きょうも上天気  SF短編傑作選 (角川文庫)きょうも上天気 SF短編傑作選 (角川文庫)
(2010/11/25)
フィリップ・K・ディック、カート・ヴォネガット・ジュニア 他

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評価 5

既読はディックだけだったのでとても楽しめた短篇集。

浅倉久志訳を大森望が集めたもの、ということで、浅倉久志の偉大さを改めて思ったのだった。
的確な訳文の素晴らしさ、それでいてわかりやすい名文、本当に惜しい人を亡くしたものだ。

一番最初に「オメラスから歩み去る人々」があるが、まさにサンデル教授を読んだばかりなので、一人の少年の犠牲の下に成り立っている世界観というのがひしひしと身につまされたのだった。
幸福な幸福なオメラスという都市。
そこでは誰もが幸福に暮らしている・・
しかしそれが何から成り立っているかというこの発想の豊かさが素晴らしい。
そして表題にも繋がる鮮やかなラストの幕切れもまた・・・

シェクリイの「ひる」も何でも強烈に吸い込んで食べてしまう謎のひるが忘れがたい話だ。
倉橋由美子の聖少女に出てくるらしいので(忘れている)是非聖少女も読み返してみたい。

そして表題作は、とんでもない悪魔のような子供に支配されているある一つの村物語で実にわくわくし村の状態が最後でわかり更に驚愕したのだった。

以下ネタバレ
・オメラスでは子供が一人地下牢に悲惨な状況で閉じ込められている。
なぜ、というのは想像に委ねるしかなく、こういう世界だからと言う説明しかないと思うのだが、彼の犠牲の元に上の世界が成り立っている。
(ちょっとタイムマシンの地下のモーロックを思い出した)

・きょうも上天気は、子供アントニーが相手が心で思ったことをわかり、それに対する反抗を実行できてしまって、処刑もできるというところで大人全員がびくびくしていて、音楽を何をかけるというところから始まって、否定的な言葉は口にしないとか、子供に気を使いまくっているところがなんとも物悲しいし、ちょっと笑えるし、笑った後にぞっともするのだった。
全員が頭で思ったことを消すために「もぐもぐ」というところ(思うところ)がすごい。
そして最後の方でこの村から脱出できないことがわかって更に驚愕した。
なぜならこの村はぽっかりと浮いている村だったから。
(これが別の世界を子供アントニーが滅ぼしたのか
この村だけを特別にこういう風にしたのか
そこすらもわかっていない)