2010.10.19 失踪家族
失踪家族 (ヴィレッジブックス)失踪家族 (ヴィレッジブックス)
(2010/08/20)
リンウッド ・バークレイ

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評価 5

大変私のツボだった小説だった。
失踪テーマと言うのは推理小説に多いけれど、この小説は、「たった一人残された少女のその後」というのが成長していくのとともに実にこちらにわかるように描かれていたところが面白かったのだった。
また少女本人の追想、と言う形ではなく(つまり一人称ではなく)、彼女の夫という第三者視点であり、それでいて「わたし」という書き方なので、ここがまたサスペンスに非常に全体に効果を上げていたと思う。

「わたし」が書いているので、読者が思っているようなことを「わたし」も思う。
つまりは、これが全てかつて家族に失踪された女性の妄想ではないか、とか、女性の自作自演ではないかとか、そういうところが、読者もまた思うのだ。
たとえば、タイプライターを使った脅迫状とか、子供の周辺に回る茶色の車とか、謎の電話とか。
もしかしたら、全てが彼女の妄想で、または彼女が実は犯人だったのではないか、という夫の怯えが、読者にも伝わってくるのだ。

最初から最後まで緊張の糸がほどけず、尚且つ、最後の謎解きは、おお!と思わせるものだった。
最後で明かされる一つのことに涙したのであった・・

・・・・・
失踪の物語なのだ。
どういう失踪かと言うと
・反抗的な14歳の女の子が、ワルの男子と一緒にいたところを車から、怒ったお父さんに引きずり出され、ぶうぶう言いながら家に帰らされる。
・その時点で酔っ払っちゃってるので、優しいお母さん、ちょっとワルっぽいけど話を良くする二つ違いの兄、とは話もほとんど出来ないで、バタンと寝ちゃう。

翌朝女の子が起きたら
家族全員が消えている。
不審に思いつつ、どこかに行ってるのかとも思って
学校にそのまま行くんだけど
兄が来てないということがわかり
早退して帰宅して。
まだ誰もいない。
そのままの形で家が残っている。
警察を呼んでも事情がわからない・・・

ここから家族がいない人生が始まる・・・・

女の子(当時)が成長していくにつれ
何百回と考えることは、
・殺されたんだろうか、家族は、侵入者に。
だとしたら、なぜ私は殺されなかったんだろうか。
更に、殺されたとしたら家族はどこに?
・家族全員が自分を残して家出しちゃったんだろうか?
だとしたら、私が最後にあんなふうに反抗的だったからだろうか?
お父さんはともかく、あの優しいお母さんが何も言わずにいなくなるってありえるだろうか?

・・・・・
自分を何度も責める女性。
そして謎にからまっている彼女の人生。
いつか帰ってくるかもしれない家族を待つ彼女の人生。
そして彼女を理解してくれた温かい気持ちの夫が寄り添うことになる。
更に、彼女を育ててくれた叔母にも秘密があった・・・
徐々に彼女の周りにはびこっていく悪意・・・
真相がわからない限りは前に進めないというジレンマがこちらに痛いほど伝わってきたのだ。

この全てが過去から発生している、というのも読ませたし、また失踪の当日の様子というのを意外な人間が見ていたというのがわかった時に、驚愕したのだった。
更に失踪当日の本当の様子というのが語られた時に、驚きが残ったのだった。

・・・以下ネタバレ
・家族は失踪したのではなく
母と兄は殺された、車に入れられて、湖に落とされて。
父は生きていた。

・父がもともとの元凶。
二つの家庭を持ったセールスマンだった。
問題の日、もう一つの家庭の狂った妻が、少女の家から出てきた母と兄のあとをつけて殺し、車で捨てる(これに父も協力)
少女がいるとは知らなかった。

・このもう一つの家に
少女の兄とそっくりな腹違いの男性がいた(ショッピングモールで見かけた男性)

・探偵、叔母を殺したのは
夫の勤め先の全てを理解していた校長。
彼はかつてのひき逃げに見せかけた殺人のかわりに、お金を少女の父から預かって叔母さんに渡していた。

・出て行くときにはいつも書置きを残してくれる母、と言うのが何度も出てくる。
この小説のラストで
実はちょっと出かけてくる(つもりだった)母の最後の手紙(父がかっさらっていた)が出てきて、それに涙する・・・・