2011.04.26 ロマンス
ロマンス

評価 4.8

柳広司ミステリとして楽しんで読んだ。
ミステリとして最後のところにある事実が明かされる。
これはミステリ読みだと、きっと初期にそうではないか、とわかるだろう。
私もここは、(やっぱりなあ・・)とわかったのだった。
もしわからなければ、それはそれでとても幸せな驚き方を最後に出来るので、素敵なことだ。

それよりも、まだ華族があった時代のこの時代背景の方に私は魅せられた。
昭和8年の帝都で、享楽の生活を送っている華族がいる一方で、軍部もまた実権を握りつつあり、という中で、スパイ、カフェー、陛下、特高、共産主義活動、など時代を左右するものが次々に出てくる。
ロシア人の血をひく、という子爵麻倉清彬という人間が中心になるのだが、この人物が魅力的なのだ。
そしてまた彼の親友の多岐川嘉人が更に魅力的なのである。
清彬の幼馴染ということで、嘉人の妹もまた登場する。

最初の殺人事件は何を意味しているのか。
というのが主眼ではあるものの、決してその犯人探しに右往左往するミステリではない。
親友が殺人犯ではないか、と疑う清彬。
そしてその親友嘉人の方の事情。
退廃的な雰囲気に満ち満ちた帝都東京で、どう華族の人間が生きていくのか、折り合いをつけて生きていくのかというところも一つの読むべきところだと思う。

嘉人の妹の描写が前半にもうちょっと描きこまれていればなあ・・・と思った。
牢につながれる前の部分でもう少し描かれていれば、もっともっと作品全体に深みが出たのに、と感じたのだった。
後半で唐突に色々彼女の事が出てきた感じがしてならなかったのだ。

以下ネタバレ
・三人で遊んだ夢のような光景があり、そこにいるのは
清彬(兄親友)、嘉人(兄)、万里子(妹)である。
そして万里子は天皇の側室に希望されている。
しかし万里子は清彬への想いを兄に打ち明け、それを拒絶している。
清彬は実は、結婚申し込みをしようとしたが、万里子父によって、拒絶されている(清彬がロシア人の血が流れていたため)
そして万里子への想いを諦めるのだが・・・・

ある時に、清彬は、万里子が本当に思っているのは、兄であることに気づくのだ。
禁断の恋である。
そして最初の殺人は兄のために万里子がしたものだった。
兄は万里子のこの感情に気がついてない。