2010.08.20 天使
天使天使
(2010/07/23)
須永 朝彦

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評価 5(飛び抜け)

漢字の独特の使い方といい、文章といい、内容といい、全て私の好みだった。
同性愛、ヨーロッパの金髪碧眼への憧れ、天使、不老不死、吸血鬼伝説、血、ハンガリー、ハプスブルクク家・・・・・
美と死に彩られた深い世界。
曖昧でありながら一つの独自ワールドを確立している世界。
読む人を非常に選ぶ小説と思いつつ、堪能できなかった方は残念だろうなあ・・と思ったりするのだった。

耽美な雰囲気で、全てが非常に短い話で終わっている。
短篇と言うより本当に手のひらに乗るような掌編である。
でもそこにぎゅっと濃縮された摩訶不思議な世界が広がっている。
・いつまでも生きている不老不死の男が実は吸血鬼らしい。
・女性と思っていたらそれは実は男性だったらしい、いやそもそも本当に女性なのか。
・助けたと思った翼のある人間に置き去りにされている子供
・夜中に子供のおもちゃが突如動いている怪
・シンデレラのような姉ゾフィーと驕慢な妹のエリザベートの攻防

特にこの中で樅の木の下でと続きのドナウ川の漣が読ませた。
外交官としての修行を積んでいる男が、ある一人の貴族の末裔とヨーロッパで知り合う。
そこで自分の元の城に行こうといわれるのだが、あと一歩のところが踏み出せないまま日本に帰国。
この森の中の陶然としたシーンが忘れがたい。
またその続きのドナウ川の漣のラストのシーンと言ったら!
それからの続きを思い切り想像してみたのだった。