うつつ・うつらうつつ・うつら
(2007/05)
赤染 晶子

商品詳細を見る


評価 4.8

私が読んだ感じで言うと、
未完成と言う感じがするのだが(特に表題作)、その未完成な部分がマイナスになっているどころか、妙なパワーになっていて、下手に完成した作品より面白い。

最初の「初子さん」は
あんぱんとクリームパンの中身を間違えるようなぼんやりしたパン屋に勤めている
更にぼんやりした本職は針仕事をしている初子さんの日常・・・
パン屋のちょっと足りないっぽい娘とか
近所で百合の柄のスカートを作ってあげた新婚夫婦の夜逃げとか
が描かれている。
なにげない描写を粘っこく描いていくところに作家の目が光る・・・

「うつつ・うつら」は
場末の劇場で面白くもない漫談をしている鶴子の話・・と思いきや・・・
後半のあまりのかっ飛び方にただただ茫然とした。
売れない芸人が場末で面白くない芸をしていると思っていたら、
そこに聞こえる映画の音がかぶさり(しかもエロ映画)
小夜子のほっちっちーのいらっとする声が加わり、
更に更に客が置いていった馬鹿九官鳥の鳴き声が加わり、
最後に別の泣き声まで・・・。

舞台を見ていたはずなのにふっと別世界の異次元に連れて行かれるところが快感だった。
「何かをぼろぼろ落としていくまたは何かが消えていく」のを読むのが面白かったのだ。