2011.04.17 いとま申して
いとま申して―『童話』の人びといとま申して―『童話』の人びと
(2011/02)
北村 薫

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評価 4.1

つまらなくはないのだが・・・・
北村薫の父上の時代を描いていて、父上が文学青年で童話という雑誌に寄稿していて色々な人と交わりあっていってそこに有名な人も・・・という話だ。
随筆ではないけれど、かといって小説でもない。
非常に微妙な位置に立つ話だ。

父、というところが更に難しくしているのだと思う。
読み手側から言うと、お父さんのことを書いているのだな、という思いがあるから、どうしても「内輪受け」のような感じが否めない。
もしこれが三人称で突き放されて書かれていれば同じことでももうちょっと違うだろう。
またもしこれが、全くのフィクションで書かれていて有名人だけ実名というようになっていれば、もうちょっと違うだろう。
正直、父上が数学の成績悪かろうが、慶應を受験しようと思っていようが、兄嫁が来ようが、そこまで興味がないというのが前面に来てしまうのだ(父と言う描写と父の日記からというのが出てくるだけに)
こういう興味がない、という部分と、学生達の闊達な交流場面(ここは面白い)という部分が両面組み合わさってあるので、微妙な作品となった。

当時の学生の様子、社会状況、を垣間見ることが出来てそこは楽しいし、挫折を繰り返す雑誌出版の難しさのようなところもまた楽しめる。
投稿者たちが集合する姿とか、またそこから新しいものを出していこうという気概とか、ここもまた読みどころだ。
更に、金子みすず、折口信夫、西條八十と有名人との交流の話も、この人がこういうところに、という発見もある。

どこかをどうにかしたらもっと楽しめる一冊になったのに、と惜しくてたまらない。