2013.08.20 夢幻諸島から
夢幻諸島から (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)夢幻諸島から (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
(2013/08/09)
クリストファー・プリースト

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評価 5(飛びぬけ)

どこからどう書いていいものだろう。
幻想と現実のあわいのようなものを描かせると、プリーストは本当に巧みな語り手だと思った。
騙り手なのかもしれないが。
傑作だと思う。

現実にはない島の数々。
そこには色々な掟があり、通貨があり、そして動植物があり、当然のことながら人がいる。

冒頭からしばらくは読みが非常に辛かった。
というのは、そこがガイドブックのようになっていて、私はガイドブックを読んでいるのか?疑問にとらわれるからだ。
チェスター・カムストン(なんとこの人が序文を書いていた!!とラストまで読んでから戻ってみて感動したのだが)哲学者のモイの物語あたりまでは普通に読んでいるのだ。
しかし、オー・ブラックと最悪の昆虫スライムが出てくるあたりからもうぞくぞくするほど面白くなってくる。

時間勾配の歪みが原因で、地図を作るのが不可能なこの世界。
常に軍事交戦下にある北大陸。
その主戦場の南大陸。
そしてその間にあるミッドウェイ海に点在する島々が夢幻諸島。


騙し絵のような精緻な物語がそれぞれの島で展開される。
そこには、またページをめくり返してみたい人たちが、かぶって色々な時代に出てくる。
ある時には書簡のみで語られている島もあり、ある時にはぼく、と言う一人称の語りで始まり終わる島もある。
プリーストの奇術師を髣髴とさせるような、ある一つの劇場の殺人事件も何度も言及される(そしてそれぞれで見え方が徐々に変わっていく)

何度も何度も読んでみたい、そして読むたびに多分見えるものが違ってくると言う傑作の一冊だと思った。