1月の読書メーター
読んだ本の数:41冊
読んだページ数:11802ページ

五声のリチェルカーレ (創元推理文庫)五声のリチェルカーレ (創元推理文庫)
好きな作品です。この人初めて読みましたが別作品も読みたいと思いました。ちょっとわかりにくいのは、二つの要素「昆虫話(擬態)」と「タイトルにもなってる音楽話(バッハ)」があるからだと思いました、最初。けれども、再読してみるとそれがまた味になっているのです。最終がこうなるだろうというのは予測できるものの、どこでこの最終場面に繋がっていくかというのをもう一度読み返してみて納得。ミスディレクションを楽しみました。短編は長編と同テーマでこういう試みもまた面白いと思います。こういう作品って好き嫌い分かれるんだろうな。
読了日:01月31日 著者:深水 黎一郎
カッコウの卵は誰のものカッコウの卵は誰のもの
相変わらずの圧倒的な読みやすさはあるものの・・・・・・読み終わった時に私は腑に落ちないところが多々ありました。カッコウの卵は、托卵をまず思い「自分の子供ではない子供を育てる」ということかと思っていたら、途中で(ああ・・こうだったんだ・・)という見るべき点もあったのですが。過去を探っていく場面で奥さんの内面がもっともっと出たらいいのにと強く思いました。風美についても同様。更に、真犯人の動機が私には何とも解せませんでした、こういうことで・・・
読了日:01月31日 著者:東野 圭吾
ブラッド・メリディアンブラッド・メリディアン
殺戮、虐殺、頭皮狩り。現代の神話だと思いました。一切の虚飾が削ぎ落とされた文章が連なっていきます。とてつもない長い一文があり、かぎかっこのない会話があり、淡々と一つの物語が圧倒的な山脈を成しているのです。悪の権化のような判事が最終で神に見えてくるという圧倒される物語。コンラッドの「闇の奥」のクルツ大佐との関係性を後書きに書かれているので、是非「闇の奥」を再読したいものです。
読了日:01月31日 著者:コーマック・マッカーシー
マドゥモァゼル・ルウルウマドゥモァゼル・ルウルウ
おきゃん。はねっかえり。お嬢。こましゃくれ(いい意味での)。なんだかこういう昔の言葉を並べたくなるような娘のルウルウがそれはそれは魅力的なのです。謹厳実直そうなお父さんが困ってる様子も楽しいし、平凡な女性らしいお母さんがどぎまぎしてるのも読ませるし。これはまさしく森茉莉の、ルウルウなのです。茉莉さんご自身もルウルウだったのだろうなあ。宇野さんの装丁も美しく、ピンクに彩られ、序文が与謝野晶子で解説が中野翠という豪華さもまた心惹かれました。
読了日:01月31日 著者:ジィップ
白い城白い城
限りなく好きなタイプの小説でした。東西の融合という一見硬質なテーマもあるのですが、それよりも幻想性の高い物語の味に酔いしれました。最初イスタンブールにヴェネツィアからつれてこられた男が、そこに自分と瓜二つの男を見出し、成り行きからその男の奴隷となる・・・双子のような、でも元は東西に分かれた不思議な関係の人間同士が、知識をわけあい戦争兵器を作ろうとし、そして怒涛のラストが!相手の人生と自分の人生の重なり合い、自分が自分であると言うことの意味。最後の最後まで気の抜けない興奮の一冊でした。
読了日:01月31日 著者:オルハン・パムク,宮下 遼,宮下 志朗
烏有此譚烏有此譚
相変わらずわけわからないのですが、面白く読みました。きちんと読めているかどうか不安なのですが。100人いれば100通りのツボポイントがあるような気がします。一から始まらず二から始まり次の章が曰、下に膨大な注(註ではない理由は注に書いてある・・)がある・・・というのが作りの妙。後半の灰と穴の不条理な話の流れに身を任せていました。ポンペイの遺跡への言及とかそこらあたりも私にはかなりのツボ。あと、穴の説明が図入りで下に出ていてここも上の文章と合わせながら楽しんだり(そうだ、広瀬虫の話も、うけました、個人的に)
読了日:01月31日 著者:円城 塔
『秘密の花園』ノート (岩波ブックレット)『秘密の花園』ノート (岩波ブックレット)
薄いブックレットながら、なんて上質な言葉で秘密の花園を紐解いてくれているのでしょう。ここには梨木さんの見た「秘密の花園」があり、彼女のこの本に対する熱い想いが溢れているのです。両親を亡くした少女の屈折した心、母のいない少年の幼い不安感、その二人が結び合っていく様、そして植物の持つ力の尊さ。気づかされることも多く、知ったつもりになっていた秘密の花園の完全版を是非是非読んでみたいと思いました。
読了日:01月31日 著者:梨木 香歩
悪霊の島 下悪霊の島 下
つまらなくはないんだけど。恐怖を共有する人(ワイアマン)がいるとやや恐怖が半減するということと(恐怖って誰もわかってくれずに一人だと怖さが増す)、あとラストの方で対決と言うことになった場合、その前に起こったことで打ちのめされてるので闘っても空しさが残るような気もしたり。だからこれって、恐怖小説として私は読むより、家族の物語(過去も現在も含め、色々な人の家族も含めて)、友情物語として読めたかなあ・・最後の方は。読み終わった後、表紙をつくづく眺めました(赤いバスケットが!!!緑のテニスボールが!!)
読了日:01月28日 著者:スティーヴン・キング
悪霊の島 上悪霊の島 上
これだけの厚さですが、読ませる力というのは相変わらず健在だと思いました、キング。片腕を事故で失った男が、ある島に来ることによって異常な絵描きの力を持つ・・・取りつかれたように描く様がドラマHEROESの絵描きさんを思い出したかなあ。島で知り合いになったアルツハイマーを患う老女と何かを喪失したらしい介護人とのつながりはいかに!足元をはいあがってくるようなイヤさがありました、全てが謎めいているってやっぱり魅力的で、あと過去の事件と現在の絡み合いがどうつながるかも注目。下巻に続く・・・(まだあまり怖くないかな)
読了日:01月28日 著者:スティーヴン・キング
イメージの魔術師 エロール・ル・カインイメージの魔術師 エロール・ル・カイン
大好きな画家なのでうきうきしながら見ました。知っている話知らないまだ見ていない話、と興味は尽きませんでした。西洋と東洋の混在のような絵のタッチが素晴らしく、細かな花の絵とかにまで見入りました。冒頭にさくらももこの文章が引用されていて(そうだ!最初にエロール・ル・カインの文字を見たのはさくらももこだった!)と、はっと思い出したのでした・・・
読了日:01月26日 著者:エロール・ル・カイン
小林かいちの世界 [改訂版]小林かいちの世界 [改訂版]
改訂版が出たので読んでみました、というより見てみました。美しいこと・・うっとり。これって綿密にデザインされた今の物となんら遜色がない美しさだと強く思いました。背景にクロスワードとかトランプを入れた斬新さも光ります。どれもいいけれど、シルエットが際立つ作品「乙女の世界」が私は好きかも。あと物語性がある聖書の世界もまた魅力的。
読了日:01月26日 著者:山田 俊幸・永山 多貴子
バーン=ジョーンズ 眠り姫 (イメージの森のなかへ)バーン=ジョーンズ 眠り姫 (イメージの森のなかへ)
ああ・・なんて美しいのでしょう、バーン=ジョーンズの絵。それで、この解説で知ったのですが、ウィリアム・モリスと仲良しだったと言う事実に驚きました。夢と幻想と神話とファンタジーの世界を私達の前に突きつけてくれるバーン=ジョーンズの世界。特にこの中で連作「いばら姫」の中の中庭、が白眉。眠りについている女性達の妖しくも美しいことと言ったら!「呪われた頭部」の不気味なメデューサの頭も欺かれたマーリンの邪悪な魔法使いの顔も、どれも食い入るように見入りました。
読了日:01月25日 著者:バーン=ジョーンズ,利倉 隆
エクスタシーの湖エクスタシーの湖
非常に面白く読みました、これを読むために「真夜中に海がやってきた」を読んだ甲斐があるというもの!エリクソンの見る幻視というのをまざまざと文章の力で感じ取りました。作りも実験的で一行がばんばん後半入っていく、文字列がずれている、下の方だけにたゆたうように文字が広がっている、と、視覚面でも想像力を喚起します。物語は混沌としながらも、ロスの巨大湖出現という話から、過去に未来へ、人称転換、同一人物の名前変更、と変幻自在の語りぶりで、いかようにも読ませてくれます。ある意味現代の予言書かも。
読了日:01月25日 著者:スティーヴ・エリクソン
リヴァトン館リヴァトン館
現在は老女である元メイドのグレイスの語りが、現在と過去を行ったりきたりしている物語の作りがまず良かったと思いました。身分の差がはっきりしている時代の物語で、絢爛豪華な貴族社会とその下にいる働く人々の姿が鮮やかに活写されていました。色々な秘密が隠されていて(出生の秘密・恋のすれ違い)、中でも最大の秘密は「ある死の真相」なのです。なんてほろ苦い真相なのでしょう。信頼ということを深く考えさせられました。長い物語ですが一気に読ませられました。(実物クリスティーも出てきて楽しい!)
読了日:01月25日 著者:ケイト モートン
自分だけの一冊―北村薫のアンソロジー教室 (新潮新書)自分だけの一冊―北村薫のアンソロジー教室 (新潮新書)
ずうっとずうっと読んでいたかった一冊。北村薫のアンソロジー話は面白くためになり、読んでない本を一気に読みたくなりました。単純に多くの本を読んでいればアンソロジーが出来るものではないというのがよくわかった一冊でもありました。あるテーマが与えられてそこから広がっていく読書の世界。これから付箋を貼った作品を読んでいきたいと決意した一冊でした。北村薫さんありがとう。
読了日:01月22日 著者:北村 薫
ねじの回転 (新潮文庫)ねじの回転 (新潮文庫)
これをベースにした小説「抱擁」(辻原登)を読んだので再読してみましたが、違いがわかって面白かったです。こちらはもう「幽霊そのもの」を語り手が見ている、というのが一番の違いでした。二人の兄妹が幽霊に取り付かれている、それを何とかしたいと思っている主人公の「わたし」。じわじわと恐怖があおられた挙句の突き放されたようなラスト。心理描写が細かく描かれているところはやはり楽しめました。
読了日:01月22日 著者:ヘンリー・ジェイムズ
抱擁抱擁
「なにがどうした」とくっきりした終わり方と答えを求めている人には不可の作品。私は大変高評価です。一種の幽霊譚ですが、不穏な空気に満ちた心理小説であり、細かい人々の心理がうねるようにしてこちらに謎と共に迫ってくるのです。そこがたまりませんでした。「最後の一言」を含めて幾通りにも読めそうな小説。クライマックスシーンの盛り上げ方が尋常ではありませんでした。妄想なのか現実なのかその一線を目を見開いて読み込みました。ベースに「ねじの回転」(H.ジェームズ)があるので同時に読むと一興かも。
読了日:01月22日 著者:辻原 登
タイムアウト (河出文庫)タイムアウト (河出文庫)
とても面白く読みました。ただミステリの気配よりも奇妙な味の小説、といった気配を多く感じましたが。一番面白かったのが表題作の中篇タイムアウト。崩壊したロンドンでの驚天動地の計画が実に面白く、老教授の溜息が聞こえてきそうでした。ヨットクラブはラストがありそうでなさそうで怖かったです。
読了日:01月19日 著者:デイヴィッド・イーリイ
ペドロ・パラモ (岩波文庫)ペドロ・パラモ (岩波文庫)
とても面白かったです。最初、「死んだ母の言葉によりある村に父を探しに行く物語」と思っていたら、そこは死者の国で次々に死者がささめいていて・・という話に変容し、じゃあ(死者の国に生者が行った幻想物語か)と読者が思うと、またそこで覆されるのです。話している人が混沌とし、現在と過去が入り乱れ、断片が行き交う。拾うようにして読むと非常に全てがくっきりと見えてきました。そしてラストのまた驚きが。傑作の一言。
読了日:01月19日 著者:フアン ルルフォ
ローマで語るローマで語る
ま。
読了日:01月19日 著者:塩野 七生,アントニオ シモーネ
おみごと手帖おみごと手帖
年末にこれを読むというのが恒例なのですが、今回諸事情で遅くなりました・・・。数ヶ月前に起こったことなのに、もう忘れている時事が多いことよ!今回映画の話が割合中野翠さんと一致したので(いつも合わない)映画部分も頷きながら読んでいました。町の消失の話が胸を打ちました(ラストの歌舞伎座立替えにもやや通じるのですが)
読了日:01月19日 著者:中野 翠
ギンイロノウタギンイロノウタ
少女の負のエネルギーが圧倒的なのです。二つの作品どちらもそこが読ませます。丁寧に描かれれば描かれるほど彼女達の自意識が光り暗い精神の淀みに足を突っ込みます。特に表題作は自分の生理と性へのめざめと殺人への衝動がくねくねと絡み合い、それが奇妙にこちらに伝わってきました。ただ、好きか嫌いかでいえば間違いないく好きではない寄りの作品なのですが。
読了日:01月19日 著者:村田 沙耶香
ミスター・ピップ (EXLIBRIS)ミスター・ピップ (EXLIBRIS)
とても良かったです。ディケンズの「大いなる遺産」を語る白人の先生とそれをむさぼるように聞くパプアニューギニアのとある島の黒人の子供達。しかし、この島は絶えず革命軍と政府軍との争いで戦争状態という場所なのです。悲惨な場面も多いのに救われるのは、語ることの面白さをワッツ先生が教えてくれた事。そして本がなくなっても再構築しようとする子供たちがいとおしかったです。残酷な運命に弄ばれたマティルダの心にディケンズがきらりと光っているのを読んで、文学の力を感じました。
読了日:01月15日 著者:ロイド・ジョーンズ
新潮クレストブックス初夜 (新潮クレスト・ブックス)新潮クレストブックス初夜 (新潮クレスト・ブックス)
初夜という事柄だけに目を向けると、忍び笑いも出る場面も数々ある作品なのですが、実は階級の話でもあり(夫婦の属するクラスが違う)時代の話でもあり(ネットのない1962年)そしてそこまで生きてきた二人の生き方の違いというような奥深いものも併せ持つ作品。でも一点はこの初夜、ここが人生の分岐点。幸福と不幸、愛と憎悪、相反する感情を巧みにマキューアンは掬い上げていました。ラストがベテランの技であり、人間の生の営みというものを改めて考えさせられました、海の匂いを感じながら。
読了日:01月15日 著者:イアン・マキューアン
吉祥寺の朝日奈くん吉祥寺の朝日奈くん
読みやすいかなあ。至高の恋愛小説というより、さらっとした日常的な恋愛小説といった趣だけれど。最後の方であっと言わせてくれたのが表題作ですが、やや長さが長い気がしました。逆に三角形~はこれは長編にしたらいい作品になるだろうなあと思った作品でした。ラクガキ~の話が、小さな叙述にあとでこれが伏線だったんだ!というのがわかるところがあって案外好き。
読了日:01月15日 著者:中田永一
オイディプス王 (岩波文庫)オイディプス王 (岩波文庫)
あまりにも有名な話ですが、萩尾望都の新作漫画を読んだので再読してみました。人間の罪の原点が描かれていて非常に面白かったです。劇としてみても、最初の謎(誰がこの国を疲弊させているか)に始まり、謎が開かれていくにつれて、気高く雄雄しいオイディプス王が崩れ落ちるまでを実に小刻みに描ききっていました。以前読んだ時にこれは・・と思った歌も今回改めて読むと格調高く、傑作の傑作たる所以があらゆるところに見え隠れしていました。
読了日:01月15日 著者:ソポクレス
文豪さんへ。近代文学トリビュートアンソロジー (MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)文豪さんへ。近代文学トリビュートアンソロジー (MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)
トリビュート作品+インタビュー+本作品、とあってなかなかに読ませたのは、それぞれの人が選ぶ作品が(ああ・・この人がこれを!)と至極納得できる作品だったからでした。特に良かったトリビュートは夢枕獏の陰陽師の桜の木の下で、と、宮部みゆきの童話風お話かなあ。ところで、本編では中島敦はやっぱり天才だと思ったし、また漱石の門は一部抜粋でしたが、前に読んだ時と全く味わいが違ったので是非また読んでみたいと思いました。これが何かの出発点になる、そういうアンソロジーになるといいなあ。
読了日:01月15日 著者:北村 薫,田口 ランディ,貫井 徳郎,夢枕 獏,宮部 みゆき,吉田 修一,夏目 漱石,中島 敦,葉山 嘉樹,坂口 安吾,新美 南吉,芥川 龍之介
お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)
相変わらず読んで楽しい本のお話が満載!外国文学を語ってくれる場所が少ないので嬉しい限りです。羨ましいのは、打てば響く編集者さんたちに恵まれていること。これだったらあれも、と本を差し出してくれるその手に羨望の眼差しが。あとこのシリーズ、相変わらず本文もですが註がすぐれているのです。ウェブで読んでいましたが改めてこうして読むと教えてもらった本数限りないことを再発見。本当にありがとう。(索引は確かに欲しい!)
読了日:01月15日 著者:桜庭 一樹
この世の王国 (叢書 アンデスの風)この世の王国 (叢書 アンデスの風)
読む前は(ハイチの歴史かあ・・興味のあるようなないような・・)と思っていたのですが、どうしてどうして。読んでみると非常に面白く、そして史実も勿論組み込まれていますが、壮大な「物語」であり「神話」の世界でした。人は鳥に変化し動物に変化し、そしてヴードォー教がはびこり、異様な熱気に包まれた国の興亡がそれはそれは面白く描かれています。一種神話の世界に投げ込まれたようでした。ナポレオン奥様のエピソードも面白かったし。
読了日:01月10日 著者:アレホ カルペンティエル
文学の門文学の門
荒川洋治の文学全般に対する熱い想いのようなものが伝わってきた一冊でした。現在の文学の状態に対して警鐘を鳴らしてくれています。特に面白かったのが、詩のところと、チェーホフの話。ただ、散文集とはいえ、ばらっとしているのが印象的で、個人的には過去の「夜のある町で」とかの方が好きかなあ・・(荒川さんがアメトークを見ているという驚きがそういえばあったんだっけ!)
読了日:01月10日 著者:荒川 洋治
かいじゅうたちのいるところかいじゅうたちのいるところ
映画化記念で再読。面白いのは、怪獣そのものに子供がなっちゃうんじゃなくて、あくまで着ぐるみなんだよね、彼は。半分戻れると言う安心感をしっかりと持って怪獣たちと楽しい交流をして。あと寝室がぞろっと森になるところも楽しいし。ダンスシーンが好きよ。そして最後やっぱり子供で、お母さんの下に飛び込んでいくというのが可愛らしいなあ。
読了日:01月10日 著者:モーリス・センダック
私の家では何も起こらない (幽BOOKS)私の家では何も起こらない (幽BOOKS)
このところ別作家恐怖小説のおぞましさに鍛えられたせいか、怖くはありませんでした。どちらかと言うと、優雅な端正なゴーストストーリーといったところです。丘の上の幽霊屋敷にまつわる色々なお話。人々が集まり散会しそれが一つの物語に段々出来上がってくるところが素敵でした。幽霊そのものより人間の記憶が重ねあわされ一つのより糸になっているんだなあと。「奴らは夜這ってくる」はギルマンの「黄色い壁紙」リスペクトなんだろうなあ・・・
読了日:01月08日 著者:恩田 陸
リテイク・シックスティーンリテイク・シックスティーン
面白い!高校一年生の男女4人を主体とする学園生活、も楽しいのですが、それ以上に面白いのは「私はタイムスリップしてきた、自分の満たされない27歳から」とこっそり言う孝子という高校生の言葉なのです。半信半疑の沙織という親友がいてこの子が自分がタイムスリップしたらという目で現在を見るところが秀逸。それで更に一番重要なのは、タイムスリップが本当かどうかというのは、「読者しかわかりえないこと」なのです。さて、これは妄想なのでしょうか、本当なのでしょうか(というのがわかる仕掛けになってる)
読了日:01月08日 著者:豊島 ミホ
未踏の時代 (日本SFを築いた男の回想録)未踏の時代 (日本SFを築いた男の回想録)
日本のSF史を俯瞰するのに、一個人の回想録とはいえ大変貴重な作品だと思いました。ただ、正直に言えば、、熱いSFへの想いが過ぎるあまりにこうなったんだろうなあ・・とは思うものの、読んでいて(どう読んでも相手の方が間違っていないんじゃないか)と思うこともしばしばでした。本当に黎明期の日本SF時期なので仕方なかったのかもしれないけれど。今現在活躍している御大のデビュー時エピソードとかも楽しめました。
読了日:01月08日 著者:福島 正実
体験のあと体験のあと
ソーラ・バーチ主演の「穴」を見てしまっているので、最後わかってしまっていたのがつくづく惜しいと自分で思いました。けれどそれでも楽しめたのは、語りの面白さでした。優等生と見られている実は悪魔的少年がいてその少年にそそのかされて、数人の男女が地下室に閉じ込められるという体験をすることになるのです。そして悪魔的少年は救いに来てくれない・・極限の中で誰がリーダーシップを取るか、知恵を持つのは誰か、どのように助けを呼ぶか。そして結末は?語りの面白さが光り、ラストぎゃっ!とのけぞりました(わかっていてもね)
読了日:01月08日 著者:ガイ バート
クラッシュ (創元SF文庫)クラッシュ (創元SF文庫)
作者自身も言っているように、ポルノグラフィーの側面がとても強いです。壮絶な交通事故を起こしたバラードという男の周辺に奇怪な男ヴォーンが現れるのです。夢はE・テイラーとエクスタシーの中で衝突すること。まさにこの部分が悪夢であり現実で疑似体験をして悪夢を完遂させようとしているのです。車、という物体と、人間、という生身のものが合体して見る一つのくっきりとしたナイトメアー。車のスピードとエクスタシーって共通項がそういえばあるのかも。事故の際車に閉じ込められた人間の絶望的な目が忘れられません。予言書ともなった一冊。
読了日:01月08日 著者:J.G. バラード
フリッカー、あるいは映画の魔〈下〉 (文春文庫)フリッカー、あるいは映画の魔〈下〉 (文春文庫)
ラストが私の全く思ってもよらなかったラストでそこで昏倒しそうになりました。まさかこのようなラストとは!カタリ派、テンプル騎士団と宗教関係の話も出てくるし、全てが虚と実の非常に薄い皮で繋がっているのです。映画の知識、中世宗教知識諸々があればあるほど楽しめると思います(特に天井桟敷の人々、サイコ、市民ケーンは見ておいたほうがより楽しめるかも。あとアステア映画とかも。また本ではコンラッド「闇の奥」も読んだ方が楽しめるかも)万人に受け入れられないだろうし読む人を選ぶ小説だとは思いますが・・・
読了日:01月08日 著者:セオドア ローザック
フリッカー、あるいは映画の魔〈上〉 (文春文庫)フリッカー、あるいは映画の魔〈上〉 (文春文庫)
読み終えてただただ茫然としました。私の今年のベスト本に必ず入る本です。ただ文字数はびっちりで読むのに根性はいるけれど。映画好きには勿論ですが、推理好きにもたまらないし、最初の部分の「年上理知的女性が年下男性を映画で育てる」というところも誠に好みでありました。なぜ、マックス・キャッスルという特殊な映画監督の映画は人々を不安にさせその他の行動を起こさせていくのか。残された貴重なフィルムに隠された謎とは何か。嵐の孤児集団とは何か。その謎が一人の人間の一生を左右していくところがまさに映画の魔。
読了日:01月08日 著者:セオドア ローザック
めくらやなぎと眠る女めくらやなぎと眠る女
久々に(蟹のように再構成されたのも含めて)読み返してみた短篇。非常に懐かしかったです。初期の頃の「カンガルー日和」を読んだ時の驚きとか、後のノルウェイの森に組み込まれる「蛍」の印象的な寮の話とか、「七番目の男」の波の中の一瞬の表情とか、「トニー滝谷」の同一サイズの洋服が残る壮絶な場面とか。全てが自分の体の内部に畳み込まれている事を思い知りました。それだけ影響力があったかな。村上春樹長編は勿論好きですが、特に初期短篇が好きなのでこの機会に読み返せて嬉しかったなあ。
読了日:01月08日 著者:村上春樹
月桃夜月桃夜
現代の海で漂流している少女と鷲の話と、昔奄美で過酷な労働をさせられた兄妹の話が交互に語られ、そして二つが緩やかに繋がっていくという話の作り方が見るべきところがあると思いました。サネンの花の匂いたつような物語で、兄が妹をけなげに庇う場面とか、二人が思いやっているあまりすれ違っているもどかしい場面とか、碁に生きることの意味を見出す場面とか、印象深い場面は多々ありました。
読了日:01月07日 著者:遠田 潤子
ソウル・コレクターソウル・コレクター
大変面白かったです。今回は情報を握ってしまうことによって人を破滅に追いやるという、たちの悪い犯人。そして殺人犯に仕立て上げられるのが、かつてライムの盟友であり兄弟ぐらいの仲であったいとこ。ライムの過去が続々と出てくるのも読ませたし、犯人のどうにかして先回りをしようとする頭脳合戦が見逃せません。また犯人の過去も興味深かったです。ただ、小さなどんでんはやや精彩を欠いたかな(こちらが慣れたのねきっと)と言うのと、この種の事件解決がライム捜査とちぐはぐな気も多少したかなあ。伊坂作品「モダンタイムス」も思いました。
読了日:01月07日 著者:ジェフリー・ディーヴァー

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