2009.07.31 宵山万華鏡
宵山万華鏡宵山万華鏡
(2009/07/03)
森見登美彦

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評価 5

なんて楽しい話なんだろう。
なんて猥雑でがしゃがしゃしていて、それでいて面白さの塊を出してくれるような話なんだろう。
お祭の不気味さ、猥雑さをきゅっと集めて濃縮して見せてくれたような小説だった。
ちょっと道を曲がれば、そこは異界。
ちょっと脇見をしていればそこは異形の人々がいる。
そういうこちら側と向こう側をつないだ、つなぎ感がある話で大いに楽しめた。
怪異の物語でもあり、馬鹿ばかしい馬鹿物語でもあり、変幻自在の話を繰り出してくれた。

表紙もとてもかわいらしく、内容をぐっと盛り立てている。
個人的には、目次の女の子が右から金魚に変化していく様子が面白いなあと思ったりした。


6篇の物語がそれぞれに対になっている。
下の番号で言えば
①と⑥が対(バレエ教室姉妹の話)
②と③が対(乙川の壮大な偽宵山作り)
④と⑤が対(いわゆる不思議話であり怪異譚)
になっている。

この中で一番面白いのが、「宵山迷宮」の話であった。
閉じ込められ感がとても出ていて読んでいて巻き込まれていったのだった。

①「宵山姉妹」
ビルの一室にあるバレエ教室の帰りに妹が姉とはぐれ、真っ赤な浴衣を着た少女たちに連れられそうになる。
けれども手を離した姉が気づいて戻ってきて危うくさらわれそうになった妹をつかまえる・・・・・
②「宵山金魚」
信用できない友人の乙川と宵山に来る男。
途中で彼とはぐれ、異界の世界に。そこは虫をも食べる世界であり、偉業のものがいる世界でもあった。そして奥の院にいる宵山様にお灸をすえられそうになる・・・・
③「宵山劇場」
乙川にそそのかされる人たち。
乙川が友人を是非とも騙したいと言う・・・・・壮大な試みに乗るのだった。
お金をかけてまで偽宵山作りに励む人間達。
突っ走っていく元劇団で一緒だった山田川の妄想を小長井たちが作り上げていく・・・・・
④「宵山回廊」
幼い頃宵山で行方不明になってしまった従姉。
いくら探しても宵山に消えてしまった従姉。
そこから15年がたつ。
また宵山の日がやってきた。
その従姉をを叔父河野画伯が見つけた・・・そして叔父もまた・・・
⑤「宵山迷宮」
杵柄商会に父の遺品を返せと乙川が代理でやってくる。
ここにいる数人が宵山の日に閉じ込められてしまっている。
渡せと言われているのは父の形見の水晶玉だけれど、これは同時に万華鏡でもある。
毎日がふっと繰り返されているのに気づく「私」がそれを乙川に渡すのだった。
その遠くには河野画伯が・・・
⑥「宵山万華鏡」
姉川の視点。
姉が妹とはぐれ、探している途中に宵山様の元へ案内される。
屋上から屋上に飛び交っていく。
そして自分が絡めとられそうになりながらそこから脱出。

以下ネタバレ

・「宵山迷宮」は同じ宵山の日々が永遠に繰り返される不思議な日々。
それがなぜ起こっているのか、そして乙川とはただの変人ではなかったのか。
こういうことに答えはないのだが(万華鏡のせい、というのはあるけれど、それだけ)それでも話を読んで行くうちにこの宵山にいつしか私も巻き込まれていったのであった。
同じ「宵山の日」を繰り返す。宵山の日に寝て起きても宵山の日。その繰り返しがお祭の日の前日が永遠に続いているようでまことに怖いのだ。
この話、四畳半~の話に通じるところが。
・②と③で皆がやっていることは
詭弁部とつうじるところが。
あの時、女子大生が背負っていた鯉はこの超金魚か。