2010.08.13 幻影の城館
幻影の城館幻影の城館
(2006/09)
マルセル ブリヨン

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評価 5(飛びぬけ)

幻想っぷりが素晴らしかったのだ。
そして幻想だけではフワフワして終わるところを、きちんとした物語の形を成している、というのがまた面白かった。
粗筋を見るとイニシエーションの旅などとあるけれど、それはそうなのかもしれないが、それより「物語」として非常に読むべきところがあったのだ。

・・・
冒頭から印象的だ。
ある城が見えてそこに行きたいと願う男がいて、城壁を歩いている、ぐるぐると。
そしてふっと扉がありそこから入るとそこは農園があり、農家がある。
ここに二人の女性が住んでいる、一人は母親で一人は娘マリヤンヌと言う・・・

面白いのは、城、があるのになかなか城に行き着かない。
じゃあカフカの城のような話かというとそういう不条理の話ではなく、なんだか夢の中でここで満足している人みたいなのだ。
農園で満足していて、そのうちに、庭に出る。
庭と言うのは林苑だ。
これが広大に広がっていてその後ろ側に城があるのだ。
だから当然林苑にも城の人が出てくる。

林苑には庭園監督がいて、木が元気がないと嘆いている。
奇抜な彫像が立ち並び、洞窟もあり、迷路もあり、美しい薔薇園もあり、音楽堂もある林苑を歩いていると、
泉水にいるはずのない女性の顔が映ったりするのにも遭遇する。
・辺境伯夫人
・その息子のウルリヒ
・司祭
・モンタギューブルームとバルベ犬(主人公がサートマスブラウンの本を読んでいる時近づいてきて話をする。彼の本だった(マリヤンヌの家にあったので読んでいた本が)
・娘達
等にも出会う。
美しい音楽祭でフルートの音を聞いたり、歌を聞いたりする。
また仮面のパーティーのようなものもある。
ここの場面も誠に美しい。
虚実が一枚の皮でしきられて、そしてめくれていくさま・・・
彫像の怪しさとともに、さんざめくパーティーの様子が一夜限りのはかなさを歌い上げている。

城にはマリヤンヌが手伝いに行っているのでそこに連れて行ってもらって部屋を見たりもする。
そこには壮麗なタペストリーがあり、数え切れない部屋もまたあるのだ。

・・・
全てが美しくそれでいて幻影であるようにぼんやりとしている。
最後に主人公がここで食べ物を食べなかったかと聞かれはじめて全ての意味がわかってくるのだった。