2013.05.31 たんぽぽ娘
たんぽぽ娘 (奇想コレクション)たんぽぽ娘 (奇想コレクション)
(2013/05/25)
ロバート・F・ヤング

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『おとといは兔を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた』

評価 5

どれも叙情性に富んでいる。
時を越える愛というようなもののタイプが多かったが、ソフトなSFといったタイプも多かった。
年老いたまたは中年の男性の悲哀、というのも一つのテーマとしてあるものが多かったような気がした。


たんぽぽ娘のみ既読だったが、それでも改めて読んでみると、叙情性に胸打たれる。
甘いのかもしれないけれど、その甘さがなんともほろ苦さを含んでいると今回思った。
妻がちょっとした出来事でいない間にある一人の少女との邂逅・・・
一見、中年男性の心の揺らぎのようにも見える、内容を全く知らずに読んでいれば。
でもそれはラストになってぱっと目の前が開けたようにある真実が目の前に提示されていて、その真実にぐっとくるのだった。
丘であった若い女性は「かつての妻」であった。
タイムトラベルの時に「今の彼」と会ったのだった。


表題作のみならず、ソフトなSFが並んでいるのだがどれも読んでいると心地良い。
特別急行が遅れた日、は、違和感を感じながら読んでいて途中でひどい出来事がある。
そこで結構打ちのめされるのだが、最後のところであ!と構造がわかって驚くのだ。
途中で列車運行のために人が一人死ぬ。
しかし何事もなかったように明日はまた運行が始まっていく、生き返るとある。
つまりこのワールドは、真のワールドではない。
が、これは最後のところで外側からの巨人の眼が出てくる。
列車運行の人達は人形なのか?
それとも・・・・・宇宙人に操られた人間・・・・


河を下る旅は、一見のどかな川くだりの話に見える、最初の方では。
そこで二人の男女が出会って・・・・と思っているとどっこい、この二人の出自が明かされ、そして現実に戻った時の男性の奮闘ぶりが目覚しい。
実はこの二人は自殺を図った二人であって、向こうの世界で会っているようなものだ。
死の世界と生の世界のはざまなのだ。
そこで、男性がそれに気づき、どこでどうしているかを女性に聞いて、現実で自分が起き上がって助かった時に女性側のアパートに直行して助ける、という物語だ
。←

神風は、悲しい話だ。
日本の昔の特攻隊のカミカゼを意味としてかけて、飛行機が宇宙船になっているのだ。
ラストがなんとも切なく美しい。

荒寥の地よりは昔自分の家に好意で泊めてあげたそして職まで世話してあげたローンさんというのが実は何者だったかというストーリーだが、丁寧に紡がれていると思った。
途中で出てくるウェルズのタイムマシンの話もまた意味深い。
最初に、自分が建てようとしている家の土地から、ある箱が出てくるというのが、タイムカプセルのようで泣ける。
ローンさんは未来から来たタイムトラベラーであった

主従問題は面白い。
ちょっと星新一とかの作品を思った。
ある村があってそこの村の人たちが全員村を捨てて別の場所に行くので、その村を売りに出したい、とある女性が立会人になりそこに業者の男がやってくる。
ところが、全員がどこに行ったのかというと・・・
どこに行ったかというのがわかったあと(その場所の描写も美しい)、実に皮肉な展開がわかってきて、私はぎょっとした。
裏口があいて、そこは別の場所が開けていて素晴らしい土地でそこに全員が住むことになっていた。
そこは豊かな土地であり、全員が満足している。
が、最初の方からずうっと出てくる犬が実は支配者の星であって
犬は従順な下僕と人間を思っていて開墾をしてもらっている。
が、それを人間に気づかせないようにうまく使おうとしている


第一次火星ミッションは笑った。
なぜか少年時代に自分達でつくったものが・・・
そして後年あるものを発見したという皮肉・・・・
タイトルもまた深い。
最初少年の時に、友達と適当に冗談で作った宇宙船が、実は火星に行っている。
そこはバローズの世界であり、巨大な建物も建っている。
成人してから、一人が宇宙飛行士になり火星に行くと、なぜかそこに埋もれてあったのはかつて少年時代にここでなくしたナイフであった。
そしてそれをそっと埋めるのだった


失われし時のかたみは、最初の方でこうだろうなあ・・・という想像はつく。
つくけれども、主人公がなんだかわからない部屋でなんだかわからない自分の過去の思い出の品の一つ一つを触ったり聞いたり(CDもある)していく姿が胸をかきむしられるような気がした。
自分の過去がこうして並んでいたらどんな気持ちだろうか。

最後の地球人、愛を求めて彷徨すはエイリアンが宿っている地球人の中で、自分だけが本当の地球人という孤独の物語だ。
そして気づかれてはいけないというジレンマがあるのだ。

11世紀エネルギー補給ステーションのロマンスは、眠り姫を題材にした可愛らしいSFだ。
ここに落ち着くとは最初の方では思ってもみなかったので、ラストにっこりするような話だった。

スターファインダーは勿論ジョナサンと宇宙クジラを思うが、全く違う話になっていてこれはこれで楽しめた。
奇妙な絵文字とともに。


ジャンヌの弓はジャンヌダルクを勿論思うのだが、ある女性を捕まえよう、とする男性の物語だ。
特殊任務を帯びているのに、ジャンヌに取り込まれていく姿、そしてジャンヌが脳内で二人の人に指示されている姿というのが印象深い。

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「特別急行がおくれた日」(伊藤典夫訳)*
「河を下る旅」(伊藤典夫訳)
「エミリーと不滅の詩人たち」(山田順子訳)
「神風」(伊藤典夫訳)*
「たんぽぽ娘」(伊藤典夫訳)
「荒寥の地より」(伊藤典夫訳)*
「主従問題」(伊藤典夫訳)*
「第一次火星ミッション」(伊藤典夫訳)*
「失われし時のかたみ」(深町眞理子)
「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」(伊藤典夫訳)*
「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」(伊藤典夫訳)
「スターファインダー」(伊藤典夫訳)*
「ジャンヌの弓」(山田順子訳)