2011.04.21 小説を書く猫
小説を書く猫小説を書く猫
(2011/03/15)
中山可穂

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評価 5

これを読みながら、猛烈に思い出したのは、鶴の恩返しの話の一節だった。
自分の身を削って機を織る。
自分の羽を抜いて美しい織物にする。
中山可穂のやっていることはまさにそれではないか。

これはエッセイ集なので(初とある。多分前に出た旅行の話はエッセイには入れてないんだろう)自分の創作の現場というようなものを比較的、ではあるけれど、赤裸々に告白している。
なんて痛々しいんだろう。
なんて辛くもがき苦しむようなところから、あの美しい小説群が生まれてくるんだろう。
そういう思いを新たにした。

各小説を思い返してみて、
あの時にはこういう背景があったのか・・・と読者が知るということは、何も下世話な覗き趣味と言うのではなく、特殊なマイノリティーの中山可穂という人間に深く魅せられているからこそ知りたい、と欲求するのだ。
中山可穂の小説を読んでいると、そうではないのに、もしかして自分もこのマイノリティー?とくらっと思ってしまうのだ。
このエッセイにもそういう強い情念のようなものがある。
誰かが誰かを愛する。
誰かが誰かを猛烈に必要とする。
自分に正直であろうとすればするほど、網に囚われていくような予感がする。
そういう思いを吐露してくれる中山可穂の文章にまたしてもからめとられたのであった。