連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)
(2011/02/04)
中山 七里

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評価 4.9

中山七里作品の中で一番好きだった。
一番、えぐくて残虐で、一般受けしない作品だとは思いつつも。
既存の推理小説のいくつ物パターンが出てくる。
でもそれが取ってつけたようではなくきちんとこなされているし、また残虐なシーンも酸鼻を極めるシーンもそれなりに読ませるのだ。
特に、古手川の二回のバトルと、暴動化した市の人たちの警察への乱入場面は読んでいてぐいっと引き込まれた。
性的虐待場面もあるのでそこは本当に辛い。
それでもラストに向かって突っ走っていくという牽引力のようなものがある。
刑法第39条が出てくるけれど、それはあくまで一つの推理要素の中の一つのような気がした。
そこの是非を問うという話ではなく、全体の仕掛けの中でそれが生かされ、そしてそれで収束していく。

冒頭から
吊るされて殺される、しかも奇妙な子どもからのようなメッセージがあったという場面で始まる。
そして次はプレス機で車ごとつぶされ
次は臓器を解剖され
次は燃やされる・・・
被害者達の共通項は何か。
どういう順番で殺されていくのか。
そこがわかった時に市内全体に戦慄が走る・・・・


最後どんでん返しの連続だけども、特にラスト一行が忘れがたい。
また途中の群集心理で警察署に殺到する市民達の暴動も印象深い。

以下ネタバレ
・被害者はアイウエオ順に殺されているというのがわかった。
しかも歯医者の患者と言うのがわかる(これはあとの方で)

・カエル男という名前がついた時点で
男である、というレッテルが貼られる。
ここが某作品ととても似ている。
ともかくも、最初の方の開き方で
歯医者で働いていた知的障害者の勝雄が自分でもカエル男だと言っているし、小さい時の日記もあるし(これが犯行現場の奇妙な言葉になっていた)、カエル男だと思われる。
しかも刑事の古手川と格闘するのだから(第一の格闘。第二の格闘はさゆりとの真っ暗闇の格闘)
さらに、勝雄と途中で出てくる父親に性的虐待を受けて女の子を殺した子どもはナツオであり、二人が似ている名前だ。
途中で改名という話が出てきて、ナツオが勝雄になったのだと読者は思うのだ(だが違う)

・ところが実は勝雄の引き取り先のピアノの先生有働さゆり(女性)が犯人だった。
彼女は自分の子どもまで殺していた、保険金のために。
子どもを殺すためのカムフラージュとして、別の殺人を行っていたのだった。
ちなみに、ナツオがここで有働さゆりだったというのがわかる。
ナツオは女の子だったのだ。
夏緒。
父親に性的虐待を繰り返され、女の子を殺し医療少年院音楽療法などで立ち直る。
そして結婚して出産・・・
が、また復活したのだ、彼女の一面が。

・さらに、実はさゆりが殺人犯人であったが、それは操られていたのだった。
誰にかというと、さゆりの担当医から。
担当医の御前崎は、自分の娘をある男に惨殺されたがその男は精神面で障害があるというので有罪にならなかったのだ。
その時の弁護士が焼かれた弁護士だった。
御前崎は、操っていたさゆりが「自分の子どもをカムフラージュするために別の殺人をした』ことになっているが、実は「自分の殺したい弁護士を殺すために周りをカムフラージュした、つまりさゆりの子どもすらカムフラージュ」というねじれた構造になっている。
(さゆりを再び狂わせるために、さゆりの実父と同じように、さゆりを御前崎は犯したのだった)

・御前崎のしたことは非道だが状況証拠しかない。
警察はどうしようもないのだがというところで終わりそうだったが。

勝雄が、自分がカエル男と信じていて、アイウエまで行ったので、次に殺すという強い決心をしているのは
・オで始まり
・歯科医院のカルテ
にある御前崎であるということというのが最後の一行でわかる。