トワイライト・ミュージアム (講談社ノベルス ハF- 2)トワイライト・ミュージアム (講談社ノベルス ハF- 2)
ま。そもそもの設定説明(状況説明といおうか)が希薄なのが気になったのと、詰め込みすぎの感が。タイムトラベルでしょ、あと謎解き(しかも・・ミステリがあった。複雑な)でしょ、ほのかな恋でしょ、脳死でしょ、中世物語でしょ。二分の一の騎士が好きな人は好きなんだろうなあ・・・
読了日:06月11日 著者:初野 晴
トンデモ本?違う、SFだ!トンデモ本?違う、SFだ!
タイトルと表紙で引きまくっていたのですが、読んでみたら滅法面白いという一冊でした。何と言っても作者山本弘のSFへの限りない情熱がほとばしっているのです。いわゆる有名どころじゃなくて山本さんが面白いと感じたものを紹介しているという・・・どちらかというと短編で馬鹿SF(いい意味での馬鹿)が好みっぽく、ハミルトンなんかの一文はそれはそれは面白く頷いてました。あとスタージョンについての言及も読みどころがあったし、ディヴィッドソンとかブラウンとか、好みがかぶっているのでそこはもう興奮しまくりで読んでいました。
読了日:06月11日 著者:山本 弘
続 ダカフェ日記続 ダカフェ日記
いいなあ・・このシリーズ。私、こういう家族ものにはまったのは初めてかもしれない。人の家族の成長を見てどこが楽しいんだ!と思うんだけど、これがたまらなく幸せな気分にしてくれるのです。一つ一つの写真につけられた言葉がまたいかしていて、ほこっと笑ったり、じーんとしたり。海ちゃん大きくなったね、怪物空君、悪くて可愛い。ワクチン(犬)の馬鹿さすら愛せるし。全部にお父さんの優しい目が行き届いていて、等身大の普通の全うな暮らしをしている家族が見えるから、好きなのかも、私。
読了日:06月11日 著者:森 友治
イタリアからの手紙 (新潮文庫)イタリアからの手紙 (新潮文庫)
再読。はるか昔に読んだので本当は単行本(その書影すらここにはない・・)。若き頃の塩野さんが陽光溢れるイタリアの地で起こった出来事を、そこにいる「人」を通して生き生きと描ききっているので、読んでいて楽しいのです。軽いエッセイと思いきや、シチリアのマフィアの成立状況の深い話から、小説のような散文「ヴェネツィア点描」まで幅広く書き込んでくれています。そこここで歴史に洗われた国イタリアと卑小な人間の存在そのものを思いました。トリエステの深い悲しい歴史の前に立ち尽くす一人の女性の話が私は好きかな。
読了日:06月10日 著者:塩野 七生
ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)ローマ人の物語8 (新潮文庫)ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)ローマ人の物語8 (新潮文庫)
この巻前半はこの前とちょっと重なってるね。カエサルの出生から追ってるから。いやあ・・盛り上がった個人的に。ここに来て眼が開かれたようにわかったことがあるわ。なぜ師弟教育が奴隷と一緒かとか、あとローマの家の作りとか、トーガ(長衣)の着方もだけど、当時の勢力図というのが見えてきたわ。後半の「カティリーナ弾劾」のいきさつは絵ともに非常に納得。あと最後の方の演説合戦は面白い!の一言。アジることができ民衆を説得する力がある人が勝つのだね・・
読了日:06月10日 著者:塩野 七生
湖畔・ハムレット 久生十蘭作品集 (講談社文芸文庫)湖畔・ハムレット 久生十蘭作品集 (講談社文芸文庫)
まさに小説の魔術師にふさわしい傑作揃いだと思いました。特に表題二作品は群を抜いています。「湖畔」は擬古文とカタカナ言葉の不思議な混合という表現にも見るところはあるのですが、「とても自意識の高い男が愛を求めて猜疑心に囚われる」というモチーフがあり、死体攪乱からラストの大団円まで息をつかせぬ展開。「ハムレット」は時代遅れの紳士然とした男性の一生のラストがあまりに壮絶で映像になって脳内に焼きつきました。直木賞の「鈴木主水」も時代小説にもかかわらずモダンな小説技法で破滅する人間を見事に描いていて。堪能の一冊。
読了日:06月09日 著者:久生 十蘭
スコープ少年の不思議な旅スコープ少年の不思議な旅
スコープという機械で覗き見たならば・・・。世界がぐんにゃりと曲がったり、光と影の交錯でありふれた物が夢の中の物のように見えてきたり。読んでいるうちに自分が小さくなってこの世界に入っていきそうでした。話は少年の幻想旅行譚なのです。桑原スコープオブジェ作品もさることながら、巖谷國士小説がまた独特の雰囲気を醸し出していて。モロー・フェルメール、足穂、アンデルセン、ハインライン等々各種の作品を引き合いに出す深い教養に裏打ちされた流麗な文章もたまりません。
読了日:06月07日 著者:巖谷 國士,桑原 弘明
絶望ノート絶望ノート
石の表紙の意味が途中でわかります。絶望ノート、それはいじめられている男子が綴ったノート。その部分と別の三人称部分とが交互に描かれていて読ませます。ただ疑り深い私が最初もしかして・・と思ったことが最後そうだったのでそこは驚愕度が低かったかな。ラストのなぜ、の理由部分はわからなかったわ。父に真底いらいら。これって、ある漫画を必ずや思い出すけれど。物語本体には関係ないけれど少年が読んでいる本がいいセレクトなのでそこにうっとりしていました(邪道)
読了日:06月07日 著者:歌野 晶午
奇縁まんだら 続奇縁まんだら 続
前巻と同様とても楽しめました。ただの作家達の覗き見ではなく、ある一瞬を切り取っている、近くにいた人でなければ描きようもないその作家の姿がくっきりと浮かび上がりました。功罪が言われるけれどこの時代の文壇って確実に切磋琢磨したのだなと改めて思いました。開高健の豪胆さと繊細さ、江國滋との交流(娘の香織誕生にプレゼントとは!)、福田恒存の奥様エピソード(怖い人だと思っていたのでふくっと笑った)、武田泰淳の人格者ぶり(いい人だ)と読みどころは多く、更に横尾さんの絵が素晴らしい!永久にこのシリーズ読んでいたいな。
読了日:06月06日 著者:瀬戸内 寂聴
薬屋のタバサ薬屋のタバサ
東さん小説ってもう東さんしか描き得ない独特ワールドがあるのでのめり込む人はのめりこむと思うのです。私はのめり込み派。この話でもそもそも、山崎由実(平凡な名前)が「なぜこの町に流れ着いたのか」「なぜこの町の人は奇妙な暮らしをしているのか」「何でも吸い込む池は何なのか」「タバサは何者なのか」と謎は尽きず、ただただ夢のような幻惑の世界に読者は想像の翼をはためかせる事になるのです。でも紛れもなく一つの恋愛小説であり、自分の身を誰かに委ねる快感と解放する気持ち良さに溢れていました。最後の最後まで不思議な味わいかな。
読了日:06月06日 著者:東 直子
ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社 ス 4-1)ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社 ス 4-1)
映画(スラムドッグ・ミリオネラ)が先でこの原作をあとで読みました。別物だけど、パッチワーク的に小説が並んでいるとすると、これを見事な縫い合わせの脚本にしたのが映画といったところ。そして小説は違う部分も多々あるけれど、これはこれで楽しい!貧しいスラムの少年が「なぜミリオネラに答えられるだけの該博な知識が?」の謎の開き方が絶妙だし、少年の成長の時系列になっていない意味が途中でわかるし、またラストの驚愕も二つあって(人物とコイン)はっとしました。映画も原作もこれはいいよ(と私は思う)
読了日:06月05日 著者:ヴィカス スワラップ
ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下)新潮文庫ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下)新潮文庫
ようやくよく知ってる人の名前が出てきた!(涙)ポンペイウス!!キケロ!前半は内乱状態を制圧していく名将スッラのお話。これだけにしても死んだら崩壊というのがなんだか空しさ漂うけど・・歴史ってこうなんだね。ここらあたりからちらちらとカエサルが出てくるし。政治力軍事力人心と全てを持っていたポンペイウスが偉大な個人になれなかったという顛末が次巻か。
読了日:06月04日 著者:塩野 七生
f植物園の巣穴f植物園の巣穴
f植物園の巣穴に入り込んだというよりも、梨木香歩世界の巣穴にすぽっと入り込んだといった小説。歯医者に行くという実に現実的なところから始まり、そこの奥様が犬だった(!)という異種変化物語になり、そして漂うような夢と現実の端境でせめぎあっている内に、忘れている過去がおずおずと顔を出してくるのです。美しい洗練された言葉の美しさ、二人の千代の物語の引き合い方の巧みさ、奇妙な物語の謎、話自体の揺らぎ。どれも大変魅力的でした。沼地~に通じるものを私は感じたかな。
読了日:06月04日 著者:梨木 香歩
少年少女飛行倶楽部少年少女飛行倶楽部
まずキャラクターがとってもわかりやすいし、主人公の真直ぐ一生懸命くーちゃんが好感持てる女学生さんなのです。(くーちゃん母も忘れがたい重要人物)。飛行倶楽部という、人が集まらなくてようやく集まった変人部長さんのいるクラブ活動。人間が空を飛ぶというあり得ないことを必死でしようとする少年少女がそれぞれの持ち味を生かして目標に突き進んでいく姿にぐっときました。軽く読めるんだけど、ジュジュからくーちゃんへの言葉とか、くーちゃんが斉藤のことで泣いたこととか、イライザの心模様とか。心象風景が手に取るように見えました。
読了日:06月01日 著者:加納 朋子
やんごとなき読者やんごとなき読者
この場合の読者は女王陛下。陛下が読書に目覚めていくにつれ読書への傾倒していくところに、くすくすと笑いながら軽く読み進められました。最初駄目だと思った小説があとから読書力がついてきたら読めるとかの描写がリアルだったし、(そうか陛下と言うのは作家を呼ぶパーティーが出来るんだな)と思ったりして。アリス・マンローとの感激の出会いとかジャン・ジュネに対する話とかオースティン作品への言及とか、作家名てんこ盛りで楽しい!ちょっとジーヴスものとかのイギリスユーモア源泉を感じたかなあ。
読了日:06月01日 著者:アラン ベネット

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