2010.12.15 流跡
流跡流跡
(2010/10)
朝吹 真理子

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評価 4.7

まさにこのタイトルどおりの小説だった。
零れ落ちる雫の一つ一つを捉えていくような小説だった。
そこに残っているのは静かなる流跡・・・・

最初頁から文字が零れ落ちる、そして実体を持った男になり川を下り、そして女になり・・・
こういう粗筋を書いても全くこの本の魅力を伝えきれないと言うのがまた、この本独特のものなのだと思う。
全てが曖昧の元に始まり、曖昧のままに終わる、そういう物語だが、一旦この中に身を浸すと、その魅力にとりつかれる。
独特の言葉遣い、独特の文字に使い方、にも目を見開かされる。
詩とは違うのだが、物語を読んでいくというよりも、一種の印象的な詩をぶつけられたような気すらしてきたのだ。

作者の心の中に内包されていたものがここに出現していく。
それを掬い取っては言葉にしていく、文字にしていく。
そして読者はおのおののスタンスでこれを受け取りまた自分の内部に蓄積していく、そういう物語なのだと思った。