アイアン・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)アイアン・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2012/01/25)
ジョン ハート

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評価 5

大変読み甲斐があり、そして分厚いのに一気に読めるくらいの面白さもある作品だった。
ジョン・ハートって最初のところからもう心を鷲掴みにするなあという小説なのだ。
一人一人の心も描かれているし、特殊な環境下で身を寄せ合っていた兄弟愛(特に兄から弟への愛)にぐっときた。
孤児が収監されていたアイアン・ハウス。
そこは強い者が弱い者を虐げる悪魔の巣窟でもあった。
兄のマイケルは強い者だったが弟のジュリアンは弱い者でターゲットになるのだ。
常にマイケルが庇っていたジュリアン・・・・

この二人のある事件が起こったときに、偶然二人を助けるべく養子先の女性がやってきている。
ここが読者からすれば、
(ああ・・もうちょっと早く来てくれればこの事件がなかったのに!そうしたらマイケルも同時に引き取ってもらえたのに!)
と地団太踏みたい気持ちにさせられた。

二人の兄弟がどのくらい極悪な環境にいたのか。
マイケルが脱走してからどのような経緯を経て、殺し屋になったのか。
その後引き取られた弟のジュリアンはどうなったのか。
全てが徐々につまびらかになってくるのと絡み合うように、彼らの過去(知られざる過去)も含めて目の前に現れてくるところも読みどころだ。
また、その当時のいじめっ子(いじめっ子以上のものだが)がその後どうなったか、また収監していた管理側がどうなったのかというのもきめ細かく描かれていた。
また途中で湖から次々に死体が上がってくる。
これが誰の死体なのか。
また誰が殺したのか。
という次なる謎も出てくる。


1が始まる前に「追われる少年」というのが太字で出てくる。
ナイフを持っていてなにやら事件があったらしい。
そして後ろから追ってくる犬達、怒号、真っ暗闇の寒い夜の中で子供が自分を傷つけながらも走り続ける・・・
ここでまず何が起こったんだろう?と思わせる。
そしてラストまで読み終わってここを再度読んでみるととても印象深い冒頭だと改めて思った。

1に入ると、マイケルという殺し屋が自分の組織から抜け出すためにボスに許可をとるのだが、ボスの手下が了承しないという話に入っていく・・・・
マイケルは、最初、エレナという自分の子供を宿した女性と、ジュリアンと言う弟と両方を守らなければならないので大変だ。
エレナは状況把握がゼロだったのでますます大変で、突然自分の勤め先のレストランが爆破されたとか、突然車での逃走劇とか、捕まって暴力を振るわれたもののそこからの方がまだ安心していられるくらいだ。
このエレナ状況をマイケルが知らない、というところがなければ、マイケルはジュリアンの方の調査に専念できなかっただろう。
マイケルは、守るべきジュリアンもエレナも二人とも逃走している、という状態なのだ。

心を病んだと言われているジュリアン。
それを見守る上院議員夫人になっている引き取り手の(母の)アビゲイル。
アビゲイルを見守っているジェサップというボディーガード。
俗物であるアビゲイルの夫のランドール。
どの人物も血肉が通っていて、映画にでもなりそうなシーンがたくさんあった。

最後、意外な展開が待ち受けている。
サリーナ・スローターとは誰だったのか。
ジュリアンが精神状態が異常に悪くなり(自傷行為に走った)逃走してしまったのはなぜだったのか。
これらが全て完結したあともまた素敵なラストが待っていた。

以下ネタバレ
・サリーナとは、貧しかった極悪の生活を送っていたアビゲイルが妄想で描いた人間。
そしてアビゲイルは人格分裂していて、サリーナの時に殺人を犯す。
かつてのいじめっこを次々に殺して湖に沈めたのは、サリーナの時のアビゲイル。
それを全て知っていたのはジェサップ。

・アビゲイルは自分の母に命じられて自分の弟を水に沈めて殺した。
そして自分の家から逃走した。
そのあと生まれたマイケルとジュリアンはだから自分の実の弟達(おそらくこの二人は母親が水に沈めた。
だから、自分が裕福になった時に、二人を引き取りにいったのだった。
自分はもう妊娠しないように不妊手術までして。

・一見、この小説は、
マイケルとジュリアンの兄弟愛、のみ、の話のように見えるけれど。
真実がわかると、
アビゲイル(姉)、マイケル(兄)、ジュリアン(弟)という三人の兄弟愛の話だったと思う。
自分達の家族は崩壊しているけれど、何とか繋ぎとめようとするアビゲイルがいて、マイケルがいる。