2013.03.31 空間亀裂
空間亀裂 (創元SF文庫)空間亀裂 (創元SF文庫)
(2013/02/27)
フィリップ・K・ディック

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評価 4.9

楽しい!
おいおいおい!それはないだろう!と何十回となくつっこっみながら読んでいった。

人がやたら多く出てきてそれが無駄っぽい。
途中でこれは誰だっけ?と思いつつ、人物表と照らし合わせてみて確認しつつ読み進めた。
こういうSFは読みやすくて馬鹿馬鹿しくて(褒め言葉)面白いなあと思った。

・・・
超高速移動機の中に亀裂(亀裂と言うことそのものも笑える)が出来た。
そしてそこはなんで発見されたかと言うと、高名な医者が自分の愛人を隠すために見つけたというのもまた笑えたのだ。何しろ亀裂だからぎゅっと押し込んで向こうの世界に押し込んで隠す。
だけどこの時点ではまだ向こうの世界がどういう世界かもよくわかっていない。

この小説世界(2080年)では人口爆発が問題となっていて、売春認可の世界で、そのための人工衛星まである。
そして数千万人の有色人種が凍民という人間にされていて、この人たちは人工的に眠らされているが、維持費用もかかっている。
更に、黒人大統領が生まれる気配もあるが、ここも争いになっている。
黒人大統領候補のブリスキンは、惑星殖民計画の再開で、一気に逆転を計るが・・・


愛人を隠しただけの亀裂、だったはずなのに、技術屋さんが偶然その亀裂を見つけてしまった所から大混乱が始まる。
その向こう側の世界がどうなのか、恐る恐る探検する所も読ませる。
過去なのか未来なのか
地球なのかそれとも地球外なのか。
結論として、これは過去でも未来でもなく(だから時は飛んでない)、現在の平行世界だということがわかる。
それだったら、人口爆発で困り果てているこちらの人間をそちらに送ればいいじゃないか!と単純に思ってしまうのだが・・・・
大統領候補の素晴らしい演説がなされるのだ、こちらの世界に皆さん行きましょうと。

・・・・
この世界に実際に行ってみて、どういう世界だったかとその世界もまたチープであるがぞくっとする。
そして実際に人を行かせるのに、一人ずつの亀裂じゃまずいというので、もうちょっと広げようとする。
そして見えてくる世界が全く違った世界(これは今度は時間を飛んであとの世界になって、荒廃した世界であり、送られたホモ・サピエンスが殺されていることすらわかった世界)だったのであわてて閉めようとするが既に閉められなくなっている。

またこの小説で、重要な役割のジョージ・ウォルトという怪物のような結合双生児がいる。
彼ら(彼)は娼館衛星のオーナーであり、実力を持っている。
衛星を閉鎖させようとしている黒人大統領候補はジョージ・ウォルトに疎まれている。
ジョージ・ウォルトの手が抜ける部分が、あっと思い次の瞬間ここもまた笑えた。
なんだこんな風になっていたのか。
そしてまた彼が(彼らが)亀裂の向こうに行って、神とあがまれたという黒い笑いもある。


以下ネタバレ
・原人がいる世界であった。
そして原人の見かけに騙されて、自分達の方が高度な文明を持っていると思っていたホモ・サピエンスが、実は原人の方が優れた文明を持っていたという皮肉があった。