2017.05.22 渇きと偽り


評価 5

良いなあと思った。
何より読みやすいミステリだ。
このタイプの話ってよく見かけるので話としては既視感がある。
今現在の殺人事件・・・そして過去の殺人事件・・・これが絶妙に絡み合う・・・誰もが知り合いという閉鎖的な人たちがいる片田舎のそれも殺人事件・・・
でもこのミステリが同じような話と一線を画しているのは、この環境なのだ。
旱魃で干上がっている大地。
農業をしている町の多くの人たちにとっては死活問題だ。
皆が苛立っている。
暑いし、水もないし、物も売れないし、勢い町全体が活気がない。
ここで終わるのかと思うほど皆が天を仰いでいる
周辺がこれだけ殺気立っていて一家全員が死亡というニュースも、一人の男が旱魃に負けて未来を悲観して自分の妻を殺し、子供を殺し、そして自分が自殺、という異常な状態になっても、誰も自殺を疑おうとしない。
この部分がわかる、これだけのひどい環境なのだから。
苛立ち、絶望感、は暴力を呼び、過去の亡霊にすら唾するようになる。
そこに戻ってきたのが、過去石持て町を追われた一人の男フォークなのだ。

連邦警察官フォークは、20年ぶりに故郷に帰る。
それは、フォークにとってつらい旅になった。
なぜなら、彼は20年前に町の人たちから嫌がらせを受けて父とともに逃げるようにこの町を去ったのだった。
それは、彼の女友達の死亡事件、に絡んでいると町の人たちに疑われたからだ。
そしてその時に唯一自分のアリバイを証言してくれた友人のルークが自殺したという。
ルークの父から不思議な意味深長な手紙を受け取ったフォークは、故郷に・・・


このミステリ、過去と現在を行ったり来たりはしているけれど、その描き方もわかりやすい。
章を別だてにするのではなく、太字で話の中に入れ込んでくれているのだ。
だからあっちこっち飛ばなくて済むし、何より話が途中で途切れずずうっと続いているので、一気に読める。

ルークが昔太陽のような男の子であって、ルークとフォークとグレッチェン(女子)とエリー(女子)が4人組の仲間だった。
この子たちが仲良くしている姿も鮮やかだ。
そして途中で恋模様もあり、それぞれの性格の違いなども浮き彫りになっている。
ルークは成人して、カレンという素晴らしい伴侶を得ている。
本当にルークは一家全員を殺害したのだろうか?という謎から始まる。

フォークも探偵役になるがもう一人頼もしい味方が町に外からやってきたレイコーだ。
この二人が常識的な人間なので読んでいてほっとする。
嫌がらせをフォークは過去の事件を覚えている人たちから受けるのだが、これも読んでいて胸が詰まった。

誰が(現在の事件の)犯人なのか、誰がどうしたのか、というのは途中でなんとなくわかる、動機まではわからないものの。
また善人と悪人がぴちっと分かれすぎている感じもする。
あと・・・PTAのあの怒っていたお母さんの話はいろどりなのか、あれで終わりなのか。
父との相克があまりにやるせない、と思ったりしたのだが、これもこれで終わりか。
そもそも、名前にフォークとあるだけで、疑われるという状況は一体何だろう?フォークに助けてもらったかもしれないし、フォークに連絡していざという時は、かもしれないし。名前があったから疑われる??
といろいろ思うのだけれど、読む手が止まらないのはいったいどうしたことだろう。
要は書き方がとてもうまいのだ。
伏線が絶妙に配置され、そして、フォークがある言葉で気づくというところが最大に読む側に!!という気持ちを思い起こさせる。
犯人がわかってもそしてそれが当たっていてもなーんだという気持ちにはならないミステリなのだ。
それぞれの人の心に抱える鬱屈、その人が生きていく状況、などがまざまざと喚起させられる。



以下ネタバレ
・(ごめんなさい、フォークのお父さんがずうっと犯人だと思ってました、過去の事件の。)
しかし過去の事件は、これだけ嫌がらせをしていたマルとグラント・ダウとは・・・とことん腐った奴ら・・・
エリーは父親に虐待されていた。そこから逃げようとした。
そして用意して隠したのがリュックサック。
私は、あのリュックサックに涙が出た。劣悪な環境から必死に逃げたかったエリー。

・現在の方は、あの校長がいかにも、で最初から怪しいのだが。
動機が分からなかった。
ギャンブル好きというのが、パブのバーテンダーの人の一言でわかるフォークが素晴らしい。