死をもちて赦されん (創元推理文庫)死をもちて赦されん (創元推理文庫)
(2011/01/26)
ピーター・トレメイン

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評価 4.9

フィデルマシリーズの最初の一作らしい。
そしてこれがなぜあとになって出されたかというのが解説にあるが、これもまたとても読み終わってわかった。
なんせ、最初の方から非常にわかりにくい。
なぜなら、古代アイルランドという設定は別に本でももう慣れていて、フィデルマがこの特殊世界で尼僧でありながら弁護士兼探偵のようなことをしている、というのも飲み込めている。
だからこそこの話のわかりにくさにもついていけるけれど、これがフィデルマプラスこの話になったらお手上げだろう。

話のわかりにくさは、宗教の対立というところなのだ。
日本人にはまず宗教そのものがわかりにくい上に、同じキリスト教なのに(と見える)、ここにはアイルランド系のキリスト教アイオナ派があり、ローマ派のキリスト教があってそれぞれ対立している。
ノーサンブリアという王国でオズウィーという王様が、ローマ派に与するか、アイオナ派に与するかに迫られている。

対立もそれぞれの信仰している使徒ペテロだの、使徒パウロだの出てくるのでここまた日本人にはわかりにくい。
更に何を対立しているかというと、髪の毛の上の切り方から暦から(イースターをいつにするか)、大きな問題としては妻または夫を聖職者が持っていいかどうかなどまで、幅広く対立している。
それぞれがそれぞれの聖書のここがそうだ、と譲らない。
まずこの会議が全体を覆っている、という構造がある。
ここにピクト人がいて、さらにはそれぞれの宗派の修道士がいて修道女がいて・・・と話は錯綜している。

プラス、ここに起きた殺人事件。
探偵役は、アイルランドを愛するフィデルマと、サクソン人のエイダルフという男性だ。
このエイダルフがなかなかの好青年なのに、フィデルマの感じの悪いこと・・・
どうもフィデルマが偉そうに見えて仕方がなかった。
全てアイルランドが一番という姿が透けて見えるのだ。
曰く
・アイルランドでは奴隷がいません
・アイルランドでは天文学が発達しています
・アイルランドでは刑罰がこんなに野蛮ではありません・・・・
そうなのかもしれないが、劣っている面だってあるんじゃないか、とサクソン人に代わって言ってやりたかった。

ともかくもアイオナ派の有力な修道院長の女性が殺される事件。
これを見事に解くのはフィデルマなのだった・・・

以下ネタバレ
・サッフォーという言葉で、グウィド修道女が異常に殺された修道院長に愛を寄せていた、というのはわかった、レズビアンという意味で。サッフォーという言葉があればそこは出てくる。
・結婚相手が反対勢力の男だというのも何となく想像がついた。
ただ、手紙の意味はよくわからなかったが。
・男性トイレが海に向かってのところにあるというのがものすごい情景と言えば情景。