2011.01.20 悪人の物語
悪人の物語 (中学生までに読んでおきたい日本文学)悪人の物語 (中学生までに読んでおきたい日本文学)
(2010/11)
松田 哲夫

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評価 4.6

中学生までに読んでおきたい日本文学ということでセレクトされている本。
この本のテーマは「悪人」である。

最初の山村暮鳥のは有名なので知っていたが、今読んでもどきどきさせられる。言葉の使い方、ひらがなの使い方がとても効果的なのだ、騒擾ゆきとか放火まるめろ、とか一度読んだら強烈過ぎて決して忘れられない。

印象的だった話は、宮沢賢治の毒もみのすきな署長さんだった。
これは悪人が悪人たる凄味というようなものが最後の最後で、童話の作りとはいえ出てくる。毒もみと言う言葉自体に心惹かれ、読んでいくと、署長さんのしたことがつまびらかになり、最後の強烈な一言につながっていく連鎖が見事だ。

また野口冨士男の「少女」も一種の誘拐物なのだが、一時代前の貧しい誘拐物で、ここには格差社会とか少女に対する男の揺さぶられるような感情というのが全体から滲み出ているのだ。そして当の誘拐されている本人の少女はどう思っていたか、というのがこれまた最後の最後の一言でわかる。
毒もみ~も少女も共に、最後の一言の決定打が物語を更に深めていると言えよう。

ある抗議書は、自分の妹夫婦を惨殺された人間が、捕まった犯人がキリスト教に帰依し安らぎを得手死んでいくということに対しての疑問がもうもうと立ち込めている小説だ。
これは現代にも通じるテーマだと思った。

ラストの柳田国男の話の怖いこと怖いこと!
事実は小説より奇なり、とはこのことだと思った。

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囈語(山村暮鳥)/昼日中老賊譚(森銑三)/鼠小僧次郎吉(芥川龍之介)/毒もみのすきな署長さん(宮沢賢治)/悪人礼賛(中野好夫)/少女(野口冨士男)/善人ハム(色川武大)/ある抗議書(菊池寛)/停車場で(小泉八雲)/見えない橋(吉村昭)/山に埋もれたる人生ある事(柳田国男