2011.04.21 二流小説家
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2011/03/10)
デイヴィッド・ゴードン

商品詳細を見る


評価 5

男性の情けなさ度100パーセントミステリのミステリだ。
途中自作の作品がばらばらと転がっていて、そこも軽く楽しめる。
一粒で4つぐらい美味しい、という小説だった。
ただ、最後の二転三転プロットは、ミステリとしてはさほどの新味がなく、そこまでに至る経過の方がうねっているので、意外性ということではそれほどでもないように思えた。
しかし読みどころというのはミステリ部分よりも、ハリーの生き方そのものなのだと思う。
ラスト数章の盛り上がりもまた素晴らしい。

前半もとても面白い。
自他共にも認める、二流の小説家(ライターっぽいところもある)が、なんと、「女子高生」のクレアのお尻引っぱたかれて頑張って小説を書くという情けなさに、あきれるより先に笑ってしまったのだった。
しかもぽっと読んでいると、この小説家が若者に思えるのだが(「ぼく」視点とあまりの駄目男っぷりに)、中年と言うところがまたイタクて、更に笑える。
クレアが小馬鹿にする様子もまたわかって、そこすらも笑える。
あまりに情けなさ過ぎて、しっかりせい、という前に、仕方ないなあ・・・という気持ちになるのだ。
自分の評判への自虐っぷりもすさまじい。
更に笑えることには、自分の小説を分野で色々書き散らかしているのだが、ポルノ、SF、ミステリー、ヴァンパイアと様々な分野で変名で書き散らしていて、中でもヴァンパイアは女性名義で書いていて(情けなさ度が上がることに、母名義である)

金もなければ名誉もないし、ガールフレンドジェインも別の男に行ってしまったハリー。
アルバイトにやった金持ちのお嬢様の家庭教師で、自分を励ましてくれるクレアを探す始末。
彼が起死回生で狙ったのが、連続殺人犯の告白本の執筆依頼だった。

犯行動機から手口まで語ってくれると言うので、これを書けば
ベストセラー作家に間違いない。周りを見下したい。
そのために服役中の殺人犯に話を聞きに行くのだが・・・
そこから殺人が再び始まる。
殺人犯が中にいるのに、なぜ同じような殺人が・・・・


・告白本を書こうとして、かつての遺族に阻まれたり、また逆に励まされたりするハリー
・殺された女性のことを調べていくうちに、その中の一人のストリッパーダニエラと情を交わすハリー
・心をいまだに惹かれるかつてのガールフレンドジェインを複雑な思いで見るハリー
・ぺしゃんこにされながらついつい話を聞いてしまう高校生との会話で救われるハリー
・素敵な弁護士助手にくらっときているハリー
駄目男のハリーにいつの間にか寄り添うような気持ちになるのは、彼の挫折に満ちた人生から来る、ほのぼのとした優しさのような気がした。
扱っているのは残虐な殺人なのにも関わらずそれがさほど印象に残らないほどに、ハリーの造型がしっかり出来ていると思うのだ。また周りの女性達もそれに負けず劣らずよく描かれている。

後半一転して、犯人探しに追われていくハリーは、同時に死刑囚の一生と言うのにも立ち会うことになっていく。ここらの描き方もまた妙がある。
更に、一流になりたいがなれない常に二流と言う悲哀(明日ひのきになりたいと言うあすなろを思った・・)が実に最後の数章でこちらに伝わってくるのだ。
多彩な女性陣に囲まれながらも、二流を背中に背負っているハリーにいつしか肩入れしている自分を発見するのだった。