2012.04.30 紙の月
紙の月紙の月
(2012/03/15)
角田 光代

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評価 4

とても読んでいて辛い話だった。
普通に暮らしていた主婦が、銀行のパートをしていくうちに横領を始める・・・

この小説の面白いのは、主人公の梨花のみが特殊なのではなく、ほかに描かれている女性達も一様にお金に(あるいはお金で買う「物」に)取り付かれているのだ。
・別れた娘に尊敬されるために洋服を買い漁り、娘にも途方もなく買ってあげる亜紀。
・実家の金持ちぶりを忘れられず、消費者ローンから借りては好き放題つかってしまう和真の妻。
・そして自分の金を使うのが何が悪いと思っている和真の愛人。
・必死にチラシの中で安いものを探して買う努力をしているが疲れた木綿子。

お金さえあれば幸せが買える。
お金さえあれば一種の全能感が出てくる。
お金さえあれば、買い物の時にはすっきりとする。
お金さえお金さえ・・・・・
これが誰にでもある心で、また誰にでも起こりうる話というのが実に伝わってきたのだった。

何より痛々しいのが、死ぬのでもなく捕まるのでもなくタイのチェンマイというところに隠れ住むようになった梨花の姿だった。

一点、梨花の夫の心が私には今ひとつ見えなかった。
これはこういう人なのだろうが(自分が甲斐性があると思い込みたい男)、この人、日々の暮らしをどういう思いで暮らしていたのだろう。
この人の心こそ描いてほしかった。