完全なる首長竜の日完全なる首長竜の日
(2011/01/08)
乾 緑郎

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評価 4.4

このミスっていうのは分野が開いているのだろうか。
これは完全にミステリの要素のあるSFなんだろうなあと思った。
推理部分もあるにはあるのだが・・・

あと映画のインセプションと比較するのはどうなんだろう。
同じような部分もあるが、あれは意識下の階層に潜って行く、というのが主題なだけに、一部だけ似てると取り上げても何だか違和感がとてもあったのだった。
部分をとればまあ似てるといえば似てるが・・・
それだったら、映画のザ・セルの方がまだこの作品に近い。

・・・・・・・・・・・
前半は漫画家の姉の詳細な日常があまり面白くなかった。
でも後半に来てその詳細な日常が実に意味があることだ、というのがわかってきたのだ。
ただ・・・
バナナフィッシュ(サリンジャー)はまだしも、胡蝶の夢とかあまりに生な何かを喚起させる言葉が何度も出てくると言うのはいかがなものか。
これとの重なりというのを言いたければ、作品で見せて、それを読者が
(ああ・・胡蝶の夢だなあ・・・)
と思うのはいいと思うのだが・・・・

手なれた書き手だというのが文章を読んでいてとてもわかる。
小さい頃の実に印象的な南の島のエピソードで、青酸カリで魚を殺す作業から、子ども達二人取り残される事情から、子ども達が溺れかけて助けられるエピソードから、何度か繰り返し出される。
ここが徐々に開いていくところも巧いなあと思ったのだった。

また金属探知機で金属を探知している二人の少年少女のエピソードもあとで誰だかわかるのだが、これも忘れがたい話だ。
そこに、漫画家のファンだった少年が自殺して同じ病院にいてその母がいるという話を組み込んでいくのも技ありだった。
ラストも誠に印象深い。

と、褒める部分が多いものの、何だか私にはしっくりとこなかったのもまた事実だ。
ラストの驚き(これはラストの一行)はあったものの、読んでいてさっぱり心が浮き立たないのだ。
ポゼッションとフィロソフィカル・ゾンビが何だか取ってつけたような気がしたのだ。
この二つが突然出てきて、二つの違いが書かれているのだが、それでもわかりにくい。

・・・
・自殺して数年間、意識を失った弟と病院で意識を繋ごうとする漫画家の姉がいる。
ここにはSCインターフェースという植物状態の人間と会話が出来る医療機器が開発されている。
・漫画家の姉は、漫画の仕事に追われつつ、弟とセッションを保とうとしている。
・その内に漫画が打ち切りになりアシスタントの女の子がデビューする方向に行くのだが・・・


以下ネタバレ
・実は寝ていたのは弟ではなかった。姉の方だった。
弟は既に幼い時の夏の島で死亡していた。
現実と夢を行ったり来たりしているのが主人公の漫画家で入院している。
だから漫画家の日常部分は全て夢。
彼女が不倫を担当編集者杉山さんとしたあと、全てがうまく行かなくなり、自殺未遂を計った。
そして弟の形をして出てきたのが、彼女自身をセッション不能にさせた張本人でもある、別の死んだ男の子だった(ここがとてもわかりにくい)

・ラストこれが現実ではなさそうなのは、ベッドに拳銃が置いてあるところからわかる(その前にお節介な看護婦がいることからわかる)