(海堂尊)
角川書店

評価 3.9

実に微妙な作品だった。

医学のたまごでも出てくる佐々木アツシ君のコールドスリープ物語だ。
(5年のズレがあったのでそれを補正するためにこの話が作られたらしい・本人談)
眼の病気で片方を失明、このままでいくともう片方も失明していくという話の中で、SFのように冷凍睡眠の施設が日本にあると設定されている。
突然設定されても、と思うけれど、小説なのでそういうものかと飲み込む。
そこで一人見守る任務にあたっていたのが日比野涼子。

この涼子の見守りがまず好感が持てない。
ベジタリアンらしく食事もそういう方向で、ここに引きこもってじいっと見ている。
友達もいなそうだ。
涼子が魅力的ではないので、続いて出てくる「彼」になる西野が惹かれる理由がまずわからない。
更にもっとわからないのは西野に体を許す(案外それも簡単に)涼子のリアリティーがない。
この機械を作ったのは西野で、それに対して色々と規定とか突っ込んでくるし、涼子も涼子で冬眠原則の曽根崎論文を徹底的に読み込んでいる。
またノルガ共和国という涼子が昔住んでいた場所のエピソードもわかったようなわからないような気持ちにさせられる。
途中で厚生省に対する例の通りの不満・・・・

あれもこれもと欲張りすぎていないか。
更に、最後涼子がとった行動って本当にモルフェウス(佐々木アツシ君)のためになることなのか。
実に独善的で涼子の欲望に沿った話としか思えなかった。

こんな中、田口先生ののんびり具合が唯一ほっとできる。