2013.09.18 シガレット
シガレット (エクス・リブリス)シガレット (エクス・リブリス)
(2013/06/13)
ハリー マシューズ

商品詳細を見る


評価 5

面白くて面白くてのめりこむように読んだ一冊だった。
と同時に読み終えるのが惜しい一冊だとも思った。

話は、非常に緻密にできていて、1936年と1938年の間の話、と1962年と63年の間の話を行ったりきたりしている話なのだ。
そして出てくる人たちは、ニューヨーク近郊のアッパークラスの人たちで、その人たちは微妙に色々とつながっている。
13人の登場人物が出てきては消え、また別の形で出てきては消え、時を越えて出てきてまた消え、また登場しというように何度も何度も消えたり出たりしている。

話が、必ず二人ペアの章タイトルにもあるように、二人組み合わせの話で進んで行く。
それは夫婦であったり、父娘であったり、母息子であったり、愛人と男性であったり、画商と画家出会ったりする。
そしてここで重要なのは「エリザベスの絵」なのだ。
このエリザベスは冒頭の話でいきなり男性を誘惑する話で出てくるのだが、彼女の絵をめぐって思惑が錯綜し、それぞれの人の立ち位置と思いが炸裂する、いわば狂言回しの役割がこの絵画なのだ。
視点も当然変化して行くので、「ある同じ事件」が別の人から見るとどういうことだったのか、というミステリが開くような面白さもまたある小説だ。

前の章をうけるように、次の章が始まって行く。
このつなぎ方も見事であり、読み終わってみれば、この話、実は家庭小説のような気もするのだがあまりに心理描写が巧みであり、それぞれの人の思いが滲み出てきていて、更には、事件そのものも大変面白い目を引くものだ。

・・・・
この中でルイスとモリスという男性同士の性的倒錯の話は、事件そのものは笑い事ではないのだが、どうしても笑ってしまう章でもあった。
いくらSMといっても、コンクリートの中に閉じ込められたままモリスが突然死してしまうという悲劇。
そしてそのあと、コンクリートの中にいたルイスがとろうとした行動は、笑えてそして泣ける。
更にはこの章にはないけれど、ルイスの母がこの場面に遭遇してモリスを生き返らそうと人工呼吸をしようとしているのを見られ「死人に口づけ」をしていると思われるところなども、必死な姿を見ているだけに笑えたのだった。

また前のほうの章でハイヒールという名前で出てくる女性が(そこでもわかるのだが)後半、この人だったのか!というのがくっきり見えてきたときに、この話の精巧さを思ったのだった。