2010.08.07 背中の記憶
背中の記憶背中の記憶
(2009/11/20)
長島 有里枝

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評価 4.9

なんていい視線なんだろう。
なんて色々なことを喚起させてくれるんだろう。

エッセイ集ということすら知らずに手にした本だった。
作者が写真家と言うことも失礼ながらこの本で初めて知った。

彼女の祖母を見る目、母を見る目、家族を見る目。
それは「かつての」彼女の家族の姿であり、「かつて」子供であった彼女の視点もまた含まれているのだ。
読んでいて限りなく懐かしく感じるのは、誰にでもある幸せなでも混沌としている幼少時代というのを思い出させる文章だからだろう。
作者と全く違った年代で、全く違った環境であるのに、このノスタルジーに溢れた言葉って何だろう。
タイトルにもなった背中の記憶は、ワイエスの絵から始まって祖母の背中に行き、そして自分の写真家としてのスタンスまでにたどり着く名文だと思った。

夏の花火、親戚一同が集まっていたある記憶、団地の意地悪だった友達と同じく仲良かった友達とのあまりにあっけない別れ。
そういうのがひたひたとこちらの胸に迫ってくるのである。

一文一文が短くはなく、文章として読みやすいといった文章でもない。
それでもいつくしむように読んでしまう力がこの作品にはあると思う。