ラバーネッカー (小学館文庫)ラバーネッカー (小学館文庫)
(2014/06/06)
ベリンダ バウアー

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評価 4.9

大変面白く読んだ。
ラバーネッッカー(ゴムのように首を伸ばして)むやみに見る人、物見高い人、野次馬、観光客の意味。
なので、世の中や、周囲の人々をじっと観察しているパトリックのことが思い浮かぶ。

主人公でそして後半探偵になるのは、アスペルがー症候群のパトリックだ。
これがミステリ全体の肝となっている。
彼の見る視点、彼の見る世界がここには広がっている、
人と接することが苦手、人の目を見て話すことが出来ない、人に触られるのが嫌、極度な潔癖症、コミュニケーションがうまく取れないな、冗談は通じない、曖昧な言葉が通じない、などの欠点はあるものの、その欠点を凌駕するくらいの長所を持っていて
動じない、冷静、ある一定のことにとことんのめりこむ、探究心が強い、純な心なので悪いことに無謀と思われるほどに立ち向かっていくなどだ。
情緒がほぼない、というのは、一見欠点であるのだが、この物語のラストでこれはある種の救いにもなっているのだ。
だから彼の探偵っぷりは、見ていてはらはらするし、ここはそう攻めないほうがいいんじゃないか、もっと持って回ったほうがいいんじゃないか、と読み手がわくわくどきどきする仕掛けになっている。
このパトリック視点がひとつある。

更に、ある病院で意識は戻ったものの混濁していて段々冷めていって、隣のベッドの殺人を見かけてしまう、という動けない患者の物語がある。
加えて、その病院で上昇志向の高い働き者ではない蓮っ葉な看護師の物語がこれに加わっている。
これとパトリックの話とどう繋がるのだろう・・・という興味がぐいぐい読者をひきつける。

・・・
パトリックは10年前の幼い時に、自分の反応の遅さから可愛がってくれた父を自動車事故で失った。自動車にひかれたのだった。
そして母はパトリックが普通の子であったらと願い続けていて、アルコール依存症になっている。
放置されたにも等しいパトリックは、父の死に納得できずその死を探求するために大学の解剖学を学んでいる、医者の卵と共に。
パトリック自身は解剖が素晴らしく巧いのだが(なんせ動じない)、実習の時に、自分の担当の遺体19番から不思議なものを取り出す・・・そこからある疑念を抱くようになるのだ・・・


読んでいて、徐々に、ではあるし、パトリックの心の中で何度も咀嚼して考えた上の答えであっても、友達とコミュニケーションがとれるようになっていく姿が好ましい。普通の人なら即答できることを考えた末こう考えているんだろう、相手は、と考え込むパトリックを待っている周りの人達の姿が(特にメグ)光る。
小さい時にいじめられていたパトリックが、ちょっと奇妙ではあるけれどちょっとおかしくはあるけれどいいやつなんだ、と受け入れられる喜びを持つ場面は読んでいて微笑ましかった。

この物語、後半で病院の寝たきりの男とパトリックとが見事に結びつく。
そしてその謎、は比較的最初のほうでわかるような気もするのだが(遺体解剖の時のあるものが出た時点で)最後の最後で、ある驚きがある。それは思ってもみない驚きだったが、それをもパトリックが淡々と受け止めていて、なんだか心の中で、喝采を叫びたくなった、パトリック万歳!


以下ネタバレ
・心臓発作といわれて死んだ遺体の喉からなぜかピーナッツが出てきた。
(ここですぐにピーナッツアレルギーは思うだろう)
しかも喉の奥に傷がある。

真相は、寝たきりだった19番が、病院で殺人を目撃したこと(安楽死に近いっぽいが)
それを伝えようとして医者に見つかり、ピーナッツアレルギーで殺された。

パトリックは持ち前の執着心で、19番の娘を探し出し、彼女がピーナッツアレルギーだったのでそこから脳神経科病棟で行われていた殺人を見出す。
同じ科の医師であった。

・パトリックの父をひいたのは、実の母親だった。
それはパトリックを殺そうとしたのだった、これをパトリックは淡々と受け止める。
パトリックに強い情緒というのがあればこれはダメージになるけれども、そこは病ゆえにならないというのが救いだ。