3月の読書メーター
読んだ本の数:40冊
読んだページ数:11961ページ

メグルメグル
ホラーとミステリと不思議話との混合体のような小説。大学でバイト斡旋してくれる無愛想な女性が、次々にこれはあなたへ、と紹介をしてくれるバイト先に待っていたものは・・・・。それぞれの話の心理描写が優れており、超常現象すら何だか納得させられるのです。ヒカレルが一番怖かった、私には。モドルは夫婦の情愛が厳しくそしていとおしく、アタエルは実は仕掛けはわかったのだけれどそれでも限りなくおぞましい。タベルは食べる行為から生きる意味を考える愁いを帯びた秀作。メグルはただただ切なく。意外性もあり変化に富んだ一冊でした。
読了日:03月30日 著者:乾 ルカ
ボート (新潮クレスト・ブックス)ボート (新潮クレスト・ブックス)
作家本人が両親とボートピープルでオーストラリアに来た、この事実を踏まえ最初の作品を読むと、それはそれは考えさせられます、題材の選び方や作家としての立ち位置も含めて。難民であるのを前面に押し出していない作品が真ん中に凝縮。テヘランの友人の元を実に個人的悩みで訪れる話が政情不安と自分の不安がないまぜになって良かったなあ。あと数年ぶりに会う天才ヴァイオリニストの娘と父の相克の話も父のあり方を考えさせられました。表題作のラストは脱出ボート上での息をもつかせぬ展開と一筋の光と絶望が織り交ぜられていた作品でした。
読了日:03月30日 著者:ナム リー
パリから来た紳士 (創元推理文庫―カー短編全集)パリから来た紳士 (創元推理文庫―カー短編全集)
色々な味がある短編集だけれど、ダントツはやはり表題作の「パリから来た紳士」。遺産の遺言状をどこかに婆様が隠したのを暴く話、と思いきや(これも面白いけれども)最後でうっちゃりの仰天でした。文学好きならたまらないと思いました。伏線があらゆるところにあるのに気づいて、ああ・・と切歯扼腕しました。傑作(同じタイプが黒いキャビネットだけどピンと来ないこちらは)。あと好きなのは推理小説としては、(どうやって男が出たか)というのが書かれてないにも関わらず(だから重要なところがない)読ませる「ウィリアムウィルスンの問題」
読了日:03月29日 著者:ディクスン・カー
澁澤龍彦ドラコニア・ワールド (集英社新書ヴィジュアル版)澁澤龍彦ドラコニア・ワールド (集英社新書ヴィジュアル版)
独特の世界観を持つ澁澤ワールドが広がっています。、様々なオブジェ(頭蓋骨・貝殻・ガラス玉)の写真とともに、各単行本から抜粋した澁澤龍彦文章(エッセイと小説と両方あり)を読むと、いかに自分が澁澤世界に没頭し愛していたかというのを再認識しました。単行本の時文章だけで想像していた物がこうして写真になるとよりくっきりして見えるという利点があります。冒頭の澁澤龍子の妻ならではの視点の文章、単行本未収録の文章2編と、読みどころは多かったように思いました。澁澤龍彦って不世出の人なんだなあ・・・澁澤入門にも最適かも。
読了日:03月29日 著者:澁澤 龍彦,沢渡 朔
南の子供が夜いくところ南の子供が夜いくところ
ま。ファンタジーが元々得意じゃない私にはとても微妙。作品ごとにリンクはあり、南の島の舞台のファンタジーワールドでした。そこにホラーテイストがちょちょっと。なんだろう、この乗り切れなかった感じは、取り残された感じは。他人の「面白いよ!!」と言われた夢の話を茫然と聞かされた戸惑いに似てるかなあ・・・・。私が求めている恒川ワールドって違うかも。
読了日:03月29日 著者:恒川 光太郎
蝦蟇倉市事件2 (ミステリ・フロンティア)蝦蟇倉市事件2 (ミステリ・フロンティア)
1の方がきちんとした解決がある推理小説として、いい作品が多いように思いました。2の中で米澤さんは私の好きなあの作品の後日談なのでファンなら必読かなあ。北山作品とても好きだけどあと一歩!(動機が素晴らしいのに方法にやや疑問が・・)。桜坂作品は某有名推理小説をもじってるのはタイトルからわかるけどあと一歩。案外好感度高いのは村崎友作品でした、謎解きより雰囲気が素晴らしかったです。ただ、一作品許せない作品がありました、気分悪い・・・・
読了日:03月28日 著者:秋月 涼介,北山 猛邦,米澤 穂信,村崎 友,越谷 オサム,桜坂 洋
おやすみ、ロビン (角川ホラー文庫)おやすみ、ロビン (角川ホラー文庫)
面白いっ。最初は小学生最後の夏休みで少年物語として始まり(あ、重要なプロローグはあるものの)一見二人の少年の冒険譚に見せかけて。赤ちゃんですらほのぼのムード。そこから一転今度はボーイミーツガールでまたまた心象が明るくなり。それでこの話の面白いのはそこから。理不尽な追っ手が現れてきて文字通り血で血を洗う赤ちゃん争奪戦に。そして更に追い討ちをかける「その後」。そして驚愕のエピローグへなだれこむ。ホラー文庫なので覚悟は必要ですが、強烈なノワールでもありました。途中で切なさにうっ。凄惨な血みどろにもうっ。
読了日:03月27日 著者:大山 尚利
オー!ファーザーオー!ファーザー
読んでいる間ページをめくる手がもどかしく、心浮き立つ浮遊感が出るくらいに楽しくてたまらなかった本。4人のお父さんに育てられたちょっとひねこびた高校生の表情が活写されているし、何より、伊坂文学真骨頂の『会話の妙』があるのです。ピンポンの玉のようにやり取りされる洒脱で諧謔に満ちた会話。これを読むだけでも価値がありました。また、物語的にも全てが伏線になっていて(手旗信号って!登校拒否って!選挙って!)思わぬ方向に転がっていく予測不能の面白さに溢れていました。エンタメの面白さをぎゅっと濃縮した物語。
読了日:03月27日 著者:伊坂 幸太郎
光媒の花光媒の花
高評価。読後感は決して明るくないのに滲んだ希望の光がほの暗さの中に見えてきました。回り灯籠の様な群像劇の形式を取っていて、前半と後半の色合いが違っているところも読ませました。登場人物は様々ですが、それぞれの人が生きる証を求めあがいていくその姿が心に刺さりました。ミステリ要素もあり蝶の使い方も秀逸で、虚実入り混じった世界を彷徨する読者になれました。唇に指をあて、しーーっと言うような余韻の残る小説。
読了日:03月26日 著者:道尾 秀介
キケンキケン
キケンこと機研の理系男子達のはじけっぷりと言ったら!女性に対するもたもた感にくすっとしつつ、これって男同士の友情物語なんだなあと強く思いました。出会いから文化祭のラーメン作りが印象的。それぞれの章の最後のところで「奥さんに語る」というところから、これが過去の物語というのは想像できるのですが、その意味がわかったラストでもう!思いもかけずにやられた!反則技にじわっと涙が!(あまり深く考えずに楽しむのが吉)
読了日:03月26日 著者:有川 浩
螺旋螺旋
多幸感溢れる話でした。世界的ベストセラーSFの「螺旋」と言う本を書いた覆面作家は誰か、とある村を訪ねる編集者の話があって、副次的に別の麻薬ジャンキーの話、出版社で勤める女の姪の話、ジャンキーの友人の話などが並列で語られていくのです。でもメインは村の編集者。わずかな手がかりを元に作者を探していこうとする姿がほろ苦く笑え、探す編集者と読者が一体になり探し回る体験をしているようでした。でも何と言ってもラストが素敵。螺旋というタイトルが光るし、物語って本来はこうやって生まれてくるんだなあと改めて実感しました。
読了日:03月24日 著者:サンティアーゴ パハーレス
黄金の灰 (創元推理文庫)黄金の灰 (創元推理文庫)
わかりやすさということでは圧倒的にジョーカーゲームとかなんだけど、私はこの作品も大好きです。シュリーマンと夫人が財宝を見つけその財宝をめぐって殺人事件が、と言うミステリ。途中でイリアスを絡めつつ西欧文明とイスラム文化の対比を浮き彫りにさせる手腕も面白いし、更にどんでん返しと思える過去の物語も面白いし、集結する人々の過去暴きも驚愕するし。過去ミステリ作品を縦横無尽に使ったトリックもややネタバレとはいえ、ミステリ好きだったら、お!と思う部分があったり。ミステリとしてというより幻想部分虚構部分を楽しむ異色作。
読了日:03月24日 著者:柳 広司
岸辺の旅岸辺の旅
死が決して穢れではなく、この生のちょっと向こう側にあるもの。そういうことを感じさせてくれる馥郁たる一冊でした。死んだはずの夫が何事もなかったように戻ってくる冒頭から引き込まれます。電球がぱちぱちする中で妙にリアルな白玉団子をふうふう食べる二人・・二人の旅が始まりそれはエリートだった夫の知らない面を探る旅でもあり、人々との奇妙な触れ合いの旅でもありました。人に触れ合ってまた夫婦が一歩進んでいく・・・たゆたうようなせ世界観がとても好きでした。上質な大人のファンタジーだと思います。
読了日:03月22日 著者:湯本 香樹実
Fの悲劇Fの悲劇
ま。過去と現在を行き来しつつ過去の叔母の死亡事件を姪が追う、と言ったミステリ。現在と過去の行き来で読ませはするし途中で、え!と思う驚きも少しはあるのだけれど予想範囲内であり、何だか腑に落ちないことが多いのです、全体に。痣の話など特に腑に落ちなくて、これがあり、だったら、何でもありじゃないかと思ったり・・
読了日:03月22日 著者:岸田るり子
痙攣的 モンド氏の逆説 (光文社文庫)痙攣的 モンド氏の逆説 (光文社文庫)
好みがばくっと分かれるだろうと言う癖あり!の作品でした。ミステリとしてラストの驚き(も随所にあるんだけど)というより途中経過が私にはとても楽しめました。現代アートの薀蓄、暗号解読、現代舞踊、そしてラストはまさかのイカ(イカって!)。バカミスでもあるのですが、どこがどう実際の出来事なのか誰が本当に存在してるのかのゆらゆら感がたまりません。ここらあたり読み解くわくわく感がありました。表にしたいなあと思ったくらいに。ところでモンドとアイダアキラって一体・・(謎がまだ残ってる)
読了日:03月19日 著者:鳥飼 否宇
ポーに捧げる20の物語 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1831)ポーに捧げる20の物語 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1831)
大好き!こういう本!ポー作品への単純なオマージュ作品だけではなく、ポーが現代に甦ったら、とか、ポー作品の換骨奪胎とか、ポーにまつわる古書ミステリとか、それはそれは多彩なのです。そしてそのどれもが読ませるし唸らされる。この中で、仲違いした病床の父が最後に明かした秘密のクック作品、また作品そのものがポーを意識しているけれど恐怖感に満ち満ちているカミンスキー作品、ローザンのほのぼの古書話、ルバインの黒い笑いがある奈落の底、このあたりがとても好み。ポー作品を知っていれば深く味わえると思いますが。
読了日:03月19日 著者:ピーター・ラヴゼイ,トマス・H・クック,ドン・ウィンズロウ,他
ヒトラーの秘密図書館ヒトラーの秘密図書館
強烈な学歴コンプレックスを持っていたらしいヒトラーが、子供時代のネイティブアメリカンの話に心を躍らせる読書の地点から、ユダヤ人絶滅計画の発想の原点となるアメリカ優生学者の本に辿りつき更にオカルト本に走るまでが、彼の生涯の出来事と共に描かれていきます。膨大な読書でこういう思想が出来上がることの恐ろしさをまざまざと見せ付けられました。ただ、ちょっと読みにくい、と思います、「  」付きが多すぎて会話だか引用だかそのあたり読んでいて引っ掛かりまくるのです。写真とかも豊富だし、作者切り取りは面白いのになあ・・
読了日:03月19日 著者:ティモシー・ライバック
青い野を歩く (エクス・リブリス)青い野を歩く (エクス・リブリス)
人々の鬱屈した想いがアイルランドの風に乗ってこちらに伝わってくるような描き方の短編集でした。声高に何かを語っているわけではないけれど、静謐の中に人生の断片を拾い上げる、そんな物語り方が素敵でした。ただ、好みということで言えば私にはいいと思うものと普通のものとのムラがあったかも。特に良かったのが表題作(最後の数行が特に光る)、別れの贈り物(衝撃の後の苦い後味)、森番の娘(結婚生活の空しさ話から発展して犬の話への転換の面白さ)などでした。
読了日:03月16日 著者:クレア キーガン
メモリー・ラボへようこそメモリー・ラボへようこそ
いかにも梶尾真治らしいロマンティックSF小説。私は最初のメモリー・ラボへようこそ、の最後の部分のミステリ的展開(同時にSF的展開)に驚いたりしました。こうだったのか!という逆転発想がありました。記憶装置のメモリーラボ。この設定があともう少し詳しく細かく出ていればもっともっとのめり込めたのに。後半の一作(二作品は緩やかにリンクしている)は、人々の出会いがあまりに用意されすぎているといった感が。話として嫌いではないんですが。
読了日:03月16日 著者:梶尾 真治
ホンのお楽しみ (講談社文庫)ホンのお楽しみ (講談社文庫)
僭越ながら・・紹介されている本がほぼ既読なので、その面での驚きとかはなかったのですが。絵(漫画)が面白いのでそれをじいっと見たのと、藤田香織の生き方(体脂肪・だらしな生活)をある意味微笑を持って見たのと。ちょっとまとめるのが遅いと思うんだよね、2002年から2004年だから何しろ初出が。こういう書評はリアルタイムの面白さがあるので、そこが損なわれているかなあと思いました。だから逆に2009年の追記に見るべきところがあるって言うか。軽く読める一冊かなあ。
読了日:03月16日 著者:藤田 香織
ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))
最後の「闇に蠢くもの」なんかは完全SF方面であるのに(他の星から来たモノ・頭の中を見透かされる・重要なものの盗難)描き方がホラーそのものだというのが面白いなあと思いました、そこまでふわふわ読んでいたのにラストの数行が滅茶苦茶怖かったです、3つのものって・・絶句。トップの「インスマウスの影」もホラーの傑作だと思いました、わけわからないもの大勢に終われる恐怖って確かにあると思ったり。また「壁のなかの鼠」はポーの黒猫をくっきりとその中に感じました。語る内に増して行く不気味さの恐怖があるかな。
読了日:03月14日 著者:H・P・ラヴクラフト
叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)
素晴らしい読書体験でした。「砂漠を走る船の道」のみ既読でしたが(雑誌掲載時に読んで驚嘆した作品)再読しても動機から解明まで砂漠の世界を遺憾なく使った傑作だと思いました。斉木という世界を旅する男がスペイン・ロシア・アマゾンと各国で謎にぶつかり謎解きがあるのですが、ただの謎解きではなく「その場所での必然性がある動機」の妙があるのに感嘆しました。ミステリの側面のみではなく抒情性もあり文学的香気にも満ちていました。最後の作品が旅路の果ての締めとしてまた優れていたのが印象的でした。
読了日:03月14日 著者:梓崎 優
モノクロームの13手モノクロームの13手
何だかわからない状況の中、妙な場所に連れてこられた人達・・・SF的発想に溢れた出だしは面白さに満ちていたのですが、ここが何の状況かというのが出るまでがちょっと長いかなあと思いました。そしてわかってから、図はあるものの、いきなりfの8とか言われてもいちいち前のページの(または次のページの)図を参照にしたりそれはそれは忙しかったです。面白い気もするけれど、途中これだけ凝るのだったら設定そのものを磐石にしないと心底からは納得が出来ないかな・・・、とちょっと思いました。(それぞれの人の抱える状況の方が面白いかなあ
読了日:03月12日 著者:柄刀一
かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)
思ったよりずうっと楽しかったです!猫が喋る話、というのでテンション下がっていたのですが、その部分よりも私はかのこちゃんとすずちゃん(刎頚の友)の小学校一年生会話が可愛らしくてなりませんでした。知らない言葉をお父さんに聞くかのこちゃんがいじらしく、また鹿語がわかると言ったお父さんはあの人?とちょっと疑いの目も・・・。全篇ユーモアに溢れ(茶柱と鼻蝶々に大爆笑)、猫部分と犬部分がさしていらないかなぐらいに思うほど読ませました。かつての「ノンちゃん雲に乗る」などを思い出したりして。小学校2年生の続編が読みたいなあ
読了日:03月11日 著者:万城目 学
子供は悪いのが好き―スクリーンのなかの幼年時代子供は悪いのが好き―スクリーンのなかの幼年時代
子供と言う視点から映画を切り取っている映画評論集。全体に堅苦しくなく四方田さんの鋭い視点と文章が光る一冊でした。作者が「あまたある子供が登場するフィルムの中でイジワルそうなものを選ぶ」という視点が面白かったです。サウンドオブミュージックの見方、禁じられた遊びの十字架の意味、誰も知らないの子供達の行動への洞察。刺激に富み、読み物としても一級品でした(写真が多いのも嬉しいところ)
読了日:03月11日 著者:四方田 犬彦
しつこさの精神病理  江戸の仇をアラスカで討つ人 (角川oneテーマ21)しつこさの精神病理 江戸の仇をアラスカで討つ人 (角川oneテーマ21)
いつもどおり春日武彦が(ここにこういう作品を持ってくるのか!)という驚く本を持ってくるという見せ所がありました。「恩讐の彼方に(」菊池寛)「味の清六」(立松和平)「「探検隊帰る!」(ディック)など出している本もこれは!と思う本なのです。恨みということから、不条理ということまで話が広がっていき、そこから復讐、自損までまた戻ってくると言う話の展開が読ませました。
読了日:03月11日 著者:春日 武彦
世界はうつくしいと世界はうつくしいと
平易な言葉で、そして身の回りのことでつづられている詩集ですが、長田弘の詩はいつも心を打つのです。しん、とした気持ちになりながら、また窓を開ける、机を見る、外の風景をふっと見る。人生立ち止まることも必要であり、この世界がまだまだ美しいものに満ち溢れているんだという希望もまた持つことが出来ました。一言一言を舐めるようにして読むと確実に目の前のものが変容していきました。
読了日:03月11日 著者:長田 弘
不思議の国の悪意 (創元推理文庫)不思議の国の悪意 (創元推理文庫)
短編集で全体が悪意に満ちた作品でしめられていて、好みでした。一番好きだったのは、魔女を信じる少女時代の気持ちが、後半の遠い過去の殺人に結びつくという不思議な味わいの表題作でした。品が良い未亡人物語のラストで口あんぐりの「淵の死体」も絶品。中篇は正直普通だけど、ね。
読了日:03月11日 著者:ルーファス キング
落ちる (創元推理文庫)落ちる (創元推理文庫)
初めてこの作者読みましたが、とてもとても良かったのです。巧みな語り口のミステリであり、普通小説であり、何しろ心理描写が卓越していると思いました。特に優れていると思ったのが表題作の「落ちる」。神経症気味の夫が美人妻に思う様々なことからラストのある一点までが凝縮されていてそして驚きもまたあったのです。「笑う男」は叙述ミステリですが忘れられない笑いがありました。直木賞・乱歩賞両方取っていて乱歩からも認められているこの作者の作品、もうちょっと探ってみたいと思いました。
読了日:03月11日 著者:多岐川 恭
終着の浜辺 (創元SF文庫)終着の浜辺 (創元SF文庫)
バラード天才・・・と溜息吐息。短編集ですが、終末世界を静かなタッチでこれだけ美しく観念的に描けると言うのが素晴らしいと思いました。処刑の日を待ちつつ執行人と死刑囚がチェスを打つ姿のラストまでの道筋の文章に魅せられ、世界を手にしている男の話「ゴダー氏最後の世界」、深夜の海の音が忘れられない「甦る海」、そして退廃と美に満ちた表題作。そして砂漠の中から見つけたテープで人間の根源を見つめる「時間の墓標」。どれも逸品でした。
読了日:03月07日 著者:J・G バラード
セピア色の凄惨 (光文社文庫)セピア色の凄惨 (光文社文庫)
笑っちゃいけないのかもしれないけど、途中で何度かふっと忍び笑いがあったのは、私が真っ黒だからでしょうか・・ほぼ会話体で綴られていって、写真を元に探偵がある女性を探し出す命を受ける、という話。特に悲惨なのが育児放棄の「ものぐさ」鬼気迫っています。私の好みはどちらかと言うと最初の「待つ女」の湿ったどろどろさ、最後の英雄のすさまじい壊れ方など(だんじりを見るともうこれを思い出すかも・・)。ひどいひどすぎる・・だけど読んでいてこの歪み感異常感がたまらない気もまた。
読了日:03月07日 著者:小林 泰三
激走 福岡国際マラソン―42.195キロの謎 (小学館ミステリー21)激走 福岡国際マラソン―42.195キロの謎 (小学館ミステリー21)
タッタッタッタッ。タイトルどおりマラソンをめぐるミステリなのですが、走っている人たちの息遣いまで聞こえてくるような小説でした。それぞれの思いがありそれを乗せてただひたすら走っていくというマラソン。そしてラストは全く私はわかりませんでした、そして何だか自分まで走り終わったようなカタルシスがありました。マラソンのあれこれってよくわかっているようでわかっていなかったことにも気づいてこれから新たな目でマラソンを見てみたいとも思いました(ミステリなんですが!)(恩田陸の「夜のピクニック」をほんのり思い出したり)
読了日:03月07日 著者:鳥飼 否宇
つまみぐい文学食堂 (角川文庫)つまみぐい文学食堂 (角川文庫)
再読だけどきれいさっぱり忘れていたのでおおいに楽しめました。食べ物と言うことの視点から語られる文学エッセイで好著だと思いました。この本、困ったことに次々と読みたくなるんです、違う本が。もう一つのテーマに対して溢れるほど出てくる出てくる本の山が!!私が最大にこの中で読みたいと思ったのはカフカの断食芸人かな。もどかしいわね、読みたいと思う本がまだ訳されていなかったりすると・・・吉野朔実さんの絵もそれぞれの章で彩りを添えてくれ、ラストの対談も面白かったです。
読了日:03月07日 著者:柴田 元幸
桐島、部活やめるってよ桐島、部活やめるってよ
高校生達がそれぞれの部活に頑張りそれぞれの生活を過ごしそれぞれの位置にいる・・・・つまらなくはないんだけど、色が同じような気がしました、全員のキャラクター造型ということで。こんなに皆どこの位置にいるどのグループにいるということばかり考えているのでしょうか、いまどきの高校生って。わかるようなわからないような。私にとっては既に異世界っぽいのですよね。良かったのは、お母さんとの相克を抱えた女子の話と、映画部にちらっと羨望の眼差しを向ける話かなあ。
読了日:03月07日 著者:朝井 リョウ
ビッチマグネットビッチマグネット
奇妙なタイトルの意味が途中で分かって、わお!そういう意味だったのか、とちょっと笑いました。饒舌体の一人語りがずんずん進んでいって、姉と弟の家族物語であり青春物語でもありました。歪んだ家族物語なのに、なんだかこの疾走感に翻弄され、意味不明な思考展開に振り回され、最後まで引っ張られていったという小説でした。脱線とか逸脱とかそこが魅力の本なのね。ああ・・面白かった。
読了日:03月06日 著者:舞城王太郎
世界記憶コンクール (ミステリ・フロンティア)世界記憶コンクール (ミステリ・フロンティア)
とても面白かったです!明治の黎明期に生きる若者達が活写されていたし、風俗的にも氷が貴重とか上野美術学校の風景とか外国留学が夢とか、それはそれは読ませました。プラスミステリとしてきちんとした謎がありしかも謎解きも面白い。特に好きなのはラストの切ない生き人形の話。これは最後の数行が泣けるほど見事だなあ・・・。また黄金の日々もお気に入り。芸術を目指す若者達の姿にただただうっとりしていたら思いもかけない謎展開にびっくりしつつも大喜びしました。ただホームズ物のネタバレがあるのが気になったかな。
読了日:03月06日 著者:三木 笙子
リスの窒息リスの窒息
この作品、読者は見えているのです、誰がどういう意図で誘拐をしているかというのが。そして新聞社に誘拐のメールが届いて中の人達があたふたしているのも同時に読んでいるわけで。だから答えを知りつつ新聞社の人達の論理展開を高みの見物しているような状態でした。何だか私はあちこちに違和感を持ったけれど、特に違和感を持ったのは少女の後半の写真だなあ・・・異常な状態でもこれってさせるのかという疑問が頭に渦巻いていました。ラストも・・これって・・。タイトルは秀逸かも。
読了日:03月06日 著者:石持 浅海
不思議の扉  時をかける恋 (角川文庫)不思議の扉 時をかける恋 (角川文庫)
ほぼ既読でしたが、再読も含め読みました。さすがに梶尾作品は冒頭に来るだけあって何度読んでも胸がぎゅっと締め付けられます。読んでいなかった貴子さんの「眠り姫」は、ここにもあるように美亜~へのアンサーソングのような話でこれまたとても好みでした。やや初心者向けかもしれないなあとは思いましたがここからスタートするのもいいかも。解説に唸るほど大森さんがこの手の本タイトルを出してくれているのもまた嬉しいです(これも既読が多かったのですがね・・)
読了日:03月06日 著者:大森 望
古書の来歴古書の来歴
時代を越え場所を変えて広がっていく圧巻の物語に感動。現代の書物修復士ハンナが手にした貴重な書物ハガダーに挟まれている昆虫の羽、白い毛、ワインの染みなどの謎の「答え」が、次の章で紐解かれる作りをまず堪能。物語としても非常に面白く、過去から現代に渡る宗教対立の構図からユダヤ人迫害の歴史まで次々に掘り起こされる物語を、息をも尽かず読みました。ラスト3章の大団円の醍醐味にも圧倒させられました。(遠くで『驚異の発明家の形見函』をちらっと思ったり)
読了日:03月04日 著者:ジェラルディン ブルックス
リックの量子世界 (創元SF文庫)リックの量子世界 (創元SF文庫)
最初の方から途中の妻に独白あたりまでが抜群に面白かったです。ただその後「平行世界の自分」への移行の話と、中盤の脳内のあれこれ、というのが私の思っている展開とかなり違っていたので驚きました。(もしやこれは、SF平行世界の話じゃなくてミステリ心理小説とかなの?)と疑いを持つほどに。家族話は正直好みではない部分でしたが(どうでもいい、浮気は)、ところがまた最後の最後で盛り返し面白い!と満足して最後ページを閉じました。ただ・・ディックとは似て非なるものという感じがしたけれどね・・・
読了日:03月01日 著者:ディヴィッド・アンブローズ

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