2010.06.27 光待つ場所へ
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(2010/06/24)
辻村 深月

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評価 5

心揺さぶられた。
きっとこれってどうなのどうなの?という人が多いような気もする。
同じようなことを別の人が書いたら、私も、で?と思ったかもしれない。
もっと巧く書く作家もいる。
もっと言葉が豊富な作家もいる。
それでも尚、辻村さんの描くこの少年少女の心理描写が実に私の琴線に触れるのだ、嫌なところも全て。

自意識過剰で傲慢で、でも友達との繋がりを気にしていて、
自分の可能性を信じていて
恋もしたくて
でも恋におぼれたくなくて
とんがってる自分を意識していて
理解できる人はいないと思いつつ誰かに理解してもらいたいとてつもない淋しさがあって
恥ずかしくて
何かを追い求めていて・・・・

そういう青春。
そういうものが全部ここに詰まっていたのだ。
またこの作品群、それぞれが辻村作品の人間が出てきてる。
読まなくてもこれ単体で楽しめるとは思うものの、読んでいたら更に、(あーあの子にまた会えた!)という喜びのおまけがついてきているだろう。

個人的にはラストの合唱の話が一番良かった。
ラストで眩暈がするほど幸せな気持ちになれたのだった。
クラスでピアノ志望の女の子がさっぱり巧くひけない。
指揮者の男子生徒が他にいないかと探したところ、実はそのクラスに一人天才ピアニストの卵がいたのだった。
一歩間違えれば、ベタな漫画展開なのに、それでもラストにぐっとこさせるのは、一人一人の心が手に取るようにわかる描き方をしているからだろう。

冒頭のしあわせのこみちの、絵を描く清水かなめの傲慢なことと言ったら!
大学で自分の作品が選ばれることが当然と思っている。
ところがそこで見たフィルムに打ちのめされる・・・
ここからそのフィルムの作り主との出会い、かなめ自身の絵に対する思い、ライバル、と物語は続いていく・・・どこもかしこもむせ返るような青臭さに満ちていながら、真摯なかなめの思いというのもまた伝わってくる。

チハラトーコの物語、は苦しく切ない物語だ。
小さい頃からステージママに仕立て上げられた女の子トーコ。
途中で母はそのことをやめるのだが、トーコの嘘は止まらない・・・
嘘、ということで、自分を何とか守っていくトーコ。
そして学校の奇妙な先生との出会い、と、トーコの嘘を見破る一人の人間。
これらがもつれ合い絡み合い話は進んでいく・・・・