2010.08.11 殺す
殺す (海外文学セレクション)殺す (海外文学セレクション)
(1998/09)
J.G. バラード

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評価 5

大好きだ、こういう小説。
バラードなのでSF?と思いつつ読んでいたのだが・・・
どうやら異色作らしい。
現代への問題提起という読み方も出来るけれど(書いた時代を考えて今の世相を考え合わせれば)、それよりも単純に話として面白い。

最初に閑静な住宅街で大人全員が惨殺されると言う事件が起こる。
そこに住んでいるのは、超絶にリッチな人々ばかりだ。
守衛がいて、監視カメラがあって、この中でどうやって誰が侵入したのか。
更に謎は、
子供たちが全員かき消すようにいなくなって誘拐されたらしいのだ。
誰によって。
なぜ?


サスペンスの要素を限りなく内包しながらも、刑事達は考えるのだ。
ここに住んでいる人たちの何かミスがあるのだろうか。
不倫があるのだろうか。
途中であらゆる推測(ここにSF的な宇宙人説まである・・・)が出てくるところも誠に楽しい。
考え付いたことが、全て私が考えたようなことだったからだ。
バスルームにドライヤーを投げ込まれたり
いきなり食卓で惨殺されたり
それはそれは多彩なのだ。
刑事の一人が、ドライヤーを試してみるところも印象深い(ここがあとの伏線になっていることに注目)

そして色々な推測の果てにある一つの推測に行き着きそうになる。
そこに現れたのが

誘拐された一人の少女なのだ。
この少女が一人だけ救出され、病院に入れられる。
ショック状態で何も話すことは出来ない、ある仕草を除いて。

この小説、たとえオチのようなものがわかっても(想像がついても)じゃあつまらなくなるか、というとそうでもないところがまた優れているのだと思う。

最後の最後まで読ませる小説だった。
この映画見ていないが、映画にしたいと言う気持ちはとてもわかる。
悪意の連鎖と、この世の中の不条理観がたっぷりと味わえた一冊だった。

以下ネタバレ
・誘拐されたのではなく
犯人は当の子供たち。
見つかった少女のみ、幼かったので、見つかってしまった。
彼女が空中で手を動かす仕草は、ドライヤーを投げる仕草だと刑事が気づく。
少女は再び子供のリーダーによって誘拐され、数年後にテロの犯人として再登場する。