オール・クリア 1(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)オール・クリア 1(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
(2013/04/10)
コニー・ウィリス

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オール・クリア2 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)オール・クリア2 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
(2013/06/06)
コニー・ウィリス

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評価 5(飛びぬけ)

何度興奮させられたことだろう。
なんて面白い話なんだろう。

ブラックアウトから待ちわびていて、二巻が揃うのを待って読んだのだが、こんなに厚いのにやめられないほど面白い。
1では相変わらずネットが開かず、戦時下のロンドンから戻れない3人が描かれている。
どちらかと言うとドタバタ劇の要素もあり、ある者があちらに行けば、ある者がこちらに来てすれ違いが続くのが何とももどかしい。
タイムトラベル物ではあるものの、ずっぽりと時代に入り込んでいると言う設定なので、その時代の人とも大いに接触があり(これが後々の悩みと憂いのの種になる)、ネットが開かない=元の時代に戻れない、と言う恐怖と同時に抱えているのが、戦時下でいつ爆撃にあって死ぬかという恐怖なのだ。
未来人と言えどももし爆撃にあってしまえば、帰還する前に死亡してしまうという事実を皆が把握している。
そしてまた、なぜネットが開かないのか、ダンワージー先生は一体?そして彼の動向は?とか、ポリーの秘密のあれこれとか、謎は尽きない。
各章の終わりにそれはびっくりすることがちりばめられているのもまたそこでぎょっとして楽しめる。
全員が動き回る右往左往ぶりが、同作者の『航路』を彷彿とさせる。

でもこの1で一番謎だったのは、VEデーにアイリーンを見た、という一つの出来事だった。
なぜアイリーンがその時に?
なぜそれを見ることが出来た?
単純にそこまで帰れないと言うことか?

そしてアガサ・クリスティまで出てくるおまけがついて混沌としている内に1は終了した。

・・・・
そして2巻。

ここに来て一気に収束に向かっていくコニー・ウィリスの手腕が誠に素晴らしい。
後半の今までの伏線が開いていく所など、推理小説顔負けの開き方だ。
最後まで読み終わって、単純なのかもしれないけれど愛なんだな、と思った。
戦時下で必死に生きる人への愛、孤児になった悪魔のような子供達への愛(アイリーンが孤児姉弟に対する気持ち)、異性に対する愛(ある男性が必死にアイリーンを探す気持ち)、尊敬に値する愛(ポリーのサー・ゴドフリーに対する気持ち)、同志への愛(ポリーのアイリーンに対する気持ち)・・・・
ダンワージー先生も来るがいささかここでは頼りない。
齟齬を語ってくれるが彼の考えた齟齬は誠に暗い話だ。
でもそこをまた新たなことを見つけてくれる学生達・・・・

ネットが開く場所が見つからない中、どこが爆撃されるかを必死に思い出す様子を見ると、(この人たちは未来から来たんだなあ・・・)と改めて思ったりした。
2に来て、このいわば未来人たち3人が気になり始めたのが、多少の修復力があるとはいえ、「ずれ」がどうやら大きくなっているようなので(降下点などの)、もしかして自分達が歴史を弄繰り回してしまって、これが全く違った歴史を作ってしまっているのではないか、ひいては自分達のかかわりあった人たち全員を危険にさらしているのではないか、ということだ。
このあたりも非常によくわかって、どきどきした。

更にサー・ゴドフリーの造型が素晴らしい。
彼がシェイクスピアなどの作品から引用する言葉の数々、そしてそれを聞いていて理解する人間がいるところ、彼との別れの場面もまたぐっときた。

また後半になって、ある人物が全く別の時代に来て、過去の人の消息を尋ねようとする。
ここらもとてもよく描けていて、未来と戦時下とのいわば中間点のような場所で、意外な事実が判明していくのだった。

そしてラストの驚きと言ったら!
VEデーのアイリーンはここに繋がるのか!
そのアイリーンの毅然とした姿にも心打たれたのだった(と同時に相変わらずのアルフとビニーの悪さにも笑ったのだが)。
アイリーンの決断があまりに決然としていたのに驚いてはいたのだが・・・
悪童アルフとビニーも・・・・これにはくすりと笑わせられた。