評価 4.2

ピエール・ルメートルが続く・・・
フランスのゴンクール賞を取ったと言う所からもわかるように、これってミステリの部分も多少はあるけれど、ほぼ普通小説だ。
サスペンス的なところがあるといえばある、でも度肝を抜くようなサスペンスは私から見るとほぼなかった。
ラスト、ああ・・・これは。
これは、昔見ていたフランス映画で、そこまであれこれ考えて結構見ていたのに、いきなり最後にFINが出てきて脱力した感じと一緒だ。
腑に落ちないが、これがフランスか、と思ったものだった。
今回もまた。

好み大きく分かれるだろう。
私は微妙だった、正直なところ。
戦場、顔のない男の部屋、墓場、このあたりをぐるぐるぐる回っているような気すらした。
一気呵成には読ませる、でも好みではないかもしれない。
顔のない兵士の話をずうっと読んでいて、それでこのラストか・・・
あとまだ解決していないことが多くないか?

・・・・・・・・・・・
どういう話の回り方をしているかというのが割合見えていく話だ。
この中で完全なる悪役がいて、彼の動向も戦争時代からもう際立っている。
その名前はプラデル。

戦争の末期になんとか無事に帰国したいと願う兵士達。
しかしそこで彼らを鼓舞するために(また自分の利益になるので)あることを仕掛けたプラデルという上官がいた。
このたくらみをふとしたことから見破ったアルベール。
彼は絶体絶命の穴の中に閉じ込められ死ぬ寸前だったが、エドゥアールという同じ兵士に一命を助けられた。
しかし、そのせいでエドゥアールは顔に壊滅的なダメージを受けてしまうのだった・・・


アルベールがもう情けない男感が滲み出ている。
常にお母さんの言葉が頭をよぎるくらいのマザコンの男。
でも、自分を助けてくれたエドゥアールに対しての恩義は忘れないので、そこはなかなかいいい奴だ。
そこここに、アルベールの情けなさがひょっこり顔を出していて、その割には慎重かというとお間抜けなミスも多い。
緻密ではない情けない男アルベール。
大体、なんでエドゥアールがお父さんとの確執で自分が死んだことにして欲しいと言ったのか、そこを追求しないんだろうか。
お父さんに会ってまでいるのに。
かなり後半、犯罪にも手を染めていくのだが、普通手を染め始めたら悪に染まっても行くのに、アルベールはなんだかここも曖昧な感じだ。
一方で恋愛もしたくて、うずうずしている(しかし・・・情けなさがこれだけあるのに、よくぞ彼女が出来たものだとそこに驚嘆)

エドゥアールは彼の顔を修復しないでひどい顔のまま、過ごしている。
お父さんと彼との確執の原因は後半わかってくるのだが、その時に、(ああ・・もしや・・・)とちょっと思ったことがあった。
この二人に一人の少女ルイーズ(大家さんの娘)が親しげに近寄ってきて、エドゥアールの仮面を作る手伝いをする。
ところがこの少女が出てくる場面印象的なのに、なんだかお母さんとのやり取り(お母さんは放置?)もないし、少女の存在ってなんだったんだろう?と最後まで読むと腑に落ちない。

また、宿敵プラデルの意外なその後の人生、があり、それは大きくエドゥアールにもあるベールにも関わってく。
→プラデルの奥さんがエドゥアールの実姉であり、
義父は当然エドゥアールの実父になる。
プラデルとアルベールは、なんとか会わないようにアルベールが動き回るので会うことこそ少ないのだが、色々な場所で接点が出来ていく。

しかし・・・このラスト・・・・

以下ネタバレ
・エドゥアールと父との確執は
エドゥアールがゲイだという事だった。
しかし実際彼が死んだということになって(これはアルベールが画策してそうなった)父は後悔する、自分の息子を受け入れなかったのを。
最後、父の車でエドゥアールが跳ね飛ばされて死ぬ(これって・・・)

・詐欺をする二人で大金をせしめる(戦没者記念の彫刻の下絵を描いた)。
エドゥアールは死んでしまったので、彼女ができたアルベールはとりあえずはレバノンに行く、国際手配状が回ってはいるが。

・それで・・・ルイーズはお金を二人から残されているが、この40年代の初めに見出されたってどういうことだろう?

・・・
・エドゥアールはゲイだった。
だからアルベールに何らかの感情を持っていたのだろう、または持ち始めていたのだろう、というのは想像できる。

・経費削減でその文を自分の懐に入れるために、プラデルが兵士の身長を考慮せず
130センチの棺桶を作ったところは嫌悪感でいっぱいになった(つまり砕いて適当に入れるということ)
またちゃんとどれがどの骨かというのを見極めなかったという極悪非道のところも。
更に戦場で鼓舞するために、二人の兵士を後ろから撃って敵が撃ったと嘘をつくところも(これをアルベールに見破られ、更にアルベールを爆薬で殺そうとした)

これだけの男なのに、なんだか長生きしていてがっくりする(末路がどうであれ)