アルバトロスは羽ばたかないアルバトロスは羽ばたかない
(2010/07/27)
七河 迦南

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評価 5

一作目に比べるとなんて面白くなったんだろう。
なんて進歩したんだろう。
一作目のあのもったりした感じが消えてるってすごいことだと思う。
文章にやや難があるのは否めない。
ところどころこれは?と思うような文があるのも否定は出来ないのだが、それでも話の構成の仕方、一つ一つのエピソードの見事さ、最後に明かされる衝撃の謎、そこまでの(否定の連続の)推理の過程、と何拍子も揃った作品に違いない。
ラストの近くである驚愕がある。
そして最後まで読んで、こういうことかと最初から読み直すとまた別の側面が見られたのだった。
ラストも見事だ、こういうラストは私は大好きなのだ。

ちょっとごちゃっとしているのが惜しいと言えば惜しい。
莉央エピソードとか、喫茶店の話とか、同性への思いとか、要素が多すぎるので、そこがいいといえばいいのだが、ごちゃごちゃっとしている感じは漂う。
更に、海王さんの部分が機能している部分と機能していない部分がある。
この人が謎解きの人なのか、それとも語り手が謎解きなのか、このあたりもごちゃっとしているような気がしたのだった。

舞台そのものが「養護施設」という特殊な場所なので、それが前の作品ではどちらかと言うとマイナスに響いたのだ。
そもそもミステリが起こると言っても、その子供達自身が問題を抱えている。
虐待、暴行、無視・・・
だからその社会的な悲惨な問題とミステリがうまく調和させると言うのが難しいなあと前作では強く思ったのだった。
なぜなら、人の目はミステリより虐待とかそちらの方にシフトしてしまうから。
子供の気持ちにどうしても行ってしまうから。
ミステリがかすんでしまう部分があったのだ。

今回は、その養護施設で、ある飛び降りがあった。
その真相はどういうものか。
養護職員が高校に行って事故があった文化祭当日のことを聞きまわるのと同時に、春から秋にかけて起こった出来事が綴られている。
それは小さな謎の積み重ねだけれど、この中で
「サッカー選手がいなくなった話」
が最大に良かったと思う。

以下ネタバレ
・サッカー選手がいなくなった話は
施設同士の子供達が協力して
男子サッカーのチームが実は施設で虐待されていて
その保護を求めるのに脱出するのに手を貸していたという話。
女子が男子サッカーのふりをしていたと言うのも秀逸だし、
喧嘩っぽいやり取りも狂言というのがすごい(キーパーのみ残されたと言う部分もまたリアリティーがあり)

・飛び地の話から、
飛び降りが実は心中ではなく
母も助かりたい一心だった、という話につながる春の章もすごい。
自分もかつて七海学園で暮らした母親は、冷たい自分の県ではなく
いい思い出のある、七海の県に行きたかった。
だから唯一飛び地の灯台の場所で、生き延びるために落ちるのだ。

・ラスト、
驚愕は、実は突き落とされたのは、生徒の瞭ではなく(と思って読んでいる、読者は)
施設にいた春菜だった→意識不明。
瞭が突き落とした。
そして手記は春菜が書いていたが(エピソードノート)
この冬の部分は春菜の友人佳音だった。
探偵役は、読者はずうっと春菜と思っている。
でも彼女は病院で意識不明で、実際の探偵は佳音だった。