ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)
(2014/10/28)
宮部 みゆき

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評価 5

(いかがなものか、と思う、この売り方。
内容は一切関係ない話だが。
単行本を買った人間をどう思ってるんだろう。
高い単行本を買った人間が一番のファンであるはずなのにそこをこうしてプラスを文庫本のみにつけるってどういうことなのだろう。

もしこれをやるのなら、ラストの付け加え分のみ、単行本を買った人用にばら売りしてくれるシステムとか考えられないのか。
でなければもう単行本を皆買わなくなると思う。
ということで、単行本を買って読んでいるので、この書下ろしが入っている下巻のみ購入して読んでみた)

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内容として、このプラス分の負の方程式は買うに値するほど面白い。
何しろペテロの葬列の(時系列的にはペテロの後と言う設定)杉村三郎が出てくるのだ。成長したソロモンの偽証のある生徒が出てるのだ。
この人の話が、短いのかと思ったら中篇ぐらいの分量はあった、だから買って正解だったのだ。
しかもこれだけの文章の量で、余すことなくそれぞれの立場、それぞれの思いがこちらにストレートに伝わってくる、相変らず素晴らしい。


話は、私学の中の精華学院で体験キャンプが行われる。
教諭の火野が生徒に
もし、この場で何かが起こって誰かが犠牲にならなければ他の皆が助からない場合に誰を犠牲にするか考えておけ」と言い残して去った。
しかしこれは問題となった。
誰が犠牲になるかというのを決めなければならない時点で、教員の発する言葉としては不適切であるから。
しかも火野教諭はこれを言っていないという。
生徒達は確かに先生が言ったという水掛け論になっていく・・・・
この中で火野教諭は、学校との話し合いで主任に手を出し、退職に追い込まれるのだ。
果たして本当にこれが起こったのか。
そしてもし起こったとするのならいかなる状況で起こったのか、また起こっていないとすれば誰の意図でこのようなことが起こされたのか。

これもまた、これだけの枚数なのに宮部みゆきの「人の善意」というものが見事にあぶりされていると思った。
善意と悪意の入れ違いのようなもの、と言っていいだろうか。
罰せられなければならない人。
そしてそれは普通は警察の手を煩わせるものだが、そういうことではない罪を犯した人。
この人に対して、作者は非常に厳しい鉄槌を下している。
これが、読者には心地よく、不条理な日常を納得して生きて以降という気持ちになれるのだ。
そして杉村三郎の気弱な、でも気持ちの良い推理がこちらの胸をぐっとつかむのだった。