奪い尽くされ、焼き尽くされ (新潮クレスト・ブックス)奪い尽くされ、焼き尽くされ (新潮クレスト・ブックス)
(2010/07)
ウェルズ タワー

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評価 4.4

悪くはない。
褒めに徹すれば褒めるところも沢山ある。
けれども、今の私にこの話が必要かと言うとそうでもなかった、というのが本音だ。

あらゆる語り口で細かな心理状態を克明に描写していくので、そこは面白いと言えば面白い。
またユーモアもところどころあるらしい(すまないがあまりユーモアと思えなかった、私には)
読んでいて心地良さを感じると言うより、心のざわめきを増幅させるような小説のように思えた。
ざらっとした思いを心に残してくれるような小説とでも言えばいいのか。
折々に思い出す場面も多いのだろう、この小説、読んだ直後より後からじわじわボディーブローのようにきいてくるのかもしれない。

この中では、イングランド北部を襲うヴァイキングの残虐な姿の表題作が印象的であった。
内臓が飛び出てもまだ話している人間。
アバラ骨を砕き、両手を切れ目に入れ、肺を引きずり出す人間。
そんな暴力の限りを尽くした描写の合間に彼らの心理状態が描写されラストには家族についての非常に印象深いワンパラグラフがある。

またアルトマン映画のように次々に人がなだれ込んできて、その人たちの人生を炙り出す「遊園地営業中」が面白かった。動きがある分だけ読んでいて映画のようで読み応えがあったのだ。

友人になった夫婦との奇妙な交流を描く茶色い海岸は、水槽の使い方が忘れられない、全ての魚を食べつくしてしまったという象徴的なナマコとともに。

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茶色い海岸/保養地/大事な能力を発揮する人々/下り坂/ヒョウ/目に映るドア/野生のアメリカ/遊園地営業中/奪い尽くされ、焼き尽くされ