5月の読書メーター
読んだ本の数:41冊
読んだページ数:13670ページ

ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
読み進めていく内に複数の家族の物語であり、更にそれらが子供を通じて緊密に結びついていることがわかってきました。家族物語であると同時に友情の物語でもあって、孤独な虐待されている少年ジョニーと、同じように家の中で居場所がないジャックの二人のタグが読ませるのです。プラス服役囚だったリーヴァイの特殊な造型も光ります。真相がわかっても尚陰鬱な物語であるのに、最後の一行に(人間って捨てたものじゃないな)という光が集約されているような気がしました。私は自分の感情を揺さぶられるようなこの小説が大好きです。
読了日:05月31日 著者:ジョン・ハート
ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
読んでいて歯を食いしばってる自分に気づきました。泣いちゃいけないと。安易に泣く話として望まれていないんだろうと。話は、双子の妹が誘拐され行方不明になり更に父に家出された母子の物語が中心です。必死に妹の犯人探しをするジョニー君の姿にぐっときました。彼の絶望と孤独と行き場のな怒りとある信仰をせざるを得ない彼の心持がぐっと伝わってきました。ミステリというよりジョン・ハートらしい家族小説のところが強いのです。下巻へ。
読了日:05月31日 著者:ジョン・ハート
絶叫委員会絶叫委員会
色々な場所で、色々な人が発する言葉の不思議さ。全体には面白かったんですが。自分の中で「穂村ブーム」というのがあったとすれば、なんだかそこを過ぎたという感じがとてもしました。あくまで私個人の中で、のことなのですが。笑える文章もあるのです、けれど形として悪い意味でまとまっちゃった感が強かったのです。だからもっとはじけて欲しい、穂村弘節で。だから面白くなくはないんですが!!
読了日:05月31日 著者:穂村 弘
少女外道少女外道
絶品でございます。短編集ですが心が虚空に吸い込まれるように読み尽くしました、そして茫然。表題作の「血」を見た時の心のざわめきという精神の歪みを内包した女性の長い人生の話、最後でがらっと反転した世界に投げ出される「巻鶴トサカの一週間」、ある標本箱に隠されていた一つの証「標本箱」、最初から一本の線でつながったラストが秀逸な「隠り沼の」、美しい手鞠と戦争の話「祝祭」・・・戦争があり血縁があり時間の流れがあり喪失があり人生の必然があり。更にこちらの世界に食い込んでいる異世界があり。皆川博子の名人技だと思いました。
読了日:05月27日 著者:皆川 博子
もいちどあなたにあいたいなもいちどあなたにあいたいな
語り口がこれなので駄目な人は駄目だろうけど、私は面白かったなあ。かなりオッケー。分類としてはSFなのです。子供が死んでしまった「やまとばちゃん」をめぐって様々な人がやまとばちゃんを語る・・それぞれの人の思いがそれぞれの語りに入っていてそれぞれの見方が出てくる。ここがまず面白いし(一人だけ正解に行き着くところなども読ませた)、最終的にある方向の展開になるのですが、そこの作りが実にきちんとしていました。この語りに隠れていて見えにくいけれど。フィニィの盗まれた街とか萩尾望都のある漫画の話とかミニ薀蓄も楽しめて。
読了日:05月27日 著者:新井 素子
ワイオミングの惨劇 (新潮文庫)ワイオミングの惨劇 (新潮文庫)
大好き評価であります。冒頭の刑務所にいる極悪非道な男と、さびれた鉱山の町にふらりと現れたショットガンを背負ったマシューと言う若者。どう重なり合っていくか、街の人たちとマシューの関わり方、「事件」が起こってからの街の人たちの行動(誰が勇気があるかなど非常に読ませた)、マシューの心の闇など、細部まで面白かったです。西部劇としてもまた機知が溢れた話としても読ませて。ラストの一刷毛は、アンチクライマックスの最たるもので、駒を奥深くに進める手法に戸惑いつつも作者の深い技を感じました。
読了日:05月26日 著者:トレヴェニアン
攪乱者 (ジョイ・ノベルス)攪乱者 (ジョイ・ノベルス)
評価まちまちになりそうな作品だけど、私は好き。現政府を緩い方法で転覆させる自称テロリスト達に課せられたミッションが「レモン三個をスーパーに置いてくる」「電車内の網棚にくしゃくしゃに丸めた新聞紙入りの紙袋を置いてくる」「コンビニでただただ働く」というように一見意味が全くわからないものなのです。この意味を解く人間が鮮やかに解くところがとても面白いと思いました。またそれぞれの作品タイトルが有名作品タイトルになってるのもしゃれていて素敵。ラストのテロリスト達全員の出自がもっと驚愕だったらとないものねだりをば!
読了日:05月25日 著者:石持 浅海
未来医師 (創元SF文庫)未来医師 (創元SF文庫)
25世紀の北米へ時間の壁を越えてある一人の医師がトリップ、しかもなぜだかわからずと言う状況があり、更にそこで見る恐るべき未来の世界とそこにいるいくつもの部族の生活。更に時間旅行は続く・・・ぐいぐい読めるのです、そのあとの繰り返すタイムパラドックスが絡んだあれこれも読ませるのです。どこを切り取っても絵が浮かぶし悪夢のような世界に心が漂っていくのです。生きているキューブがすごかったなあ。ただ・・・・・ただ・・・・もごもごもご・・・
読了日:05月24日 著者:フィリップ・K・ディック
和菓子のアン和菓子のアン
読んでいて、ふくっと笑顔が出るような本。デパ地下好き&和菓子好きの私にはツボ中のツボでした。和菓子の薀蓄も楽しく、へえーへえーと何度も教えてもらったり、和菓子から派生するお客さんの小さな謎が解明した時にびっくりしたり、デパート裏部分も面白かったり。何より、「ちょっとだけ太めコンプレックス」のアンちゃんキャラがいいのです。なごやかな彼女の家庭の風景、慣れないデパ地下和菓子店で風変わりな仲間と段々打ち解けていく様子など、読んでいてほのぼのとしました。続編を希望!(乙女キャラ立花君、個人的に萌え!)
読了日:05月24日 著者:坂木 司
沼地の記憶 (文春文庫)沼地の記憶 (文春文庫)
絶品。最初の1ページから最後の1ページまで余すところなく私を魅了し続けた小説でした。特に優れているのは、「過去現在未来」が並列で語られていて、この技というのはとても難しいと思うのです、やる人は多いけれど成功しているのが稀と言う・・そこを見事にクリアー。話は、ある一人の教師の回想物語なのですが、心に潜む人間の悪意、脈々と流れる「血(出自)」への思い、記憶と葛藤など単なるミステリ以上のものがここに詰まっていました。ラストの哀切さと言ったら!解説にクックインタビューがあってこれもまた読みごたえがありました。
読了日:05月23日 著者:トマス・H. クック
桜宵 (講談社文庫)桜宵 (講談社文庫)
面白い。大人のためのミステリと読みました。苦いものがいつも残る香菜里屋の工藤マスターの謎解き。鮮やかではあるのですが、真実を知ることで新たな苦悩を見出す人もいることでしょう。「桜宵」の奥さんが死んでその残されたメッセージが復讐か否かというのもほろ苦い結末でした。胸痛んだのは「約束」に孕まれた狂気の萌芽で、学生運動の空しさとその後の人生と言う実に重いものを私たちに突きつけてくれました。人生って、こういう絶望とか悪意とか裏切りとか取り囲まれた中に一筋の光を見出すことじゃないのかなあ・・・
読了日:05月21日 著者:北森 鴻
アジアの岸辺 (未来の文学)アジアの岸辺 (未来の文学)
不条理な展開の面白さを堪能!と言う作品と、面白いには違いないんだろうけど私にはピントがずれているよ、と言う作品と、混合でした。最初のエスカレーターがひたすら落ちていく話のシュールさも捨てがたいし、表題作の寄る辺のない不安とばたばたっとした展開の奇抜さは見るべきところがあると思いました。大好きだったのは実は「カサブランカ」。奥さんが飛行機嫌いで、アメリカが壊滅状態になり、カサブランカで右往左往する夫の姿が悪夢世界のようで読ませました。リスの檻のラストもいいかも。あと「犯ルの惑星」はきちんとしたオチでおおお!
読了日:05月21日 著者:トマス・M.ディッシュ,若島 正
白戸修の狼狽白戸修の狼狽
このシリーズ初めてなのにここから読んじゃいましたが。謎そのものの解明とかそういうことより、白戸修君の人の良さと幸せキャラクターに惚れこみました。あれよあれよと言う間に鬼門らしい「中野」近辺の揉め事に巻き込まれていってしまう白戸君の初々しさと素直さと心根の優しさが光っています。先輩とのやり取りにくすっとしながら読み進めました。腰が痛くなっちゃう原因の話ベストスタッフのラストににまっ。タップのラストにどっきり。オリキの各用語にびっくり。このシリーズ過去に行って読んでみたいです。
読了日:05月19日 著者:大倉崇裕
私たちには物語がある私たちには物語がある
最後にご自身も書いているように、書評と言うより「感想」かなあ。読んだ本読んでない本と入り混じっていましたが全体に好意的感想でありました。それぞれいいところを見つけてこういう風に角田さんは読んでるんだなあ、こういう人が好きなんだなあ(佐野洋子とか栗田有起とか)とそこは楽しめました。ただね、私はそそられなかったかな。次にこれを読もう!っていうぼうぼう燃えるような熱さは感じられませんでした。そういう感想とか書評が好きなもので。ごめんなさい。いい本なんですが!
読了日:05月19日 著者:角田 光代
物語の魔の物語―異形ミュージアム〈2〉メタ怪談傑作選 (徳間文庫)物語の魔の物語―異形ミュージアム〈2〉メタ怪談傑作選 (徳間文庫)
ああ・・豪華絢爛の執筆者と内容の濃さと面白さにノックアウトされました。メタ怪談があり、メタフィクションがあり、読んでいるうちに文字通りこの話の中に飲み込まれていくようでした。岸田今日子の創作したシンデレラ物語のおぞましさ、この分野の完成形の小松左京作品、横溝正史作品はラストに舌を巻き、夢枕獏の一度読んだら忘れられない雪山の話、また知らない人でしたが、田中文雄の海賊の話も非常に面白く読みました。絶版と言うのが惜しい惜しい!
読了日:05月19日 著者:
雑学のすすめ (講談社文庫)雑学のすすめ (講談社文庫)
このシリーズ三冊目。この本、雑学と銘打ってあるけれど、古今東西の謎に迫る、みたいな大きな風呂敷で始めてくれてます。相変わらずこの二人のタグは笑わせてくれるのですが、この中で再考に私がためになったのが、第三章の邪視という文化でした。ああ・・だからイスラム文化ってこうなのか、とそれこそ目を見開かされる思いでした。外人の名前の由来のあれこれ(第十二章)は知ってることも多かったのだけれど、こうしてまとめてくれるとなるほどなあと改めて日本にはない名づけと省略の仕方に感心しました。ラストの名古屋人への考察も爆笑。
読了日:05月19日 著者:清水 義範,西原 理恵子
どうころんでも社会科 (講談社文庫)どうころんでも社会科 (講談社文庫)
このタグ、これで二冊目なんだけど、サイバラの爆発独走と清水義範の真面目な語り口とがミスマッチ感覚で面白いと私は思いました。サイバラの漫画は関係ないんだよね、ほぼ内容に(たまにあるけど)。独自路線で相変わらず怒りまくってるしいちゃもんつけまくってるし。清水センセの話の方はあちこち飛びながらも私、結構勉強になりました、リアス式海岸のリアスの由来とか、とても驚いたのが小学校の班学習の由来でした、まさかアメリカから・・
読了日:05月19日 著者:清水 義範
緑金書房午睡譚緑金書房午睡譚
古本屋に同居することになった不登校の女子高生の一種のファンタジー物語です。古本屋さんの話、出てくる書物の話、ナルニア、十二夜その他の本への言及と楽しいところは盛り沢山なのです。が、私自身が日本ファンタジーに対して普通の人間なので、あちらの世界とこちらの世界と突然言われ、猫がべらんめえで喋り、突如として家の秘密暴露、異世界交流で幽霊云々で、はしごをはずされた気がしました。ごめんなさい。私が勝手に思っていた方向の正統古本屋綺譚ではなかったかなあ。(不登校の理由も最後まで引っ張ったけれども・・・ううん・・)
読了日:05月18日 著者:篠田 真由美
道徳という名の少年道徳という名の少年
ま。
読了日:05月17日 著者:桜庭 一樹
ミスター・セバスチャンとサーカスから消えた男の話ミスター・セバスチャンとサーカスから消えた男の話
ああ・・好きだなあ・・こういう小説。魔術師ヘンリーの一生を様々な人が語るのですが、そこに見えてくるものの真偽は何なのか、一体ヘンリーと言うのは何者だったのか、過去に何があったのか。現実と幻想の間を読者がゆらゆらとたゆたう感覚がたまりませんでした。そしてヘンリーの人生もまた揺らいでいるのです、ファンタジックな夢と現実のはざまを。ホラ話の要素も組み入れながら綿密に編みこまれた編み物のような小説でした。登場人物のフリークさもたまりません。そしてラストで驚きの展開が待っていました。物語の面白さが詰まった小説。
読了日:05月17日 著者:ダニエル ウォレス
奇界遺産奇界遺産
読むまで「地方の秘宝館」みたいな怪しげな取り上げ方のモノと思っていて失礼しました(そもそもタイトルが世界遺産のパロディーっぽいし)。興奮するほど面白い!世界の「自然に出来ちゃった不思議な場所」とか「人工的にこれでもかと作っちゃった不思議な場所」とか「とんでもないことを考えてる人間」とか。どれもこれも本当に世界にこういう場がある、ということだけでのけぞっていました。アジアの濃いパワーに圧倒され、砂漠のオアシスに魅せられ、死体博物館におえっとなり。また文章がいいのです、奇抜な写真にきちんとした文章がグー。
読了日:05月17日 著者:佐藤 健寿
エニグマ奇襲指令 (ハヤカワ文庫 NV 234)エニグマ奇襲指令 (ハヤカワ文庫 NV 234)
最初から最後までずずいっと楽しめました!帯に丸谷才一絶賛がありますがその言葉に偽りなしでした。エニグマというのは極秘暗号機であってそれを英国がある大泥棒ベルヴォアールに刑務所釈放の条件として盗み出すように指令する、と言うところから始まる数多くの出来事の息をも尽かさぬ面白さと言ったら!美女あり、裏切りあり、友情あり、ナチ台頭、と読ませる要素もテンコ盛りですが、何よりエニグマ奪還の丁々発止の頭脳戦に本をめくる手が止まりませんでした。そして驚愕のラスト!私は驚きました、のけぞるほどに!
読了日:05月16日 著者:マイケル・バー・ゾウハー
夕暮の緑の光――野呂邦暢随筆選 《大人の本棚》夕暮の緑の光――野呂邦暢随筆選 《大人の本棚》
何日もかけてじんわり楽しみました。野呂さん随筆の方は初めて読むのですが、溜息が出るほど良かったです。諫早と言う故郷への思いとその自然風景描写、自分の生い立ちと来し方への俯瞰、文学で身を立てることへの若い頃からの熱き思いに胸打たれました。叙情的な文章は古書の話(これがまた滅法面白い!)になっても冴え渡り、「上質なある種の洗練された文章」を紐解く喜びを味あわせてくれるのです。誠に早逝が残念無念。同じ思いだと思われるラストの岡崎さんの文章も一際心に響きました。
読了日:05月15日 著者:野呂 邦暢
赤い薔薇ソースの伝説赤い薔薇ソースの伝説
とても好みだったメキシコ料理小説。台所で全てが生まれる、というキャッチコピーをつけたいほど食事がメインの話でもあります。一人の女性の一途な恋が破れ、相手が自分の姉と結婚すると言う場面から始まり、ファンタジックな様相を帯びながら物語は華麗に進んでいきます。途中、革命やこの家のしきたり等リアルな一面が出る一方で、亡霊、言い伝え、まぼろし、も出てきてそれはそれは小説としてふんだんに楽しませてくれました。生み出される料理と人々の心の動きの描き方も絶妙!(最後の方である秘密が暴露されてそれにも仰天いたしました)
読了日:05月13日 著者:ラウラ エスキヴェル
痺れる痺れる
侮れずまほかる!ずうっと追っていて何で追ってるのか自分でもわからない作家なのです。まとわりつくようなイヤさと暗澹さがたまりません。皮膚レベルで感じるぞくっと感が丹念に細密画のように描きこまれているのです。体に沼毛虫が入った嫌な感じと話のラストに茫然とする「沼毛虫」、じわじわ関西弁で生活に入ってくる怖さの「テンガロンハット」、村上春樹某短篇の裏バージョンを思わせる「ヤモリ」などなどどん底に落とされること必至。でも目が離せないという・・この矛盾した気持ちどうしたらいいのでしょう・・
読了日:05月12日 著者:沼田 まほかる
蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)
どん底に落ちる乾くるみどんでん返しを期待しちゃ駄目。でもでもここには、別の驚愕が待っています、実にミステリらしいほのぼのとした驚愕が。ある古書店の物語ですがそこにミステリ好きが集って小さな謎を提示して皆が推理を出し合うという話。何と言ってもミステリ談義が楽しい楽しい!!間にミステリコラムでミステリ案内127作までついていて読み応えがありました。知らない古いミステリの話をこうして語られるといいものだなあ・・それぞれの話のつながり、ラストで全てがまとまる快感、そうくるか!の驚きがよりこの本を楽しくしています。
読了日:05月11日 著者:乾 くるみ
パスタマシーンの幽霊パスタマシーンの幽霊
のんびりと午後のひと時窓辺で読みたい一冊。さくさくと読めるし、嫌な話もありません、ただどきっとする話、描写はあるのです。さらっと書いているようでなかなかに深い短編集でした。コロボックルとの恋の話が三篇入っているけれどこれもいいわね。あと、黒豆しわしわ話も忘れがたいし、表題作はお婆ちゃんの話がスパイスになって読ませるし、あと「かぶ」が大好き。恋人をかぶにたとえられた女性の気持ちって・・微妙だろうなあ・・と思いつつラストの行動に拍手。(そうだそうだ、ざらざらの杏子ちゃんと修ちゃんが出てきてる!)
読了日:05月11日 著者:川上 弘美
魔法使いの弟子たち魔法使いの弟子たち
非常に微妙。井上夢人だからという期待が高すぎたせいなのかわかりませんが・・・。超能力者がどうしてそうなったか、そして自分の能力がどうなのかがわかる「お試しの場面」が長い、と思いました。そしていざ使われ始めたらこういう使い方なのか・・・。面白さの真の核がどこにあるか私には見つけられなかったかなあ。社会に広がらず個人的話で終わる方が私は好きかも。どちらかと言うと、ラスト寸前のウィルスの色々な解明部分が私は面白かったです。また本当のラストは私は全くオッケーと思いました、だってこれ以外話を収束できないと思うし・・
読了日:05月11日 著者:井上 夢人
六つの星星六つの星星
川上未映子の物の考え方、思考経路の一端が対談で見えてくる好著だと思います。特に私が面白かったのは、福岡伸一とのずれながらの面白い対談、同じ女流作家としての多和田葉子対談や、松浦理英子対談などです。川上作品は勿論ですが、他作品も読んでいた方が話の内容をより深く分かるかもと思いました。また自作の「ヘヴン」への言及も見逃せません。
読了日:05月11日 著者:川上 未映子
螢坂 (講談社文庫)螢坂 (講談社文庫)
香菜里屋シリーズ第三弾(二弾がなかったので三弾に先に・・)。今回もマスターの推理が冴え渡るのですが、このマスター何者?とちょっと思ったのは、誰を待っているのでしょう?(途中の話にボソッと一行ある)。そしてこの小説、やっぱり大人の小説だと思いました改めて。陰影のある文章、翳り行く日を見つめるような謎の解決が見事です。この中で「双貌」の話の作りが特化して面白いと思いました。読んでいて幻想と思うほどにくらんといたしました。数々のお料理は言うまでもなくおいしそう!!
読了日:05月11日 著者:北森 鴻
シャーロック・ホームズの冒険 (創元推理文庫)シャーロック・ホームズの冒険 (創元推理文庫)
深町真理子訳というので楽しみに読みました。格調高い訳で大変満足。シャーロック・ホームズにふさわしい訳だと思います。挿絵も素晴らしく、また何度読んでも数々の短篇群が、「ホームズの依頼者への推理」「奇妙な謎の提示」「驚くべき真実」「冴え渡るホームズの推理」において傑出しているのは言うまでもなく。マイベスト3は「くちびるのねじれた男」「赤毛組合」「まだらの紐」。特にくちびる~は、発端の異様さから途中の意外性と恐怖までどきどきわくわく。未読の人はその幸せをこれから噛み締められていいなあと思います。
読了日:05月11日 著者:アーサー・コナン・ドイル
運命のボタン (ハヤカワ文庫NV)運命のボタン (ハヤカワ文庫NV)
マシスン好きなので甘目の評価になります・・・。映像になった作品が多いので、軽いし一見馬鹿にしちゃってる、もしやB級?みたいな話も無きにしも非ずなのですが、そこはマシスン、やっぱり短篇を作るのがうまいんだなあと思いました。表題作ですら、「オチ」はほぼ読者にわかると思います。だけど、最後の一行があるがためにこの小説がぐんとアップしていると。「小犬」のしつこい不気味さ、「戸口に立つ少女」のわかっていながらの気持ち悪さ、「帰還」のタイムトラベルのむず痒さ、このあたり肌レベルで感じる嫌さ(褒め言葉)でした。
読了日:05月10日 著者:リチャード・マシスン
ジェイン・オースティンの読書会ジェイン・オースティンの読書会
読みやすく読んだ後にほのかに心が温かくなるような小説でした。話としては、「ジェイン・オースティンの大好きな女子達がそれぞれの家で読書会をする、そこにばりばりSF男子が一人入る」と言う話ですが、ただ単に読書会ではないのです。一人一人の人生とジェイン・オースティン作品とを重ね合わせているところにこの小説の妙があると思いました。人生で普遍的なものってあるんだなあと。途中でジェインに夢中の女性が、半可通の人間にむかっとするところもわかるわかると膝を打ち大爆笑。(映画も同等に良かったです)
読了日:05月10日 著者:カレン・ジョイ ファウラー
伊藤計劃記録伊藤計劃記録
既読感があるなあ・・と思っていたら、超弦領域などのアンソロジーに入れられていた作品もあったのでなるほど、と。改めてまとめて読んでみると、誠に夭折が悔やまれます。未完小説『屍者の帝国』の書き出しも何とも面白そうなのに!!また伊藤さんの映画評を初めてここで読みましたが、これも読みごたえがありました。トゥルーマンショーは私も大好きなのでこの文章でぐいぐい頷いておりました。スピルバーグ映画の話も読ませたし、特にハンニバルの映画と本との指摘は鋭いなあと思いました。
読了日:05月10日 著者:伊藤計劃
闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))
最初の十数ページ脱落寸前。ここはどこなの?この語り手は誰なの?この言葉は何なの?の連続で頭がスパークしそうでした。が!途中で道が開けてきた時に、この素晴らしい物語が体中になだれ込んできました。そういうことだったのか!の連続で感動。両性具有で発情期に性別が変わる住人がいる星に降り立った人とその星の住人との交流、闘争、誤解、拉致、逃走、そしてラストの壮大な雪の中の行軍。愛とも友情とも見分けのつかない魂の交換。全てがわかって最初から読むとまた違った光景が広がる傑作。
読了日:05月10日 著者:アーシュラ・K・ル・グィン
花の下にて春死なむ (講談社文庫)花の下にて春死なむ (講談社文庫)
大人のための上質なミステリでした。ビアバーの香菜里屋のマスターが客が持ち込んだ小さな謎を解明する・・その謎の正体がどれも人生の悲哀と苦さに満ち満ちているのです。だから、わ!驚き!とか、このトリックは!!とか、それを求めている人には不可。じんわりお酒を傾けながら来し方を遠くに思いやる、文芸物が好き、そういう人に向いていると思いました。最初の話が最後に通じているのも話の妙がありました。食べ物描写もあまりにおいしそうで、どれも食べてみたくなりました。(「形式」としては「やや」アシモフの黒後家蜘蛛の会に似ている。
読了日:05月10日 著者:北森 鴻
鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)
いつまでもいつまでも読んでいたいデュ・モーリア短篇群。物語として抜群な完成度の上にある一撃がある読み心地がたまりません。首筋に研ぎ澄まされたナイフを当てられたような感じに包まれました。表題作鳥はヒッチコック作品でも有名ですがラストが違っていて私はこの原作の方が圧倒的に好きです。山で消えた女性を一生追う幻想味溢れたモンテ・ヴェリタ、大嫌いな妻が死んでほっとしたら林檎の木に乗り移っているように見えた話、幸福な妊婦がなぜ自殺したかの深い謎、どの話も魅力的でページをめくる手を止められませんでした。
読了日:05月09日 著者:ダフネ デュ・モーリア
杉の柩 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)杉の柩 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
何年かぶり(何十年?)に再読。この作品って、クリスティーの中でも、叙情的でどちらかと言うと推理小説というより恋愛小説っぽいように改めて思いました。金持ちの叔母、財産相続の資格のある姪、その幼馴染の恋人、美人になって帰ってきたメアリー、看護婦達・・それぞれの心理描写が微妙に陰影をつけながら見事に描き出されていました。トリックの中であるものが一緒というところが秀逸だと思いました。若い時に読んだのと同じ違和感は結婚観と恋愛観。いや・・ここは納得できないわ、だって・・・
読了日:05月09日 著者:アガサ・クリスティー
ベルリン・コンスピラシー (ハヤカワ文庫NV)ベルリン・コンスピラシー (ハヤカワ文庫NV)
正直テリトリーではないのでどうだろうか、と危ぶみながら読んだ一作。でも裏切られるほどに面白かったです。最初、いきなり自分が寝ていた場所が来たくもないベルリンで目覚めていると言う恐怖を味わったユダヤ老人、で始まっているので、サスペンスっぽい出だしです。そのあとぐいぐい息子がこの真相を探って行くのですが。謀略が張り巡らされ、ここをこうしたらここがこうなるという因果関係のようなものを堪能しました。ああ・・冷戦後でもこういう構図が出来るのかあ・・。何と言ってもラスト。一本芯の通った『男の物語』でもあったのです。
読了日:05月09日 著者:マイケル バー=ゾウハー
火星夜想曲 (ハヤカワ文庫SF)火星夜想曲 (ハヤカワ文庫SF)
最初に博士が緑の人と砂漠で出会うところから始まり、そこから街が出来上がっていく・・・壮大な物語のように見えつつ実はある一点の町の人達の不思議な物語がじわじわと語られていきます。とても面白く読みました。前半部分、人がわらわら集まってきて子供をどのように作るかとかそのあたりと、後半の戦いの場面とが違う話のようで、ともかくもエピソードそのものがそれぞれ単独でも面白いのです。後半(この人がここに!)という喜びがありました。年表と睨めっこしながら楽しめたかなあ。オマージュが二つわからなかったので修行し直します・・
読了日:05月09日 著者:イアン マクドナルド
大槻ケンヂが語る江戸川乱歩  私のこだわり人物伝 (角川文庫)大槻ケンヂが語る江戸川乱歩 私のこだわり人物伝 (角川文庫)
中途半端と見るか、雑多にお買い得と見るか。人によって様々と思いつつ、私はお買い得だと思います。写真も(このお値段で)豊富だしオーケンエッセイもいつもながら独特の語りで読むべきところがあるし。ただ、既読の人にあてて、なのか、未読の人にあてて、なのか、そのあたりの方針がぶれているかも(ネタバレとかの問題で)。後半数編の短篇があるのも再読してみたけれど、押絵と旅する男は今読んでもあまりに怖すぎる傑作だと思いました(踊る一寸法師より私はこちらの方が怖い)
読了日:05月09日 著者:大槻 ケンヂ,江戸川 乱歩

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