2011.05.31 ねじまき少女
ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)
(2011/05/20)
パオロ・バチガルピ

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ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)
(2011/05/20)
パオロ・バチガルピ

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評価 4.7

日本がこういう状況での時期にこういう話を読む辛さというのも現実としてあった。
エネルギー構造が全く変わってしまった未来。
そこにはもう石油がなくなっているのだった。
そして舞台は異国情緒溢れるバンコクだ。
むんむんとした熱気が溢れるバンコク。
その熱気がねじまき少女の体を熱していて、途中で何度もヒートしすぎる場面がある。
誰にも見つからないようにして歩いているのに、暑さのためにぎくしゃくした動きになったり、人の中に紛れ込むことの難しさというのも読んでいて面白かった。
遺伝子改造によって自分の首を絞めることになってしまった人類の姿がひしひしと伝わってくる。
そしてお決まりのようにそこに蠢く利権の争い・・・

イエローカードといわれる中国人難民、遺伝子作物を作り出すカロリー企業、遺伝子バンク、ナチを思わせる白シャツ隊、そして日本人に置き去りにされ、男達のなぶりものにされるねじまき少女・・・
これは誰なんだ?この近未来の世界は何なんだ?
見知らぬ世界に放り込まれた感もある。
しかし途中から一気に目の前が開けてくる。
それもねじまき少女エミコのある行動から。
ねじまき少女が、客のある一人から(これがまた後半重要になる)、ある「希望」を聞かされる。
それは北の方にねじまき人間だけの国があるという話だった。
そしてねじまき少女はそれを信じて、屈してばかりの生活から行動するようになる。

日本の描写がやや違和感がある。
異国情緒とばかり受け止めていられないのだ。
後半の活劇は面白いのかもしれないが、私はどちらかと言うと、ねじまき少女の心の動きとかアンダースンの心の動き(エミコを拾って困った困った・・・)の方が面白かった。
また最初の方は、様々な人間がばらばらと出てくるのでなかなかにそこは把握しにくい。
視点が色々変化していっても誰がどういう役割かというのが最初は見えにくい。
世界観をいきなり押し付けられ、用語の説明もほぼない(途中でわかるものの)。
SFってこういうのものなのだろうか。
人物表すらない(私は自分で途中で作った)というのもこれだけ大勢の人が出てきているのに、と思う。


最後まで面白く読んだのだが、読み終わった瞬間に
(ああ・・これは「物語」でいいなあ・・・これで終わりになるんだなあ・・・)
とつくづく思ったのだった。
辛さは(いわゆるアンドロイド)ねじまき少女の蹂躙っぷりにもある。
この場面もねじまき少女が人間ではないとはいえ、とても私には辛い場面だった。