2010.08.13 隔離小屋
隔離小屋隔離小屋
(2010/05)
ジム クレイス

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評価 5


原題がThe Pesthouse。
これは疫病がはやり、次々に荒廃していくアメリカ中の村を渡って海に行き(ヨーロッパにおそらく渡ろうとしている)新天地を求める人の話だ。
物語そのものが非常に起伏に富んでいて読んでいて面白い。
そしてなぜか希望が見えるのだ、この隔離小屋の男女二人には。
ザ・ロードの乾いた散文詩のような畳み掛ける文も切々とこちらに訴えかけてくれるが、この隔離小屋の終末観もまた読んでいて一種のロードムービーのような気楽ささえ(これだけ必死なのにお気楽さがほのぼの漂う)感じる冒険譚であった。
またザ・ロードは親子の物語でもあるけれど、この隔離小屋は男女の愛の物語(しかも女性は年上でまだ男性経験もない女性で二人ともこの小説内では結ばれてさえいない)でもあろう、。
宗教団体、殺戮者、伝染病にかかったと分かると態度を変える同行者・・・・
出てくる人たちもまたどの人も印象深い。
隔離小屋というタイトルに示されているように、この小屋が最初と最後をぴちっとしめてくれている。

神はここにはいないものの(誰も祈ろうともしない)、途中で鳩を足に結びつければ災厄が落ちる、とか、おなかがすいた赤ん坊に甘い(甘い?)耳垢を舐めさせるとか、土俗の信仰のようなものが顔を出すのもまた読みどころだ。
祈る代わりにこの人たちは手を動かし、足を動かし、必死に生き延びようとしている。
馬を殺し乾燥肉にし、きのこをとってきて食料にし、飲み物を確保しようとする。
・・・・・
フラックスと言う新種の疫病の疑いがあるので隔離小屋に閉じ込められたマーガレット。
そして膝が悪いので兄と一緒に行かなかったフランクリン。
結果的にこれが二人の命を救うのだ。
なぜなら、湖の底からの毒ガス発生し、それが風に乗ってマーガレットが住んでいた街「フェリータウン」を襲い全滅したからだ。

最初マーガレットと言う疫病に冒されたマーガレットと言う女性と、大男の兄弟の弟のフランクリンの出会いがあった、タイトルの隔離小屋というのが話全体を象徴しているようだ。
弟として兄に頼っていたフランクリン。
ところが途中で膝を痛めたので、食料もろもろの調達に兄がある村に入り込んでいく(この兄の入村時のしきたりも手の平を見たり、いかに疫病を恐れているかがわかる)
その間に、マーガレットが隔離小屋にいるのを知り、一目で惹かれたフランクリンは彼女の足をさすったり食事を作ったりして看病する。
そしてマーガレットは回復。

このあと二人の旅になるのだが、鍵となるのが、マーガレットの髪なのだ。
疫病にかかったもの特有の髪を剃るという髪型なので、誰もが忌避する。
(ここがラストの方で、ある一つのことをマーガレットが気さくとして思いつくところに結びつく→わざとフランクリンの頭をそり彼が疫病にかかった人間として、人を近寄らせないようにする)

途中、強姦あり、食糧難あり、残虐行為ありなのだが、合流したある一つの家族(祖父母と息子と赤ちゃんヴェラ)に出会う。
そして、フランクリンが略奪され、その赤ちゃんヴェラをひょんなことからマーガレットが引き取ることになる。
フランクリンとばらばらになりながら、ある宗教団体フィンガー・バプテスト(カルトっぽい集団)の場所で糊口をしのぐマーガレットと子供。
偶然そこにフランクリンを捕まえた悪漢達が襲撃にやってきて二人は再会するのだった。
海ではそれほどいいことが待っていないことが判明したので、元に戻ろうとする。
そして隔離小屋に。