ヴィクトリア朝の寝椅子 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)ヴィクトリア朝の寝椅子 (20世紀イギリス小説個性派セレクション)
(2010/03/20)
マーガニータ・ラスキ

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評価 5

・・物と書けば一言で終わるのだが、それがメインであってメインではないような話だった。
何しろ最初の出だしは実に普通の出だしだ。

・体の弱い女性メラニーが(結核らしい)子供を生む
・死期は脱しているようだがまだ油断は出来ない
・興奮はしてはいけないと主治医に言われている
・旦那は金持ちだし、愛されているし、何不自由ない生活はしている
・が、体が回復していないゆえ、家に帰っても以前買った古いヴィクトリア朝の寝椅子に寝ていると言う状態が続いている。
・このヴィクトリア朝の寝椅子にはちょっとしたしみもある・・・


寝椅子に寝たメラニーとそのあとの展開のミリーの意識が交錯し、そして響き会う様が読んでいてとても面白いところだった。
つまりは読んでいる側もこの混濁具合に引き込まれ、一体これはメラニーの意識なのかミリーの意識なのかわからなくなってくるのだ。
メラニーが必死に自分の置かれている位置を確かめようとする。
それは時代を確かめようとして、また自分が一体誰かと言うのを確かめようとしているのだが、それが単純に時を確かめている、というのではなく、自分が一体何者だったのかというところまで降りているのが面白い。

体がある。
そこに精神があり意識があり、更には記憶がある。
それら全てがぐらぐらと揺らいでいき、そして渾然として自分の中で溶けて行く時・・・・
何が確かなものか全くわからず混沌としてくるこのラストがとても怖かったし面白かった。


以下ネタバレ
・・物とはタイムトラベル物。
寝椅子がこの場合タイムマシンになっている。