最後から二番目の真実 (創元SF文庫)最後から二番目の真実 (創元SF文庫)
(2007/05)
フィリップ・K. ディック

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評価 4.9

話の根幹は割合単純なものなのに、ごったごたしている。
ごったごたしているのは、色々な視点が出てくるのと、この世界に慣れるまでに多少の時間がかかるからだ。
更に、これもあるのか、これもまた・・・というように思い切り詰め込まれ感がある。
それでも話としては面白く、最後まで引っ張っていく力がある小説だと思った。
今の日本の状態でこれを読むというのが、偶然とはいえ、皮肉なことだ。

ちょっと私があれ?と思ったのは、文庫の粗筋のところにある部分が書かれている、ということだった。
これが書かれてなければ(最初の表題の下なのでどうしたって眼に入る)、もっともっとその部分で顎を落とすくらいに驚いたのになあ・・・と思った。
SFって、ネタバレというのはあまり関係ないんだなあと改めて思ったりもした。
(ここから話が始まる、とはいえ)

いないと思ったものがいる。
あると思ったものがない。
いわばそういう面白さがこの小説には詰まっている。
地下世界、と地上世界(核に汚染された)という二区分があるのは、「タイムマシン」の小説を思い出す。
でも、地下世界にいるのはこの場合、モーロックとかではなく、普通の人間たちなのだ。
またこの小説はアーシュラ・K・ル=グィンの「オメラスから歩み去る人々」をも喚起させられた、一人の犠牲の上に繁栄した世界が成り立っている・・・・・最後から二番目の真実では、一人の犠牲ではないものの・・・・

地下から地上に臓器を求めて出てきたニコラスが、出たところで意外な人間に出会う(襲われもするのだが)。
ここらのあたりが非常に面白いと思った、このあとで地上の人の中のある種の人たちに救われるが彼らもまたその人がいると言う理由が分からない。
また歴史改竄した映画の発想もこの時代に思いつくと言うところがすごいなあと素直に思えた、これが、地上世界のまやかしを、あの人造人間の演説を、後押ししているわけだから。

謎が謎を呼び、そして広がっていく。
収束を全てしているかというとしてないように見える部分もある。
それでも読んでいる時には、ディックを読んでいるという快感に浸れたのだった。

以下ネタバレ
・地上世界が果てしなく続く核戦争が続いていて、
汚染されていると思い込んでいる人たちが
地下の巨大な場所に生きている。
過酷な生活でロボットを作ると言うことを課せられながら。
・ところがそれは嘘で、
戦争はとっくに終わっていて、
10年前から地上では特権階級が繁栄を享受している。
・地下の人間達を地上に連れてくれば、土地の奪い合いも起こるし、労働力も減る。
なので、とんでもない嘘をつき続けるということになる。
(というようなことが、粗筋に含まれている・・・)